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イベリス

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第二十話 ゴールデンウィークの予定その十一

「法律が何故存在するかもです」
「わかっていないんですね」
「法律は人と社会を守るために存在しています」
 速水は咲に確かな声で述べた。
「弱い人を守る為に」
「法律がないととんでもないことになりますね」
「法律が存在しないと無政府状態になります」
「それってつまり」
 咲は無政府状態と聞いて言った。
「北斗の拳みたいな」
「ああした社会です」
 その通りという返事だった。
「まさに」
「やっぱりそうですか」
「ああした風になります」
「ならず者のやりたい放題ですね」96
「そうなります」
「ああした世界になるって」
 暴力を持つ者だけがのさばる社会になる、このことを考えてそうしてだった。咲は速水にこう言った。
「誰でもです」
「わかりますね」
「そうしたことすらわからないのでは」
 それこそというのだ。
「最早です」
「人間としてですね」
「私は存在価値すらです」
 人としてのそれすらというのだ。
「果たしてあるのか」
「そうお考えですか」
「はい」
 まさにというのだ。
「幾ら何でも」
「酷過ぎるからですね」
「人は誰かへの思いやり、最低限の思慮分別を持たないといけません」
 こう言うのだった。
「そうでないとです」
「存在価値がない位の人になりますね」
「実際に私もです」
 速水は右目をほんの少し顰めさせて述べた。
「そうした人とはお付き合い出来ないです」
「人が殺されてもそう言う人は」
「殺された人や遺族の人達の傷みや苦しみ、悲しみ、絶望を想う」
「例えテロをした人が権力に反対していても」
「権力なぞ幾らでも変わります」
「幾らでもですか」
「徳川幕府の後で明治政府が産まれました」
 歴史から述べた。
「そうなりましたし」
「権力は、ですか」
「国家権力もそうです、そしてそうした人は権力イコール国家権力ですが」
 それがというのだ。
「何処にでも権力は存在します」
「あっ、そうですね」
 咲は速水の今の言葉にはっとなって頷いた。
「会社でも部活でも」
「人間の社会ならですね」
「何処でも」
「一つのコミュニティがあれば」
「そこにですか」
「必ず権力が存在します」
「偉い人がいますね」
 速水に応えた。
「そうですね」
「その通りです、そしていつも変わります」
「どのコミュニティの権力も」
「部活も顧問の先生が交代したり先輩が卒業すれば」
「それで変わりますね」
「そうなりますし」
 それでとだ、速水は話した。
「権力に反対することがいいか」
「何でもトップは嫌いですか」
「ですから社会が成り立たず」
 そうした輩の意見が通ればというのだ。 
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