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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第二章 青年期
  第五十一話

 アルバーナの王宮に与えられたゴジの客室でコアラの任務失敗の報告を聞いたゴジは労いの言葉を掛ける。
 

「コアラ、ご苦労さま。やはり8歳から17年も世界政府から逃げ続けた女は一筋縄ではいかないなぁ〜。怪我はないか?」

「うん。拘束された時に肩を軽く痛めたけど、骨にも筋にも異状はないと思う。でもハナハナの実は厄介だよ。」

 
 コアラはロビンに拘束された時に軽く痛めた関節を擦りながらロビンの能力を思い出して苦い顔をする。


「俺でよければ少しマッサージしてあげようか?」

「やったぁあ!ゴジ君のビリビリマッサージ、ホント効くのよね。」


 コアラはゴジの傍に近寄ると彼に背を向けてその前に座り込む。

 人体構造に精通し、電気の能力を駆使したゴジのマッサージは凝った筋肉や筋を電気で解すのでジェガートではプロ以上と認識されており、ファンが多い。


「あっ……分かってると思うけどセクハラしたらカリファさんに言いつけるからね?」


 ただ一つの欠点といえば隙あらば胸や尻を触ろうとしてくるゴジ自身である。


「えっ……やだなぁ。はははっ……む……胸なんて揉むわけないじゃねぇか!?」


 コアラは顔を赤くして咄嗟に両腕で自分の胸を隠しながら、下品な顔で両手をワキワキとさせているゴジをジト目で睨みつける。


「ゴジ君のえっち……。私、胸なんて言ってないよ。はぁ……それで私は次何すればいいの?逃がしたニコ・ロビンを探そうか?」


 ニコ・ロビンが超人(パラミシア)系悪魔の実、ハナハナの実の能力者と判明した以上はコアラでは分が悪い。


「そっちはいいよ。気になることもあるし、婆さんに連絡して彼女の過去を探ってみるよ。コアラはカリファと共に王宮で捕らえたバロックワークスの一味の一人を護衛してステューシー達と合流してくれ。」

 ゴジは話をしながら、真面目にコアラのマッサージを始める。

 近衛兵に扮したバロックワークス社員を情報を吐かせる為にその道のプロであるサイファーポールの元に彼を連行しようとしている。


「ゴジ君の読み通りに、やはり敵は王宮にも潜入してたのね?」

「あぁ。国王と内密の話をすると言ったら見事に釣れたよ。」

 
 逃走及び奪還、暗殺目的の襲撃を警戒してカリファに指示を出したが、コアラが戻ってきたのでカリファの補佐に付けることにした。


「あ”あ”ぁぁぁ……効くわぁ。それでカリファさんは今どこにいるの?」


 コアラは痛めた肩に流れる電気刺激の快感に酔いながらも話を進めると、ゴジも施術を施しながら話を返していく。


「牢屋で例の男を見張ってるよ。コアラはカリファと合流してくれ。マッサージはあらかた終わったけど、体の調子はどうだい?」

「うん。もう全然痛みがないよ。それに肩凝りも取れてる。相変わらず凄いね!」


 コアラは両肩をグルグルと回して喜びを露わにする。


「大して痛めていないようでよかった。」
 

 ゴジはコアラにマッサージを施しながら、ニコ・ロビンに反撃を受けたにも関わらず、負傷程度が軽すぎる事に対してさらにニコ・ロビンへの不審感が増す。


「では、ゴジ君、行ってくるよ!」


 コアラが敬礼と共に客室から出たのを確認してから、つるへの電伝虫を取り出して通話のためにベルを鳴らした。


 ◇


 海軍本部の執務室で仕事中のつるはゴジの電伝虫が泣き出した事に気付き、受話器を取った。


『もしもし。婆さんか?』


 数日会っていないだけだが、ゴジの声に懐かしさを感じつつ話を促す。


『おや?ゴジ。どうしたんだい。』

『"悪魔の子"ニコ・ロビンがアラバスタ王国にいた。彼女について知ってる事があれば教えてくれ。』


 つるはゴジからロビンの名前を聞いて、息を飲んだ。


『っ…!?よりによってニコ・ロビンかい…。』


 ゴジはつるの反応から、ニコ・ロビンについて何か知ってる事があると分かり、つるに話すを急かす。


『婆さん、何か知ってるんだな?ニコ・ロビンは超絶美人だからか?それは冗談としてもな……彼女は海に落ちた女の子を助けようとしたり、尾行したコアラに大した危害も加えずに返してくれたり、どうも悪人には見えねぇんだよ。』


 ロビンは世界政府や海軍の上層部では確かに超有名人だが、当然、ゴジの言うように容姿ではなく、彼女が賞金首となった経緯が中々特殊だからである。
 

『これも運命(さだめ)かね…よく聞きな。実はね…』


 つるはこれから話す内容が確実にゴジを傷付けることにると分かった上で全てを話す事に決めた。

 ゴジはつるの予想通りに彼女から聞いた話に衝撃を受けることになる。


 ◇
 

 今から17年前、16歳のゴジがまだ生まれる前年の出来事である。

 歴史研究のためにニコ・ロビンの母ニコ・オルビアらの乗る船が航海中に海軍により捕縛され、船内の調査結果を元に当時のCP-9(シーピーナイン)長官スパンダインが西の海(ウエストブルー)にあるオハラに部下を引き連れ押し寄せた。

 スパンダインは、オハラの考古学者達に対して空白の100年と歴史の本文(ポーネグリフ)の研究を理由に死罪を言い渡し、当時の海軍本部大将センゴク名義で同島にバスターコールを発動した。

 バスターコールと呼ばれる海軍本部中将五名が率いる大艦隊の一斉砲撃により、オハラは瞬く間に焼け野原となり、翌年以降、地図上から削除された。

 さらに、このオハラへのバスターコールにより、ロビンの実母ニコ・オルビアや考古学者達を含む島民全員及びロビンを逃がした元海軍中将ハグワール・D・サウロが海軍の軍艦6隻を沈めて死亡し、このバスターコール唯一の生存者であるロビンはサウロの罪を全て背負わせられた挙句、海軍の軍艦6隻を沈めた凶悪な犯罪者として8歳にして7900万ベリーの賞金首となったのだ。

 
 ◇


 つるがニコ・ロビンに関する全てを話終えた。当時大将センゴクの名の元に行われたバスターコールを作戦室から指揮していたのは他ならぬ彼女だった。


『これがオハラの悪夢と呼ばれるあの日の真実だよ…』

『巫山戯るなよ……無関係な島の人まで全て殺した上にたった8歳の女の子に無実の罪を着せることの何処に正義があるんだぁぁあああ!!!』


 ゴジの怒声が王宮に響き渡る。

 ゴジがセンゴクから覇王色の覇気の訓練を受けてなければ、彼は怒りのあまりに覇王色の覇気で王宮を覆い尽くしていたかもしれない。それほどに怒りに満ちていた。


『ゴジ……』


 オハラの悪夢は作戦に参加していた将校達にも大きな影響を与えた。


 ───そう。あの作戦に参加した者は総じて『正義』とは何かについて悩んできたんだよ。


 特にクザンは元々『燃え上がる正義』を掲げ、やる気に満ち溢れて20代で中将となった男でオハラの襲撃のバスターコールにも中将の一人として参加したが、罪のない民間人を虐殺した上で冤罪により8歳の女の子を犯罪者にしたことで「海軍での自分の正義とは何か」と苦悩するようになり、その悩みを経て確固たる信念をもって今は『ダラけきった正義』をモットーにするようになったほどである。


『ぐず……ハグワール・D・サウロ中将は偉大な海兵だな。一度でいいから彼と会ってみたかった。』


 つるはゴジの涙声を聞きながら、『デレシシシ』という特徴的な笑い声と笑顔のよく似合うサウロのことを思い返していた。


『あぁ。そうだね……。』
 

 ゴジの性格や掲げる正義をよく知るつるはロビンを命懸けで救ったサウロ中将のようにゴジが怒り狂うだろうことは分かった上で正直に話したのだ。

 しかし、それ以上につるはゴジのことを、あの日感情のまま暴れまわったサウロ中将とは違うと信じている。
 

『サウロ中将の意思は俺が継ぐ。婆さん、俺は……俺の正義に従うぜ。』


 ゴジは悲しみと怒りに震えながら、双眸から溢れる涙を拭いながら自分の意思を伝える。


『好きにしな。あんたがやった事の責任くらいは私がとってあげるよ。』


 ゴジがアラバスタ王国に部隊を引き連れてこれた理由も、全てつるのお陰だった。

 つるはゴジに対して基本的に命令を出すことはない。つるの命令を受けて動くのはギオン率いる第一部隊で、第二番隊は全てゴジの裁量で動かすことを許可されている。


 ───ゴジ、あんたはあんたのやり方でニコ・ロビンを救おうとしてんだろう?やれやれこれは少し骨が折れそうだ。


 彼女は最強の海兵となり、正義のヒーローを目指すと言ったゴジの夢を応援する為に彼の障害は自分が排除するのだとゴジを預かった日からずっと覚悟を決めていた。


『いつもありがとう。きっと婆さんにも迷惑掛けることになるがよろしく頼む。』


 そして、世界政府がサイファーポールを総動員して血眼になって探していたニコ・ロビンをゴジがどのようにして救うつもりなのか不安よりも期待している自分がいることに苦笑してしまう。


『あぁ。任せときな。』


 ニコ・ロビンの過去は口外すべき内容ではないことは、少し考えればゴジには理解出来た。

 しかし、自分を信用して話してくれたつるの想いを受け止めたゴジは感謝を伝えてから受話器を置き、決意を新たにしたゴジはおもむろにその場から立ち上がって一路レインベースへ向かった。


 ◇


 レインディナーズのオーナー室でロビンがクロコダイルにある報告している。


「Mr.0。今王家の側仕えメイドとして侵入しているミス・マザーズデーから連絡があってアラバスタ王国の護衛軍に潜入していたMr.6が“麒麟児”に拿捕されたそうよ。」


 そう……近衛兵チップのコードネームはMr.6。ティティの部屋を掃除する担当メイドの一人として潜入していたミス・マザーズデーとペアを組んでいるフロンティアエージェントと呼ばれる幹部の一人だった。

 彼女はMr.6拿捕の騒ぎに乗じて城から抜け出してロビンに連絡を取ったのだ。


「ちっ……!?それで麒麟ガキはどうしている?」

「“秘書”、“海拳”の二人がMr.6の監視。“麒麟児”はさっきアルバーナを経って超カルガモ部隊の一匹に乗りたった一人で真っ直ぐにレインベース向かって来ているわ。」


 ゴジはクロコダイルの準備が整う前に敵地に乗り込もうと決めた事のだとクロコダイルも察する。


「なるほど。Mr.6を捕らえた事はすぐに俺に露見する。俺が何か対策を講じる前に動くか?流石“麒麟児”と呼ばれるだけはあるが、たった一人で来るとは自分の力を過信しすぎている典型的なバカだな。クハハハハ!」

「けどどうするの?“麒麟児”がカルガモに乗ってるなら小一時間でここへ辿り付くわよ。今からMr.1達を呼び戻す時間はないわ。」


 アルバーナからレインベースに来るにはサンドラ河を横断しなくてはならないが、アラバスタ最速カルガモ部隊がいるなら話は別である。

 カルガモ部隊の脚力は豹をもしのぎ、砂漠の砂地でもその速度が落ちることはなく、空こそ飛べないが水鳥であるため砂漠を駆ける速度そのままで水面を泳ぐ事が出来るのだ。

 ここから南方に位置するエルマル近郊で司令を待つMr.1を呼んだとしても、馬やラクダでは到着には半日は掛かるためゴジの到着には間に合わない為、クロコダイルは手元にある手駒で出来る最善策を練っていく。


「ここでは些か不利か……ミス・オールサンデー、奴を砂漠で待ち伏せる。砂漠ならばこの俺に勝てる奴はいねぇ。クハハハハ!」


 クロコダイルは湖の地下に作られて一面ガラス貼りでまるで湖の中にいるかと錯覚する美しい部屋を見渡して愚痴る。

 この部屋で戦闘になった場合、能力者ではないゴジが唯一の出入口である扉を塞いだ上でガラスを叩き割ると能力であるクロコダイルは圧倒的に不利になるからである。


「ええ。分かったわ。」


 ロビンは表情を一切変えることなく作戦を了承して高笑いしながら先導するクロコダイルに付き従ってオーナー室を後にした。 
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