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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第二章 青年期
  第四十七話

 群衆達からの声援を一心に受けながら、馬車までの道を笑顔のまま悠然と歩くゴジは冷静に船からこちらを見ているコアラを一瞥した後、彼女に向けて電波を飛ばす。


 《コアラ、聞こえてるね?俺から見て4時の方向、500m先にいるこの場から立ち去ろうとする紺のテンガロンハットを被った女を尾行しろ。》


 ゴジは岸壁に咲かせた六本の腕により自分より先に少女を助けようとしたその女の能力を見ていた。

 そして彼女の宵闇のような黒さを持つ長い髪を靡かせた彫りの深い顔立ちに健康的に焼けた肌を惜しげも無く露出させた妖艶な美女の顔を思い出す。


 《その女は懸賞金7900万ベリーのニコ・ロビン。何らかの悪魔の実の能力者である可能性が高い。決して無理はするな。》


 船の甲板からゴジを見ていたコアラは直接頭に響いてくる彼の声を聞きながら、ゴジの指示した女性を見つけて一度頷くと”剃”でその場から掻き消えた。

 ゴジは音を電気信号に変えることで数百m先にいる仲間に話を伝える事ができ、これを電波による会話”電話”と読んでいる。

 ”電話”の欠点といえば、距離が限られることとゴジから電波しか送れないことであるが、相手に悟られることなく命令を伝えることの出来る最強の通信手段と言える。


「准将。人助けは大変結構ですが、少しはご自分の立場を弁えてください。」


 ゴジがコアラとの”電話”を終えた直後、カリファは船から”剃”を使ってゴジの背後まで移動し、勝手な行動をとったゴジに注意する。


「カリファ……見ろよ。この花すごく綺麗だろう?さっきもらったんだ。二ヒヒヒッ」


 しかし、カリファは嬉しそうに自分の胸を飾る青い花を自慢してくるゴジに二の句を告げなくなる。

 そんな彼女の姿を見た群衆から声があがる。


「「「キャアアアァァァ!“秘書”カリファ大尉よ!」」」
 

 ゴジの仕事を完璧にサポートする隊長伝令”秘書”カリファも月刊「海軍」の人気コーナー"女海兵特集”で現在人気急上昇中の海兵である。
 

「カリファも人気者だな?」


 カリファはゴジの軽口を聞き流しながら、彼のみ聞き取れるくらいの声量でコアラに与えた任務について確認をとる。


「准将ほどではないかと……それよりもコアラに”電話”で指示を出しましたね?また誰か釣れましたか?」

「ニコ・ロビン、とびっきりの美女だよ。」

「まさか……”悪魔の子”ニコ・ロビン!?」

「へぇ。俺は婆さんに言われて手配書を覚えてたけど、カリファはよく彼女のこと知っていたね?」


 ゴジの名前と顔は“若月狩り”カタリーナ・デボンを討って以来、女性ファンが急増して部隊に入ってゴジに接触する者だけでなく、ファンを装ってゴジに接触しようとする女海賊は多くなった。

 その為、ゴジは懸賞金の有無に関わらず、海軍や世界政府が把握している女海賊や悪党全ての顔と名前は覚えさせられているので、このように敢えて人前に出る事で接触しようとする女海賊はこのように利用している。


「え……えぇ…。僅か8歳で7900万ベリーの賞金首ですからね。それは目にも止まります。」

「そんなもんか?」


 カリファは一瞬口を噤むが、平静を装って話を続ける。


「ところで……ニコ・ロビンが手配を掛けられて17年。今は25歳となっておりますが、よく一目で気づきましたね。」

「分からないはずないだろう?8歳であんなに可愛いんだ。大きくなった姿くらいすぐに想像できるさ。」


 ゴジは事も無げに自信満々に言い放った。


「なんでしょうか?めちゃくちゃな理屈なのに准将が言うと納得してしまいます。」


 平静を装うカリファだが内心は激しく動揺していた。彼女がニコ・ロビンを知らないわけがない。闇の正義を掲げるCP-9(シーピーナイン)は17年間ずっとニコ・ロビンを追い続けていたのだから……。


「あぁ。少し気になることもある。あとで婆さんに確認してみないとな。」

 ───17年も海軍から逃げおうせている用心深いニコ・ロビンは俺がいる前で能力を使おうとした?

 ───それにカリファが激しく動揺している。ニコ・ロビンとは一体何者なんだ?


 ニコ・ロビンがこの場に来ている以上、彼女の当初の目的はゴジの暗殺か監視のいずれかと推察出来るが、自分を殺すためではなく、たかが少女を救う為に危険を犯して悪魔の実の能力を使おうとしたのか?

 そして何よりも常に冷静なカリファがニコ・ロビンの名前に動揺していることである。

 ゴジの洗練された見聞色の覇気の前では平静を装っていてもカリファが動揺しているのは手に取るように分かるのだ。


「分かりました。ニコ・ロビンの情報をこちらに送るようにおつるさんに伝えておきます。」
 
「あぁ頼むよ。それにしても中々豪華な馬車?だな?」


 ゴジ達はファンサービスをしながらカリファと小言でやり取りをしていたが、とうとう彼等を迎えに来ていたアラバスタ王国の紋章の刻まれた立派な馬車の元へ辿り着いたものの、馬車を引いているのは馬ではなかった。


「ええ。馬車というよりは、鳥車と呼ぶべきでしょうか?」


 巨大なダチョウくらいの大きさのあり、それぞれが個性的な帽子やヘルメットを被った7匹のカルガモだったのだ。


 ◇


 アラバスタ王国では“麒麟児”ゴジ率いるジェガート第二部隊の来訪に備えて最大限の警備体制を敷いていた。

 ゴジの乗る海軍船がサンドラ河を北上し、王都アルバーナから視認出来るようになる頃には既に警備体制は崩壊していた。


「チャカ様!想定を超える人数が集まっており、港は寿司詰め状態です。」

「むっ!?」

「チャカ様大変です。西区、東区のメイン通りは封鎖しましたが、路地から今なお港に人が流入しております。」

「なんだとっ!?」


 アラバスタ王国護衛隊副官であるチャカと呼ばれた男は黒髪のおカッパ頭の身長2mを超えるがっちりした体格を持ち、今回の警備の統括責任者であるが、次々と部下から送られてくるトラブルに対処しきれないでいた。


「何故だ!?本日の警備はビビ様の生誕のおりに行われた誕生祭に匹敵する規模なのだぞ!?」

「チャカ様、南区からも人が……!?」

「北区のバリケード突破されました!?」

「“麒麟児”!?貴殿の人気は王家をも凌ぐというのか?」


 国民全ての娘と呼ばれ、国民から愛される現在14歳になるアラバスタ王国王女ネフェルタリ・ビビの生誕祭等に匹敵する警備規模であったが、全く手が足りていなかった。

 次々に人々が港に集い、港はもはやいつ将棋倒しのような大事故が起きても不思議ではないほどであったが、港から街が割れんばかりの大歓声が響き渡る。


「“麒麟児”が姿を見せたか?何事もなければよいが……。」

「チャカ様!」


 息を切らせながら駆け込んでくる部下を見て嫌な予感が当たったかと思うチャカは報告を急かす。


「今度はなんだっ!?事故か……それとも暴動か?」

「いえ。ゴジ准将が民に静まるように声を掛けた瞬間、広場は不自然な程に平穏を取り戻してゴジ准将を見守っております。」

「何ぃ!?」

 チャカが“人獣化”して耳を澄ますも、先程まで聞こえていた喧騒すら聞こえない静寂の後、ゴジを称える民衆の声は多く聞こえるものの喧騒の音は全く聞こえない状況であった。


「一体何が起きているというのだ?」


 チャカは動物(ゾオン)系悪魔の実、イヌイヌの実モデルジャッカルを食べた悪魔の実の能力者である。

 数万人の人間が集まっているにも関わらず、人の6倍の聴覚を持つと言われる彼の犬の耳でも喧騒がほとんど聞こえないという異常性は彼の理解を遥かに超えていた。


 ◇


 ゴジを城へ送るために迎えに来ていたアラバスタ王家所有の馬車の行者は海軍船とは違う岸壁の方角の人波が突如割れて、その先にいる待ち人の姿に驚きを隠せない。

 その行者は銀色の長髪を中世の音楽家のようにカールさせた髪型の2mを超える巨体に鍛え上げられた筋肉の鎧を纏う男である。


「突如海軍船から馬車までに鉄の橋が掛かった直後、半ば暴徒と化していた民衆の騒ぎが収まったかと思えば、船とは違う方向で割れた人波の先にゴジ准将がいる?これはどういう状況なのだ?」


 しかし、人波が割れて出来た道を美女(カリファ)を従えて、朝日に照らされた純白のコートを靡かせながら悠然とこちらに向けて歩いてくるゴジを見て彼の中で疑問は解消される。


「あぁ。そうか……これが“麒麟児”。本来麒麟とは争いを好まぬ神獣。彼の前では何人も争う事は許されない。まさにその名に恥じぬ存在感!!」

 ───そして、麒麟は天下人の元へ姿を現し、争いを鎮めて天下泰平の世をもたらすと云われる。


 行者は天の恵みである雨を求めて内乱の勃発するこのアラバスタ王国に“麒麟児”が現れた事に運命を感じざるを得なかった。

 その為、ゴジがカリファを伴って自分の前に到着した直後に、行者は神に頭を垂れるように深々と頭を下げて名乗る。


「ようこそアラバスタおうごっ……マーマーマ〜♪王国へ。ゴジ准将、私は護衛隊隊長イガラムと申します。城までは私とアラバスタ王国最速の超カルガモ部隊がお送りします。」


 イガラムは神に願いを乞う信徒の如く柔和な笑みを浮かべてゴジ達を歓迎すると、ゴジも笑顔で挨拶を返す。

 彼は人と話す際は痰がよく絡み、今回のように痰が一度絡むと発声練習をして話しを再開する癖がある。


「准将のゴジだ。こちらは大尉のカリファ。イガラムさん、よろしく頼むよ。急用で一人減って二人でアラバスタ国王と会う事になったが大丈夫だろうか?」


 当初ではゴジ、カリファ、コアラの三人で面会する予定だったが、コアラにはニコ・ロビンの尾行を与えたからである。


「分かりまじっ……マーマーマーマ〜♪分かりました。准将、ところでその花は何処で手入れたのですか?」


 イガラムはゴジの胸を彩る蒼色の花を見てさらに目を丸くする。


「さっきもらったんだよ。綺麗だろう?」


 イガラムはその花を知っている。

 贈った本人である少女すら名も知らぬその花の名は砂漠の薔薇(ブルーローズ)。雨の少ないこの国において朝日に照らされた数時間の間のみ稀に花を咲かせるといわれる希少な花であり、このアラバスタ王国の国花である。

 しかし、希少な花ゆえ実物を見たことのある国民はほとんどいないまさに幻の花と呼ばれ、その花言葉は二つ“奇跡”そして“神の祝福”。


「ええ。とても綺麗な花ですね。准将にとてもよくお似合いかと……さぁ、どうぞ馬車へお乗り下さい。」


 神に祝福されし聖なる獣の名を冠する“麒麟児”ゴジにこそ相応しい花だとイガラムは笑顔になる。

 こうしてゴジとカリファはアラバスタ王家の迎えの馬車に乗り込んで王宮に向かった。


 ◇


 一方その頃、海軍船では……。


「ちょっと何なのよ!?ゴジ君だけじゃなくカリファにコアラまで私がせっかく作った梯子を誰一人使ってないじゃない。しかもゴジ君と一緒に行くはずのコアラは何処に行ったのよ ヒナ困惑!?」


 馬車へ乗り込むゴジとカリファを見ていたヒナは覚醒した悪魔の実の能力で作った鋼鉄の梯子が使われる事なかったことで、綺麗な髪を振り乱しながら荒れていた。


「やっぱりいつもの完璧なヒナ中佐もいいけど、こういう姿を見ると親近感湧くわ……。」

「キャハハハハ!ヒナ中佐ってホント苦労人ねぇ。」

「ヒナ中佐は私達が支えて上げないとね!」


 この船一番の苦労人ヒナの姿を見て癒される海兵達のヒナへの好感度がまた上がり、結束が強まっていた。 
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