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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第一章 少年期
  第二十五話

 城下の騒ぎで昼寝から目を覚ました5メートルを超える巨体に両方の側頭部から伸びる鬼のような角持つ水色の長髪を持つ男が城の最上階からドスンという音を立てて城門前に着地すると、衝撃で地面が揺れて国民は尻もちを付く。


「「「うわっ!?」」」

「何の騒ぎだニャっ!」

 
 そして自分達を恐怖で支配し続けている悪鬼“悪政王”アバロ・ピサロの登場に国民達は恐れおののいている。


「「「ひぃぃ……!?」」」

「ジェルマ66(ダブルシックス)か!?いや……ただのガキか?俺の国になんのようだニャ?ほぉ…どうやら俺に仕えに来たわけじゃないようだニャ。」

 
 ピサロはジェルマ66(ダブルシックス)の格好をした身長120cm程度の身長しかないイチジ達に冷静に語り掛けた。

 彼にとって部下は駒の一つであり、何人死のうが気にもならない程度の存在で、自分の力に自信があるのだ。

 語尾にニャを付けるが、全く可愛さらしさの欠けらも無い強大な覇気を有する大男であったが、イチジ達は臆することなくアバロ・ピサロと対峙する。


「俺達はお前を倒しに来た!覚悟しろ。“悪政王”アバロ・ピサロ!いくぞ、皆!」

「「「応!」」」
  

 イチジの掛け声と共に臨戦態勢に入る目の前の小さなジェルマ66(ダブルシックス)を見て不敵な笑みを浮かべつつ大した構えもせずその場に仁王立ちしている。
 

「その覇気…本物のジェルマ66(ダブルシックス)かどうかおいといても、ここで転がってる奴らよりは使えそうだニャ。お前達、俺に仕えるニャ…ジェルマ66(ダブルシックス)を部下に加えて、俺がガルーダとなって世界征服をするのも面白い……」
 

 北の海(ノースブルー)出身のアバロ・ピサロも“海の戦士ソラ”は当然知っているようで、ジェルマ66(ダブルシックス)の姿をしているイチジ達に興味を示している。

 彼にとってイチジ達が本物であろうがなかろうが関係はない。

 イチジ達の纏う覇気や殺気からそこそこの実力があると認め、ジェルマ66(ダブルシックス)を手中に収めているという悪名さえあればいいのだ。
 

「巫山戯るな。俺達ジェルマ66(ダブルシックス)の力をここに示す!“火花光拳(スパーキングヴァルキリー)”!」

胡蝶蹴落(こちょうしゅうらく)!」
 

 イチジの両手から放たれた眩い閃光で視力を奪われたアバロ・ピサロだが、加速装置を使って間合い詰めてくるイチジと浮遊装置と加速装置を使った上空からのレイジュによる踵落としを見聞色の覇気で予測している。
 

「もしかして浮遊装置に加速装置か…でも、見えなくても見えてる…ますます欲しくなった。生きていれば部下に加えてやるニャ…」

 
 ピサロは武装色の覇気で硬化させた左腕でイチジの手拳を受け止めた瞬間に爆発音と共に彼の左半身は炎に包まれる。

 さらにイチジと同時に攻撃してきたレイジュの踵落としを頭上に上げた右腕で受け止めると、レイジュの踵から蝶の羽から舞い散る鱗粉のような強酸性の雨が彼の頭に降り注ぐ。


「ぎゃあああ…あちっちっ…これは爆発と毒…まさか本物のスパーキングレッド、ポイズンピンクだと!?」


 拳や蹴りの威力はさほどでは無いが、左半身を覆う程の爆風と顔を焼く強酸の雨はピサロに少なくないダメージを与えた。

 
「はッ!?」


 ピサロは突如背後から襲われる予感がしてそれを避けるために前のめりに前転の要領で転がると、彼が先程までいた場所から粉塵があがる。


「ステルス解除…これが父上に聞いた見聞色の覇気か?厄介だな。ステルスを使った不意打ちの“起電(ヘンリー)トランバースキック”を避けられるなんてな。」
 

 ニジはイチジの爆発の直後にステルスを発動させて自分の姿を消してピサロに気付かれないように彼の後ろに回り込んで頚椎目掛けて電撃と覇気を纏った飛び蹴りを叩き込もうとしたのだ。

 しかし、ギリギリで見聞色の覇気で攻撃を察知した彼はそれを命からがら避けてみせたが、彼の危機はまだ終わらない。

 ピサロが目に見えぬニジの攻撃を避ける為に無我夢中で転がってきたのはヨンジの目の前だった。
 

「よぉ……待ってたぜ!」

「二”ャ!?」


 ピサロが顔を上げると、彼の目の前にいるヨンジは右腕を振り上げた状態で待っていた。さらにその右腕は筋肉が通常の3倍くらいに膨れ上がっていた。


「そ……それは止めるニャ!?」


 もはや体勢もおぼづかず確実に避けられない攻撃に対して、彼の見聞色の覇気は攻撃を受けた後のダメージについて無意識に予測してしまい、顔が青ざめる。


「止める訳ねぇだろおうが!巻力排撃(ウィンチスマッシュ)!」

「や……ぶべぇ!?」
 

 ヨンジはその右拳を真っ直ぐにピサロの顔面に真っ直ぐ振り下ろした。


「うおおおおぉぉぉぉ!!」


 ヨンジの雄叫びと共に怪力の能力を全開放しながら右腕から放たれた拳は拳の穿ったピサロの頭を中心に放射線状に大地が割れてミサイルでも堕ちたかのような大穴が空いた。


「よっしゃぁぁぁ…倒したぜ!!」


 大地の大穴を開ける程のヨンジの拳を受けてピサロの頭が破裂しなかったのはギリギリで頭を武装色の覇気で守ったからであろうが顔の右半分にくっきりと拳の後が残り意識を失っている彼を見てヨンジは拳を振り上げた。
 

「上手くいったわね。」


 その様子をヨンジが開けた穴を見下ろすようにしてイチジ達が覗いており、レイジュの嬉しそうな声にイチジが頷く。


「あぁ……!上々だ!」


 イチジの目眩しで視界を奪うと共に正面と死角からの同時攻撃。それを防がれた時の為に透明人間となったニジの背後からの攻撃。さらにそれをも避けられた後のヨンジのトドメの一撃という息のあった姉弟ならではの連携攻撃が完全にハマった結果であるが、ピサロの見聞色の覇気により、一撃もあたえられなかったニジは少しつまらなそうにしている。


「でもよ。こいつ…思ったより弱かったな…。チッ!」


 そんなニジの肩を叩きながらイチジが彼を諭す。


「ニジ、口を慎め。それはきっとこのスーツのお陰だ。」

「ええ。このレイドスーツは身体機能だけでなく、能力や覇気まで強化されるようね。」


 ニジは“悪政王”アバロ・ピサロのあまりの手応えの無さに驚いているが、イチジとレイジュは自分の力を冷静に分析にして、このレイドスーツを作ってくれたゴジに感謝した。


「おい……こいつどうすりゃいいんだ?」


 ヨンジは気絶したピサロを肩に抱えて浮遊装置でゆっくりと飛び上がりイチジ達の元へ来た。


「悪政王が……!!?」

「倒したの?」

「ん?あぁ……見たいなら見せてやるよ。」


 気を失ったピサロを抱えるヨンジを見た民衆達は国民は歓喜に包まれるので、ヨンジは彼等にピサロが気絶している事がよく分かるようにピサロの体を彼の前まで持っていき地面に転がした。
 

「凄い…本当にジェルマ66(ダブルシックス)が…ジェルマ王国が“悪政王”アバロ・ピサロを倒してくれたぞぉ!」


 彼等は戦いの一部始終、小さなジェルマ66(ダブルシックス)達がピサロを圧倒するそのヒーローの如き頼もしき姿を見ていた。


「「「うおおおおぉぉぉーーっ!」」」

「「「ありがとう!」」」


 歓喜の叫び声を聞いたイチジ達は四人並んで国民達に振り向く。

 ジェルマ66(ダブルシックス)の悪名を上書きする機会はここしか無いのだ。
 

「皆、これからは物語のジェルマではなく、本当のジェルマを見ていて欲しいの。」

「悪に苦しむことあらば俺達の名前を呼べ。」

「空を駆けて必ずその手を掴んでみせよう。」

「俺達の名は科学戦闘部隊…」

「「「「ジェルマ66(ダブルシックス)!!!」」」」
 

 イチジ達は自分達の行動で自分達が物語のジェルマ66(ダブルシックス)とは違うことを訴えながらも、あえて原作のジェルマ66(ダブルシックス)のポーズを取ると、それを見聞きしたロジア王国の国民達は熱狂を持って目の前の小さな英雄達を讃えた。

 過去の因縁諸々等関係なく、“悪政王”から救ってくれたジェルマ66(ダブルシックス)は彼らにとっては紛れもない英雄である。
 

「「「うおおおおぉぉぉーーっ!」」」

「「「ジェルマ!ジェルマ!ジェルマ!」」」
 

 鳴り止まぬ民衆達の拍手と歓声が国中に響き渡ると、自分達の思いが届いたイチジ達は四人で肩を抱き合って喜びを分かちあっている。
 

「やったな!」

「あぁ!」

「ふふっ。そうね…」
 

 しかし、それも長くは続かずに国民達の目の前で唐突に誰がリーダーであるかを巡る姉弟喧嘩が始まった。

 
「俺がリーダーだから今度は俺が作戦を考えた上で…」

「イチジ、てめぇ少し早く生まれただけでリーダーはねぇだろう。」

「そうだな。イチジは熱すぎるリーダーはクールじゃねぇと…」

「ニジはネクラなだけだろうが…ここは圧倒的なパワーを誇る俺が…」

「あんた達!姉ちゃんがリーダーに決まってるでしょ!?」

「お前達、俺はレッドだぞ!レッドがリーダーに…」
 

 強大な力と正義を示した後で、肩を抱き合っていて喜びを分かち合っていたかと思えば、すぐにワイワイと取っ組み合いの姉弟喧嘩を始めた彼等の四人の姿は“悪政王”アバロ・ピサロを討ち倒した小さな英雄でも物語に出てくる悪の軍団でも一国の王子様や王女様でもなく、ただの年相応の仲睦まじい姉弟としてロジア王国の国民の目には映る。

 
 

 
後書き
ピサロが悪魔の実の能力を得たのは黒ひげと合流した後であるという解釈です。 
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