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私の中に猫がいる 完結

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2-⑻

 5月になって、金曜の夜、仕事終わってから、デートに誘われていた。舞子の海岸に面したバーベキューテラスの予定。私は、いつもごちそうになっているから、早坂さんにお返しのプレゼントを用意していた。いろいろ悩んだ末、ハンカチーフにした。定番のネクタイだと安直すぎるし、意味ありげに思えたから。

 三宮の駅で待ち合わせをして、電車で30分ほどのところだ。駅を降りて、直ぐその施設はあった。海が目の前で、ライトで飾られた明石大橋も綺麗に見えていた。席に着くと、直ぐに食材が運ばれてきた。

「ワインがいいかな 最初はビールがいいか」と、早坂さんは私に聞くでもなく言っていたが

「ワインは飲み過ぎて、酔っぱらってしまうので、私はビールが良いです」

「かまわないじゃあないか 酔っぱらったって、ちゃんと送って行くよ」

「ダメです 乱れちゃうから」

「むしろ そのほうが可愛いよ その乱れるところ見てみたいなぁ」

「そういうの 悪趣味ですよー」

「そうか すずりさんのこと、もっと知っておきたいと思ってな 普段、見られないとこ」

「そんな恥ずかしいとこ見せられませんー」と、言いながら、野菜とか貝、海老を乗せていった。ビールがきたので、とりあえず、乾杯。

「早坂さんは、今までにお付き合いした人って、おられるんでしょ」と、聞いてみた。

「居ないんだよ 大学の時に、夜の女性を見てきたから、なんか、失せてしまってね だけど、君を見かけた時、吹っ切れた なんと、涼しそうな女の子だろうと 天使に見えた」

「おじょうずですね 私、そんないいもんじゃぁないですよ」

「本当だよ 去年の秋頃 君を見た時 それまでとは、雰囲気が違った 我慢できなくなってね それまで以上に 何かを感じるようになって・・誰かに、取られちゃぁいけないと思った」

 私は、お腹がいっぱいだったが、お肉がまだあったので‥食べ過ぎでビールもお代わりしたものだから、無理しすぎたかも そうだ、私、プレゼント渡すの忘れてた。

「早坂さん いつも、ごちそうになっているから、お礼」と言って、差し出した。

「えぇー うれしいなぁ そんな気を使わなくてもいいのにー 開けて良いかい?」

「ええ つまんないですよ ハンカチーフ」

「いや ちょうどいいよ いい柄だよ ありがとう 大事に使うよ」と、言って胸の内ポケットにしまった。

「お腹 いっぱいになったね 砂浜 歩こうか?」

「そうですね 少し、消化しなきゃぁね」

 砂浜は遊歩道の街頭の明かりで、思ったよりほんのりと明るかった。何組かのカップルの姿があった。波打ち際近くに座っているカップルは、大胆に抱き合っているのがわかった。

「寒く無いかい?」

「大丈夫 お酒飲んでいるし 気持ち良いよ」

 私は、早坂さんの腕を後ろから組んでいった。他のカップルみたいに、肩を抱き寄せられるのも嫌だったからだ。

「私 夜の海岸って初めて 昼間は家の近くの海岸によく散歩に行くんですよ 猫と」

「猫? 猫と散歩?」

「うん 自転車の前に乗せて・・ 中学の頃から」

「あのさ 猫もおとなしくしている? 中学から? そうとう年なんじゃぁ それって、昔の話?」

「そんなことないよ この前も暖かい日 出掛けたの」

「そうなん なんか、わからないとこあるね 猫は元気なんだ」

「うん 元気だよ 私の友達はプチって言うんだよ 見た目はチッチって言うんだけど」

「なんかさー 君の言っていることが、僕には、あんまり、理解できないんだけどー 酔っぱらってる?」

「正気ですよ 今の、聞き流して― でも、変なこといったんじゃぁないからね」

「なんだか、わからないけど すずりさんがそう言うなら」

「早坂さんって 本当に、私を大切にしてくれているのね」

 その時、突然、抱き寄せられて、キスされた。私は、別に嫌でもなかったので、そのまま身を任せていたのだ。だけど、そのうち、手が私のお尻のほうに下りてきて、びっくりしたのもあって、身体を突っぱねるようにしていた。

「嫌いなのかい」

「ううん」と、言ったきり、私は、下を向いて歩いていた。

「怒ったのかい」と、聞かれてが

「ううん」と、首を振って、何も言えなかった。

 それでも、駅に向かう時、手をつないでくれて

「タクシーで送って行こうか」と、

「いいえ 電車で 駅から歩きますから、大丈夫です」と、何とか、返事できた。

 家まで、送ると言うのを、平気ですと断って、私は先に降りた。何か、ぼーとして家に向かっていた。

「何で、プチ 黙っていたのよ」と、責めるように言ったら

「だって すずりちゃんも嫌じゃぁ無かったんだろう 邪魔しちゃぁ悪いかなって」

「だけど 私の 初めてなんだよー ちょっとぐらいは・・」

「俺は あの人、悪い人じゃないと思っているから すずりちゃんも、経験だよ キスしたぐらいなんだよ 俺とは、さんざんしてきたじゃぁないか」

「プチは特別だよ 私の気持ちが、今、揺れているのって、やっぱり、わからないんだね」

「うーん 複雑なんだろうとは、わかるがなぁー」

「プチのバカ しばらく、お肉は禁止」

「それは無いだろう すずりちゃん 今日も好い匂いするの 我慢してたんだからー」





 
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