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歪んだ世界の中で

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第十九話 初詣その九

 そのそれぞれの絆を確かめ合ってからだった。今度は。
 絵馬を書きそれからおみくじを引いた。まずは真人と鈴は。
「大吉ですね」
「私もよ」
 二人で笑顔で話す。それだと。
「恋愛運も何もかも最高ですね」
「私達の一年って最高みたいね」
「よかったです。余計に励みになります」
「これからのことに」
「よかったね。本当に」
 希望と千春はその二人に同時にこう言った。
「友井君達はそれだけ幸せなんだ」
「そうなれるんだね」
「有り難うございます。それでは」
「次は」
「うん、僕達だね」
「それじゃあね」
 希望と千春はお互いに顔を見合わせそうしてだった。
 二人の引いたおみくじを開いてみた。すると。
 二人も同じ結果だった。それはというと。
「ううん、末吉なんだ」
「そうだね。何かね」
「ええと。お願いは最後に適う」
「努力の末にって」
「何か微妙な感じだけれど」
「何なのかしら、これって」
 二人で首を捻って話す。
「とりあえず何か凄いことが起きるっていうけれど」
「千春も」
「けれどそれは努力と熱意で乗り越えられる?」
「千春の方は耐えたらってあるよ」
「何かな、これって」
「わからないよね」
 二人で首を捻って話をする。おみくじについて。
 どうしてもわからずだ。その結果だった。
 二人でだ。こういうことにしたのだった。
「まあ。末吉ならね」
「そうだよね。最後に幸運が来てくれるのならね」
「それでいいよね」
 二人で話す。
「嫌なことばかりじゃないから」
「嫌なことってね」
 千春はそのことについても希望に話した。
「どうしてもあるけれど」
「それでもだよね」
「うん、嫌なことばかりじゃないから」
「そうだよね。どんなに嫌なことばかりでも」
「そればかりじゃないよ」
「僕の名前。おばちゃんお亡くなった旦那さんがつけてくれた名前だけれど」
 ここでもおばちゃん達だった。希望にとって二人は何処までも特別な存在なのだ。
「希望って。ギリシア神話だと」
「パンドラの箱?」
「そう。人と一緒にずっとあるものだから」
 様々な災厄があろうともだ。それだけはだというのだ。
「だからね。僕はね」
「希望を忘れないのね」
「絶対にね。高校に入った時は希望なんて見られなかったけれど」
 これはその通りだった。あの頃は彼は何もなかった。失恋と裏切り、そして学校と家庭のどちらにも居場所がなくだ。真人と共にいられて何とかもっているだけだった。
「けれどそんな中でもね」
「希望はあったんだよね」
「あったよ。だから千春ちゃんに出会えて」
 そしてだというのだ。
「幸せに過ごしてるんだよ」
「そうだよね。どんな大変なことになってもね」
「希望はあるから」
「だから頑張るのね、希望は」
「うん、そうするよ」
 まさにそうだとだ。希望も答える。
「これからもね」
「うん。それじゃあ」
 こう話してだ。二人でその末吉のおみくじをまた見る。そしてだった。 
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