| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第一章 少年期
  第四十話

  ゴジの言葉に時が止まったような一瞬の静寂が訪れることになる。


「正義……せいぎね……。そうか……俺は”正義のヒーロー”を目指すよ!二ヒヒヒっ。」

「「「なっ……!?」」」


 特にガープとセンゴク、つるの3名は揃って40数年前の海軍入隊の日に行った自己紹介を思い出していた。

 ガープの大きな笑い声によってその静寂は払われ時が動き出す。


「ぶわっはっは!そうか……そうか!”正義のヒーロー”ときたか!ぶわっはっはっは!」

「へへっ!カッコいいだろ?」

「ゴジよ!ならばお前の掲げる正義はさしずめ”体現する正義”といったところかの?ニッ!」


 ガープが昔を思い出しながら、笑顔でゴジの進むべき正義を示す。


「なっ!?ガープそれは!?」

「ふふっ……そうだね。あんたにピッタリだね。」


 ”体現する正義”、ガープから放たれたその一言を聞いたセンゴクは慌て、つるはさも楽しそう笑っていた。


「ガープさん、それいいな。俺は海軍の正義を体現する海兵(ヒーロー)になるよ!ニッ!」
 

 絶対的正義の体現者こそ自分の目指す最強の海兵。まさに”正義のヒーロー”だとゴジは握り拳を掲げて宣言するが、そんな子供じみた夢に納得出来ない者もいた。


「やっぱり所詮ただのガキじゃのぉ?」

「ぼくは正義のヒーローになるんだって〜?ここは学校のクラス発表じゃないのよぉ〜。」


 サカズキとボルサリーノはゴジに向けて強烈な殺気をぶつけながら、彼の夢を真っ向から否定する。

 ゴジは二人からの殺気に怯まずに無言で睨み返すと、サカズキとボルサリーノはさらに続ける。


「この海にどれだけの海賊がいると思っとる?今この時も新しい海賊が名乗りをあげとるかもしれん。正義のヒーロー?そんな数多の海賊を全て捕らえる気か?そんなもん無理に決まっとろうが!?だから貴様はガキじゃというんじゃ。どうやら…ロクな育て方をされてんかったようじゃのぉ…」

「うんうん。サカズキの言う通りさぁ〜。パパが付き合ってくれないならさぁ。おじさんがヒーローごっこに付き合ってあげるよぉ〜。」


 興が乗ってきた二人をゴジの様子にいち早く気づいたつるが止めに入る。


「サカズキ、ボルサリーノ!言い過ぎだよ。もうお止め!!」
 

 ゴジはサカズキやボルサリーノの殺気に萎縮するように肩を震わせながら静かに俯いている。

 否、萎縮しているわけではなく、彼は己を律してただ耐えているだけだ。

 海軍における上下関係はしっかりとセンゴクに叩き込まれている為、大将二人の言葉に黙って耐えているのだ。
 

「おつるさんやセンゴクさんのお気に入りでも言わせてもらう…こんなガキ臭い夢を持つ将校等認められん。」

「うんうん…親、兄弟の顔が見てみたいねぇ〜」


 二大将の追い打ちをかけるような言葉にもゴジは身体を震わせて両拳を固く握り、歯を食いしばって耐え続けている。

 
 ──黙れ…俺のことは何を言ってもいいから……大好きな皆を冒涜するのは止めてくれ。

 
 ゴジは家族やこれまで自分を育ててくれた全ての人の顔を思い浮かべながら、そんな自分が愛する人達の優しさをこれ以上否定するのは止めてくれと願うように呟く。
 

「黙れ…。」


 ゴジはとうとう我慢出来ずに心の声が漏れ出し、今まで出会って来た人達の顔を思い浮かべる。
 

 ──自分達を助ける為に劇薬を飲んだ母さん 

 ──優しく自分を支えてくれた姉さん
 
 ──母を助ける為に苦手な注射に挑んだいつも優しいサンジ兄さん
 
 ──自分の背中を押して笑顔でここに送り出してくれたイチジ兄さん、ニジ兄さん、ヨンジ兄さん

  ──誰よりも国を愛し、自分にレイドスーツを持たせて、成長を促してくれた父さん

 ──自分を歓迎していつも可愛がってくれるジェガートの仲間達

 ──自分の成長を促し見守ってくれるガープやセンゴクを初めとする海軍本部の将校達

 ──海軍に来て以来、祖母のように接してくれる自分を部隊に招いてくれた優しいつる 

 ──そして何よりも自分の新たな夢を与え、その夢を叶える為に全力で支えてくれるゼファー。
  

 ゴジの囁くような声がしっかり聞こえていたサカズキとボルサリーノは先程よりも強い殺気でゴジを睨む。


「なんじゃと…?大将であるわしらに今なんと言うたんじゃ…このガキャあああ!」

「これは少し教育が必要じゃないかねぇ〜」

「ギチギチ…」

 
 ゴジは尚も歯ぎしりの音が聞こえるくらいに歯を食いしばって俯いたまま、両拳を固く握り、声を押し殺しながら両目から大粒の涙を流してそれがポタポタと床に垂れている。
 

「「なっ…!?」」

 
 自分達の言葉で子供が肩を震わせて、声を殺して泣いている姿にサカズキやボルサリーノも流石に言いすぎたと反省し、二人で顔を見合わせてからバツの悪そうな顔をする。


「サカズキ、ボルサリーノ……いくら試験(・・)といえど言いすぎだよ。ゴジは強くとも見た目通り中身は子供なんだよ。」


 子供の夢を正論を並べて否定するのはさすがに大人気(おとなげ)ない事に気付き、いつも穏やかなつるの怒気を帯びた言葉でさらに周りを見るとセンゴクやガープでさえも自分達を睨んでいる事に気づき慌ててゴジに頭を下げる。


「そうじゃのぉ…すこし言い過ぎた…」

「ごめんよぉ〜…」
 

 ゴジには二人の謝罪の声は聞こえていない。

 ただ二人の声に反応して、この二人はまた自分の愛する人達を冒涜しようとしているのだと感じて、二人に対して抑えていた怒りが爆発する。
 

「黙れって言ってんだろうがあああああ!!この…クソ犬、クソ猿があああああああ!!!!」

「「「「「…!?」」」」」

 
 俯いていたゴジが勢いよく涙を流しながら顔あげてサカズキとボルサリーノを睨み付けると、彼から発せられる膨大なある特殊な覇気にあてられて元帥室にいる全ての者の時が止まる。


「こりゃ…まさか…!?」

「驚いたね…こりゃあ…!?」

「王の器だと…!?」

 
 ゴジから発せられる覇気に絶句して固まる面々の中、いち早く復活したつるは慌ててゴジの正面から抱き締める。


「ゴジ!アンタの想いはよく分かった!!もういい…もういいんだ。これはね…試験なんだよ。よく考えてみな……分からないアンタじゃないだろう?」
 
「試験?」


 つるがゴジを抱き締めながら優しく説得して落ち着かせると、ゴジはつるの胸の中から顔をあげてハッとした顔になり、覇気が霧散した。
 

「おつるちゃんの言う通りだ。我々海軍将校は言わば海軍の顔である。それゆえ生半可な気持ちで正義を掲げることは許されず、仮に自分のよりも圧倒的な敵と対峙しようとも己の正義に殉じて死ぬ覚悟がある者だけが将校となりえるのだ。これは本人の前であえてその正義を否定する事でその反応を見る面接試験。海軍将校となる際に誰もが通ってきた試練だ。」

「ゴジをよく知るワシらでは緊張感にかけるからのぉ、ゴジと面識のないサカズキとボルサリーノを呼んだんじゃ。」
 

 ゴジがセンゴクとガープの言葉をボーッとしながら聞きながら、サカズキやボルサリーノを見ると二人とも先程とは打って変わった顔つきで、サカズキは厳つい顔のまま口角をあげて、ボルサリーノは人懐っこい満面の笑みで笑っていた。


「ゴジ、お前の言葉に二言はないのはよぉ分かった。正義を体現してみせい!」

「おじさんも応援するよぉ〜。」


 サカズキとボルサリーノはいわばゴジに対して圧迫面接をする面接官であり、元々“徹底した正義”を掲げるサカズキは普段から厳格な海兵だが、ボルサリーノは“どっちつかずの正義”を掲げるいつもひょうひょうとして厳格なイメージには程遠い海兵である。

 ゴジと面識のない彼等が厳格な海兵を演じ、新米将校が掲げる正義を否定して、圧倒的な強者である自分達が殺気をぶつけることでゴジが萎縮せずに自分の正義に誇りを持って立ち向かえるかどうかをセンゴクやつる、ガープといった歴戦の英雄達が見守っていたのだ。


 ◇

 
 和やかにゴジの昇進面接試験が終了しようとしたその時、センゴクがゴジを見据えて重い口を開く。


「ゴジ、私からも一つだけ確認せねばならん。」

「ん?」

「かつてこの海軍にお前と同じ”体現する正義”を掲げた男がいた。誰よりも海軍の掲げる絶対的正義を信じて、お前と同じ正義のヒーローになろうとした男がな。」


 センゴクの言葉にゴジはハッとなり、すぐに答えに気付く。

 ゴジだけでない。三大将も揃ってその男の名前に検討が付いた。

 かつて史上最年少の若さで海軍大将となり、現役を退いてからも教官として若く夢溢れる海兵達が己の正義を体現出来るように厳しくも優しく育て上げ、全ての海軍将校を育てた男。


「まさか……それって……」

「その反応……やはり奴から直接聞いたわけではないのか。そうだゴジ。ガープのバカが言った“体現する正義”はゼファーの掲げていた正義だ。」


 ゴジが目を開いてガープを見ると彼はイタズラが成功した子供のように歯を剥き出しに楽しそうに笑いながら、握り拳の親指を立ててサムズアップしていた。


「ニッ!」


 ゴジは突如センゴクから放たれた圧倒的な覇気に気づき、身構えながら慌ててセンゴクを振り返る。


「私はあの男の友として聞かねばならん!生半可な気持ちで友の正義、夢を語る事は絶対に許さん!!ゴジ、お前にあの男の正義を……あの男の夢を背負う覚悟が本当にあるのか!?」


 ゴジは先程のサカズキやボルサリーノから浴びせられた殺気とは違う、それ以上に少しでも気を抜けば意識を失いそうなその圧倒的な覇気をその身に受けながらもハッキリと告げる。
 

「それを聞いたらむしろやる気しかないよ。俺は最強の海兵になって正義を体現するヒーローになる。絶対的正義の名のもとに!」


 ゴジから発せられた覇気がセンゴクのそれと拮抗し、霧散させた。


「そうか。貴様の決意、確かに見届けた。」
 

 センゴクはゴジに歩み寄り、笑顔を浮かべながら手に持った海軍コートをゴジの肩に掛ける。

 この瞬間、海軍本部創立以来の最年少12歳1月での将校が誕生した。


 ◇


 時は40数年前、マリンフォードにある海軍本部基地に数十人の新兵が集められていた。


「これから新兵となったお前達の初めての仕事は自己紹介だ!左から順番に名前と海軍に入った動機を話せ!」

「「「はっ!」」」


 訓練教官からの自己紹介という指示に不満を持ちながらも、不満を言葉にせず言われた通り順番に自己紹介していく。

 一番最左翼にいた黒髪アフロヘアが特徴の海兵は面倒くさそうに一番初めに自己紹介をする。


「センゴクだ。私は悪に屈しない海兵になる。」


 その次に順番が回ってきたのが色黒で体格が良く黒髪短髪で満面の笑みを浮かべた海兵は元気いっぱいに自己紹介をする。


「俺の名前はモンキー・D・ガープ。俺の夢は海軍将校になることだ。」


 その右にいるのが今期の新兵唯一の女性海兵。青色の長い髪を一つ結びのポニーテールにしたクールビューティな印象を与える女性海兵は興味無さげに淡々と自己紹介をする。


「つるよ。私は悪党を更生させられるようなそんな海兵になりたいわ。」


 全員が順番に自己紹介を終えていく中、最右翼にいた色黒で紫色の短髪を逆立たせた一際体格の良い男が朗らかに微笑みながら最後に自己紹介をする。


「俺はゼファー。全ての悪を捕らえて”正義のヒーロー”になるために海兵になった。よろしく頼む!」


 今も昔も変わらぬ青空のもと、平和な世を目指して海軍の門を叩いた将来海軍の中核をなすことになる新兵達はやる気に満ち溢れていた。 
 

 
後書き
はい。ゴジ君が新しい覇気に目覚めましたね。

ゼファーの掲げていた正義が分からなかったので作者が推察したんで、もし知ってる人いたら教えてください。分かり次第差し替えます。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧