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僕は 彼女の彼氏だったはずなんだ 完結

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4-⑶

 次の日は、開店の10時に間に合うように行くと、光瑠と明璃ちゃんが居た。明璃ちやんは、料理のサービスを手伝うとかで、白いポロシャツ、下も白のパンツに黒の深めのキャスケット、エプロン姿だった。帽子とエプロンにはナカミチの赤の刺繍がしてあった。美鈴の見立てらしい。洗い場の僕達にも、せめて、上だけでも揃えてと、こっちは、黒のポロシャツを渡された。胸には、やはり、ナカミチの赤い刺繍があった。昇二が少し、遅れて来た時、明璃ちゃんが昇二に

「ねぇ ねぇ ズボン長いから、テープで上げたのよ どう、可愛い?」と、駆け寄っていって、まわって見せていた。

 10時、オープンすると同時に、バイクの3人組が入ってきた。明璃ちやんが、手を振っていた。皆が戸惑っていると、明璃ちゃんが接客して

「オーダー入りまーす ステーキ定食3ッツ ご飯大盛りで」と、元気良く声を出していた。

「なんだ、あれは 明璃ちゃんの知り合いか 柄悪るそー」と、昇二が光瑠に聞いていた。

「知らないわよ あんなの」と、光瑠も見ない振りしていたみたい。

 連中が帰る時、「うまかったです 仲間にも宣伝しときます 明璃先輩 失礼いたします」と、明璃チヤンに礼をしながら、大きな声で言って去って行った。

「ちょっと 明璃 今の何なのよ ヤバイ連中じゃぁないのー?」と、光瑠が駆け寄って、聞いていた。

「ううん 後輩だよ 1年生 ちょっと、はじけていたけどね、私が、奴らのヘルメットにイラスト書いてやったら、慣れ慣れしくしてきてね 明璃軍団に入れてやったの 男の子いなかったから、丁度良かったんだよね 可愛い奴らだよ」と、普通に答えていた。

「明璃 なに それっ あなたと言う人は・・明璃軍団って何?」と、光瑠が声を失っていたが、美鈴が

「ありがとう 明璃ちゃん お店の為に、宣伝してくれて・・」と、お礼を言っていた。

 だが、その後から、次々とお客が来始めたのだ。お昼頃には、外で、並んで待っている組も居た。僕は、後何分ぐらいですからと言って、謝っていた。結局、3時の休みを30分ほどオーバーして、休憩に入ったのだ。

「中道さん さすがです 手際が良くて」

「晋さんこそ 適格に指示を出してくれて 助かりました」と、美鈴が応えていた。晋さんと言うのは、30前で独身の料理人で、松永さんの下で働いていた。

「いゃ 松永さんに仕込まれましたからね それに、ヘタ打ったら、叱られますよー お嬢さんこそ、てきぱきとお客様をさばいて、さすがですね」と、言っていた。

「晋さん もう その、お嬢さんはやめてよー」

「じゃあ 何と言えば 店長かな」

「あのね それも、しっくりこないわよ 美鈴の方が良いわ」と、美鈴が言うと

「店長 5時からも、もっと並ぶぞー 頑張らなきゃあな」と、昇二も言っていたが、昨日とは、違って、みんな明るかった。

 その時、酒の配達で、ジローさんが来た。

「おお 学生さん 手伝いか 俺も、追加注文を受けてな 順調みたいだな あんたも、真面目だなぁー 中道さんの娘さんの為か?」

「そんなんじゃぁないですよ」

「わかっているって 男は、ほれた女には、弱いからな 頑張れよ 俺も、今度の休みにはガキ連れて、寄せてもらうよ」と、言って帰って行った。

 5時のオープンには、直ぐに満席になって、6時頃には、表に、数組が並び始めた。そして、美鈴は20分以上待たせるようだったら、スープを紙コップで配ってと、僕達に指示をしていた。

 結局、最後の客が帰ったのは、10時閉店のはずが、11時近かった。ひっきりなしに来客があって、遅い時間には、女性の独り者とかカップルが多かった。

「みんな 今日はありがとうございました。舞依ちゃんも良かったわよ 子供さんにも、ちゃんと接してくれて」

「店長 いろいろ失敗したけど 明日から、もっと、頑張ります」

「うん 頑張ってね お父さん 今日ね 何人かのお客様が やっぱり、ナカミチは美味しいわって このお店が出来てうれしいって 言ってくれたの お父さんのお店、まだ、覚えてくれていたのよ 私 涙出てきちゃった」と、美鈴はお父さんの手を握っていた。

「そうか そんなことがあったのか」と、短く答えていたが、僕には、真意は解らなかった。

「松永さんがね この場所にこだわったのが、わかった」と、美鈴が続けていた。

 次の日の日曜日、昇二が朝、来た時、第一声が

「あそこのシャルダン 折り込みチラシ入ってて ステーキセットだけ飲み物付きで3割引きだってよ 今日と明日の2日間だけの緊急スペシャルだってよ 完全に嫌がらせだよ」

「そんなの関係ないわ ナカミチを愛していただけるお客様に来て下さるんなら」と、美鈴は涼しい顔をしていた。僕は、本当に強くなったなと、そして、別人の美鈴のように感じていたのだ。

 10時オープンの後は、さっぱりだったが、1時間ほどすると、徐々に席が埋まってきた。そして、昼過ぎる頃、外で待つ人達もあって、僕と昇二はやっぱりスープを運んでいた。その日、お昼の営業が終わったのは、3時の予定が1時間すぎていた。そして、5時の夜のオープン前からも、2組のお客が来ていて、急遽、早い目に店を開けたのだ。

 この2日間は順調だったが、美鈴は来週からが、本当の勝負よねと言っていた。それに、僕達も月曜からは、そんなに手伝えない。







 
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