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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第一章 少年期
  第三十五話

 ゴジはデボンの狙いが第二部隊の仲間達と聞いて、自分の仲間()を奪おうとするデボンに敵意を剥き出しにしていた。
 

「ゴジ君!ステューシー隊長!!もう…皆本当に勝手なんだから…ほら、貴女達ボサっとしないで船を進めなさい!」

「「「っ……!?」」」


 ヒナは海賊船に突っ込んで行くゴジとステューシーに驚きながらも、隊長代理として部隊に指示を出していくが、デボンへの恐れを払拭出来ない海兵達の動きが悪いので、ヒナは声を張り上げる。


「貴女達は何が不安なの?敵船にはステューシー達とゴジ君が既に乗り込もうとしてる。それにこの船にはこの私が残っているのよ。全員、急ぎ戦闘準備!」


 ヒナはそう言うとトレードマークの黒い革手袋を両手に嵌めて最後に手袋の袖口を噛み、キュッと引き絞るとその姿を見た海兵達の顔から恐れが消える。


「「「はいっ!」」」


 圧倒的なカリスマを持つ”黒檻”のヒナの自信に満ち溢れた姿と堂々たる澄んだ声に率いられた船は全速力で敵船に向かっていく。

 しかし、その頃にはゴジとステューシーは海賊船の上空にたどり着いていた。

  

 ◇

 

 ”月歩”で一足先に海賊船に近づいたゴジは挨拶代わりの六式を放つ。


「嵐脚!」


 “嵐脚”により生まれた扇状の飛ぶ斬撃が海賊船に当たる前に3メートルを超える巨体を持つ長鼻の女が船から飛び上がって右手に持ったカトラスと呼ばれる片刃の曲剣を振り抜いてガキン!という轟音と共に受け止めた。

 その女こそカタリーナ・デボンであり、“嵐脚”を斬り裂いた彼女は船首に降り立った。
 

「あら?”桃ウサギ”の居ないジェガートなら余裕だと思ったのに、ボクは能力者かしら?」
 

 デボンはジェガートで警戒していたのは海軍本部でも最強の剣士と謳われる”桃ウサギ“ギオンだった。

 彼女はギオンに純粋な剣士として、勝てないかもしれないと自覚しているからギオンのいない新米将校と“黒檻”のヒナのいる第二部隊を標的に選んだのだが、空を飛んで現れたゴジに驚いている。

 デボンは六式の使い手と出会うのは初めてだった為、空を蹴ることで宙に浮くゴジを悪魔の実の能力者だと勘違いしたのだ。
 

「ゴジ君!一体どうしたのよ?」


 ステューシーがようやく先行したゴジに追いついて声を掛けると、その声と彼女の顔を見たカタリーナ・デボンは衝撃を受けた。


「っ…!?貴女はもしかして“歓楽街の女王”ステューシー!?それにその服は……ムルンフッフッ!分かったわ。貴女が噂の新米美人将校ってわけね。」
 

 デボンはステューシーの表の顔を知っており、いずれコレクションに加えようと思っていたステューシーの登場に興奮しながらも、純白の海軍将校の証である海軍コートを着ている姿を訝しむ。


「あら私を知ってるのね?そう。私はジェガート第二部隊隊長、海軍少佐のステューシーよ!“若月狩(みかづきが)り”あなたを捕らえに来たの。」


「ムルンフッフッフッ !まさか“歓楽街の女王”が海兵だったとはね…でも、自分からコレクションに加わりに来てくれるなんてあなたもスキねェ…ジュルル…」


 デボンは当然ながらステューシーのCP-0(シーピーゼロ)としての顔は知らないが、“歓楽街の女王”として闇の世界に名を轟かせてきた彼女が海軍本部少佐と聞いて驚いている。

 しかしそんなことよりもステューシーと出会えた事に興奮して手に持ったカトラスの刃にジュルル…と音をたてながら長い蛇のような舌を這わせている。
 

「ボス…そっちのガキは好きにしていいんですかい?」


 部下の声を聞いてチラッとステューシーの隣にいるゴジを一瞥する。


「綺麗な顔してるけどォ…私は男には興味ないのよねェ。だからそのガキは好きにしちゃいなさい。」

「「「うおおおぉぉぉ…!」」」

 
 性格はどうあれ、見た目は整っているゴジの登場に海賊達は下半身の一部が膨らむ程に興奮し、普段のゴジであればその光景に怖気の立つ光景であるも、ゴジはずっとデボンを見据えたままである。

 カタリーナ・デボンの部下の海賊達は若い女は全て船長に殺されてしまう為、どうしても船長が興味を示さない男色家の海賊達が自然と集まっているのだ。
 

「ステューシー、アイツは俺がやらせてくれないか?」

「訓練の成果を試したいってことね。いいわ……しっかりやりなさい。あっちの雑魚は私が潰してあげるわ。」


 ステューシーは弟子のデビュー戦にはちょうど良い相手と判断してゴジに戦闘を託した。

 ステューシーは冷静さを失っているゴジでは危険と指摘しようとしたが、自分の言いたい事を見抜ける程度には冷静であると判断した。


「流石はステューシー、愛してるよ。」

「あら?そのセリフは大きくなってからベッドの中で囁くように言って欲しいわね…」
 

 ゴジとステューシーは互いに軽口をたたきながら一度だけ拳を軽く合わせてから背中合わせに海賊船の甲板に降り立つ。

 ゴジは船首に立つデボンと対峙し、ステューシーはゴジと背中越しに立ってデボンの部下総勢50人の海賊達と対峙する形になる。
 

「ガキはお呼びじゃないんだよ!あぁ…ステューシー…貴女を私のコレクションに早く加えた後はあの船に乗る“黒檻”のヒナや他の美女達を…ムルンフッフッフッ!」

「これから俺に倒される”オバサン“には無理だ。諦めろ…」

 
 オバサンの一言でカタリーナ・デボンの目の色が変わって一気に怒気を帯びる。

 彼女が世界中の美女を殺してコレクションするのは、彼女自身が背が高く筋骨隆々の肉体を持ち、顔は醜くはないがかなり老けこんでいるのが原因で、美女の死体に囲まれて傍に置くことで自分のコンプレックスを解消しているのだ。
 

「誰が醜いオバサンだってええええっ!!」

「醜いとは言ってないけど…自覚あったんだな?」


 そして、デボンを前にして“オバサン”と言った人間は一人残らず殺し、その一言が原因で小さな町一つを滅ぼしたことすらある。


「死ねええええっ!クソガキがああぁぁぁぁ!?」

「鉄塊・剛!」


 デボンのカトラスが漆黒の武装色の覇気による鎧に包まれたゴジの体を斬り裂こうと振り下ろされたが、ゴジの首に当たった瞬間にガキンという音と共にデボンの剣が弾かれた。

 ”鉄塊”の派生技“剛”とは、全身に力を入れて筋肉を固めつつ、武装色の覇気の応用技“硬化”を纏って全身を漆黒の鎧に変えて防御力を極限まで高める技である。
 

「まさか……その歳で武装色の覇気を!?なるほど、口だけじゃないってことね。ボクにしては強いわねぇ。」


 デボンはまだ子供でありながら武装色の覇気の硬化を使うゴジの強さに驚いたことで怒りが霧散し、子供と侮って覇気を使わなかったことがカトラスを止められた要因だと判断して冷静になって素直に賞賛する。
 

「あんたも怒ってるみたいだけど、俺だって怒ってるんだ。」

「何だって?」

「俺の仲間達()に手を出す気なんだろう?そしてこれから俺が出会うかもしれない世界中の美女を狙うお前だけはここで捕らえる。本気で来いよ……オ・バ・サ・ン。」

「私の前でそのセリフを二度吐いたのはアンタが初めてさ…絶対に殺す!」
 

 デボンは怒りに身を任せながらも武装色の覇気をカトラスに纏わせて振りかぶり、しっかりと見聞色の覇気も使いながらゴジに斬りかかっていく。

 ゴジは黒刀と化したカトラスを片手に自分に斬りかかってくるデボンを見ながら、持ち前の観察眼と見聞色の覇気を使って、全感覚を研ぎ澄ましていく。
 

神眼(しんがん)!…紙絵(かみえ)!」

 
 数々の人を葬ってきたデボンのカトラスによる嵐のような連撃も観察眼と見聞色の覇気により視界に入る相手に限っては数秒先の“未来”が見えつつある。


「なっ……私の攻撃が……!?」


 ゴジはデボンの動きを完璧に“未来視”しながら、風圧に逆らわず紙のようにゆらゆらと揺れるので、デボンも見聞色の覇気を使っているにも関わらず捉えきれずに掠りもしない。
 
 ゴジはこの状態を全てを見通す神の眼…"神眼”と名付けた。。


「“剃”…火花(スパーキング)フィガー!」
 

 ゴジはデボンの剣戟を掻い潜って、デボンの動きを未来視しながら”剃“で懐に潜り込んで彼女の腹部に目掛けて武装色の覇気を纏い火花の能力を宿した右拳を突き出すとゴジの右拳は正確にデボンの腹部に突き刺さると同時にボンっと小爆破する。


「ちっ…爆発の能力かい?でもね。軽いんだよ!」
 

 デボンは海兵との数々の戦闘で”剃“の速度には見慣れている為、同所を武装色の覇気で硬化させることで、ゴジの拳によるダメージはほぼ皆無で爆破によるダメージも肌を少し焼く程度だった。


「なっ……!?」


 デボンはゴジの爆発に怯むことなく、その爆破した右腕を武装色の覇気で黒く硬化した左手でがっしり掴んだ。


「ちょこまかと…でも、ようやく捕えたよ…これならもう避けれないだろ?死ね!!」


 ゴジは視界の隅に右手で黒く硬化したカットラスをゴジの首目掛けて振り下ろしてくるのが見えた。
 

「やばっ…“鉄塊・金剛(こんごう)”!?」
 

 ゴジの首をデボンの振り下ろしたデボンの持つ黒刀のカトラスでガキンという轟音と共に斬られると同時に彼の右手はようやく解放され、とっさに刃が当たる直前に首に纏った“鉄塊・金剛”のおかげで首を斬られるはなかったが、勢いのまま船室まで斬り飛ばされて壁をぶち破った。 
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