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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第一章 少年期
  第二十四話

 ロジア王国ではアバロ・ピサロの圧政に耐えかねた国民達による軽い暴動が起きていた。

 数十名の国民がアバロピサロの住む王城の門前に詰め掛けている。


「海賊はこの国から出ていけー!」

「俺達の生活を返せー!」


 この暴動を武力で鎮圧するために王城の門前側にはアバロ・ピサロ配下の海賊達が詰め掛けていた。


「けけけっ……船長が暴動に参加してる奴らは殺しても構わねぇってよ!」

「何もしなくても金が入ってくるから飯には困らねぇが腕が鈍っちまう。」

「アイツら切り刻んでまた海に並べて見せしめにしてやろうぜ!」

「「「おぉぉぉ!!」」」


 海賊達は下卑た笑みを浮かべながら各々武器を取り門が開くのを今か今かと待っている。

 王城の門は分厚い鋼鉄製で5トンの重さがあるので、これを開けるにはテコの原理を応用した仕掛けを作動させる必要があるのだ。


「門が開くぞ!!」

「おい……あれは何だ?」

「虹?なっ……こっちに飛んでくるぞ!」


 門に詰め掛けた国民達の中に空に掛かる4色の光の帯に気付いた者達が真っ直ぐにこちらに向かって来ることに気づいて声を上げる。


「ピサロは後回しだ。まずは彼等を助けるぞ!」

「「「了解!」」」


 イチジ達はロジア王国の上空を飛んでまっすぐと王城を目指したので、四人が並んで空を高速度で飛ぶことで海から王城へ続く四色の虹の残像を残し、その虹の架け橋を見た多くのロジア王国民は騒然となっていた。 

 イチジ達のサングラスには熱源探知機能も備わっており、王座でくつろぐ5mを超える巨体を持つアバロ・ピサロの姿を捉えているが、門前に詰めかける国民とそれを打ち倒そうする海賊達の姿がハッキリ見えているので、そちらの救援を優先する事にした。
 

「全員、門から離れろぉ!!」

「虹が堕ちてくるぞぉぉぉ!?逃げろー!」
 

 城門に辿り着いたイチジ達は城門付近いた民衆に声を掛けて、彼等らを下がらせる。
 

「なんだあれは…?」


 イチジ達が、門前に降り立った事で巻き上がった砂煙が彼等の姿を隠していたが、その砂煙が晴れていくと彼等の姿が顕になる。


「あれはまさか…ジェルマ66(ダブルシックス)じゃないのか!?」


 赤、青、緑、桃と並ぶその髪色と同色のスーツを身に付けた4人の姿を見て集まっていた民衆たちは絶望の表情を浮かべて膝を付く。


「そんな…“悪政王“は悪の軍団ジェルマ66(ダブルシックス)を手中に収めているのか…」

「終わりだ…」
 

 城門前には天に掛ける虹を見た国民が続々と集まって来ているが、イチジ達を見た全員が同様に絶望の表情を浮かべて膝を付く。
 

「ジェルマ66(ダブルシックス)が本当にいるなら、海の戦士ソラはどこにいるんだ…ソラぁー助けてくれぇ!」
 

 海の戦士ソラの物語は北の海(ノースブルー)では知らぬ者がいない話であり、そこに登場する悪の軍団ジェルマ66(ダブルシックス)の恐ろしさは老若男女の誰もが知っている。

 ロジア王国の空に掛かった虹を自分を悪政から救ってくれるかもしれない希望の虹の掛橋だと思ってみれば、そこに現れたのは悪の軍団ジェルマ66(ダブルシックス)なのだからイチジ達の姿を見て絶望に染まっている。
 

「ロジア王国の国民よ、信じて欲しい。俺達はお前達を救いに来た!“火花(スパーキング)フィガー”!」
 

 イチジのハッキリとした『救いに来た』という声に民衆たちが顔を挙げると、彼の渾身の拳が城門に当たると同時にドカーン!!という大爆発が起きて開きかけていた城門がぶち破られる瞬間であった。


「「「ぎゃああああ…!!」」」


 さらにイチジの拳を受けた城門は王城の中まで吹っ飛び門が開くの待っていた海賊達諸共吹き飛ばしていた。 


「「「えっ……!?」」」


 その光景に民衆たち達は唖然となる。

 海賊の味方だと思っていたジェルマ66(ダブルシックス)達は自分達に背を向けて、王城から集まってくる海賊達と対峙しているように見えたからだ。


「あらあら、大不評ね。」

「いい。この反応はわかっていた事だ。」

「あぁ……俺らはジェルマだからな。今は気にしてもしょーがね。」

「アイツらぶっ飛ばせば俺らを見る目もかわんだろ!」
  

 イチジ達が背中に突き刺さる避難の目を気にしながらも続々と集まってくる海賊達を見据えているとアバロ・ピサロ配下の総勢100人は超えようかという海賊達が武器を構えて集まって来た。
 

「先手はもらうぜ!くたばれぇ…“超電光剣(ヘンリーブレイザー)”!」

「「「うばばば…」」」
 

 ニジ腰に差した剣を抜き放つと同時に電気をまとった剣で居並ぶ海賊達に突っ込んで敵をすれ違いざまに切り裂いて感電させていく。
 

「へへっ……ちょうどいい。これ貰うぜ!“巻力断頭(ウインチダントン)”!」


 ヨンジは両腕を射出して伸ばした腕でイチジが破壊した鉄製の扉の城門を両手で掴んでそれを軽々と持ち上げて振り回しながら、周囲の敵を薙ぎ払っていく。
 

「「「ぎゃああああ…!」」」
 

 5トンはある城門もヨンジの怪力にかかれば意にも返さない。
 

「あんた達の技は撃ち漏らしが多いのよ。桃色毒矢(ピンクホーネット)!」

「「「うっ…!?」」」
 

 レイジュは毒の息を吐き出して矢のように飛ばして、ニジ、ヨンジの撃ち漏らした海賊達を的確に狙って毒の矢を当ててて眠らせていくと、ジェルマ66(ダブルシックス)の活躍で海賊達は数分も掛からずにあっさりと全滅したかに見えたが、倒れた海賊の一人が最後の力を振り絞り銃を構えて発砲する。
 
 しかし、瀕死の状態で放たれた弾丸は運悪く集まっていた民衆の元へ飛んでいく。


「ひぃぃ…!」


 彼らをその身で庇うように立ち塞がる赤い影により、その凶弾が民衆たちの元へ届くことはなかった。


「弾が……!?」

「ス……スパーキングレッド……大丈夫なのか?」


 恐れていたとはえ明らかに自分達を庇うようにして凶弾をその身に受けたイチジの身を心配するが、カランという小気味よい音を立てて彼の胸に突き刺さっていたはずの弾が地面に転がる。


「知らなかったのか?俺たちの体は銃弾はおろか大砲の玉すら意に返さない。」 

「「「っ……!?」」」


 北の海(ノースブルー)の人間が知らないはずはない。

 弾丸を通さぬ強靭な体に空飛ぶ靴で自由に空を翔け、超人的な能力を駆使して何度も海の戦士ソラを追い詰めたジェルマ66(ダブルシックス)、悪役ながらも人気の高い彼らに憧れを抱いた事のない者等この場に存在しない。


「本物だ……。」


 そして今、空を翔けてこの場に現れ、超人的な能力を駆使して城門をぶち破り、海賊達を一掃し、さらに銃弾すら通さぬ強靭な体を持っている姿を魅せられて彼らを偽物と疑う者等もう居ない。


「だったらなんで俺達を助けたんだ?」


 彼等の疑問は一つ。

 物語の世界からそのまま飛び出てきたかのような容姿と力を持っている世界征服を目論む秘密組織ジェルマ66(ダブルシックス)が何故自分達を助けようとしているのか?それが理解出来ないのだ。


「ジェルマ66(ダブルシックス)は悪い奴らなはずだろう?」


 イチジ達の活躍を見て怯えながらも困惑する民衆たちにレイジュが語り掛ける。
 

「あなた達は『海の戦士ソラ』という物語のジェルマを恐れるあまりジェルマ王国(・・)という国の存在を忘れていないかしら?」

「「「あっ……!?」」」


 レイジュの言葉に民衆たちはハッとなり、気付かされる。

 同じ北の海(ノースブルー)に暮らす彼らにとって世界有数の科学力と軍事力を有する海遊国家ジェルマ王国のことを知らない者の方が少ない。


「俺達ジェルマ王国は同じ海に住む者として海賊の蛮行を許しておけねぇんだよ。」

「俺らの言葉を疑うなら後ろを見てみな?」


 ヨンジとニジの言葉に民衆たちが後ろにある海を振り返り、地平線の彼方からこの島に向かってくる数十隻の連なる大船団を目にする。


「船だ……。」

「あれが……海遊国家ジェルマ王国!!」


 ”戦争屋”とも揶揄されるジェルマ王国だが、それだけかの国が強大な軍事力を保有している事に他ならない。

 その国が本当に助けに来てくれるなら自分達は助かるかもしれないと民衆たちの目に希望が宿る。


「もう一度言う。ロジア王国の国民よ、信じて欲しい。俺達はお前達を救いに来た!」


 イチジはこの場に降り立った時に放った台詞をもう一度繰り返した。

 かの国がかつて北の海(ノースブルー)を支配した事も教養として習う為に当然知っているため、助けに来たという話をすぐには信じられないが、ジェルマ66(ダブルシックス)の力は物語を通じてよく知っている。

 その類稀な軍事力を有するジェルマ王国とジェルマ66(ダブルシックス)が海軍ですら賽を投げた“悪政王”を倒してくれると言うならそれに縋るしかない。
 

「本当に…私達をお救い下さるのですか?」

「俺達に任せろ。」

「「「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」
 

 一人の少女の救いを求める言葉にイチジが威厳に満ちた声で答えると、民衆たちから一斉に歓喜の声があがった。 
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