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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第一章 少年期
  第三十七話

 ゴジとデボンとの第二幕、戦いの火蓋を切ったのはゴジだった。


超電磁砲(レールガン)!」


 電気の能力で生み出された圧倒的な速度の”剃”によりデボンに迫り、その超速度のまま右腕に電気の能力を帯びて武装色の覇気”硬化”で黒くなった右手人差し指で彼女の左肩目掛けて”指銃”を放つ。

 これは今のゴジが持てる最速の技である。


「ちっ……!?大人を舐めんじゃないよ!」


 デボンはゴジの超速度に対応出来ず、彼が消えたように見えるが、この攻撃は先程右肩に一度受けているので対応策は考えていた。

 攻撃が見えないならば、全身に最大出力の武装色の覇気を纏えばいい。


「硬ぇ!?」


 ゴジの指銃はデボンの左肩を貫くことなく、薄皮一枚を傷付けただけだった。

 単純に覇気の量がゴジとデボンでは大きくかけ離れており、ゴジの”硬化”よりもデボンの最大出力による武装色の覇気とほぼ互角だった。


「やっぱり才能はピカイチだけどぉ、覇気まで軽いね。その歳なら仕方ないかしら、ムルンフッフ。武装色の覇気は覚えたてってとこね?それにしても少しビリッときたね。まさか電気の能力まで持ってるのかい!?」


 長年、武装色の覇気を操ってきたデボンとは武装色の覇気を覚えてたった1年のゴジではこの結果は当然かもしれない。

 デボンは自分とゴジを比較して筋力だけでなく、覇気も自分の方が上であると確信していたのだ。

 覇気とは意思の力、本気になったデボンの纏う覇気は当初とは比べ物にならない。


「俺の覇気じゃ力不足ってのは最初に首斬られそうになった時によく分かってるさ。」

「なら、私の本気の覇気で”硬化”した剣ならばあんたを叩き切れるってこともよく分かってるわね?」


 ゴジは未だ指銃を放った直後でデボンの間合いに入ったまま宙に浮いている状態であり、デボンはこれを好機と左手に持った鞭を捨て、左手で腰に帯びたもう一本のカトラスを抜き放つ。

 デボンの持つ双剣が黒く”硬化”していく。

 最初にゴジの首を斬ろうとした際にカトラスに纏わせた覇気とは比べ物にならず、今のデボンの双剣は確実にゴジの命を刈り取れる凶剣であり、その凶剣がゴジに振り下ろされた。


「紙絵拳法”紙吹雪”!」


 ゴジは”月歩”を使ってその場から離れるどころかユラユラと紙吹雪のように漂いながらデボンの前から離れない。

 六式使いは全ての六式を使いこなして戦うが、各々一番得意とする技が存在する。

 神眼により未来視のごとき見切りを可能としたゴジの一番得意とする六式は”紙絵”であり、ゴジはカトラスを紙一重で避けながら”月歩”で間合いを詰めてデボンの頬にゴジの左拳が吸い込まれた。


「なっ……!?……”若月ぎ……ぶべっ、なんd……ごふっ!?」


 ゴジはあえてデボンの剣を間合いに居座り、紙吹雪のようにヒラヒラと体を動かすことで彼女の斬撃を躱しつつ、彼女の斬撃を振るった回数分、同じ数だけ空中で一歩踏み出してカウンター気味に彼女の顔や体を拳や蹴りで穿っていく。

 紙絵拳法”紙吹雪”。

 この技は非常に単純で、相手の攻撃しやすい間合いに居座り、”神眼”で攻撃を未来視しながら、”紙絵”で攻撃を避けると同時にカウンターを繰り出す技である。


「確かにその剣なら俺を斬れるけどさ……当たらなければ斬れないよね?剣の”硬化”を解けば当たっても俺は斬れない。」


 ゴジにいくら殴られようとデボンは双剣に纏った”硬化”を解くことなく、双剣を振るい続けるが、振るった回数だけ彼女に新たな傷が生まれていく。


「がっ……ぐぼっ……あ”……だ……っ……ぐぞぉ……お”ぉぉぉぉ!?」


否、彼女がゴジに勝つには一度でも剣を当てればそれで良く、それしか彼女に勝ち筋は残されていないのだ。


《side デボン》


 なんでこの私カタリーナ・デボンが殴られてるの?

 なんで私の剣がこんな年端もいかないガキに当たらないのよ?


「ぐっ……!?」


 私の剣を躱しながら脇腹を穿ったガキの回し蹴りでまた肋が折れる音が聞こえた。

 痛い。


「なんdっ……!?」


 顔を殴られて今度は鼻の骨が折れた。

 痛い。

 もう剣の〝硬化〟を解いてを手放して膝を折ってしまいたいが、〝硬化〟を解いた剣ではこのガキは斬れない。


「あぎゃっ!?」


 顔を蹴られたことで瞼が切れて片目が見えない。

 殴られる事を覚悟で剣を振るい続けるしか私に勝ち筋は残されていない。

 ちょっと待って……なぜこのガキは私を殺さないの?

 私の体を貫く指による刺突を何故使わない?アレを私の胸や首に打ち込んで爆発させるチャンスはいくらでもあった。

 あ〜そうか。このガキは海兵としてこの私を殺さないように捕らえる気なのか……。

 なら、隙を付いてとっておきアレでこのガキを確実に殺す。


 《side デボンend》



 デボンの斬撃の雨が止まる頃には痣だらけの体に原型を留めていないほど顔を腫らし、体中至るところが出血しているデボンと無傷で”月歩”を使い宙に浮くにゴジがいた。


「非力な俺の武装色の覇気と拳でもさ。俺を斬るために剣に纏わせた覇気を解けないから生身で何度も殴られればさすがに効くだろ?まだ続ける?」


 単純故に強力。

 生半可な覇気ではゴジを斬ること出来ない事は初撃で把握済みであるから、デボンは両手剣のカトラスに纏わせた武装色の覇気を解く訳にはいかず、斬撃を放つと同時に繰り出される武装色の覇気”硬化”で固めたゴジの拳をデボンは覇気を纏わぬその身で数十発受け続けていたのだ。


「はぁ、はぁ……ちっ……!?ぐち”の減らないガキだね。くっ……。」


 デボンが力が抜けたように片膝を付いた。

 むしろゴジの覇気を纏った攻撃を受け続けて未だその場に立ち続けるデボンの打たれ強さの方が異常であるが限界はとうにきていたようだ。


「はぁ……はぁ……と……投降するよ。あんたの勝ちだよ!若い海兵!」


 デボンはそう言うと両手のカトラスをその場に捨てて、その場にドカッと座り込んで手錠を嵌めやすいように両手をゴジに差し出した。


「ん?やけにあっさりしてるな。えっと……手錠はどこに仕舞ったかな?」


 ゴジはデボンから目を離して自分のポケットをまさぐって手錠を探し始めるとデボンの口角がニヤッと上がる。


 ───今!


 デボンは自分の動きの全てを見透かすゴジの眼を警戒していた。

 投降はゴジの警戒を緩める為の演技、デボンはゴジに悟られないようにブーツに隠していた暗器のナイフを手に取ると、音もなく未だにポケットをまさぐっているゴジの首筋目掛けてその凶刃を振り下ろした。


 ───さよなら、名も知らぬバカな海兵ちゃん。若月斬(みかづきぎ)り!


 この暗器は海楼石で作られたデボンの切り札であり、振り下ろされたナイフは三日月の軌道を描きながらゴジの首筋に吸い込まれた。


「まぁ……そう来るとは思ったよ。」


 ゴジの呟きと同時にガキン!という甲高い音が響く。

 デボンの振り下ろした暗器が武装色の覇気により黒く”硬化”したゴジの皮膚で防がれた音だった。


「なんで……?」

「お前みたいな奴がそんなすぐに悔い改めるわけないだろう?」

「違うわ……なんで能力者なのにこのナイフを防げるのよ!?」


 海楼石とは海の効果を持った石であり、海に忌み嫌われる能力者が触れれば海へ入った時と同じ状態となり体の身動きが一切取れなくなるはずなのだ。

 能力者ならばどんな達人であっても武装色の覇気ではこのナイフは防げるはずないから、デボンも奇襲を悟られるように覇気を纏わせなかったのだから……


「あぁ……このナイフもしかして海楼石か?」

「そうよ!?あんたは爆発や毒、それに電気の能力まで能力者であるはず……何をしてるの?」


 ゴジは空いた口が塞がらないという顔をしながら海楼石のナイフを必死で自分に押し付けているデボンの腹にゴジは両手の拳を上下に添えた。


「だから言っただろう?俺は能力者ではないと……それにこの状況ですることといえばトドメを刺すに決まってるだろう?」

「や……やめろおおぉぉぉ!?」


 見聞色の覇気の心得がある故にゴジの技を喰らった後の未来が見えてしまう。

 デボンはこの場から逃げようにもゴジの攻撃によるダメージが大きくもはや足は動かない。


「六式奥義”六王銃(ロクオウガン)”!!」


 武装色の覇気には極めた者のみが使える内部破壊という技があり、どんな屈強な覇気や肉体を持つものであっても体内は鍛えようがない。

 この技は自分よりも強い武装色の覇気を持つ相手にも確実に致命的なダメージを与えられるのだ。

 超人体術六式を極めた者にのみ使える奥義六王銃(ロクオウガン)はまさにこの武装色の覇気による内部破壊なのである。


「ガハッ……!?こ……んな……ガキに……。」


 既に満身創痍な状態で体の内側に直接武装色の覇気を流し込められたデボンはこの一撃で意識を失い、天を見上げるように大の字になってそのまま仰向けに倒れた。


 ◇


 戦いが終わったのを見計らってステューシーが拍手を送り、ゴジを称える。


「流石はゴジ君…凄いわね。でも首をナイフで刺された時はヒヤッとしたわよ。」

「ごめんごめん。ステューシーもほとんど音もなく海賊達を瞬殺って凄すぎるよ。流石俺の師匠だな!」

 
 ゴジの勝利を讃えるステューシーは倒れ伏したの海賊達の真ん中で足を組んで優雅に座っており、その姿は彼女の容姿と相まって玉座に腰掛けて下界を見下ろす女王のようだ。


「ふふっ!その師匠をたった一年で超えてくるなんて師匠冥利に尽きると言うべきかしら?」

「へへへっ!」


 ゴジはステューシーに褒められたことで自分の両手を後頭部に回し、歯茎を出して満面の笑みを浮かべている。


「ステューシーのおかげだよ。ありがとう。」

「はははっ…ほんと…私よく生きてるわね…」
 

 笑っているステューシーの目は訓練を振り返って死んだように光が消えている。

 ゴジの“六・六式(ダブル・ロクシキ)”は六式の師であるステューシーと鍛えた技であり、ゴジが新しい技を開発する度にその技の実験台にされる度に死ぬ思いをしてきたステューシーに若干のトラウマを植え付けた。

 
「それにデボンに吸わせようとした毒ってあの時と同じ毒かしら?」
 

 特にステューシーはゴジが初めて“胡蝶嵐脚”を思い付いた時には、彼が放った技を普通の嵐脚と判断し、自らの嵐脚で相殺したが、その後、毒霧を吸い込んでしまって生死の境をさまよったのは一番思い出したくない思い出かもしれない。


「そうだよ!ステューシーに効く毒なら誰でも効くだろう。」

「はぁ……。」

 
 サイファーポールとして毒物に対する訓練を受けているだろうステューシーにも毒が効いたことでゴジは毒の能力に更に自信を持つ事が出来た。

 ゴジはレイジュのように全身から放出させて広範囲には毒を撒き散らせることは出来ず、口や手足から出せる程度ではあるが、毒の質については幼い頃に研究で使う薬品触れてきたかいがあって数mgで致死に至ったり、デボンに使った毒のように全身を麻痺させる毒を生み出すことが出来るのだ。
 

「まだまだこの六・六式(ダブル・ロクシキ)も開発の余地があるからまだまだステューシーには手伝って貰わないとな!」

「はははっ…そうね。既に私を超えた道力を持つのにまだ強くなる気なのよね…はぁ…」
 

 同じ女性のサイファーポールのカリファの道力は540である事を判断すればステューシーの2000道力は女性のサイファーポールではトップに位置し、男性のサイファーポールと比較しても上位に位置する実力者である。


 ◇


 ヒナ率いる海軍船が海賊船に追いついた頃にはロープで簀巻きにされながら未だに全身痣だらけのデボンと倒れ伏した彼女の部下総勢50人が山済みにされており、戦闘が終わっていた。


「流石はサイファーポール出身のステューシー隊長ね ヒナ感心。」

「ヒナ、“若月狩(みかづきが)り”を討ったのはゴジ君よ。私は雑魚を沈めただけよ…」


 ヒナはステューシーの説明を聞いてゴジを見ると、目が合った彼は自分に向けて右手を伸ばしてピースをする。


「あっ…そう。やっぱりゴジ君凄いわね。」


 ヒナはゴジの頭を撫でて褒めながら、彼の全身を見る。

 着衣の汚れはあれど無傷のゴジを見て、2億5000万の賞金首相手に完封勝利したゴジの異常性に改めて驚愕する。


「皆に鍛えてもらってるんだから、これくらい当然だよ!」

 
 デボンは世界中の女性に恐れられており、覚悟を決めて乗り込んで来た第二部隊の面々は恐怖から解放されて安堵し、笑顔でゴジを取り囲む。
 

「ゴジくぅんありがとう♪」

「正直私……“若月狩(みかづきが)り”は怖かったの…」

「実は私も…」

「ゴジ君、ホント偉いわぁ〜」


 第二部隊の女海軍達は褒められて照れ臭そうに笑うゴジの頭を撫でたり、彼を抱き締めたりする。


「えへへへっ!俺にかかればあんなオバサン大したことない相手だったよ!」


 覚悟を決めて船に乗り込んできた彼女達にとっても”若月狩(みかづきが)り”カタリーナ・デボンへの恐怖は拭いきれなかったようで、デボンを討ったコジに心から感謝している。


「コホン…ほらほら、貴女達まずは海賊達が目覚める前にさっさと拘束しなさい。」

「「「はっ!」」」


 軽い咳払いをしたステューシーからの指示を受けて第二部隊総出でカタリーナ海賊団の全ての海賊を拘束し、海底大監獄(インペルダウン)へ向けて船を進めた。 
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