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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第一章 少年期
  第四十一話

 ゴジは真新しい海軍コートを触ったり広げたりしながら喜びに浸っていると突然思い出したように声を張り上げる。


「えへへ。そだ!俺、爺さんにコート見せてくるよ!」

「あぁ。そのコートを無事に渡した今。ゴジへの要件はもう終わったからな。早く見せてくるといい。」


 ゴジは早くゼファーに海軍コートを着た姿を見せる為にセンゴクの了承を貰った直後に皆に手を振りながら元帥室を飛び出した。


「じゃ、またねぇ!」


 ゴジの退出を見守った六人はこれから話し合わなくてはならない重要な議題がある事に察しが付いており、誰も席を立とうとはしなかった。


「おつるちゃん、ゴジは行ったか?」


 センゴクは海軍本部一の見聞色の覇気の使い手であるつるにゴジの様子を聞いた。

 つるの見聞色の覇気をもってすれば海軍本部基地内の全隊員の行動把握は出来る。彼女が“大参謀”と呼ばれるのは当然頭のキレもさることながら、見聞色の覇気により戦場で敵味方の位置を完全に把握して的確な指示を出せることが最大の理由である。


「あぁ。ゴジなら訓練場に一直線で向かってるよ。」


 ゴジはサカズキとボルサリーノに自分の正義を否定された時、激情に駆られた際にゴジに発現した武装色の覇気、見聞色の覇気とも違うもう1つの覇気。


「ぶわっはっはっ!まさか覇王色の覇気とは恐れ入ったわい!」

「全くほんとにび〜っくりしたよぉ〜。」


 覇王色の覇気とは相手を威圧する力で数百万人に1人しか素質を持たないが、世界で名を上げる大物はおおよそこの資質を備えている。

 この覇気を持つ者は“王の資質”を持つとされ、周囲の戦うまでもない程の圧倒的な力量差がある者を威圧感や殺気によって一瞬で意識を刈り取り、気絶させることができるのだが、この場にいたのが並の海兵や将校であればゴジの覇王色の覇気に当てられて気を失っていたはずだ。


「センゴクさん、どうするんじゃ?ゴジに覇王色の覇気のことを伝えるんかいのぉ?」


 現在海軍においてこの覇王色の覇気の使い手はたった一人、その男こそ元帥センゴクである。
 

「あぁ。私が責任を持って覇王色の覇気の扱い方を教えよう。一度覚醒した以上は扱い方を知らん方が危ない。」


 サカズキの問いにセンゴクは頷いて自身の経験論に基づいてはっきりと答えると、唯一の覇王色の覇気の使い手であるセンゴクの意見に異を唱えれる者はいない。

 覇王色の覇気は扱い方を知らないままであれば、味方をも巻き込んでしまう技である危険性はセンゴクが一番よく知っているのだ。
 

「でもさぁ〜センゴクさん以外に覇王色の覇気の持ち主が現れた事を喜ぶべきだよねぇ〜」

「ボルサリーノの言う通り、センゴクさん以外に覇王色の覇気の持ち主が海軍に現れたことを祝福するべきじゃのぉ。あれ(ゴジ)はわしが預かろう。」

「サカズキぃ〜抜け駆けはよくないよぉ〜?」
 

 四皇を始めとする大海賊は覇王色の覇気を持つ者が多く、彼らへの切り札になり得る覇王色の覇気の持つゴジにご執心である。

 そして、あわよくば子供であるゴジならば自分の正義に染められると思っているのだ。


「止めときなサカズキ、ボルサリーノ!アンタらのとこじゃ、ゴジは成長しないよ。」

「しかし、おつるさんの部隊は女だけじゃけの、そんな温い場所でゴジを育てるわけには…」

「あ〜、そゆことねぇ〜。子供って得だよねぇ」
 

 つるの言葉にサカズキは諦めきれずに食い下がるが、ボルサリーノはゴジの海軍での生活を思い返して納得し、同じ男としては彼のあり方は少し羨ましくも思う。
 

「サカズキ、諦めろ。お前はゴジのことをよく知らんのだ。」

「あ〜サカズキ。俺もゴジはおつるさんの所にいる方が伸びると思うよ…」

「ゴジはあの歳でもう頭に“ド”が付く程の助平じゃからな…ぶわっはっはっ!」
 

 ゴジを知るセンゴク、クザン、ガープ達もサカズキの意見を否定し、つるの意見を肯定する。

 ボルサリーノもゴジが女風呂に入っていることやステューシーという美女に鍛えられていることは知っているようで、知らないのはそういう方面に全く興味のないサカズキだけであった。


「助平じゃと…?」

「サカズキ、お前はゴジの性格を知らなかったか?」

「ゼファー先生のとこに厄介になってる子だとは聞いちょるが…」


 センゴクはサカズキにゴジのことについて確認するが、サカズキはあまり若い海兵達とも交流がなく、ゴジについてはゼファーの秘蔵っ子と呼ばれ、海軍将校顔負けの実力を持つ最年少で海兵となった程度しか知らないため、仕事一筋の厳格な男である彼にとって実力のあるゴジに対して元々好印象を抱いていた。
 

「あの子はここへ来てからよく女風呂に入ってるのを知らなかったのかい?それにあの子の元々の夢は女性海兵と仕事をすることだよ…。」


 つるの言葉にサカズキは絶句するしない。


「なっ…覇王色の覇気の持ち主がただのエロガキじゃと…!?それになんで誰も女湯に入るのを止めんのじゃ?」
 
「「「はっ……!?」」」


 サカズキの正論にセンゴク、つる、ガープはゴジは女湯に入って当然という認識が間違いであることに気付かされた。

 
「おどれら……あの子に毒されすぎじゃろ……?いや、王の資質がなせる技か……。」


 覇王色の覇気を持つ海軍の希望となると思っていたゴジがエロガキだという事実に、サカズキは驚きを通り越して呆れて、さらにそのゴジのペースに巻き込まれているセンゴク達にも呆れていた。


「まぁまぁ……サカズキ。考えても見なさいよ。わずか12歳の子供が武装色の覇気、見聞色の覇気、六式を覚えてたのほあの子自身のの才能と努力の成果に他ならない。その努力が女の子と仕事をしたいだけだとしても結果的に海軍の力になっているからいいじゃない。」


 ゴジとも交流があり、客観的に会議を観察していたクザンがサカズキの好きな正論を並べてゴジを擁護する。


「ちっ……!それはそうじゃが……センゴクさん、もしゴジがダメになるようなら、わしが預かりますけぇの!」

「いいだろう。その時は私から指示を出そう。」
 

 サカズキはクザンの言葉通り、海軍へ来てからのゴジの成長を考慮すると、今のままジェガートにいた方がいいかもしれないと思って今回は引き下がった。


「話が纏まったようでよかったね。もうそろそろゼファーがここにくるよ。ゴジに何を聞いたのか……すごく上機嫌だけど怒ってるのようだね。」


 つるは見聞色の覇気でこの部屋に向かってくるゼファーの感情すら読み取り報告すると、ゼファーが不機嫌な理由にピンと来たサカズキとボルサリーノは冷や汗を流し始める。


「おい…そういや…ゴジはゼファー先生の所に行きよらんかったか?」

「サカズキ…マズイんじゃないかねぇ〜ゼファー先生がこの部屋での事を知ったら……わっし達は…」

 
 サカズキとボルサリーノは先程、ゼファーの掲げていた”体現する正義”に対して色々中傷したので嫌な予感しかない。突如元帥室の扉が勢いよく開いた。
 

「サカズキいいぃぃ!ボルサリーノおおぉぉ!お前達には聞きたいことがある。さぁ…訓練所に行こうか?」

「「ゼ…ゼファー…先生」」

 
 サカズキとボルサリーノは自分を睨むゼファーを見て嫌な予感は的中したことを悟った。ゼファーは元帥室での面接試験の内容をゴジに聞いて、速攻で元帥室に乗り込んで来たのだ。

 右腕を失って年老いたはずのゼファーから放たれる覇気をサカズキとボルサリーノはたじろぐ。
 

「いや〜、ちょ…ちょっと……ゼファー先生も当然、新米将校への面接は知ってるでしょお〜?」

「そう…現にわしらの時は、当時中将じゃったセンゴクさんがしちょったはずじゃ…」

 
 ゼファーとて海軍将校への昇進する為の面接試験は当然知っているし、自分も経験があるが、それとこれとは話が別である。


「ガハハハ!そんな昔のことは忘れたな。なんせ俺はガキのような夢を抱いて海兵となった男だからな。いいからさっさと来い!」


 ゼファーはサカズキ達がゴジに言った事を逆手に取る。


『僕は正義のヒーローになるだってぇ〜?ここは学校の発表会じゃないのよぉ〜。』

『こんなガキ臭い夢を持つ将校等認められん。』


 サカズキとボルサリーノは自分達の言動を思い返してゴジは本当に全てをゼファーに話したのだと知り、諦めて肩を落とす。

 ゼファーは諦めたサカズキの首根っこを左手で掴んでから、自分の右手が無いことを思い出してガープの姿を見つけて、口角を上げてニヤッと笑う。
 

「おいガープ。このおしゃべり野郎が……ゴジに色々話やがったな。この馬鹿共を鍛え直すが、見ての通り手が足らん。罰としてお前も手伝え!」


 ゼファーは自分の掲げていた”体現する正義”をゴジが掲げると聞いて正直嬉しかったが、自分のいない所で自分の事をベラベラと話されるのは気分の良いものでない。


「ぶわっはっはっ!ゼファー、そろそろ来ると思っとったわい。いいじゃろう。」

「ちょ…ガープさんまでぇ〜ぐべぇ…」


 ガープは言われた通り立ち上がってボルサリーノの首根っこを掴む。

 ガープはサカズキやボルサリーノに対して思うことは一つもないが、ゼファーが手伝い一つでゴジに色々と話した事を水に流すと言われたのでそれに乗らない手はない。

 何よりもゴジが海軍本部へ来てからというもの、今のように生き生きと仕事をしている同期生(ゼファー)に戻ったことが嬉しかった。
 

「おい、ガープ、ゼファー!あまり派手にやりすぎるなよ。」

「あらら…サカズキもボルサリーノも可哀想に…くくくっ…」
 

 腕っ節自慢のガープとゼファーは若い時には無茶なことをやる度にセンゴクやつるに叱られていたり、諭されたりしたものだ。

 クザンはそんな海軍の生きる伝説二人にこれからしごかれるサカズキとボルサリーノを見て笑いを堪えきれないようなだ。
 

「センゴク、コイツらは今日は一日中訓練の予定だからな…コイツらの書類は全てクザンに回しとけ!」


 ゼファーはサカズキとボルサリーノの姿を見て笑っているクザンを見て、死刑宣告を降した。

 クザンはよく書類仕事をサボる度にセンゴクに訓練場に連れてこられて身体を動かさせれてるので、どちらかと言えば書類仕事を増やす方が彼にとっては堪えることを知っているのだ。


「へっ…?いやなんで俺が二人の仕事までしなくちゃいけないのよ!!みんなも言ってあげてよ!」


 クザンは仕事を増やされては堪らないと慌てて味方を探そうとする。


「ぶわっはっはっ!ゼファー、そりゃ名案じゃ!!これで仕事も滞ることあるまい!」

「ガープさん!?」


 ガープがゼファーの案に便乗したことで、形勢の悪くなったクザンはセンゴクに助けを求めるような目を向けるが、センゴクは苦笑しながらも、実際二大将が抜ければ決済書類が溜まるのでゼファーの提案を承諾する。
 

「ふっ…そうだな。クザン任せたぞ!サカズキとボルサリーノは書類の決済は気にせずに久々に訓練生に戻ったつもりで体を動かしてくるといい。」

「「「なっ…!?」」」


 最後の頼みの綱、センゴク元帥の鶴の一声で三大将は絶望の顔を浮べる中、ゼファーとガープは高笑いする。
 

「ガハハハ!」

「ぶわっはっはっ!」
 

 センゴク元帥からの許可が降りたゼファーとガープがそれぞれサカズキとボルサリーノの首根っこ掴んでひこずりながら、元帥室を後にした。
 

「おつるちゃんはもう一度ゴジをここへ連れて来てくれ。覇王色の覇気のことを伝えねばならん。クザン、貴様はさっさと戻らんと夜になっても仕事が終わらんぞ?」

「くそぉぉ…これならゼファー先生との訓練の方がマシだよぉ…」

「ふふっ…クザン頑張りなよ。私はすぐにゴジを連れて来るよ。」


 クザンはこれから普段の三倍の書類仕事があると知り、半泣きで元帥室から飛び出して自分の部屋に戻る。それを苦笑しながら見送ったつるは元帥室から出てゴジを探しに行く。

 それを見送ったセンゴクは海軍の未来を担う男の将来に思いを馳せて窓の外に広がる大海原を見つめながら、ゴジにあげるためのおかきが残っていたかを考えていた。
 

 ◇
 

 翌日の新聞の見出しにはゴジの顔写真付きの見出しが一面を飾った。


『海軍に麒麟児現る!!若干12歳の少年、新兵ゴジが“若月狩(みかづきが)り”カタリーナ・デボンを討ち取る。若月狩(みかづきが)りを単独拿捕したゴジ三等兵はこの功績により一躍大尉へ昇進。』

 
 この報道は世界に衝撃を与える。

 特に世界中の女性が恐れる“若月狩(みかづきが)り”が拿捕されたことでゴジは一躍世界中の女性のヒーローとなった。 

 こうして最年少海軍将校となった“麒麟児”ゴジの名は世界中に広まる事になり、広告塔として月刊「海軍」でも毎月のように掲載されると、翌年から女性海兵の入隊が大幅に増えると同時に12歳でも才能と実力さえあれば将校になれるという事実に野心を持つ男性海兵の入隊も増えた。


「くそ!?ゴジ君の二つ名を考えている間に“麒麟児”という二つ名が広まってしまった……この私としたことが……。」


 世界経済新聞を見ながらワナワナと震えているのは全ての海兵の名付け親とされるナヅ・ケタガーリ中将である。
 
 ゴジに相応しい二つ名を夜な夜な考えていた彼にとって新聞の見出しにより、ゴジに“麒麟児”と呼ばれるようになったがショックで仕方ない。


「ゴジ君が成人したら彼にぴったりな二つ名は必ず私が名付ける。ゴジ君、期待しててくれよ。」


 この世界では17歳で成人とみなされる。ケタガーリ中将は成人した海兵の二つ名が“麒麟()”ではいけないとゴジが17歳になったら、新しい異名は自分が付けると一人決意を固めていた。


 ”麒麟児“ゴジはその名に恥じない活躍により、更なる実績を重ね、海軍将校の最年少記録を次々に更新して世界中にその名を轟かせていくことなる。

 この物語はそんな彼が海軍最高位である海軍大将になるまでの軌跡である。


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 ここまでのご愛読いつもありがとうございます。原作開始を起点としたここまでの簡単な時系列を載せておきます。

 

 原作開始11年前

 ゴジ、ソラを治療する。

 月刊「海軍」の女海兵特集にヒナが初登場

 

 原作開始10年前

 イスカ入隊 訓練生となる。

 

 原作開始9年前

 アイン入隊 訓練生となる。

 レイドスーツが完成

 ゴジがゼファーに預けられる。見習いとなる。

 訓練船が“牛鬼”の襲撃を受ける。

 イスカ訓練生卒業。第07部隊ジェガート入隊

 

 原作開始8年前

 カリファ入隊 訓練生となる。

 アイン 訓練生卒業。第07部隊ジェガート入隊。
 
 ステューシー 海軍本部少佐となり、ゴジの六式指導員となる。

 イスカ 軍曹に昇進。

 

 原作開始7年前 (今ここ)

 ゴジ 見習い卒業。第07部隊ジェガート入隊、大尉に昇進。

 カリファ 訓練生卒業。第07部隊ジェガート入隊。

 ステューシー 第二部隊隊長となる。

 アイン 軍曹に昇進。 
 

 
後書き
少年期終わりです。

明日から青年期に突入します。期待してくれる方はお気に入り登録お願いします<(_ _)> 
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