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幻想今昔

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第三章

 時代は昭和から平成になり令和になった、孝仁は大人になり子供が出来てそうして。
 孫も出来た、お盆にまだ小さい孫の孝太を彼の実家に連れて話した。
「祖父ちゃんの頃ここはもっと田舎でな」
「そうだったんだ」
「ああ、今よりずっと田んぼがあって沼もあってな」
 それでというのだ。
「山もずっと開けていなかったんだ」
「そうだったんだ」
「そして祖父ちゃんの祖父ちゃんは畑仕事をしていたんだ」
 そうだったというのだ。
「ずっとな」
「そうなんだ」
「ああ、それで色々言われていたな」
「あの、何かね」
 孫は山の方を見て祖父に言った、まだ四歳のあどけない子供である。
「あの山何かいそうだね」
「ああ、鬼とか天狗がいるとか言ってたな」
 子供の頃を思い出して答えた。
「祖父ちゃんが子供の頃は」
「そうだったんだ」
「ああ、あの頃はな」
「鬼がいるんだ」
「山姥もな」
「本当にいるのかな」
「いるかもな」
 いないと言おうと思ったが。
 ここで彼はふとこう思って孫に答えた。
「若しかしたら」
「そうなんだ」
「それで祖父ちゃんの学校のトイレには花子さんがいてな」
「あっ、保育園にいるよ」
「そうなのか?」
「僕の保育園にね」
 孫は祖父に話した。
「いるってね」
「言われてるんだな」
「うん、ケンちゃんが言ってたんだ」
「ケンちゃん?お友達か?」
「そうだよ、その子が言ってたんだ」
 そうだったというのだ。
「それでね」
「花子さんがか」
「トイレにいるらしいよ」
「そうなんだな」
「あとね、お城にね」
 孫は祖父にさらに話した。
「お姫様がいるっていうよ」
「お姫様?」
「うん、お城の中にね」
 そこにというのだ。
「ずっと暮らしているお姫様がいるんだって」
「姫路だったな」
 息子夫婦孫も含めた彼等が住んでいる場所のことを考えて言った。 
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