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犬と家族になって

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第一章

               犬と家族になって
 能見嘉穂は薄茶色の髪の毛をポニーテールにしている、明るく爽やかな顔立ちで背は一六二程である。
 猫好きで両親が生きものを飼おうと言った時にこう言った。
「猫にしよう」
「猫か」
「嘉穂は猫がいいのね」
「うん、そうしよう」
 こう両親に言うのだった。
「飼うならね」
「そうだな、嘉穂も猫が好きだし」
「猫がいいわね」
「生きものを飼うなら」
 それならというのだ。
「猫がいいわ」
「それじゃあな」
「猫にしましょう」
 両親も頷いた、その言葉を聞いてだった。
 嘉穂は猫が家に来ると思って心から喜びそうして家に来るその日を待った。そしてある日高校から帰るとだった。
 玄関に子猫がいた、茶色と白の猫で嘉穂を見ると近付いてきた。
「ニャ~~~」
「はじめましてね」
 嘉穂はその子猫に笑顔で応えた。
「これから宜しくね」
「ニャオン」
「キャンキャン」  
 嘉穂は玄関に上がると猫の頭を撫でた、随分人懐っこい猫で素直に撫でさせてくれた。だがそこにだった。
 黒くて長い毛の犬、チワワが来た。そしてだった。
 尻尾を振って嘉穂のところに来たが嘉穂はその犬を見ると顔を曇らせた。そのうえでリビングに猫を抱き上げて来て言った。
「あの、犬もいるけれど」
「猫も飼うけれどね」
「犬もなの」
「実はお父さんの会社の同僚の人のお家のワンちゃんが子供を産んでね」
「それでなの」
「兄弟皆里親を探していてね」
 それでというのだ。
「うちもなの」
「一匹貰ったの」
「そうよ、だから宜しくね」
「私犬苦手なの知ってるわよね」
 このことをだ、嘉穂は自分が成長した様な姿の母に言った。
「それなのに」
「子供の頃吠えられたからよね」
「それ以来ね」
「大丈夫よ、あんたが犬が苦手でも」 
 それでもとだ、母は娘に答えた。
「お母さんとお父さんで育てるから」
「だからなの」
「心配しないで」
「だったらいいけれどね」
 嘉穂はそれならと頷いた、その足下には犬がいてちょこんと座って尻尾を振っていた。だが彼女は犬をあまり嬉しくなさそうに見ていた。
 犬は雄でクウ、猫は雌でタマと名付けられた。彼等はお互いにすぐに仲良くなり家族にも懐いた。
 嘉穂はタマは可愛がったがそれでもだった。
「キャンキャン」
「だから私犬は駄目なの」
 嘉穂はクウが自分のところに来るといつもこう返した。
「だからあんたを可愛がれないわ」
「クゥ~~ン」
「お父さんかお母さんのところに行ってきて」
「別にいいだろ」
 会社から帰ってくつろいでいる大人しい顔立ちの父が言ってきた。
「クウも懐いてるんだし」
「だって私犬苦手だから」
 父にもだ、嘉穂は言った。
「だからよ」
「近寄せもしないんだな」
「そうよ」
 こう言うのだった。
「私はタマは大丈夫だから」
「可愛がるんだな」
「そうするわ」
「仕方ないな、じゃあクウお父さんと一緒にいるわ」
「キャンキャン」 
 クウはそれを受けて父のところに行った、だが毎日の様に嘉穂のところにも来た。そうしてであった。
 嘉穂は常に彼を退けていた、だが。
 しっしと退けることはなかった、言葉で言うだけで彼は何もしなかった。しかし一緒に暮らしているうちにだった。 
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