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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第一章 少年期
  第三十話

 ゴジが海軍見習いとなって以来、ジェガート専用の訓練所では一人の老婆が目隠した子供を一方的に朝日に照らされて黒光りする木刀(?)を手に持って叩きのめしている傍から見れば児童虐待としか映らない光景が広がっている。

 ジェガート専用の訓練所は海軍本部女子寮の敷地内に設置されているのだか、ギオンを始めとする実働部隊が航海に出ている為、小学校の校庭程の広さのあるこの訓練所に今は二人しかいない。


「(ゴン!)、いでっ…(ゴン!)、いでぇ…くそぉ…婆さんが何処にいるか全然見えん…(ゴン!)いでぇ!」


 言うまでもなく、ゴジとつるであり、これもイジメではなく見聞色の覇気を習得する為の訓練である。

 見聞色の覇気とは相手の気配をより強く感じたり、生物の発する心の声や感情を聞いたりする能力のことで、気配や感情の動きを読む力を鍛える為にあえて視界を封じたまま、稽古を付けているのだが、ゴジはこの見聞色の覇気の習得に難航していた。


「はぁ…ゼファーが苦労するわけだ。あれだけの見切りをみせるから間違いなく才能はあるはずなんだけどね。」

 
 ゴジは元々人体構造に熟知していることで、筋肉や体幹等の些細な動きから相手の動きを予測して見切ってきたので、視界を封じられた上で相手の動きを予測するというのは未知のことで訓練を初めてそろそろ一月になるが、コツが全く掴めなかった。

 ゴジは今まで自分がどれ程視界に頼り切りだったかがよく分かり、自分の弱点が分かったことでこれを克服する為に真剣に訓練に挑んでいるが、この一ヶ月ゴジはつるに叩かれ続けている。


「くっ…全然見えねぇから避けられねぇ!」
 

 外骨格を持つゴジに木刀の攻撃等効かないはずが、何故か今日の木刀は痛かった。


「アインはあっさり見聞色の覇気のコツを掴んだってのに……あんたと来たら……。」


 つるに才能を見込まれたアインはゴジと共に見聞色の覇気を訓練していたが、アインは僅か一週間で見聞色の覇気のコツを掴み、今はギオンに率いられて巡回航海に出ていた。

 
「だから目に頼るんじゃないよ。考えるな、感じるんだよ!」


 “Don't think FEEL! 考えるな、感じろ!”

 どうでもいい話だが、昨今アニメや漫画でも聞くこの言葉の生みの親が昭和のアクション映画のスーパースターであり、ジークンドーの開祖ブルー〇・リーだと知っている人がどれくらいいるだろうか?

 この言葉のように生みの親を知らずに我々が日常的に使っている言葉は多い……本編に戻る。

 
「それが分かんねぇんだよ!婆さん!!あとその説明は爺さんと被ってるからな!?」


 ゼファーにも散々言われて理解出来なかった説明をされた所で理解出来るはずとないと逆ギレすると、感覚だけで見聞色の覇気を使っているゼファーと同じだと言われて思いのほかつるはショックを受けた。


「うっ……!?はぁ……こりゃ、気長にやるしかないねぇ…休憩にしようかね。ゴジ、目隠しを外してこれを見なよ。」


 ゴジは言われるままにタオルを手で額の位置までズラして、つるの手に丸められた紙の筒を受け取って、木刀だと思っていた物の正体を知って驚いた。


「あれ?これ新聞だったの?なるほど…紙の筒に武装色の覇気を纏わせてたのか…通りでいつもの木刀より痛いわけだ。」


 この一ヶ月間つるは訓練の度に木刀で使っているので、ゴジは今日もつるが持っているのは木刀だと思っていたが、何故か今日はいつもより痛い気がしていたが、ようやく正解が分かった。

 木刀程度ではゴジの外骨格にほとんどダメージを通さないが、武装色の覇気による攻撃を受けていたから痛かったのだ。
 

「武装色の覇気を纏えば、紙の筒でも立派な武器さ…あんたもゼファーも素手だから、もしかして武器を硬化させるのを見るのは始めてかい?」

「そういや…ウィーブルがしてたな…」
 

 ゴジはウィーブルが持っていた薙刀に武装色の覇気を纏わせていた事を思い出したが、鈍器あっても自分の外骨格を越えてダメージを与える武装色の覇気の威力を改めて思い知った。
 

「そんなことよりもいいから中を見てみな。」

「なになに…『ロジア王国国民の熱い指示を受けて、ジェルマ王国が同国を支配する事になり、ジェルマ王国は約150年ぶりに領土を得る。』か…皆頑張ってるな!」


 ゴジは新聞を読んで、無事に作戦が成功して領土を得る事が出来たと知って喜んでいる。

 つるはゴジに新聞を見せてやろうと思って新聞を準備していたのだ。
 

「"悪政王"の武力と悪名は有名だから、これを破ることが出来る武力を持つジェルマ王国の名前は北の海(ノースブルー)だけでなく、世界に広まるよ。約束通りセンゴクが支部では手が出せない海賊の情報はジェルマに回してくれるそうだよ。」

「婆さんありがとう。皆も頑張ってるのに休んでられないぜ!俺も頑張らないと…婆さんやるぞ!」
 

 つるは気合いバッチリなゴジから新聞を受け取ってそれをゆっくりと丸めていく。

 その間にゴジはタオルで再び両目を覆って気合いを入れている。
 

「はいはい…その意気だよゴジ!」

「そこだぁ!」

「ハガタレ!適当に攻撃してんじゃないよ!」
 

 つるは筒状に丸めた新聞に武装色の覇気を纏ってゴジの稽古を付けていくが、武装色の覇気と違って気合いだけで身に付けられるものではない。

 気合と同時に誰もいない空間へ真っ直ぐに正拳突きを繰り出すマヌケなゴジの頭につるの武装色の覇気を纏って硬化した紙筒が振り下ろされる。
 

「(ゴン!)いでぇ!」


 ゴジが見聞色の覇気の習得するにはまだまだ時間がかかりそうである。

 

 ◇

 


 見聞色の覇気の習得は難航しているゴジだが、血統因子操作で生まれながらに類まれなる頭脳を持つ彼にとって座学はすこぶる順調であった。

 本日も午前中のつるによる見聞色の覇気の訓練が終わった後、昼飯を挟んでからはセンゴク元帥による座学を受けている。

 センゴクはゴジに対して十分な教育を施しているのだが、この座学が始まって1ヶ月が経った頃にはセンゴクは頭を悩ませていた。
 

「センゴクさん、この時の戦いは鶴翼の陣ではなく、ガープさんとセンゴクさんを中心とする鋒矢の陣にすべきだったと思うんだ。」

「ぬぅ…そうか…でもしかしだな…」
 

 ゴジは過去の海賊と海軍との抗争についてセンゴクから教わっている途中でセンゴクに意見すると、センゴクはゴジの考案する作戦も一理あると頭を悩ませている。

 何故なら、この時の戦いはセンゴクが作戦立案したものでからくも勝利こそ納めたが、敵味方問わず多くの死傷者を出した戦いだった。


「だって、この作戦の方が死傷者の数は圧倒的に少なかったはずだ。」

「しかし、それでは敵に逃げられる可能性が増えるではないか!?」

 
 センゴクは敵を誘い出して罠に嵌めて、確実に数で叩くという王道な戦略を好むが、ゴジは確実な捕獲よりも出来る限り被害者を少くする為、実力者を先頭に置いた電光石火の奇襲戦法を好むので、反りが合わずにこのような意見の衝突が多くなっていた。
 

「でも、海兵は駒じゃないよ。」

「それは分かっているが、確実に海賊は討ち取らねばならん。」

「だから、実力者で相手の船長首討ち取ったら勝ちじゃんか?」

「むぅ……。」


 センゴクとゴジが過去の戦役について熱く語り合っているが、センゴクは内心どうしてこうなったかと頭を悩ませている。

 最初の二週間は順調で物覚えのよいゴジをセンゴクもいたく気に入って、自分の知識を惜しげも無くゴジに教えていた為、座学の時間が押して本来の仕事に支障が出るほどだったが、それでも多忙を極めてストレスを貯めてた彼のいい息抜きになっていた。

 しかし、二週間を過ぎて気付くと一年間掛けて教えるべき内容全てを教え終わってしまったため、この二週間はゴジの疑問に答えることにしているが、これが失敗だった。

 これが新たなストレスの要因となっており、持病の胃潰瘍が酷くなっていた。


「ふぅ…やっと時間か。ゴジ、座学は今日で終わりだ。」


 本日の座学が始まってすでに数時間が経過し、マリンフォードから見える地平線には太陽が落ちようとしていた。

 
「ん?なんで?まだ一ヶ月だよ。」


 何故ならゴジは僅か一ヶ月で一年間で教える予定の教材を読み終えてしまっていた上、自分でしっかり考察して先程のようにセンゴクへ意見を出す程である。


「私にもう教えることはない…明日からは座学の時間は全て六式の稽古になるからな。」


 センゴクはゴジが教材の内容をしっかり習熟していることが分かったので座学は修了とした。

 ちなみに当初の予定では武装色の覇気をあっさり身に付けたゴジなら見聞色の覇気の習得も早いだろうと考えて、午前中の見聞色の覇気の訓練の代わりに六式の訓練になる予定だったが、見聞色の覇気の習得は難航して座学をあっさりと身に付けてしまった。

 明日からは午前は見聞色の覇気の訓練、午後は六式の訓練となることが決まった。


「まだまだ聞きたい事が沢山あるから、またセンゴクさんに聞きに行くよ!」

「あぁ…いつでもくるといい…はぁ…」


 センゴクはゴジの笑顔を見ながら、ストレスの種にありそうだから出来れば来ないでくれと祈っているが、センゴクの胃にかかるストレスはこれからも続くことになる。 
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