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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第一章 少年期
  第二十二話

 ゼファーが海軍本部へのウィーブル海賊団拿捕の報告を終えて海底大監獄(インペルダウン)へ向けて船を進めていく中、ゴジとアインの二人はゼファーに呼ばれて船長室に集まった。
 

「ゴジ、改めて礼を言う。俺達を助けてくれてありがとう。」


 ゼファーはゴジに頭を下げる。

 この場にいる二人、ゼファーとアインだけはゴジがパーフェクトゴールドに変身したのを見ていた。
 

「皆無事で本当によかった。二人とも内緒にしてくれて感謝してるよ。」

「ゴジ君はなんでジェルマ66(ダブルシックス)のパーフェクトゴールドに変身出来るの?」
 

 核心をついたアインの言葉にゴジはアインとゼファーに自分がジェルマ王国で生まれた王子であること、悪魔の実の能力者ではなく血統因子の研究により爆発を含めた5つの能力を使えることや“5”と書かれた金色の缶を見せながら、これを腰に当てることでパーフェクトゴールドに変身出来ること等を全てを正直に話した。


「ジェルマがレイドスーツを完成させていたとはな…それに血統因子ってのは意味わからんが、悪魔の実を食べることなく、悪魔の実に近しい能力を身に付けていたとはな。」

「黙っててごめん。」


 ゼファーは申し訳なさそうに謝るゴジの頭を乱暴に撫でながら、頭を上げさせる。


「気にするな。国家プロジェクトってやつだろ?なら、よその人間に秘密にしてても仕方ねぇ。」


 ゼファーはジェルマ王国の科学力に脱帽しながら、『海の戦士ソラ』のファンだけあって感慨深そうに液体状になったレイドスーツが収納されている金色の缶を眺めたり、自分の下腹部に押し当てたりしていた。


「このレイドスーツは身体機能を強化する機能もあるけど、俺はジェルマを出た身だから、このスーツを多用するとジェルマに迷惑が掛かる。それにこのスーツを身に付けなていない俺の能力は兄さん達の足元にも及ばないから爺さんの能力者をも意に返さない強さに憧れたんだ。」

「そうか…ん?ちょっと待て……まさかお前の兄達が残りのジェルマ66(ダブルシックス)なのか!?」


 ゼファーはゴジが自分に憧れていると聞いて嬉しさ反面、恥ずかしさ反面といった様子で素っ気なく返事を返した後でジェルマ王国からゴジを連れ出した際に彼を見送っていた子供達の姿を思い出してびっくりしていた。


「あぁ。兄さん達の能力は俺なんかとは比べ物にならないくらいの強いんだ。」


 自分の力について自嘲気味に話すゴジにゼファーが声を掛けようとしたところ、アインがゴジがジェルマ王国の王子と聞いて驚いて先に話し掛けた。


「ゴジ君、王子様なの!?でもなんでそんな子が海軍に?」

 
 ゴジは自分に質問したアインではなく、ゼファーを見つめて言葉を紡いでいく。

 航海訓練の朝言えなかった自分の能力だけでなく、もう一つの隠し事もゼファーに伝える決意をしたのだ。
 

「俺さ。廃嫡されたから爺さんに預けられたって事になってるけどさ。本当は父さん達は俺が海軍へ入りたいと言うわがままを聞いて背中を押してくれただけなんだ。」


 ジェルマ王国を出る際に父に提案して自分を廃嫡されて行き場のない可哀想な子供としてゼファーの元へ行くことを提案し、あの時一芝居打ったのだ。


「ゴジ君…」

「ゴジ…」
 

 ゴジは優しいゼファーを騙して、彼の優しさに付け込むのうな嘘の設定を作って彼の生活を続けて行くことに後悔しながらもゼファーの優しさに甘えていた。

 そんな毎日を思い返していると、能力だけでなく、全てを浅ましい嘘で塗り固められた自分の真実を知ったゼファーが自分を軽蔑しないかどうか考えて、涙が溢れて来る。


「嘘ついてごめん…でも、おでは…これがらも…じいざんど…」


 ゴジの渾身の訴えを聞いたゼファーは窓の外を見つめてゴジを預かった日のことを思い出していた。


 ◇


 ゼファーがジェルマ王国を訪れてゴジの力を見る為に模擬戦を吹っ掛けた後、ゼファーとジャッジは二人で少し話していた。


「ゼファー、ゴジを頼んだぞ。」

「まだあの子が俺に一撃当ててねぇのに気がはえーよ。」

「ふん。貴様の目を見れば分かる。結果はどうあれあの子を鍛えたくてうずうずしているそんな目だ。それにどうせこの勝負はゴジの勝ちだ。」


 自信満々に息子の勝利を疑わないジャッジをゼファーが笑いながら揶揄う。


「親バカか?」

「なんとでも言え。否定はせん。あの子は強い上に頭がいい。きっと俺やこの国の事を思ってお前にも隠し事をするだろう。しかし、それ以上に大事な物を守る為になら考える前に体が動く優しい子だ。あの子の吐いた小さな嘘が将来あの子自身を苦しめるだろうが、それも成長…お前が導いてやってくれ。頼んだぞ。友よ。」


 ジャッジは自分に拳を突き出してくる。


「俺もかつて人の親だったんだ。任せておけ!」


 ゼファーはジャッジの拳に自分の拳をコツンと合わせて友の頼みを引き受けた。

 実際ゴジとの勝負もジャッジの予想通りゴジの勝ちで終わった。


 ◇


 そして、これもジャッジの予想通りに悩みながらも自分に隠し事を打ち明けて泣いているゴジを見て、本物の父親には勝てないなとつくづく思う。

 
「ふん…能力の事は正直驚いたが、何ヶ月一緒に住んでると思ってる。俺に隠し事をしていたことくらいずっと前から気付いていたさ。」

「へ…?」
 

 ゴジが狐に頬を抓られたような顔で頭を上げると、ゼファーは振り返ってゴジを見る。
 

「それに、お前の父ジャッジもこうなる事をしっかりと見抜いてたぞ。」

「えっ…?」


 ゼファーはゴジの顔を見ずに窓の外に広がる海を見つめたままで少し不機嫌そうに話すとゴジは目を丸くしてる。 
 

 ───ったく、やっぱり父親には適わねぇな。
 

 ゼファーもゴジが悩んでいる事には気付いていたが、何に悩んでいるはよく分からなかったが、ここにいないジャッジはゴジが何に悩んで苦しむか全ての見抜いていたことに保護者としての完全敗北を思い知って不機嫌になった。
 

「すまんな。お前が何かに悩んでいる事は俺も気付いていたが、嘘をつくと自分が辛くなることを身を持って分からせてくれってジャッジから言われてたんだ。だからお前が自分から打ち明けるまで聞かなかった。これでよく分かったろ?」

「あぁ…そうか。だから父さんはこれを俺に持たせたのか……。」
 

 ゴジは廃嫡の提案をした後で父にレイドスーツを返そうとしていたのだが、なんで父がレイドスーツを受け取らなかったのか不思議だった。

 廃嫡された息子に国との繋がりの深い物を持たせる理由が分からなかったが、今ようやく分かってまた涙したが、今度の涙は後悔の涙ではない。

 



 ───父さん…

 

 

 レイドスーツがなければゼファーを助ける事は出来なかった上、アインや訓練生だけでなく自分の命すらも危なかった。

 

 

 ───父さん…ほんとにありがとう。

 

 

 嘘をつくことが自分自身を傷付けることだと教えてくれた。

 

 

 ───父さん…みんな、俺頑張るよ!

 


 

 そして何よりこんな離れていても自分に様々な事を教えてくれる父の偉大さを知り、ゴジは父を…故郷の家族を思い出して涙しているのだ。


「ジャッジの言う通り、これでお前はまた一つデカくなったな。」

「爺さん…」

 
 ゴジは両目から涙がとめどなく溢れる顔を上げてゼファーを見る。
 

「アイツにはお前を最強の海兵にすると伝えてある。帰ったらお前には特別メニューを用意しているからな、レイドスーツに頼らなくてもちゃんと強くなれるようにしっかり鍛えてやるから覚悟しとけよ!」

「う"ん…う"ん…」

「よかったね。ゴジ君。」
 

 ゼファーはそう言ってゴジの頭を乱暴に撫でると、涙の溢れる目を手で拭っているゴジを見て、アインも涙を流している。
 

「ぐず…あぁ…!任せとけよ。じ…爺さん…だから俺を傍で見ててくれ…もう死ぬなんて言わねぇでくれよ。」
 

 ゴジの頭を撫でていたゼファーがビックリした顔をして手が止まり、上目遣いのゴジの眼差しにゼファーがたじろぐ。


「爺さんは俺の事を自分を超えて最年少で将校になれる男だって周りに言ってるんだろ?なら、俺が将校になって最強の海兵になら姿をちゃんと生きて見届けてくれ。それくらいのジジイ孝行ぐらい…俺にさせてくれよ。」
 

 ゴジはゼファーが自分のことを自慢の孫が出来たと、海軍将校の器だと周りに言い触らしていることを知っている。

 ゼファーは自分で気付かない内に海軍本部基地内では知らない者は居ないくらいにゴジの事を自慢しているので、自分の耳に入る度に恥ずかしさよりも自分が憧れた男に認められていると知って誇らしかった。


 ──あぁ。すまねぇな。まだ当分あの世(そっち)には行けそうにねぇや。


 ゼファーは自分に笑い掛けるゴジに自分の亡き子の姿を重ねて涙が溢れてくる。


「あぁ…そうだな…。ずまねぇ…クソガキの泣き虫が移りやがっだぁ…うぅぅ…ほんどぅに…ずまねぇ…」

 
 ゼファーは自分の子供にこちらにまだ来るなと言われた気がして、妻子を失って以来初めて涙を流した。


「爺さん…」

「ぜん…ぜい…」
 

 ゼファーは自分を見て泣いているアインにも気付き、この温もりを絶対に手放さないという強い意思を込めてアインとゴジを纏めて左腕で強く抱き締めた。

 
「爺さんちゃんと見てろよ。将校なんて曖昧なもんじゃなくて爺さんが死ぬ前に俺は大将になってやるからな!」

「ふっ…この俺でも大将になるのに20年掛かったんだぞ?」

 
 ゼファーはゴジ達を解放して笑いかけた。

 20年経てばゼファーは80歳を超えてしまうから、ゴジはそんなにゼファーを待たせる訳にはいかないと考えている。


「なら、俺は10年もあれば余裕だ!」

「そうか…そうだな!がははは!」

「私がゴジ君をちゃんと支えてあげるわ!」

「頼んだぞ。人の命令をロクに聞かん孫だからな。アインがちゃんと支えてやってくれ!」

「はい!」

「人を子供みたいに言うなよ!!」

「「子供だろ(でしょ)!!」」


 ゼファーは子供らしい抗議の声をあげる孫の頭を乱暴に撫でながら、ゴジがアインと共に成長して海軍将校として活躍する姿を思い浮かべて笑った。 
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