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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第一章 少年期
  第三十三話

 ゴジはステューシーの指導を受けて僅か二週間という史上最速のスピードで六式全てを身に付けた。

 ゴジは蹴りで鎌鼬を生み出す“嵐脚”や自由に空を駆ける事が出来る“月歩(げっぽう)”はステューシーの筋肉の動き等を観察してそれを真似ることでやり方を学び、足りない筋力は怪力の能力で補うことで習得し、敵の攻撃する風圧に身を任せて紙のようにヒラヒラとしながら攻撃を躱す“紙絵(かみえ)”に至ってはゴジの観察眼には容易い技で"鉄塊"や"指銃"と同様に僅か一日で身に付けたのだ。

 しかし、身に付けることと極めることは似て非なるもので、六式を極める為に12歳となるまでステューシーとの訓練を重ねてきた。

 そして、約束の訓練期間である一年が過ぎ、第07部隊隊長つるやジェガート隊長ギオン達が見守る中で今卒業訓練試験が行われていた。


「ゴジ君いいわよ。全力で打ってきなさい。“鉄塊”!」


 ステューシーは“鉄塊”を使った上で両腕を顔の前でクロスしており、ゴジは彼女の腕目掛けて真っ直ぐに右拳を突き出した。


獣厳(じゅごん)!」


 “獣厳”とは指銃放つスピードで拳を突き出す技、つまり銃撃の速度を持ったただのパンチである。


「六式遊戯”手合(てあわせ)”!」


 ゴジの拳を受けたステューシーは”鉄塊”を纏ったまま靴で地面をえぐりながら数メートル後退して止まる。


「ふふふっ。2400道力……合格よ。」


 歴代最高の六式使いとされるロブ・ルッチが3000道力をたたき出したのは数年前であり、彼が18歳の時である。

 未だ体の未成熟な12歳で2400道力という歴代二位の記録は異常であり、成長したゴジがどこまで強くなるのか誰も予想出来ない。


 ───まさかたった1年で抜かれるなんて思わなかったわ……。


 ステューシーは2000道力、ゴジとの連日の訓練で自分自身が強くなった自覚はあるも、ゴジにはもう敵わないことは自分がよく分かっていた。


「ありがとう。ステューシー、これで俺も明日から航海へ行けるんだね?」

「ええ。これで明日からジェガート第二部隊のお披露目ね。」

「ん?どうゆうことだ?」


二人の話に部隊長である、つるが説明をし始めた。


「ゴジ、あんたは見聞色の覇気、六式を身に付けてさらに強くなった。それにステューシーの正式な加入でね。うちの戦力が大幅に上がったのさ。だから、あんたの訓練終了を以てジェガートを二つに分けることにした。」


 海軍とサイファーポールは共に世界政府直轄の組織である為、ステューシーはサイファーポールとしての実績と六式の使い手という実力が認められて海軍本部入隊と同時に少佐の地位を与えられている。


「なるほど……。なら、ステューシーが第二部隊ならギオンさんは第一部隊ってこと?」


 ギオンと並ぶ実力者である六式使いのステューシーが海軍本部少佐としてジェガートに加わることになり、ジェガートの部隊を二つに分けられることなったのなら、それぞれの部隊長はギオンとステューシーであろうとゴジは推測した。


「流石、話がはやいね。そうさ。あたしがジェガート第一部隊を率いるよ。ゴジちゃんには悪いけどアインちゃんはあたしがもらってくからねぇ。ウサフフフ。」


ギオンは艶っぽい笑みを浮かべながらゴジを揶揄う。


「なんだとっ……!?」

 
 まず、ギオンを隊長とする第一部隊、主な部隊員はイスカ曹長、アイン軍曹(・・)等で主に剣や槍といった武器を使うのが得意とする女性海兵を中心とする部隊である。


アインがいないと聞かされてあからさまに落ち込むゴジをギオンが楽しそうに眺めていると、ステューシーがゴジを励ます。


「ゴジ君は私率いる第二部隊。うちにはヒナ中尉がいるし、新しく配属される新兵も可愛い子が来るって話しよ。」

「ヒナ嬢……そうだな。よし、俺はやるぞ!」


 ヒナがいると聞いて元気取り戻したゴジは拳を突き上げ、それを二人の部隊長は微笑ましく見守っていた。


 次にステューシー少佐を隊長とする第二部隊、主な部隊員はヒナ中尉、ゴジで、こちらは徒手空拳を得意とする女性海兵を中心とする部隊でそれぞれの隊長を船長としてジェガートは二隻で別々に航海に出る事になる。

 それぞれ隊長としての二人が部下を指導する上で各々適した戦い方をする部下を指揮下に置いた形になるのだ。


「アインちゃんは大活躍でたった1年で既に軍曹になってるよ。ゴジちゃんもしっかり頑張んなよ。」

「うん。ギオンさん、俺頑張るよ!ステューシーこれからもよろしくね。」
 
「ええ。期待してるわ。」


 アインはギオンの元で既に海兵として一年間勤務をして多くの海賊を拿捕しているが、ゴジは明日の航海で海兵としてデビューするのだ。


「まさかほんとに丸一年航海させねぇとか子供差別だろ?婆さん。」

「ふん。あんたが見聞色の覇気に目覚めるのに時間掛けすぎたからだよ。全く。」
 

 ゴジは口では皮肉は言うものの、最強の海兵を目指している彼は見聞色の覇気や六式を習得してからも、新たな技を開発しつつ今日まで真面目に訓練に励んでいた。


「まあね…。俺はまともに使えるまで一年も掛かったよ。でも、婆さんじゃなけりゃ一体何年掛かってたか…」
 

 ゴジは見聞色の覇気の習得にほぼ丸々一年を要した。

 
「才能はあると踏んでたが、目覚めたら目覚めたでとんでもない速度で見聞色の覇気をマスターしたのには流石に驚いたさね。」


 見聞色の覇気と観察眼との相性が良く、元々相手の筋肉の動きや体幹等からの攻撃予測の得意なゴジは真正面からの敵に対しては“未来視”にも似た光景が見える程である。

 
「あぁ。本当にみんなには感謝してる。」


 見習いとなるまではゼファーによる武装色の覇気と体術の訓練。

 見習いとなってからはつるの見聞色の覇気の訓練、センゴクの座学、ステューシーによる六式と体術訓練…これら全て一海兵に対する指導として異例である事はゴジ自身がよく分かっているし、ここまで育ててくれた皆に感謝していた。
 

「だからさ。見ててよ……俺が大将になって最強の海兵になるその姿をさ。爺さんにも教えてやんねぇと!皆またねぇ。」
 

 ゴジは自信満々に言い切った後、彼は”剃”で訓練場を後にして祖父ゼファーの待つ家に帰って行った。

 それを黙って見守った三人の将校達は笑顔を浮かべている。


「ウサフフフ。子供の成長は早いねぇ。いや早すぎる気がするけど、もうあたしではゴジちゃんには敵わないね。」

「ええ。確かにゴジ君の成長スピードは異常すぎるわ。あっさり指導者である私を追い抜いたもの。手足が伸び切れば彼はまだまだ強くなるわよ。」

「それはたのしみだねぇ。」


 若く見えても30歳はとうに超えているギオンと12歳のゴジでは親と子供ほど歳が離れており、まるで子供の成長を喜ぶようなその声に10数年前から一切見た目が変わらずその美貌を保ってるとも噂される年齢不詳のステューシーも同意する。


「でも、精神はまだまだ子供だからね。二人ともしっかり支えておあげ。」
 
「「はい。」」


 つる達はゴジの走り去った方向を見送りながら、彼の今後の活躍に想いを馳せていた。
 

 ◇
 

 雲一つない快晴と、空の青さを写した何処までも続く太陽に反射して光り輝く蒼い海を見ながらゴジは船首に立って叫ぶ。
 

「俺は自由だあああぁぁぁーっ!」

「ゴジ君、煩いわよ!それに危ないから船首から降りなさい。ヒナ警告!」
 

 海に向かって叫んでいるゴジを微笑ましく見ているステューシーや部隊員とは違ってヒナは今年は新兵の教育係を任されているので、仕事中にも関わらず不謹慎な態度をとる新兵ゴジを厳しく指導する。

 というのも海兵となって年数の短いアインとイスカはギオン率いる第一部隊に配属されているので、ジェガートに来て2年目のヒナが第二部隊に配属された新兵“二人”の教育係となった。


「はぁい。」

 
 ゴジは間延びした声を出しながら船首から甲板に飛び降りると、再びヒナの怒声が響く。
 

「ゴジ君、返事を伸ばさないの!?全く少しはカリファを見習ったらどう?」
 

 もう一人の新兵は訓練所を卒業したて女海兵で名前をカリファという。彼女は腰までの長さのあるゴールドブロンドの美しい髪を持ち、フレームのない眼鏡を付けているスタイル抜群の美女で、彼女は18歳という若さながら柔術と呼ばれる相手の技の威力を利用して反撃、制圧する技に特化しているため、ステューシーの部隊に配属された期待の新兵である。
 

「ゴジ君、ヒナ中尉の指示に従わないとダメですよ!」


 カリファが右手で眼鏡をクイッと上げながらゴジを注意するが、カリファを見つけたゴジは嬉しそうに彼女に近付いて手を取った。


「見ろ、カリファ!イルカが跳ねてるぞ。早くこっち来いよ!?」
 

 カリファは、誰に対しても敬語で話したり真面目な性格からオフィスレディという言葉がピッタリな雰囲気を持つ女性であるが、いささか押しに弱い。

 ゴジはそれを知ってか知らずかカリファの手を取って船首に誘導すると、カリファは素直に従ってゴジに付いて行く。

 言うまでもないかもしれないが、同じ部署に配属された新兵同士な上、飛びっきりの知的美人であるカリファにゴジは瞬く間に懐いた。

 
「ゴジ君、セクハラです!」

「ふっ…甘いなカリファ。俺は子供だからセクハラも許されるんだよ。いいから見てみろよ。可愛いぞ!」

 
 いきなり女性の手を握るゴジに、カリファは反対の手で眼鏡をクイッと上げながら指摘するが、ゴジは子供だというアドバンテージを主張し受け流される。

 この「セクハラです。」とはカリファの口癖のようなもので、それをあしらうゴジのやり取りはこの部隊の名物になりつつある。

 
「あらあら…これは将来が心配ですね?あら…本当……ゴジ君、イルカ可愛いですね!」

「だろ?海はいいなぁ。」

「はぁ…アインはいい子だったのに…これは骨が折れるわね。ここへ来たのは失敗だったかしら…… ヒナ不安。」
 

 実はこの部隊の新名物はゴジとカリファのやり取りの他にもう一つある。

 それはその二人やり取りを見て、感情をコロコロと変化させる"黒檻"のヒナを観察することだ。


「あぁぁ〜〜っん…ヒナ中尉、今日も可愛いわね。」

「カッコいいヒナ様もいいけど、捨てられた子犬みたいなヒナ様も…あぁぁ…」


 自由奔放なゴジに対して美しいピンクブロンド髪を振り乱しながら般若のような形相で怒鳴ったり、すぐに馬鹿な事をしでかすゴジを見ながら肩を落とす捨てられた子犬のような姿が機関誌に載る完璧な女性を演じるヒナとのギャップが癒されるとこの部隊の名物になっている。 
 

 
後書き
はい。サラッと新キャラです。 
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