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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第二章 青年期
  第五十話

 ゴジは巨大な隼となったペルの鉤爪が目の前に迫ってくるのを楽しそうに眺めている。


「ペル!止めよ!」


 コブラの制止の声に従い、ペルは翼を羽ばたかせてその場で急停止し、鉤爪がゴジの頭を掴む直前で停止する。

 ゴジは見聞色の覇気によりこの未来が視えていたのであえてペルの攻撃を避けなかった。


「コブラ王!何故止めるのですか?この男はチップを……そして貴方をも手にかけようと……。」

「よく聞け。誤解だ!チップは敵のスパイ。チップはこの部屋の盗聴をしていたのだ。ゴジ准将はいち早くそれに気付き、捕らえただけだ。嘘だと思うならチップがいた隣の部屋を見てみよ。」


 コブラはペルに諭すように言いかせながらゴジの突き破った部屋を見るように言うと、大穴の空いたコブラの私室から覗く部屋を見てペルは愕然として力が抜けて人間の姿に戻る。


「なっ……この部屋はティティ様の……!?」

「そうだ。私が立ち入り禁止にしている妻の部屋にチップがいた事が何よりの証拠だ。」


 ネフェルタリ・ティティ王妃。

 コブラの妻にしてビビの母親であり、ビビを産んで直ぐに他界してしまったが、彼女の部屋は当時のまま残して日々掃除するメイドを除き立ち入り禁止していた。

 王の守護を担当する近衛兵であれば王の居室の隣にある王妃の部屋をメイドが掃除する時間帯を把握することは容易であり、見つからないように王妃の部屋に潜入すれば隣にある王の居室の会話は盗聴し放題である。


「ゴジ准将ぉぉぉ!申し訳ございませんっ!!」


 当然ペルは自分がとんでもない勘違いをしてゴジを殺そうとしていた事に気付き、ゴジに対して両手を両膝を付き、血が滲むほど強く頭を地に打ち付けて土下座しながら謝罪する。


「私は……とんでもない勘違いを、この国を救おうとしてくれた貴方を疑った。私は……私は……。」


 ペルはこの失態に報いるには死をもって償うしかないと思っているが、自分の命はネフェルタリ家とアラバスタ王家に捧げているので自分の意思で差し出す事は出来ない。


「ゴジ准将、ペルは……!?」

「大丈夫だコブラ王。ちゃんと分かってるよ。」


 ゴジはそんなペルにゆったりと近づいていくので、コブラが弁明しようとするのを笑顔を浮かべているゴジが制する。

 ペルの元まで来たゴジは片膝を付いて彼の肩に手をつく。


「ペル殿、俺も貴方に一つだけ謝罪させて欲しい。」

「えっ?」


 ゴジの言葉が理解出来ないペルは跪いたまま頭を上げる。


「俺はペル殿に会った時、貴方を悪魔の実の能力頼りの男と評価し、先程、俺には勝てないから攻撃を止めろと言ったことを撤回させて欲しい。貴方はあの瞬間、自分の死と引き換えにコブラ王を守ろうとした。そんな貴方の覚悟を侮辱する発言だった。本当に申し訳ない。」


 ゴジはペルの最後の攻撃に感動していた。

 絶対勝てないと分かってなお、数分いやたった数秒の時間を稼ぐ為に迷いなく死を選んだペルの国に命を捧げた真の戦士の生き方をただ純粋にカッコいいと思ったからただ実力だけでペルを評価した自分が恥ずかしかった。


「そんな……ゴジ准将、頭をお上げください!私など貴方の足元にも……。」


 ゴジはアラバスタ王国以外にも色んな国を見てきたが、基本的に海へ出ることもない平和な国の兵士達の練度の低さを多く見てきたので、ペルに対しても同様だと思って軽視していた。


「仮に俺が本当に敵だった場合、俺はペル殿の攻撃で外に弾き出されていたから、コブラ王が逃げる時間を稼げたはずだ。王を逃がそうとしたあの戦いは間違いなく貴方の勝ちだった。誇っていい”ハヤブサ”のペル。やはり貴方こそがアラバスタ王国最強の戦士だ。」


 ペルは雲の上の存在と感じたゴジに認められたことで感激に震えながら涙を流す。


「ゴジ准将……ありがとう……ござい……ます。」


 ゴジは正義のヒーローに死は許されないから、必ず敵を倒した上で自分も生き残る戦いをしなくてはならないと考えているので、国に命を捧げたペルのように死をも恐れぬ戦いは出来ないがその在り方は間違いなく高尚なものだと断言できる。


「だからこれでおあいこにしよう!俺ももう謝らねぇからペル殿も謝るな。ペル殿……いやペル!俺と友達になってくれないか?この国を救う為にはペルの力が絶対に必要なんだ!」


 ゴジは笑顔でペルに手を差し出すと、ペルは一瞬驚くもすぐに笑顔を浮かべてその手を取るので、ゴジはその手を引っ張りあげてペルを立たせる。


「はい。もちろんです。ゴジ准しょ……いえ友人に対して敬称は失礼ですよね。ゴジ。」


 事態は何も好転していない。

 しかし、コブラの目に写る自分の最も信を置くアラバスタ王国最強の戦士と海軍本部の若きエースが拳を交えあった末認め合い友となり、固く手を取り合う光景は彼に勇気を与える。


「二人で盛り上がっているところ悪いが、この国を救う戦いだ。当然私も協力させてくれるのだろな?」


 コブラも笑顔で歩み寄りながら、固く手を握り合うペルとゴジのそれに自分の手を重ねた。


「むしろコブラ王はいないと何も始まらねぇだろう。」

「ふははははっ。そういえば聞きそびれたのだが、この国を見捨てる事はゴジ准将の正義に反すると言っていたが……良ければ聞かせてくれないかね。君の背負う正義のことを……」

「ゴジが背負う正義。私も気になります。貴方の強さの原点はそこにあるような気が致します。」


 コブラはペルとの戦いで途中だった話の再開を促すと、ペルも食い付いたので、ゴジは胸を張り自信と共に自分の正義を語る。


「俺の背負う正義は“体現する正義”。海軍の掲げる正義の根底にあるのは弱きを助け、悪を断つこと。俺の名を聞けば敵は震えてあがり、助けを求める人が聞けば勇気を与えられるような正義を体現する最強の海兵になりたいんだ。」


 コブラとペルは笑顔で信念を語るゴジの言葉に打ち震えた。

 ゴジはコブラ、ペルと比較しても一番小柄であり、単身痩躯と呼んでも差し替えない体で常に最前線に立ち、数多くの海賊を拿捕してこの海を守ってきたこの男を彼らは知ってるのだ。


「愚問だったな。」

「ええ。国民達が歓喜するのも納得できます。」


 彼らだけではない。この海に住む全ての人がこの海を守る”正義のヒーロー”が誰なのか知っている。


「ならばだ。ゴジ准将、君は知らないだろうが、既にこの国でも正義を体現しているのだ。」

「ん?」


 ゴジはコブラの言葉にポカンとした顔を浮かべるとペルが言葉を引き継ぐ。


「ゴジ、貴方がこの国への来訪を宣言してから、今日までアラバスタ王国各地で起きていた内乱がただの1度も起きていないのですよ。」

「今日ここアルバーナにはこの国に住む人達のほとんどが集まっている。何故だか分かるかね?君は、既にこの海に住む全員の希望なのだ。この海の守護者たるヒーローを盛大に迎えねばならないと国が一つになった結果だよ。」


 数多の大海賊を討ち滅ぼしてきたゴジの来訪という事実は、雨を望みながら乾きに苦しむアラバスタ王国民にすら希望を生きる活力を与えた。

 彼がアラバスタ王国に来るのに内乱をしている暇はない。

 彼を歓迎する準備をしなくてはならない。

 そして、一目でいいから彼に会いたい。

 彼に会って日頃の感謝を伝えたいとアラバスタ王国の各都市から人がアルバーナに集まっているのだ。

 ゴジは話を聞いて、目を見開きながらアルバーナに到着して船から見た港に集まっていた人の多さに驚いたことを思い出す。

 そして、幼き頃に元帥室でセンゴク達に語った己の夢を振り返る。


『俺は最強の海兵になる。』

『もっと鍛えて俺自身が強くなる。強くなって俺の名を聞けば全ての海賊が畏怖し、海賊に怯える人が聞けば希望を与えれるようなそんな海兵になりたい。』

『正義……せいぎね……。そうか……俺は”正義のヒーロー”を目指すよ!二ヒヒヒっ。』


 ゴジは自分の来訪が内乱を鎮めた要因になれた事で、自分の夢に一歩近づけた気がして凄く嬉しかった。


「それは……すごく嬉しいな。なら俺は期待に応えてこの国を襲う災厄を鎮めて”正義のヒーロー”にならないとな。」


 そんなゴジを見たコブラ、ペルの二人は唐突に理解する。

 未だにバロックワークスの全容は掴めない。さらに宮殿にもまだ多くのスパイが潜んでいるはずであるが、ゴジがこの国に来た以上もう自分達の危機は去り、この国は必ず助かるのだとそう思ってしまった。


 ◇
 

 一方ゴジに命ぜられて“悪魔の子”ニコ・ロビンを追跡中のコアラはアルバーナの入り組んだ路地に差し掛かっていた。


「やはり付けられてるわね…」


 コアラはロビンにバレないように一定の距離をとって追跡しているが、ロビンは8歳で賞金首となって17年間世界政府から逃げ続けてきた女である。


「やはり、あの時、“麒麟児”さんに能力を使ったことを見られていたのね。」


 反乱軍で尾行の訓練を受けていたはずのコアラの追跡をも一瞬で見破り、彼女を釣るためにロビンは路地の角を曲がって死角へと入った。

 コアラは見失わぬようにロビンを追いかけて角を曲がると、目の前にロビンが両手を体の前でクロスさせた状態で立っており、慌てて臨戦態勢をとろうとする。


六輪咲き(セイスフルール)!」

「きゃっ……あでっ!?」


 迎撃の構えをとったコアラだが、突如自分の体から咲いた六本の腕で体を拘束がされて、なすがまま体を地面に叩き付けられた。


「あら……可愛らしい海兵さんね?貴女は確か“海拳”コアラ少尉。私を捕らえに来たのかしら?」


 ”海拳”とは魚人空手を使うコアラに与えられた二つ名で、もちろん名付け親はナヅ・ケタガーリ中将である。


「これは…まさかハナハナの実?」 

「あら?よく知ってるわね。その通り私は超人(パラミシア)系悪魔の実ハナハナの実の能力者、咲く場所を厭わない私の体は貴女を決して逃がさない。」


 コアラは地面に叩き付けられて拘束されたままロビンを見上げて睨み付ける。

 ロビンは超人(パラミシア)系悪魔の実 ハナハナの実の能力者であり、自分の好きな場所に自分の体の一部を咲かせることが出来る能力を持っており、この能力でコアラの体に咲かせた自分の腕を使って彼女を拘束したのだ。


「うふふっ…ごめんなさい。でも私は捕まるわけにはいかないから逃げさせてもらうわ。」

「待て!私から逃げられてもゴジ君が貴女を捕まえるわよ!」


 終始表情を変えずに余裕だったロビンだが、ゴジの名前を聞いた途端に少し表情を緩めた。


「それはとても怖いわね。ではさっさと逃げさせてもらうわ。じぁね…」

 
 ロビンは薄く笑いながら、コアラをハナハナの実の能力で拘束したまま、背中を見せて振り返ることもなく立ち去って行った。


「くそ!逃げられたわ!」


 コアラの体の拘束が解ける頃にはロビンの姿は跡形もなく、コアラは任務の失敗をゴジに報告する為に王宮を目指した。 
 

 
後書き
ペルがカッコよく書けたかどうか心配です。

リメイク前の作品をご存知の方の為にも大筋はそのままに新たな展開や話を盛り込んでいますので楽しんでいただけたら嬉しいです。 
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