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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第一章 少年期
  第三十六話

 デボンとゴジが死闘を繰り広げている一方でステューシーはというと……


「おい!ねーちゃんは船長とよろしくやってろやぁ!」

「女ぁ、てめぇは邪魔だ。早くそっちのボクちゃんを寄越せよ。はぁ、はぁ……滾ってしかたねぇんだ。」


 ステューシーはデボン配下の海賊達と対峙しているが、海賊達はステューシーではなく、デボンと対峙しているゴジの尻に注目していた。


「まさかこれだけの男達にこの私が無視されるなんてね……。」


 これまで数多の男をその美貌で虜にしてきた彼女にとってこの状況は不愉快極まりなかった。


「ねぇ……お兄さん達、私と遊んでくれないかしら?」


 ステューシーはそう言って妖艶に微笑む。

 彼女の微笑みは老若男女全ての人を虜にする、ゴジを注目していた海賊達も例外ではなかった。


「「「なっ……!?美しすぎる!!?」」」


 むしろ、デボンにより若く美しい女性との接触を抑圧されていたため、男色に目覚めてしまった彼らにとってステューシーの微笑みは彼らを男としてあるべき元の道へ引き戻した。


「「「もちろん!」」」

「ふふっ……。”剃”!」


 海賊達は自分達の目をハートマークに変えて頷いたのを最後に一斉に意識を失うことになる。


「ぶべっ……!?」

「ぐはっ!?」

「ぎゃっ!?」


 ステューシーは自分に見蕩れ隙だらけな彼らとの間合いを”剃”で近づくや否や喉突き、頚椎突き、水月突き等的確に”指銃”で急所を穿つ。


「あら?もう終わりかしら……。それにしても殺さずに制圧するのって骨が折れるわね。」


 彼女が海賊達の間を縫って走り去った後、全ての海賊達は意識を失いその場に倒れ伏す。

 超人体技六式は敵を確実に殺すための技であるので、殺さぬように制圧する技では無い為、ステューシーは海賊達を殺さぬように加減して指銃を突き刺したのだ。

 瞬く間に仕事を終えたステューシーは数人の折り重なって倒れている海賊の背に優雅に腰掛けて弟子の戦いを見始めた時、デボンに腕を掴まれたゴジの首にデボンのカトラスの刃が吸い込まれる瞬間であった。


「殺しちゃうとゴジ君に怒られちゃうからね。さてゴジ君は……あらあら早速ピンチじゃない?」


 ゼファーに海賊は殺さずに捕らえるように教えられているゴジはステューシーにもできる限り敵を殺さないように頼んでいたのだ。

 ゴジとの約束を守ったステューシーはその弟子の危機と言う割には彼女の声色には余裕がある。


「さぁ……見せてあげなさい。この一年で編み出した貴方だけの力を!」


 2億越えの賞金首を相手にした愛弟子の勝利を微塵も疑わない彼女は戦いの行方を見守った。


 ◇


 ゴジは破壊された船室の中で仰向けに転がりながら、鉄塊と怪力の能力を同時に使う“鉄塊・金剛”をデボンに使わされた(・・・・・)ことを思い返す。

 ゴジはデボンのカトラスにより凶刃は六式でも最硬の強度を誇る“鉄塊・剛”でも完璧に防ぐことが出来ないと判断してゴジは筋肉を操作する能力で瞬間的に首の筋肉を増大し、力を込めて鋼の如く硬くした上で六式の“鉄塊・剛”を使って身を守った。

 このゴジの生まれ持つ怪力の能力と六式を複合した技であるこの技を“鉄塊・金剛”と名付けている。


「ふぅ…やっぱりこれ(・・)を使わないと勝てねぇか…」
 

 ゴジは斬られた首筋を触ると薄らと出血しているを確認してそう呟いた後で、すくっとゴジは立ち上がって甲板までゆっくりと歩いていく。

 皮一枚とはいえ、鋼の強度を誇る外骨格と武装色の覇気”硬化”を破って自分に傷をつけたデボンの武装色の覇気と力は自分より強いのだと認識を改めた。


「なっ……このガキ…一体…どうやって防いだ!?」

「オバサン、強いね。」


 オバサンと呼ばれたデボンだが、不敵な笑みを浮かべるゴジと武装色の覇気を纏い黒く硬化したカトラスの刀身を見つめて、確実にゴジの武装色の覇気を破って彼の首を刈り取る斬撃を振るったはずなのに切れなかったことを訝しみながら冷静であった。


 ───このガキはここで殺しとかないと今後、後悔する事になるね。


 破壊された船室の瓦礫を掻き分けて立ち上がったほぼ無傷のゴジの姿を見て、成長すれば現在の三大将を超える海兵になるかもしれないゴジを本気で潰す相手だと認識を改める。
 

「やるじゃない?本当にいい武装色の覇気ね…だけどそんな非力な体じゃ私にダメージを与えることは出来ないでしょう?ムルンフッフッ!」


 デボンは身長350cmを超える巨体の上、女性であるにも関わらず筋骨隆々の肉体を持ち、武装色の覇気と見聞色の覇気の2種類の覇気を使った剣術だけでなくあらゆる武器に精通する使い手で、対するゴジは成長期とはいえ未だに120cm程度である。

 デボンはその点こそ勝機があると判断している。


「そうだな……これからは本気でやるよ。」

「クソガキが減らず口を…双月斬(そうげつぎ)り!」


 デボンは出し惜しみすることなく、己の必殺技と呼べる振り上げたカトラスを袈裟斬りした直後に再び振り上げて逆袈裟に斬り裂く超高速の二連撃技を繰り出す。

 この技は単純な二連撃ではなく、この技を受けた相手の目にはほぼ同時に左右から斬撃が向かってので絶対不可避のデボンの必殺技と呼んでも差し支えない技である。


「左右ほぼ同時から放たれる不可避の斬撃、いい技だ。なら……技が放たれる前に止めればいいんだろう?“電光石火”!」


 ゴジは“神眼”でデボンの放つ必殺の攻撃を未来視してそれを止めるべく、左拳の人差し指だけを伸ばして腰を落としながら左腕を後ろに引くとデボンのカトラスが振り下ろされる前に電気を直接足の筋肉に送って強制的に高速で動かし、その場を50回以上蹴る。

 “剃”は瞬間的にその場を10回以上蹴ることで爆発的な瞬発力を生み出して、瞬間移動のごとき速度を生み出す技であるが、瞬間的にその場を蹴る回数が多ければ多いほど生み出される瞬発力はあがる。

 電光石火とは電気の能力と”剃”を組み合わせた”剃”を圧倒的超えた速度で移動できる技である。


「なっ……消えた!?」


 ゴジの”電光石火”を前にして、“剃”に対応してきたデボンですらゴジの姿を見逃した。


「“火花指銃(スパーキングフィンガー)”!」
 

 デボンに気付かれることなく、懐に潜り込んだゴジは武装色の覇気に覆われた左手人差し指に火花の能力を宿した“指銃”をデボンの右肩口に突き刺すと指が突き刺さったと同時にドンと音を立ててデボンの右肩が小さく爆発した。

 
「ぐぎゃああああ!このガキ…まさか瞬間移動…!?」

 
 ゴジの火力では普通に当てても肌を焼く程度しかないが、指銃で貫いた傷口を内側から爆発させると同じ爆発の威力でも与えるダメージは段違いであり、一時的にデボンの右腕を使用不能にする威力を持つ。

 現にデボンはゴジに爆破された右腕が全く動かず、攻撃を受けたと同時にカトラスを手放している。


「ふっ…非力なガキの攻撃はどうだ?”胡蝶嵐脚(こちょうらんきゃく)”!」


 “火花指銃”の爆風でデボンだけでなく、技を放ったゴジ自身も吹き飛ばされながら空中で足を蹴り上げて宙返りすることで"紫色"の鎌風をデボンに放ちつつ甲板に着地する。


「くっ…!?その技は一度見てるわ…舐めるんじゃないよ!」
 
 
 デボンは動く左手で腰に付けた鞭を抜き放ち、ゴジの"嵐脚"を霧散させたが、ゴジの先程の技はただの嵐脚ではない。

 デボンはいち早く自分の周りの空気を漂い始めた桃色の煙の異常性に気づいた。


「はっ……これはまさか毒!?ちゃこざいなあぁ!“満月鞭(まんげつべん)”!」


 デボンはその場で高速回転しながら上下左右に高速で鞭を打ち付けていくとまるで自らを中心にした1つの満月のように丸い球体のようになり、桃色の煙を霧散させた。


「ボクぅ、可愛い顔してえげつないことするじゃない?」


 鞭を構えて挑発的なデボンの言葉に肩をすくませながら少し残念そうにゴジは答える。

 覇気使い同士の戦いは先の読み合いである。


「へぇ……よく気づいたな?少しでも吸い込めばそれで終わりだったのに。なるほど……見聞色の覇気使い相手にはこの技は効果ないのか。」


 ゴジは嵐脚を放つ直前に足の汗腺から海王類をも数mgで麻痺させる程の毒霧を放出して、それを足に纏わせて嵐脚を放つことで猛毒の鎌風を生み出した。

 嵐脚を防がれること前提で飛散した毒を吸わす事を狙った技であるが、見聞色の覇気による危機察知能力の前では、相手に空気に飛散させた毒を吸わすことは困難を極めると悟り、今後の戦いに向けた参考とする。


「ボクは空を駆けたり、それに爆発や毒まで多才だね?一体何の能力なんだい?」
 

 デボンはゴジの悪魔の実の力を問いただしながら鞭を軽く振って先程手放したカトラスに巻き付けて自分に引き寄せて右手で握った。


「俺の短い指じゃ骨まで届かないか。あぁ……ちなみに俺は能力者ではないよ。ただ生まれながらに色んな能力が使えるだけさ。」


 人体機能に精通するゴジの初撃である火花指銃は左手の人差し指を肩の骨と腕の骨との隙間に差し入れて爆発させたつもりだったが、デボンの分厚い筋肉の鎧に防がれてゴジの子供の指では骨まで届かなかったようだ。

 仮に予定通りに肩の骨と腕の骨との接合部を爆破されれば彼女の一生腕は使えなくなっていただろう。

 
「ムンフッフッフ!真面目に答えたくないなら、もういいわ。どちらにしろすぐに殺すから。」
 

 ゴジは自分の能力について一切嘘は言っていないのだが、デボンは荒唐無稽な戯言と受け流した。

 テボンは左手に鞭を右手にカトラスを持って隙なく構えると対するゴジは両腕を武装色の覇気で黒く硬化させて徒手空拳構えを取る。

 彼らの戦いは第二幕を迎える。


 ◇


 ステューシーは弟子の晴れ舞台を見守りながら呟く。


「ゴジ君の生まれながらに持つジェルマ66(ダブルシックス)の特殊能力と超人体術六式の融合技。その名も"六・六式(ダブル・ロクシキ)”。」


 ステューシーはゴジの構えを見て少しだけ寂しそうにする。


「全く六式の構えはそうじゃないって言ってるのに構え方だけは絶対直さないのよね……あの子。いえ違うわ……構え方だけじゃないわね。この私(CP-0)に敵を殺すななんていう子だもの。」


 六式において戦闘とは相手を殺す手段であり、基本的に手拳の概念はなく、構え方は指銃をいつでも打てるように掌を開く構えであるが、ゴジの構え方は軽く拳を握って構えている。


「全くこの私が男に嫉妬するなんてね。」


 六式を極めたCP-0(シーピーゼロ)の誇りに賭けて、ゴジは六式を極めたと断言出来るが、ゴジの構え方だけなくその在り方や戦闘スタイルの根底にあるのは六式ではなく、とある男のもの。

 ステューシーはゴジに戦い方や夢を与えたその男と戦ったことないが、ゴジの師になるにあたって彼の現在の保護者となっているその男の半生は調べあげているから知っている。

 数多の強敵達との戦い中で傷付きながらも決して屈することなく立ち向かい続け、ただ弱き者を守り戦う為に己を磨き続け生み出された強い海の男を体現したような体術。かつて史上最年少若さで海軍本部大将となった男のもの。


「ねぇ?”黒腕”のゼファー、あの子にとってのヒーローは誰がなんと言おうと貴方だけよ。ほんと……嫉妬しちゃうわ。」


 ゴジは超人体技六式を極めた上で、自分の憧れたゼファーから習った体術に六式や自分の能力を組み込んで六・六式(ダブルロクシキ)を完成させたのだ。

 ステューシーは軽口を言いながらも、守る者に絶対的な安心感を与えるその小さな背中を静かに見守っていた。 
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