魔法少女リリカルなのは～フォルスを操る神造天使～

『フォルス』

そう呼ばれる異能がこの世に存在していた。

それはある男のみが保持していた異能であったが、ある時にその異能が暴走。

突如世界に次々とフォルス保持者が発生し、その異能に目醒た者は特殊な力を操る。

例えば火を操る異能等である。

それと共に全世界各地でフォルスを餌とする悪魔《バイアス》が大量発生する。

そんなある日、この人間界の上位次元に存在する通称天使が住まう《天界》とフォルスがキッカケで繋がってしまう。

天使達《ディザイアン》は突如人間を裏で誘拐し、ある実験を行い始めた。

《エクスフィア計画》及び《エンジェルス計画》である。

『フォルス』『天使』この二つが交差する時誰も知らない物語が始まる。

















《SIED藤堂＝紅怨＝刹那》

藤堂＝紅怨＝刹那は転生者である。何処かの神殺しのような紹介だが真実である。

異世界＝リリカルの世界で突如発生した歪みに巻き込まれ死んだ主人公は、神と呼ばれる存在の手により歪みを断ち切る為に幾つもの力を得て転生を果たした。

生まれた家は第零管理外世界通称『シルヴァラント』の王家であるクオン家である。

第三王位継承権を持っていたクオン＝セツナは神より貰った(簒奪ではない)力の一つ、幾つかの武具の継承を得た。

この力で七種の武具を、その武具に宿る経験を自身に憑依させる事で身体を鍛えると共に技(技術)の鍛練を始める。

そんなある日の頃………クオン王家と敵対する敵国ハザマ王家が歪みより簒奪せしめたフォルスを満月の魔力により暴走させてしまい、全ての……第七十七管理外世界通称『地球』を除く全ての世界でフォルスが広まり、フォルスを暴走させさらに破壊を齎す。

そんな中、フォルスに目醒たある男は暴走と共にそのフォルスを使って上位次元とこの人間界を繋げてしまった。

繋がった天界《テセアラ》は物語に描かれる白い翼を持った天使が住まう地であった。

だが、天使は何を思ったのか《シルヴァラント》で発掘出来る謎に包まれた宝石《エクスフィア》を発掘、人間を拐い覚醒させたエクスフィアを嵌め込む人体実験を始める。

そんななか、クオン家も襲撃を受ける。天使に忠誠を誓った狂人“バルバトス・ゲーティア”である。

家族も家臣も自分も天界の実験施設へと送られ………。

数々の言葉では表せない程の常人ならとっくに精神崩壊を起こしている筈の実験を受けて尚自己を保っていた。












「(もう………あれからどれ程の月日が経った………？)」

そこは全てが真っ白な実験室。その中央にある実験台に四肢と首を拘束され、拘束されている五歳くらいの美少女(年)のセツナ。

だが今のセツナには此所に連れてこられるまでの美しさが無かった。

あの艶やかで見るものを魅了していた長い膝裏まであった黒髪は、白と灰の中間色になり、薄い赤色の瞳は淀み虚ろう血より紅い瞳に変わっている。

あんな雪を思わせるきめ細かい白い肌は薬の副作用や実験の反動、精神変動、実験が始まってからの不眠不休により肌は血の通っていないかのような蒼白い死人肌に変色している。

身体は筋肉が衰え、まるで骨と皮に近いスカスカ。皮膚上から血管が視認出来る程である。

だがなにより目を引くのはその左目である。

本来モノを視覚する眼球が存在しないのである。

その眼球の代わりなのか血を固まらせたかのように妖しく禍々しく輝く紅い宝石が眼球の代わりに埋め込まれている。

しかもその左目の回りは血管と思わしき管が大量に浮かんでおり、時折宝石に血を送っているかのようにドクンドクンと脈動している。

この宝石………エクスフィアはエクスフィアでありそうでは無かった。

《クルシスの輝石》そう呼ばれるエクスフィアの進化型。天使を束ねる天の神《天神・ユグドラシル》の力に及ぶ可能性を秘めた最高級のエクスフィアである。

このクルシスの輝石を要の紋と一緒に埋め込まれたからかあれからセツナの身体に異変が起こっていた。

五感の幾つかの損失である。まず無理矢理流し込まれる食べ物の味が感じられなかった。次に匂いが分からなくなった。

それに続いて眠気が無くなり、痛覚と触覚が鈍くなった。

つまりそれは生命としての欠落である。

もはや人として、生命としての尊厳も、未来も、現実すら残っていない。

今のセツナの心を占める願望は一つ。家族や家臣達の安否である。

前世の記憶があるからか誰よりも皆に生きて欲しい。自分は第二の人生を歩めたのだから自分の分まで生きて欲しい。

そんな願いすら叶わないのだから。