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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第二章 青年期
  第五十三話

『……場所はスパイダーズカフェ。敵はコードネームMr.1、ミス・ダブルフィンガー、Mr.2ボン・クレーの三人。コアラとカリファと合流して三人で向かっているわ!』

『よし、そちらは任せるぞ。』

『ええ!』

 
 ステューシーはクロコダイルの元へ向かったゴジとの通話を終える。

 彼女達三人はそれぞれ超カルガモ部隊のカルガモの背に乗って、先の報告通りスパイダーズカフェに向かっている最中だった。


「私達がようやくサンドラ河を渡り終えましたから、准将はそろそろレインベースに到着するころですね?」

「ええ。先にアルバーナを出たゴジ君が同じカルガモちゃんに乗ってるならレインベースに着いてるでしょうね。」


 アルバーナとレインベースは川幅約50キロもあるサンドラ河さえ渡ればすぐ到着するが、ステューシー達の目的であるエルマルはレインベースからさらに砂漠を約70キロ南下しなくてはならない。

 カルガモ部隊の脚力ならここから1時間弱もあれば余裕でスパイダーズカフェに到着出来る計算である。


「ねぇねぇ。もしかしてゴジ君ってさ。今のステューシーさんの会話をクロコダイルに直接聞かせたりしてないかな?」


 コアラの冗談めかして言いまわしにステューシーとカリファは笑う。


「うふふっ、バカねコアラ。流石にまだクロコダイルの待つレインディナーズに着くには早いわよ。」


 コアラを含めて彼女達は先程の冗談が真実だとは夢にも思っていない。


「ふふっ。ええ……全くです。それにしても『クロコダイルはきっと俺達に備えて最高戦力を準備しているはずだから、カリファ達はそいつらを捕らえろ。』ですか……。」


 カリファはゴジが王宮から一人で経つ際に自分に命じた指示を復唱した。

 
「ようするにそれってさ。『俺とクロコダイルとの戦いに邪魔を入れるな』ってことだよね?」

「あら?コアラもゴジ君のこと分かってきたわね?」


 コアラはゴジの真意を読み取ってニヤニヤすると、ステューシーもそれに同意する。


 ───何故、私かコアラを一緒に連れて行かなかったのかしら?


 もちろんカリファもゴジの真意には気付いているが、腑に落ちないのはクロコダイルの側近にはニコ・ロビンがいる。

 クロコダイルとの戦いに水を差されたくないならばニコ・ロビンを抑える仲間を同行させるべきであるが、ゴジはたった一人で行ってしまったことである。


「そりゃ、毎回むちゃくちゃするもんねぇ。それに毎回振りまされるヒナさんの苦労も分かるよ。」

「ふふっ。そういえばヒナは大丈夫かしら?」


 ヒナに与えられた任務はサンドラ河にいるたった1隻の船を見つけるというものである。


「そちらは大丈夫でしょう。准将が最強の援軍を送りましたからね。」

「「最強の援軍?」」


 ゴジがヒナに送った援軍について知らないステューシーとコアラが話に食い付いた。

 ステューシーとカリファはコアラの正体を知らず、コアラはカリファの正体を知らない為、サイファーポール二人と革命軍一人というこの歪なトリオは女が三人集まれば姦しいと言われるように、彼女達もカルガモの背に揺られながら姦しく話に華を咲かせてエルマルを目指していた。

 
 ◇


 ゴジの指示でサンドラ河で一隻の船を探しているヒナは途方に暮れていた。


「サンドラ河がこんな広大なんて聞いてないわよ。対岸から対岸すら見えないじゃない ヒナ絶望!」


 サンドラ河は川幅約50キロ、全長200キロを超える広大な河であり、この河にいるたった1隻の船を見つけるのは砂漠の中からたった一粒の砂を見つけるようなものである。


「キャハハハ!でも、ヒナ中佐。ゴジ君がこっちに最強の援軍を送ってくれるってさ。」

「援軍?今更一人増えたところでなんの役に立つのよ……それとも軍艦でも送ってくれるっての?はぁ……。」


 ヒナはミキータの言葉を聞いて呆れたように首を横に振る。

 この広大なサンドラ河に浮かぶ船を見つけるには船が何隻いても足りないくらいである。

 それこそ空からでも探さないと意味ないが、今この船で唯一空を駆けることができるのは条件的に”月歩”を使えるミキータのみである。


「ごめんねぇ。キャハハハ、私”月歩”ってまだ上手く使えないのよねぇ。」


 ミキータはキロキロの実で体を軽くした時のみ、”月歩”を使えるようになっているが欠点がある。


「いえ、ミキータありがとう。風が止んだ時に空から見下ろしてくれるだけで充分役に立ってるわ。それを言うなら私は六式の内、”月歩”と”紙絵”はまだ全然使えないわよ。」


 ミキータの”月歩”の欠点は風があると軽すぎる体が風で流されて、上手く空を走れないことである。


「ヒナ中佐!服を着た巨大な隼が船に真っ直ぐ突っ込んで来ます!」


 マストの上で物見をしていた部下が声を張りあげる。


「何っ!?隼……援軍ってまさかっ!?」


 ヒナは巨大な隼と聞いてある男を思い浮かべた直後、船に近づいてきた白いローブのような服と頭に白いバンダナを巻いた巨大な隼が甲板に降り立つと同時に鳥の羽の舞うその中心で人の姿に戻って爽やかな笑顔を浮かべながら、ヒナに話掛ける。


「失礼っ。”黒檻”のヒナ中佐とお見受けします。私はアラバスタ王国護衛軍副官のペルと申します。ゴジからヒナ中佐をお助けするよう頼まれてきたのですがお役に立てれば幸いです。」

「ええ……。確かに私がヒナよ。“ハヤブサ”のペルが援軍に来るなんて……なるほど、確かに最強の援軍だわ! ヒナ驚愕!」


 ヒナは自分の予想が当たったことに驚きながらも大空の覇者とも呼べるこれ以上ない援軍の到来に歓喜する。


「私はコブラ王よりヒナ中佐の指揮に入るように指示を受けています。何なりとお申し付け下さい。」


 ペルは甲板に片膝を付いてヒナからの指示を待つ。


「私達はダンスパウダーを空に撃ち放つことの出来る人工降雨船を探しているの。ゴジ君の読みではサンドラ河にいるはずなんたけど、船から探すのは正直限界だったのよ。空から探してくれないかしら?」


 ダンスパウダーは空に打ち上げることで雲を発生させるので、専用の打ち上げ装置が必要になる。

 しかし、世界政府が禁止しているダンスパウダーを打ち上げる装置を陸地に作るとは考えづらいので船に搭載していると考えたのだ。


「なるほど、偵察と探索は得意分野です。おまかせあれ!」


 隼の視力は大空から草原を駆ける鼠を見つけることが出来るので、ペルにとって目標の大きな船を探す等造作もない。


───なるほど、ゴジ。確かに私にしか出来ない任務のようですね。


 ペルはゴジとの邂逅を思い出して笑みを浮かべながら、再び”獣化”して巨大な隼の姿になって飛び立とうとした時、ミキータが元気よく手を上げる。


「はい、はーい!私も一緒に行っていい?キャハハハ!」

「まぁ、ミキータであればペル殿の飛行の邪魔にはならないかしら?ペル殿、ミキータを貴方に同行させてもいいかしら?」


 ヒナはミキータのキロキロの実の能力で体重を軽くすれば空を飛ぶペルの負担にもならない上、いざ戦闘となった時、アラバスタ王国最強のペルと現状この船において自分に次ぐ実力者のミキータとペアを組ませる事は合理的であると判断した。


「人一人程度であれば全く問題ありません。ではミキータ殿、私の背中にお乗り下さい!」

「やったあぁぁ!」

「では、二人に命じるわ。人工降雨船を発見して船を制圧しなさい。でも、絶対に無理はダメよ!」

「「はっ!」」


 こうしてミキータを背に乗せたペルは大空に飛び立って行った。


 ◇


 ペルが飛び立って数十分後にはサンドラ河に浮かぶ目的の人工降雨船を見つけ出した。


「ミキータ殿、目的の船を見つけました。」

「ほんとだ!船に大きな煙突がある!」

「あれは煙突ではなく砲塔かと思われますが、一度海軍船に戻り、ヒナ中佐に連絡されますか?」


 人工降雨船は船の中央部に空に向けた巨大な砲塔を搭載した船だった。

 ミキータもペルの背中から船を見ろしていると、人工降雨船に乗るバロックワークス社員もペルに気付き、空に銃口を向けて発砲するのに気付いた。


「ペル!撃ってきたわ!」

「ミキータ殿、しっかりと捕まってください!」


 ペルは銃声を聞いて大空に急上昇することで銃の射程距離から逃れた。


「キャハハハハハ!気付かれた以上は船に戻る時間はないわ。ヒナ中佐もこうなる事を見越して制圧して来いって言ったのね。私達で船を抑えちゃいましょう?」

「確かに離れた後、空から見つけられない岩陰等に隠れられると厄介ですね。」

「じゃ、━━━っていう作戦でいきましょう。ペルの負担が大きいけど大丈夫?」


 ミキータが今即興で思い付いた作戦をペルに伝える。


「ミキータ殿、この場で執れる最善の作戦かと思われます。その任承りました。」

「キャハハハハハ!頼もしい。よろしくねぇ。」


 ミキータはペルの背中から飛び降りて、体を軽くして”月歩”で船の真上まで駆けていくと、ペルは船に向けて急降下していく。


「Mr.7様、ミス・ファザーズデー様!、先程の巨大な服を着た鳥が再び船に向かってきます!」


 人工降雨船の物見にいるバロックワークス社員が船の管理者である幹部であるカエルの着ぐるみを着た女とバッハのような髪型と服装をした男に報告する。


「ねぇMr.7。あたし知ってんの。あれって”ハヤブサ”のペルよ。思わぬ収穫なの!アジャスト”ゲロゲロ銃”!!」

「オホホホ!いーね。いーね。ミス・ファ〜ザ〜ズデ〜、アイツを討ち取って昇進するっていうスンポーだ〜ね。アジャスト”黄色い銃”!!」


 人工降雨船に乗るバロックワークスの誇る狙撃手二人が各々ピストルを構えてペルに向けて発砲するが、ペルは錐揉み飛行と呼ばれる体をグルグルと回転させることで銃弾を躱して船に迫る。


「「当たらない!?」」

「”飛爪”!」


 とうとう船まで到着したペルは船に居並ぶバロックワークス社員達の隙間を縫うように飛び、すれ違った全ての者をその鋭い爪で切り裂く。


「「「ぎゃあああ!?」」」

「友が私を頼って託してくれた任務に失敗は許されないでしょう?」


 ペルの飛爪によりほとんどの社員が戦闘不能となるが、幹部二人だけはしゃがみこむことで彼の攻撃を回避して、自分に背を向けて船首に立つペルに再度銃口を向ける。


「外したわね?ゲロゲロ……」

「オホホホ!これで私たちの勝ちっていうスンポーだ〜ね。いーね。いーね。!」


 二人は自分達に気付く様子のないペルに銃口を向けて、勝ちを確信した彼らは空から飛来するギロチンの牙に気づかなかった。


「1万キロギロチン!」

「ぐべっ!?」


 ミキータは船の上空で右足を伸ばしたまま体重を1万キロに変えて飛来し、伸ばした右足でミス・ファザーズデーの首を押し潰しながら甲板に大穴をあけて突き破った。


「ミス・ファザーズデーっ!?」

「私を相手に余所見とは随分余裕ですね……“飛剣”!」

「ぐはっ!?」


 相棒がやられた事に動揺するMr.7に”人獣型”になったペルの最速の剣が迫り、ペルの接近に気付くことなくMr.7は横一文字に斬り裂かれた。


「ご安心を急所は全て外してあります。それにしてもミキータ殿は大丈夫でしょうか?」


 ペルは泡を吹いて倒れ伏すMr.7を一瞥した後、心配そうにミキータの空けた穴を見下ろすと、船の瓦礫を被って埃まみれになった無傷のミキータが甲板に空けた穴から飛び出てきた。


「ふぅ……危なかったわ。途中で能力解除しないと船を真っ二つにするとこだったじゃないキャハハハ!」

 
 上空から1万キロの重さで飛来するとその衝撃は数百トンの衝撃となり、ミス・ファザーズデーはミキータの攻撃により船の背骨とも呼べる竜骨にめり込んで気を失っている。

 仮にミキータの能力解除があと少し遅れていたらそのまま竜骨を砕いで船は真っ二つになり、アラバスタ王国でダンスパウダーを使った証拠となる人工降雨船は間違いなく沈没していただろう。


「ミキータ殿、そうなっていたら笑い事では済まされませんよ。」

「キャハハハハハハ!ホント大目玉くらうとこだったわキャハハハハハハ!」


 何はともあれこうして人工降雨船はペル、ミキータの活躍により瞬く間に制圧されたのだった。 
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