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イベリス

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第十九話 両親と姪の会話その十

「高いお酒飲んで男の人達に持て囃されて」
「それで騒いで」
「何が面白いのか」
「わからないわよね」
「叔母さんもわからないわよ」
 咲の母も言ってきた。
「ああしたところで遊んでもよね」
「面白いとはよね」
「思わないわ」
「そうよね」
「銀座のキャバレーと同じなんだろう」
 咲の父は首を傾げさせて言った。
「それはな」
「そうなの?」
「キャバレーとなの」
「お父さん、叔父さんも興味はないが」
 それでもとだ、咲と愛に話した。
「やっぱりな」
「興味がある人はいて」
「遊ぶ人もいるの」
「それで貢ぐ人もな」
 男にしてもというのだ。
「いるからな」
「性別に関係ないのね」
「そうしたことをする人って」
「貢いでどうするのよ」
「恋人でもないのに」
「相手は貢がせるのも稼ぎ方なんだ」
 そうした職業の人達はというのだ。
「貢ぐ、貢がせるのが悪いんじゃなくてな」
「悪くないの?」
「そうなの?」
「そうだ、勝手に恋人と思い込んでな」
 そうしてというのだ。
「やたら貢ぐのが悪いんだ」
「勝手にって」
「恋人って告白してオッケー貰ってないのに」
「お店の外でお付き合いしてるの?」
「違うわよね」
「お店の中でなんだ、お父さん叔父さんの知り合いにも貢いだ人がいてな」
 その目で見ていたというのだ。
「それで借金地獄になった」
「馬鹿じゃないの?」
 咲は父の話を聞いて呆れた顔と声で返した。
「そんなことで借金を作るなんて」
「無駄な使い方よね、つくづく思うわ」 
 愛も言った。
「今お話した女優さんの娘さん」
「あの人もよね」
「お母さんの遺産それで全部なくしたから」
「お母さん草葉の陰で泣いてるわよね」
「色々聞いてもね」
「ドラッグと同じだけ馬鹿な使い方よね」
「貢ぐのもあれは遊びなんだ」
 咲の父の言葉はここでは達観したものだった。
「要するにな、贔屓の相手に寄ろ喜んでもらうな」
「遊びなの」
「そうなの」
「そうだ、だからな」
 それでというのだ。
「そんな夢中になって貢いでな」
「借金作るなんて」
「馬鹿なことなの」
「そうだ、それもお金持ちがやる遊びだ」
 こうも言うのだった。
「そんな普通に入って軽い気持ちでやるものじゃない」
「覚悟してなの」
「やるものなの」
「本当の遊び人は死ぬで遊ぶ」
 遊びに命を賭けているというのだ。
「そうらしいしな」
「遊びに溺れるなら」 
 それならとだ、愛は気付いた顔になって言った。
「そういうことね」
「要するにな」
「そういうことなのね」
「遊びに命をかけてだ」
「いつも真剣に遊ぶのね」
「そうするのがな」
 まさにというのだ。
「本当の遊び人だっていうな」
「命を賭けて」
「武士みたいにな」
「そんなものなの」
「そうみたいだ、叔父さんもそこまで真剣になって遊んだことはないからわからないがな」  
 それでもというのだ。 
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