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犬と車のお話

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第一章

               犬と車のお話 
 アメリカテキサス州エルバソ郡ホライゾンシティでのことだ。
 動物保護センターのスタッフとして働いているジョイ=ストックサウンドは目の前の光景を見て妻に怒って言った。
「あれを見るんだ!」
「何あれ!」
 妻もその光景を見て怒りの声をあげた、二人共ブロンドで青い目だ。夫は長身で逞しい身体で顔は岩の様だ。妻は夫より頭一つ小さく足の長いすらりとしたスタイルで面長の顔である。二人共ジーンズである。
「犬を車から放り出して」
「自分達は走り去っているじゃないか」
「犬は必死に追いかけているのに」
「無視して走り去っていっているぞ」
「捨てたわね」
 妻は確信を以て言った。
「あれは」
「この州では犯罪になるし」
 夫は怒ったまま言った。
「大切な命だ、しかも」
「あなたは動物保護センターで働いているし」
「許せない、もう動画に撮った」
 捨てる場面をとだ、夫は妻にスマートフォンを出して話した。
「これは通報する、そして」
「ワンちゃんをね」
「すぐに保護しよう」
「それじゃあね」
「職場にも連絡する」 
 スマートフォンを手にしたまま述べた。
「そのうえで」
「あの子もね」
「何とかするよ」
 こう言ってだった。
 彼はすぐに警察そして職場に通報し連絡した、その後で。
 その犬雄のダークグレーと白の毛色のシベリアンハスキーは無事に保護された、そしてだった。
 彼は暫くセンターで保護されてその中で事情を喧伝されたうえで里親を募集されたが地元のグラップサドルという一家がセンターに来た。
「よかったらです」
「あの子を私達の家族にしてくれませんか」
「事情を聞いて心が痛みました」
「ですから」
「お願いします」 
 ストックサウンドは一家に笑顔で応えた。
「大事にしてあげて下さい」
「命をあんなに簡単に捨てるなんて」
「本当に許せないです」
「あんなことが二度とない様に」
「そう願います」
「全くです、じゃあナヌークこれからはな」
 その犬、名前をそう付けた彼にもだ、ストックサウンドは声をかけた。
「幸せになるんだぞ」
「ワンッ」
 ナヌーク、生後十ヶ月位の彼は一声鳴いて新しい家族と会い。
 すぐに懐き家に入った、その後センターに定期的に彼の幸せな画像や動画がメールで送られてきた。
 そして彼を捨てた前の飼い主達は。
「逮捕されたよ」
「無事にそうなったのね」
「犯罪だから」
 夫は妻に厳しい顔で話した。
「そこはしっかりとね」
「それは何よりね」
「犬は助かって悪人は成敗された」
「本当に何よりね」
「全くだよ」
 ここで二人は笑顔になった、そして。
 ストックサウンド夫婦は旧知の仲であるミズーリ州のビル=シェイバーと妻のアンジェラの家に来た時があった。その時に。
 太って髭だらけの顔で逞しい身体の初老のシェイバーと短いブロンドの髪に青い目のアンジェラそして二人の息子で高校生になる母親似の顔と父親似の大柄で逞しい体つきの息子のヘンリーにある犬を紹介された。
 犬は茶色の毛で垂れ耳のやや大きな犬だ、その犬を紹介してだった。シェイバーは夫婦に笑顔で話した。
「この子はリバーっていうんだ」
「犬にしちゃ変わった名前だな」 
 夫はシェイバーの紹介を受けて言った、お互いに家の庭でバーベキューを焼いて食べながら話をしている。
「それはまた」
「川辺で会ったからだよ」
「それでか」
「この名前にしたんだ」
 リバーにしたというのだ。 
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