| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第二章 青年期
  第四十六話

 ゴジ達はアラバスタ王国のあるサンディ(アイランド)に入りサンドラ河を北上して王都アルバーナの港に到着すると、そこにへ所狭しと居並ぶ見渡す限りの数万人もの人で覆い尽くされていた。

 アルバーナの総人口5万人に匹敵しようかという数である。


「すごい人だねぇ。国中の人がいるんじゃない?」

「ホントに凄い人だな。」


 コアラとゴジが船の甲板から港に集まってきた人の多さに呆気に取られているとカリファが声掛けた。


「当然です。准将は若干12歳で“若月狩(みかづきが)り”カタリーナ・デボンを拿捕して以来、常に最前線で絶対的正義を体現してきた海軍本部の誇る若きエース。この海に生きる全ての人の希望なのです。」


 海軍の若きエースとしてメディア露出も多く、端正な顔立ちのゴジの女性人気は高く、月刊『海軍』にはゴジのページがあるほどである。

 さらに所属するジェガート自体の人気も高い為、ゴジがアラバスタ王国国王に面会を申し出たことは世界的なニュースになり、彼とジェガートを一目見る為にアラバスタ王国中の人がここにいるのではないかというくらい多くの人集りとなっている。


「うん。そうだね。私達はそんなゴジ君の頼れる背中をここにいる誰よりも近くで見てきたんだから。」


 カリファとコアラの二人に褒められたゴジは少し照れて頬をかきながらも決意を新たにする。


「俺だけの力じゃないさ。正義の体現にはジェガートの、海軍皆の力が不可欠だ。これからも俺に力を貸してくれ。」

「はっ!」

「うん。」

「あれがアラバスタ王家の迎えの馬車だね。」


 ゴジが馬車を指差すと、下船予定の彼等三人に向けてヒナが声掛ける。


「あなた達退きなさい。私があそこまで橋をかけてあげるわ!」


 ヒナの指示に従い、コアラやカリファだけでなく他の海兵達もヒナの後ろに下がると、彼女は甲板の縁に手を掛ける。


鉄橋(ブリッジ)!」


 ヒナの手を掛けた甲板の縁から黒い鋼鉄の檻が伸びていくと港の桟橋でゴジ達を待つアラバスタ王家の馬車の手前に掛けて黒い鋼鉄の橋が掛かった。

 超人(パラミシア)系悪魔の実の能力者は自分の体から能力を出したり、自分の体の形状を変えたりするが、能力を”覚醒”させることで能力者以外にも影響を与えることが出来る。

 ヒナは日々の訓練や任務の末、能力者としてこの新たなステージに手を掛けはじめているのだ。


「おい!あれって……」

「凄い。梯子……いや檻の橋が生えてきた!?”黒檻”のヒナ中佐だ。」

「「「キャアアアァァァ!”黒檻”のヒナよおおぉぉ!!」」」


 ヒナの姿と能力を目の当たりにした群衆から歓声があがり、ヒナはそれに応えて表情を崩さずクールに軽く手を上げる。

 しかし、ヒナは知ってる。彼らが本当に待ってるのは自分ではないと……。


「ほら、前座は終わりよ。ゴジ君、皆が待ちわびてるわよ。さっさと顔を出してあげなさい。」

「准将ならいませんよ。」

「はっ……?」


 カリファの淡々とした声にびっくりしたヒナが後ろを振り返るとカリファとコアラに挟まれるように立っていたはずのゴジの姿が忽然と消えていた。


「えっ!?ゴジ君は一体何処に行ったのよ?」

「さぁ、また人助けじゃないでしょうか。」


 慌てるヒナと違い、カリファは”剃”を使って目の前からいなくなったゴジの心配もせず、達観していた。


「あ〜ゴジ君がいた!?なんかちっちゃい女の子から花もらってるよ!?」


 コアラが小さな女の子から花を貰っているゴジの姿を見つけて指をさすと、ほぼ同時にゴジを見つけた群衆達から悲鳴にも似た大歓声が響き渡るところだった。


 ◇


 ゴジをアラバスタ王国来訪に際して集まった群衆の中に一人の少女がいる。


「ねぇママ。じゅんしょうさま、おはなよろこんでくれるかな?」

「きっと喜んでくれるわよ。」


 10歳にも満たないその少女は道端に咲いていた一輪の花を大事そうに手に持っていた。

 砂漠の国であるアラバスタ王国にとって野生の花は貴重であるが、彼女の母は娘がゴジに花を渡す機会はないとは思いつつも娘に急かされてゴジを見に来ていたのだ。

 しばらくすると1隻の海軍船が港に着港したことでゴジが来たことを知る。


「あのおふねにじゅんしょうさまがのってるの?」

「そうよ。ゴジ准将が来たみたいよ。」

「ママぁ。でも、じゅんしょうさまぜんぜんみえないよぉ。」

「そうねぇ。ママにもよく見えないわ。」


 親子には着港してきた海軍船は見えども人混みが酷すぎてゴジの姿はおろか海兵の姿すら見えない。


「きゃっ!?」


 どうにかゴジの姿を見ようとしている彼女達に不運が起きる。

 彼女らと同じくどうにかゴジを見ようとする人混みに押されて少女の体が海へ投げ出されたのだ。


「いやあああっ!?」

「ま……ママぁ!?」


 母親が海へ投げ出された娘に向けて必死で手を伸ばすが届かない。


「危ないっ!六輪咲き(セイスフルール)……えっ!?」


 そんな少女の危機に気付いたのは、たまたまその様子を遠巻きに眺めていた一人の褐色美女、彼女は持ち前の悪魔の実の能力で少女を助けようとするが、自分より先に少女を助けたある男の姿を見て能力の発動を止めた。


「“水馬(すいば)”。もう大丈夫だよ。」


 ”水馬”とは宙を駆ける六式”月歩”の応用技で、宙ではなく水面を駆ける技である。


「あなたは……」


 その女性と母親の目に飛び込んできたのは海へ投げ出された少女を海へ落ちる前に横抱きに抱きかかえて助けて海の上に立つ海兵(ヒーロー)


「じゅんしょう…さま?」


 少女が驚いて目を開けるとそこには自分に抱きかかえた憧れの人の姿があった。

 見聞色の覇気により、この少女の危機を察したゴジは“剃”を使って船から文字通り飛んできて海へ落ちる前に抱きかかえ、そのまま水上に静かに立っていたのだ。


「そうだよ。俺がゴジだ。怪我はないかい?」

「うん!」


 ゴジは少女を抱きかかえたまま水面を蹴ると、彼女の母親の目の前へ音もなく着地して少女を優しく降ろす。


「ゴジ准将、娘を助けて頂いて本当にありがとうございます。」

「いえいえ。間に合ってよかったよ。」


 母親は無事な娘を抱き締めながら、ゴジに何度も頭を下げる。


『おい!あれって……』

『凄い。梯子……いや檻の橋が生えてきた!?”黒檻”のヒナ中佐だ。』

『『『キャアアアァァァ!”黒檻”のヒナよおおぉぉ!!』』』


 群衆達は全員海軍船から突如伸びてくる鋼鉄の梯子に気を取られて上を見ているので、ゴジがここいる事に気づいているのは助けた少女と唖然となっている母親の二人しかいない。


「君も俺に会いに来てくれたのかい?」


 ゴジは屈んで少女と目線を合わせて語り掛けた。


「じゅんしょうさま、たすけてくれてありがとう。これをあげたかったの。」


 少女が花を差し出すとゴジは笑顔を浮かべて両手でそれを受け取る。


「綺麗な花だ。本当に俺にくれるのかい?ありがとう。大切にするよ。」

「うん!」


 ゴジはそう言って受け取った花の茎を花が見えるように自身の胸ポケット入れると、群衆の中でとうとうゴジに気付く者が現れる。


「えっ……あれ?ゴジ様がここいるわよ!?」

「ホントにゴジ准将だ。」

「なんでこんなところに!?」
 

 その声が引き金となって騒然となった群衆が驚きのあまり一斉にゴジと少女、その母親を中心に円形の空間が出来た。

 そして直後に割れんばかりの大歓声が巻き起こる。


「「「キャアアアアアアアァァァ!」」」

「「「ウオオオオオオオォォォォ!」」」


 自分達の待ちかねたゴジが今目の前に現れたのだから、その事実に群衆達の様はまさに狂喜乱舞。その様子は騒ぎの中心に立たされた少女と母親は肩を抱き合いながら怯えるほどだ。

 統制の取れていない群衆は凶器となり得て、いつ事故が起きてもおかしくない状況である。
 
 群衆は一斉に動き出してゴジを取り囲もうと集まってくるが、そんな彼らに対してゴジが凛とした声で告げる。


「彼女達が怯えているだろう。皆、少し落ち着こうか?」


 ゴジの凛とした声を聞いた群衆達は先程の騒ぎが嘘のように全員がピタリと止まる。


「俺はしばらくこの国にいるから皆と会う機会はまた来るよ。でも、まずはアラバスタ国王との面会の予定があるだ。」


 ゴジ()は一呼吸おいてから待機している馬車を指差しながら命じる。


「さぁ、道を開けてくれるかな?」


 群衆達は整然と動き出してモーゼの十戒の如くゴジを迎えに来ていたアラバスタ王家の馬車までの道を作った。
 
 覇王色の覇気。

 コントロールされた覇王色の覇気により、群衆達は気を失う事もなく、覇王の指示に無意識的に従うことで統率の取れた軍隊の如く体が動き出したのだ。


「じゅんしょうさま、すごい。まほうつかいみたい!!」

「こんなことって……本当に”麒麟”なの!?」


 ゴジが一声掛けるだけで騒いでいた群衆が口を閉じて、道を作る。

 その光景を目の当たりにした少女は尊敬の眼差しをゴジに向け喜びのあまり飛び跳ねるほどであるが、母親はまさに伝説の神獣”麒麟”の落し子を見たような畏敬の念を抱く。


「ニシシッ!すげぇだろ?お母さんの言うことちゃんと聞くんだよ。またね。」

「ばいばい!!」


 ゴジは笑顔で自分を見上げてくる少女の頭を撫でた後、別れを告げて海軍コートを靡かせながら開かれた道を悠然と歩いていく。


「ゴジ准将おおぉぉ!」

「ダメ……私の体、ゴジ様が眩しすぎて近づく事が出来ないんだわ。」

「雷に打たれたような衝撃ってこう言うことなのか……。」

「准将ぉぉ頑張ってください!」


 ゴジが歩き出したと同時に群衆達は彼の姿を見て口々に声を掛けるが、未だに体の自由は効かず、ゴジに近づきたくとも近づけない。

 ゴジは群衆達の統率を保つ為に一定量の覇王色の覇気を流しながらゆっくり歩いているだけだが、何も知らない群衆達はゴジの放つオーラや威厳がそうさせるのだと各々が自分の都合良く解釈し、この噂が噂を呼びアラバスタ王国における彼の神性や人気をさらに高める要因となっていくことなる。 
 

 
後書き
強くなったゴジ君の力のほんの一端です。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧