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僕は 彼女の彼氏だったはずなんだ 完結

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2-⑼

 光瑠の情報のもう一つの方。京阪酒販に行ってみた。やはり、なかなか話を聞いてくれる人が居なかったが、最後に応対してくれた人が

「僕も、松永さんには、お世話になってね あの人は、義理がたい人だ 今でも、元気だよ 中道社長もね 君の気持はわかるが、勝手に教える訳にもいかない 直接はね 3時間位、時間あるかね」と、聞かれた。

「えぇ 大丈夫ですけど・・」と、応えると、その人はどこかに電話していた。

「今、配達の車が来るから、それに乗っていけ 君は、アルバイトだ ただし、今日は、得意先とは話はするなよ」と、ジャンパーを渡してくれた。車に乗り込むと

「あんたは、大学生か?」

「ええ 今、3回生です」

「そうか 俺は、高校出て直ぐに、今の会社に入ってな もう20年近くなるんだ。入った頃、中道社長はまだ、小さなレストランやっててな、店に行くと、降ろすのを手伝ってくれたり、たまに、なんか弁当をくれたり、可愛がってくれたんだ。だけど、あんなことになってしまってな、悲しいよ」

「そうなんですか 面倒見の良い人なんですね」

「でも、今、松永さんとこで、調理場を手伝えるまでになったみたいで、良かったと思っているんだ」

「着いたよ」と見ると、「ビストロ ナカミチ」の看板が・・。こじんまりしたレストランだった。店の横の路地を通って裏口まで運んだ。中から男の人が出てきて

「おお 暑いのにご苦労さん ちょっと、待ってろ」と、言って、コップにジュースを入れて持ってきてくれた。

「今日は、助手付きか」と聞いていた。

「ええ まぁ 中道さん 身体変わりないですか」

「おお 元気だよ まだまだ動けるさ」と、元気いっぱいだった。この人が美鈴のお父さんなんだと・・初めて会った。

 怖くて、店の中をのぞけなかった。美鈴がいるかも知れないのに・・。でも、おそらく休憩中なんだろう、客室のほうは暗くて、人が居る様子は無かった。

  何にも、話すなと言われていたから、僕は、黙ったままだった。ジュースのお礼は言ったけど。外のプレートを見ると、やはり、休憩中と書いてあった。なぜか、幾分、ほっとした気持ちもあった。

「あんな調子でな 前の店のことなんて、記憶にないんだ。でも、うすうす俺のことは覚えてくれていてな それが、嬉しくってな 松永さんも義理堅い人で、店の名前を「ナカミチ」にしちゃって だから、今の店をオープンするってなった時、うちの会社も出来る限りの協力をしたと思うぜ」

 その後、2件ほど配達して、戻った。事務所に戻って、さっきの人にお礼を言うと

「バイト代は出せないよ 君も、少しでも、あの店を助けることが出来るように、頑張ってくれ」

 僕は、丁寧にお礼を言って、そこを出た。改めて、「ナカミチ」に行くつもりだった。美鈴が僕に渡した子猫の人形に向かって「会ったら 今度はどこにも行くなよ」とつぶやいた。






 
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