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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第一章 少年期
  第二十四話 ジェルマ66

 ロジア王国ではアバロ・ピサロの圧政に耐えかねた国民達による暴動が起きていた。


「海賊はこの国から出ていけぇぇー!」


 数十名の国民がアバロ・ピサロの住む王城の門前に詰め掛けている。


「俺達の生活を返せぇぇー!!」


 この暴動を武力で鎮圧するために王城側の門前にはアバロ・ピサロ配下の武装した海賊達が詰め掛けていた。


「けけけっ……船長が暴動に参加してる奴らは殺しても構わねぇってよ!」

「何もしなくても金が入ってくるから飯には困らねぇが、人を斬らねぇと腕が鈍っちまう。」


 海賊達は下卑た笑みを浮かべながら各々武器を取り、門が完全に開くのを今か今かと待っている。


「外にいるヤツら全員を切り刻んでまた海に並べて見せしめにしてやろうぜ!」

「「「うおおおぉぉぉ!!」」」


 王城の門は分厚い鋼鉄製で5トンの重さがあるので、これを開けるにはテコの原理を応用した仕掛けを作動させる必要があり、ゴオオオという音と共にゆっくりと門が開いていく。


「門が開くぞ!! 海賊共が武器を構えてやがる!?」

「構わねぇ...どうせこのままじゃ野垂れ死ぬだけ、1人でも多くの海賊を道連れにしてやる!!」

「おおおぉぉぉ!!!」


 門前に詰め掛けた国民達もクワや鍋、包丁等武器になりそうな物を構えて海賊を迎え撃とうと気合いを入れている。


「おい……あれは何だ?」

「虹?なっ……こっちに飛んでくるぞ!」


 そんな国民達の中に空に掛かる4色の光の帯に気付いた者達が真っ直ぐにこちらに向かって来ることに気づいて声を上げながら指差す。


「ピサロは後回しだ。まずは彼等を助けるぞ!」


 イチジ達はロジア王国の上空を飛んでまっすぐと王城を目指したので、四人が並んで空を高速度で飛ぶことで海から王城へ続く四色の虹の残像を残し、その虹の架け橋を見た多くの国民は騒然となっていた。 


「「「了解!」」」


 イチジ達のサングラスには熱源探知機能も備わっており、王座でくつろぐ5mを超える巨体を持つアバロ・ピサロの姿を捉えているが、門前に詰めかける国民とそれを打ち倒そうする海賊達の姿がハッキリ見えているので、そちらの救援を優先する事にした。
 

「全員、門から離れろぉ!!」


 イチジは城門前にいる国民達に大声で指示を出す。


「虹が堕ちてくるぞぉぉぉ!?逃げろー!」
 

 国民達が慌てて後ろに下がると、先程まで彼等がいた場所に虹が堕ち、砂煙が巻き上がる。
 

「なんだあれは…?」


 砂煙が晴れて虹の正体が顕になると、[[rb:北の海 > ノースブルー]]では知らぬ者はいないその姿に国民達は全員が目を見開く。


「あれはまさか…!?」


 赤、青、緑、桃と並ぶその髪色と同色のスーツを身に纏い、風に靡く「66」と刻まれたマントを着た4人の姿を見た国民達たちは絶望の表情を浮かべて膝を付く。
 

「「「ジェルマ66(ダブルシックス)!?」」」


 城門前には王城に向けて天に掛ける虹を見た国民が続々と集まって来ているが、自分達に背を向けるイチジ達を見た全員が同様に絶望の表情を浮かべて膝を付く。


「そんな…“悪政王“は悪の軍団ジェルマ66(ダブルシックス)を手中に収めているのか…」

「もう...この国は終わりだ…」


 命を賭けて“悪政王”に立ち向かおうとした国民達の心を折る程に北の海(ノースブルー)では『海の戦士ソラ』の物語は愛され、ジェルマ66(ダブルシックス)は悪の代名詞として恐れられているのだ。
 

「ジェルマ66(ダブルシックス)が本当にいるなら、海の戦士ソラはどこにいるんだ…ソラぁー助けてくれぇ!」
 

 ロジア王国の空に掛かった虹を自分を悪政から救ってくれるかもしれない希望の虹の掛橋だと思ってみれば、そこに現れたのは“悪政王”アバロ・ピサロよりもタチの悪い悪の軍団ジェルマ66(ダブルシックス)なのだからイチジ達の姿を見て絶望に染まっている。
 

「ロジア王国の国民よ!!」


 イチジが覇気を練り上げながら国民達に向けて言葉を発すると、国民達は息を飲んでシンっとなる。


「「「...っ!?」」」

「俺達は敵じゃない。お前達を救いに来た!!“火花(スパーキング)フィガー”!」
 

 イチジのハッキリとした声で『救いに来た』と告げると民衆たちが顔を挙げると、彼の渾身の拳が城門に当たると同時にドカーン!!という大爆発が起きて開きかけていた城門がぶち破られる瞬間であった。


「「「ぎゃああああ…!!」」」


 さらにイチジの拳を受けた城門は王城の中まで吹っ飛び門が開くの今か今かと待っていた海賊達諸共吹き飛ばしていた。 


「「「えっ……!?」」」


 国民達は今更ながらにジェルマ66(ダブルシックス)達は自分達に背を向けて、王城から集まってくる海賊達と対峙していることに気付いて目を見開いた。


「あらあら、大不評ね。」

「いい。この反応はわかっていた事だ。」

「あぁ……俺らはジェルマだからな。今は気にしてもしょーがね。」

「アイツらをぶっ飛ばせば俺らを見る目もかわんだろ!」
  

 イチジ達が背中に突き刺さる批難と好奇の目を気にしながらも続々と集まってくる海賊達を見据えているとアバロ・ピサロ配下の総勢100人は超えようかという海賊達が武器を構えて集まって来た。
 

「くたばれぇ…“超電光剣(ヘンリーブレイザー)”!」

「「「うばばば…」」」
 

 ニジ腰に差した剣を抜き放つと同時に電気をまとった剣で居並ぶ海賊達に突っ込んで敵をすれ違いざまに切り裂いて感電させていく。
 

「へへっ……ちょうどいい。イチジが壊したこれを貰うぜ!“巻力断頭(ウインチダントン)”!」


 ヨンジは両腕を射出して伸ばした腕でイチジが破壊した鉄製の扉の城門を両手で掴んでそれを軽々と持ち上げて振り回しながら、周囲の敵を薙ぎ払っていく。
 

「「「ぎゃああああ…!」」」
 

 5トンはある城門もヨンジの怪力にかかれば意にも返さない。
 

「あんた達の技は大技すぎて撃ち漏らしが多いのよ。桃色毒矢(ピンクホーネット)!」

「「「うっ…!?」」」
 

 レイジュは毒の息を吐き出して矢のように飛ばして、ニジ、ヨンジの撃ち漏らした海賊達を的確に狙って毒の矢を当ててて眠らせていくと、ジェルマ66(ダブルシックス)の活躍で海賊達は数分も掛からずにあっさりと全滅した。


「ニジ。どうだ!!俺の方が多く倒したぞ!!」


 ヨンジが城門を手放してドヤ顔でニジに迫る。


「ふんっ!ヨンジ、てめぇの目は節穴か?俺の方が多く斬った。」


 刀を鞘に納めたニジはヨンジとおでこを突き合わせながら睨み合っていると、互いの頭をガシッと掴まれる。


「いい加減にしなさい!!そんなのどっちでもいいでしょ?ほんとアンタらはガキね...」

「「いででで!?」」


 レイジュが痛みに喘ぐヨンジとニジの頭を鷲掴みして引き剥がしながらため息をついていると、倒れた海賊の一人が最後の力を振り絞り銃を構えて発砲する。


「く……くだば……れ……。」

 
 しかし、瀕死の状態で放たれた弾丸は運悪くレイジュ達に当たることなく、その後ろにいる集まっていた国民達の元へ飛んでいく。


「ひぃぃ…!」


 しかし、その凶弾は自分の体で庇うように立ち塞がる赤い影により、国民達たちの元へ届くことはなかった。


「弾が……!?」

「ス……スパーキングレッド……大丈夫なのか?」


 彼等はその存在を恐れていたとはえ明らかに自分達を庇うようにして凶弾をその身に受けたイチジの身を心配する。


「俺達を知っているお前達なら知ってるはずだ。俺達の体は銃弾はおろか大砲の弾すら意に返さないことをな。」 


 カランという小気味よい音を立ててイチジの胸に突き刺さっていたはずの弾が地面に転がる。


「「「っ……!?」」」


 弾丸を通さぬ強靭な体に空飛ぶ靴で自由に空を翔け、超人的な能力を駆使して何度も海の戦士ソラを追い詰めたジェルマ66(ダブルシックス)をこの海の人間が知らないはずはない。


「本物だ……。」


 そして今、空を翔けてこの場に現れ、超人的な能力を駆使して城門をぶち破り、海賊達を一掃し、さらに銃弾すら通さぬ強靭な体を持っている姿を魅せられてイチジ達を偽物と疑う者等この場にもう誰も居ない。


「だったらなんで俺達を助けたんだ?」


 この場にいる国民達の疑問は一つだけ。


「ジェルマ66(ダブルシックス)は悪い奴らなはずだろう?」


 物語の世界からそのまま飛び出てきたかのような容姿と力を持っている世界征服を目論む悪の軍団ジェルマ66(ダブルシックス)が何故自分達を助けようとしているのか?それが理解出来ないのだ。


「はじめまして皆様、私はジェルマ王国第一王女ヴィンスモーク・レイジュです。あなた達は『海の戦士ソラ』という物語のジェルマ66(ダブルシックス)を恐れるあまり、そのモデルとなった国がある事を忘れてない?」


 イチジ達の活躍を見て、怯えながらも困惑する国民達の前に進み出たレイジュが微笑みながら優雅にお辞儀をする。
 

「「「えっ……!?」」」


 同じ北の海(ノースブルー)に暮らすロジア王国の国民にとって世界有数の科学力と軍事力を有する海遊国家ジェルマ王国のことを知らない者の方が少ない。


「俺は第四王子のヨンジ。俺達ジェルマ王国は同じ海に住む者として海賊の蛮行を許しておけねぇんだよ。」

「第二王子のニジだ。ちなみにスパーキングレッドが第一王子だ。」


 ニジがイチジを指差しながら名乗りをあげると国民達は目を見開いた。


「ジェルマ王国の...王族!?」


 イチジは驚きのあまり言葉が出ない国民達を前に地平線を指差す。


「俺達の言葉を疑うなら後ろを見てみるといい。」


 国民達たちが後ろにある海を振り返ると、地平線の彼方からこの島に向かってくる数十隻の連なる大船団を目にする。


「船だ……。それも地平線に並ぶほどの大船団……!?」


 ”戦争屋”とも揶揄されるジェルマ王国だが、それだけかの国が強大な軍事力を保有している事に他ならない。


「あれが……海遊国家ジェルマ王国!!」


 そのジェルマ王国が本当に助けに来てくれるなら自分達は助かるかもしれないと国民達の目に希望が宿る。


「もう一度言う。ロジア王国の国民よ、信じて欲しい。俺達ジェルマはお前達を救いに来た!」


 イチジはこの場に降り立った時に放った台詞をもう一度繰り返すと、国民達は類稀な軍事力を有するジェルマ王国とジェルマ66(ダブルシックス)が海軍ですら賽を投げた“悪政王”を倒してくれると言うならそれに縋るしかない。
 

「アバロ・ピサロは強敵だが...本当に…この国をお救い下さるのか?」

「必ず救う。お前達は知ってるはずだ。俺達を倒せるのは海の戦士ソラだけだとな...ニッ!!」


 一人の国民の救いを求める言葉にイチジが威厳に満ちながらも少し茶化したように明るく答えると、民衆たちから一斉に歓喜の声があがる。


「「「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」


 こうしてロジア王国の国民達の信を得たジェルマ王国が真の意味で歴史の表舞台に出る準備が整った。 
 

 
後書き
5月25日加筆修正 
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