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歪んだ世界の中で

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第十八話 クリスマスの光その五

「忘れないからね」
「そうなの」
「そうだよそうするよ」
「じゃあ千春もそうするからね」
 二人で話してだ。そのうえでだった。
 鍋のその雑炊も食べて身体を温めた。それから希望は家に帰った。
 そのうえでそのまま風呂に入って休んだ。そのうえで次の日だった。
 この日も商店街の入り口で千春を待った。待ってすぐにだった。
 白い厚い毛のコートに赤のマフラー、ロングスカートからは黒いストッキングが見えている千春がやって来た。千春はその希望に笑顔でこう言ってきた。
「待った?」
「今来たところだよ」
「そう。よかった」
「うん。それにしてもね」
 希望は今の千春の殆ど白の服を見て言うのだった。
「クリスマスらしいね」
「千春の今の服?」
「そう。クリスマスらしいね」
「意識したの」
 実際にだとだ。千春も笑顔で答える。
「クリスマスだからね。白にしようってね」
「成程ね。けれど僕はね」
 青い丈の長いコートに緑のズボンだ。尚コートの下は緑のブレザーに青のマフラーだ。ブラウスは白だがそれでもだ。全体的に寒色系で統一している。
 その服でだ。こう言うのだった。
「こんな感じだからね」
「クリスマスらしくないの?」
「青とか緑だよ」
 だからだというのだ。
「クリスマスの色じゃないよね」
「日本じゃそうだけれど」
「日本じゃって?」
「国によっては青とか緑の服のサンタさんがいるの」
「そうだったんだ」
「そうだよ。サンタさんみたいな人かも知れないけれど」
 そう言うかも知れないというのだ。そうした存在は。
「けれどね。それでもね」
「サンタさんって赤いだけじゃないんだ」
「そうなの。だから青や緑でもね」
「冬の色なんだ。クリスマスの」
「そうだよ。だからそうした色でもいいよ」
「成程ね。いい勉強になったよ」
 千春からその話を聞いてだ。納得した顔になった希望だった。
 そしてその千春にだ。希望はまた言った。今度言う言葉は。
「クリスマスの色って国によって違うんだね」
「赤とか白だけじゃないよ」
「ううん、そうだったんだ」
「じゃあ。クリスマスの色同士でね」
 千春のストッキングの黒はその白を引き立たせる色になっていた。そして。 
 その赤いマフラーを自分の手で触りながらだ。笑顔で言ったのだった。
「デートしよう」
「そうだね。それじゃあね」
「最初は何処に行くの?」
「レストランに行こう」
 そのだ。予約していた前に行ったそこに行こうというのだ。
「そこで食べようね」
「じゃあ。ケーキも」
「ワインもあるよ」
 クリスマスに欠かせないものがだ。そこには揃っているというのだ。
「勿論ツリーもね」
「ツリーは食べられないね」
「見るからね」
 食べるだけがクリスマスではないというのだ。
「見ても楽しめるから」
「クリスマスって見てもよね」
「あそこにもあるよ」
 希望が顔を向けたそこにだ。そのツリーがあった。緑のモミの木を模した三角形の人の背はある模型は白い綿や靴下に星、照明、その他の様々なもので飾られている。
 その飾られているツリーに顔を向けてだ。希望は千春に言った。
「クリスマスがね」
「ツリーね」
「この商店街ツリーが一杯あるから」
 こうも言うのだった。 
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