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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第二章 青年期
  第四十九話

 結論から言うと外交問題には発展しなかった。

 皆で説明してコブラの誤解を説く事に成功すると、コブラ王がゴジに対して軽く頭を下げる。

 
「ゴジ准将、先程は取り乱して申し訳ない。」


 ゴジは一国の王が自分に頭を下げた事に驚きながらも、人として謝罪する時に頭を下げるのは当たり前と、頭を下げるコブラに対してさらに好感を持つ。


「頭の軽い王だな。こちらも悪ノリして申し訳ない。コブラ王、この国の今後に関わる重要な話があるから、人払いを頼めないか?」


 ゴジは自分も頭を下げて謝罪してから、玉座の間にいる人達全てに聞こえる声量でコブラに対して密談を提案すると、コブラも先程とはうって変わった真面目なゴジを見て、彼が突然この国へ来た理由を話すつもりだと即座に察する。


「ならば私の部屋に行こう。イガラムとビビはカリファ殿の相手を頼む。ペル、私はゴジ准将と部屋で話をするため、誰も部屋に近づけさせるな!」

「はっ!」

「准将、ではこちらへ。」


 ペルはコブラの命令に敬礼で応え、コブラはゴジを伴って自室に移動すると、ペルは任務遂行の為に二人の後に付いて行く。

 先程とはうって変わって真剣な顔をしながら玉座の間を後にする二人だが、彼らの頭に出来た大きなタンコブのお陰で彼らを見送る者達の目には凄くシュールな光景に映っていたという。


 ◇


 コブラの自室に移動したゴジは、早速彼にダンスパウダーの件について今判明してる事実とそれを踏まえたゴジの推理を全て伝えた。


「まさか…ダンスパウダーがこの国に流れていて、それに王下七武海のクロコダイル氏が関わってるかもしれないなどとにわかには信じられん。」


 ゴジの話を聞いたコブラは本当にビックリして目を見開き、頭を抱えていた。

 クロコダイルは今やアラバスタ王国では守護者とも呼ばれて絶大な人気を誇っており、コブラ自身も彼を信頼していたのだ。

 実は海軍も王下七武海で一番古株であるクロコダイルを信頼して、アラバスタ王国周辺には海軍を派遣していないほどである。


「まだ捜査中の段階だが、雨を巡って内乱が勃発しているのが何よりの証拠だよ。」

「確かにこの国では内乱が起き始めているが、ダンスパウダーにより雨が奪われ、それが意図的に起こされていたとは……そのバロックワークスの狙いとはなんだ?」

「バロックワークスの目標は“理想国家の設立”らしい。そうだな……例えばバロックワークスが国内各地で内乱を勃発させるように仕組み、王家の評判を下げているとしたら?仮にその内乱の最中に王家が滅びたとしたら?」


 ゴジはミキータからバロックワークスの目標を聞かされた時からこの結論に辿り着いていた。


「まさか……バロックワークスはこの国を乗っ取るつもりだと言うのか!?」

「声がデカい。これはあくまでも状況からの推察と今ある証言や証拠から推理した最悪のシナリオだが、そこにこの国で守護神と呼ばれて支持を高めているクロコダイルが関わってくると真実味が帯びてこないか?」
 
 
 コブラは驚愕を隠せない。

 もちろんバロックワークスとクロコダイルがアラバスタ王国を乗っ取ろうとしている事もだが、何よりも娘と変わらない歳でここまで読み解く推理力と洞察力を併せ持つ目の前にいるゴジのことである。

 コブラは冷静になるように自分に言いかせながらゴジを見据えて重い口を開く。


「仮にそれが全て真実だとして王下七武海は元海賊とはいえ今は世界政府側の人間だ。仮にネフェルタリ家が滅びてクロコダイルがこの国を治めようと君達海軍にはなんの問題もないはずだ。現にドレスローザ王国は王下七武海の一人ドンキホーテ・ドフラミンゴ氏が治めている。何故君はこの国へ来て私にこの話を聞かせてくれるのだ?」


 コブラは何故、海軍一忙しいはずのゴジがわざわざ手間を掛けてまでネフェルタリ家を救おうとしているのかが理解出来ない。

 ドレスローザ王国は国民達からの熱い要望により王下七武海”天夜叉”ドンキホーテ・ドフラミンゴが王座に付いたため、この国でもネフェルタリ家が滅び、クロコダイルが国民から熱い指示を受ければ王座に付けるのだ。

 そこに明確な略奪行為が認められなければ世界政府はそれを承諾するはずである。


「コブラ王、確かに貴方の言う通りだ。海軍、世界政府としてはアラバスタ王国を治める人間はどちらでもいいだろうな。でもそれは俺の正義が許さねぇ!」

「正義?」

「雨を奪ったことで乾きに苦しむ民がいる。内乱が起きれば平和に暮らしていた人が多く死ぬ。この国で雨を奪う悪を、内乱を引き起こそうとしている悪がいるんだぞ。そんな奴らの存在を知って野放しにすることは……」


 ゴジは腰掛けていた椅子から立ち上がり、壁に向かって足音を立てずに歩いていく。


「”指銃・壁抜(かべぬき)”!俺の正義が決して許さない。」

「ぐべっ!?」


 ゴジは右手の五指で指銃を放って、土で固められた壁を右手でぶち抜き、壁の向こうで壁に耳を当てながら、王の私室での会話に聞き耳を立てていた男の首を掴んだ。

 突き抜けたゴジの右腕の周りの壁にはヒビ一つなく、それだけでゴジの技の威力が伺い知れる。


「盗み聞き野郎……捕まえたぞ。オラァァァァァァ!!」
 

 ゴジは男の首を掴んだまま壁から右腕を引き抜くと、ドカンという大きな音と共に壁が崩れて男の姿が顕となる。

 その男はアラバスタ王国の近衛隊の鎧を着ている若い男であり、コブラはその男の顔を見て衝撃を受けている。


「チップ!?」 

「ご…ゴブラ…ご…お”う……だずげ…」


 チップとは去年アラバスタ王国の近衛隊に配属された男であるため、当然コブラとも顔馴染みであり、チップはゴジに首を握られたまま…コブラに手を伸ばして助けを求めているが、ゴジは男の首に指がめり込むほど強く握りながら、空いた手でその男の服を捲りあげた。


「ゴジ准将、彼はうちの近衛兵で……」


 コブラは部下を解放するようにゴジに懇願しようとするが、ゴジは怒気を強めてそれを制する。


「コブラ王、これを見ろ。コイツの脇腹に刻まれた二本の剣を背負う翼の生えた髑髏を!?これこぞが俺達の敵であるバロックワークスの旗印だ。」


 チップと呼ばれた近衛兵の脇腹付近に刻まれた髑髏の刺青を見たコブラは絶望しながら、チップの手を取ろうとした腕を降ろすと同時に、ゴジに首を掴まれていたチップは酸欠により意識を手放した。


「ぐが……が………。」


 ゴジは玉座の間で間者を炙り出す為にあえて大きな声でコブラに密談があると伝えて、見聞色の覇気で気配を探りながら隣り部屋で聞き耳を立てていた男を見つけたのだ。


「そんな……チップが敵の間者だと…。」


 コブラは城内にしかも王の警備を担当する近衛兵に敵のスパイがいた事実に絶望し、地面に両手と両膝を付いていると扉が開き、ペルの声が聞こえて慌てて振り返る。


「コブラ王!?今すぐその男から離れて下さい!!”飛剣”!」


 部屋の護衛をしていたペルは、騒ぎに気付いて部屋に入るとすぐにゴジに対して怒りを露わにして飛びかかっていた。


 ◇

 《Sideペル》


 私は王の命令で、部屋で密談中のゴジ准将とコブラ王の護衛をしている。

 王の居室での密談となると国家機密に直結する話題も多く、重要な話をしているに違いないので元々構造上防音となっており、部屋の前で待機する私にも中での会話は一切聞こえない。

 扉に耳でもあてれば聞こえるかもしれないが、このアラバスタ王国において王の居室での会話を盗み聞くような不敬な部下は誰一人としていない。


「それにしてもジェガートの皆様は女性でありながら一切隙のない体幹と足運びでした。我が国の兵士……いえまずはこの私が学ばねばなりませんね。」


 隼である私の視力は普通の人の6~8倍の視力を持つ為、空から護衛を兼ねてゴジ准将率いる海軍船がアラバスタ王国の領海に入ってからずっと監視していたから、港での出来事もの全てを見ていた。

 ゴジ准将だけでなく、カリファ大尉やコアラ少尉に至るまで瞬間移動の如き速度で移動する技を持っており、隼の力を持つこの私がスピードで負けるとは思ってもみなかった。


「ゴジ准将に至っては逆立ちしても勝てる気がしません。あの人が海賊ではなく海兵で本当によかった。」


 そしてゴジ准将から放たれていた威圧感の前には近づくことすら恐怖を感じてしまうほどだった。

 部屋の護衛をしながら考えに耽っていると、部屋の中から壁が崩れる音が聞こえた為、私はすぐに部屋に飛び込んだ。


「なんだ?これは……王!?」


 王の部屋に飛び込んだ私が見たものは崩落した壁と部下である近衛兵チップの首を鷲掴みにしたゴジ准将、そして何よりもゴジ准将に対して跪いているコブラ王の姿。

 ここで何が起きたのかは分からないが、一つ間違いなく言えることはこれは王の危機であるということ。

 私は無我夢中で腰に帯びた刀を抜き放つと同時に”人獣化”しながら王の敵となったゴジを討ち滅ぼす為に最速で斬りかかった。


「コブラ王!?今すぐその男から離れて下さい!!”飛剣”!」


 この男には私の攻撃が見えているようだ。


「うん。この状況なら勘違いしても仕方ないよな。音速を超えるスピードで接近してすれ違いざまに放つ神速の袈裟斬りだな?ならば”紙絵・拭紙(ぬぐいがみ)”!」


 私が動き出した直後、刀を振りかぶる前に攻撃を言い当てられたが、もう止めることは出来ない。

 この男は体を紙のようにヒラヒラとさせて斬撃を躱した後、あろうことか振りおされる刀を手入れする拭い紙のように右手で優しく刀の峰から包み込んだ。


「なっ……!?」


 驚くな!

 自分ではこの男には逆立ちしても勝てないことは分かっていた。なら、私の取るべきはこの男を王から引き離すことだけ!!


「鉤爪!」


 私は勢いを殺すことなく、すぐに剣を手放しながら”獣化”して完全な隼の姿になり、目の前の獲物を捕獲するために鋭く尖った自慢の鉤爪を前に出す。


「流石はこの国最強の戦士。あの必殺の斬撃すら囮か!王を逃がす時間を稼ぐために死をも覚悟で()を城の外に連れ出すのが真の目的!?」


 また攻撃を言い当てられたが関係はない。仮に反撃されて首を切り落とされようとも確実に外へ蹴り出してやる!

 もし鉤爪が躱されたのなら、嘴、翼そして全身でこの男にぶつかって外へ追い出し、確実にコブラ王から引き離す!!


 ”我、アラバスタの守護神ファルコン 王家の敵を討ち滅ぼすものなり!!” 
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