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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第一章 少年期
  第二十一話 ヒーローの条理

 ウィーブル海賊団は訓練船から離れた船上で戦いを見守っており、受け入れられない結果に唖然となっていた。


「「「船長おぉぉぉ!!」」」


 正気を取り戻したウィーブル海賊団の部下達は涙を目に浮かべながら彼を助ける為に全速力で自分達の船を訓練船に近付ける。


「うぅぅぅ…ウィーブル、私の宝物…私のウィーブル!貴様らよくも…ウィーブルを…」

 
 1メートル程の身長にド派手な衣装に金髪ショートヘアで黒色サングラスを掛けた60歳前後のウィーブルの母親で四皇”白ひげ”エドワード・ニューゲートの愛人を自称するミス・バッキンは愛する息子が突如現れた金色の戦士に倒されて、今まさに海軍に拘束されていく様を見せられて今はただ大粒の涙を流していた。


桃色毒罠(ピンクトラップ)!!」


 そんな悲しみに暮れる海賊船に幼い男の子の声と共に桃色の霧が漂い始めた。


「なっ…これはウィーブルを倒したピンクの霧、あんたら、これを吸うんじゃないよ!!」


 “海賊王”ゴール・D・ロジャーらと戦ってきたミス・バッキンはいち早く海賊船を覆い始めた桃色の霧に気づき、注意を促すも既に手遅れであった。


「「「ぐぅ〜……。」」」


 海賊船は突如桃色の霧に覆われ、その霧は全ての船室にも容易に到達し、口を覆いながら甲板の床に這いつくばるようにしているミス・バッキン以外の船にいる全ての者が眠りについた。
 

「へぇ……いち早く桃色毒罠(ピンクトラップ)に気づいて体制を低くしてやり過ごすとは...やるね♪」


 ゴジは透明になったままで催眠ガスを吐き出しながら海賊船の周りを旋回して船を覆う程の霧を作り出していたので、いち早く異変に気付いて対処したミス・バッキンに賞賛の声を送った。


「あんたは……ウィーブルを倒しt……くっ……いし……きが……。」


 ゴジは自分の持つ数ある能力で最強の能力を挙げよと言われれば迷わず毒と答える。


「逃げ道のない船上で催眠ガスから逃げる術はない。眠れ...戦いはもう終わりだよ。」


 母の治療の過程で世界のありとあらゆる薬品、毒に触れてそれらを自らも作り出す事が出来るゴジは例えば全くの無色無臭で一息吸い込んだだけで相手を即死させる毒すら作る事が出来るから迷わずそう答えられるのだが、レイドスーツを着ていない彼では毒の制限こそないものの口や手足から多少の毒を出せるだけであり、今回のように船を覆うほどの毒息を吐くことは出来ない。


「ぐがー……ぐがー。」


 ゴジはその場に倒れ伏して大いびきをかき、鼻ちょうちんを作りながら寝始めたミス・バッキンを見て指を鳴らして毒を霧散させた。


「爺さんの腕を切り飛ばしたウィーブルと違ってお前達を殴る理由はねぇんだ。」 


 こうしてゴジは一切の戦闘も起こすことなく、ウィーブル海賊団を無力化させたのだった。

 
 ◇
 

 その後、ゼファーの応急処置とウィーブルの拘束を終えた訓練船が海賊船に近付いて訓練生達が海賊船に乗り込むと、至るところで海賊達全員が眠りについていた。
 

「海賊達は寝てるのか?」

「すげーーっ!全滅してる!?」

「あれ?パーフェクトゴールドは?」

「ん?どこだ?まだお礼も言ってねぇのに…」
 

 訓練生達はこの事態に際して即座にパーフェクトゴールドが全て倒したのだと気付き、感嘆の声を上げながら船を探し始めた。
 

「てめぇら、何してやがる!?敵がせっかくねんねしてんだ。さっさと海賊共を拘束しろ!」

「「「はっ!」」」

 
 そんな浮き足立っている訓練生達にゼファーが喝を入れると、訓練生達は慌てて倒れ伏す海賊達を縄や鎖を使って拘束していく。


「ゴジ君?何処なの!?」


 そんな中、アインは誰よりも早く海賊船に乗り込んで船内を隅から隅まで走り回ってゴジを探していた。


「アイン姉ちゃん、だだいま!」


 そんなアインの隣にレイドスーツを脱いで元の海兵服に戻ったゴジが透明化能力を解いて姿を現した。


「あっ……!?ゴジ君おかえりなさい!よかった……怪我はない?」


 アインはゴジの姿を見つけた瞬間にキュッと抱き締めた後、彼を解放して怪我がないかを頭の先から足の先まで見て確認している。


「この通り大丈夫だよ!ニッ!!」


 アインは元気よく笑うゴジの姿に胸を撫で下ろして再度抱き締める。


「よかった……。本当によかったわ。」


 再度抱き締められたゴジも優しくアインを抱き締め返した。


「ふん……美女からの抱擁はヒーローにとって最高のご褒美だよな。しばらくそっとしとくか……。」
 

 訓練生達に海賊の拘束を命じた後、アインと同じくゴジを探していたゼファーは船室で無事を喜び抱き合う二人の姿を見ながら、二人に気づかれぬようにその場を離れた。


「あんた達、あたしの縄を解きな…ただじゃおかないよ!?あたしのウィーブルはどこだい!?」


 ゼファーが二人から別れて甲板に出ると海賊達の中でいち早く目が覚めたミス・バッキンが喚き散らしていたところだった。


「よぉ……ミス・バッキン。相変わらずうるせぇ…ババアだな。」


 ゼファーは現役時代にかつて白ひげの船に乗っていたミス・バッキンと幾度となく顔を会わせたことがある旧知の仲である。


「あんたは“黒腕”のゼファー!足でまとい共を連れているあんたを倒してウィーブルの名をあげる計画だったのにぃぃぃ!!?何なんだいあの金ピカは!?それにあたしのウィーブルはどこだい!?」


 今回の襲撃の首謀者であるミス・バッキンが今回の襲撃の全貌を語ったことで、海賊達を詰問する必要がなくなった。

 
「お喋りなババアのおかげで手間が省けたお礼に教えてやるよ。お前達を倒したのはジェルマ66(ダブルシックス)のパーフェクトゴールド。お前の息子は海の戦士ソラとの戦いの中で正義の心を持ったあの正義のヒーローに負けたんだ。」


 ゼファーは己のことのように胸を張りながらミス・バッキンに事実を突き付けた。


「じぇるま?ぱーふぇくとごーるど??それにヒーローだって?そんなもんいるはず…」


 ミス・バッキンは聞き馴染みのない言葉に首を捻る。


「お前も見ただろう?俺達はあの男に救われたんだぜ。困ってる人を助けた後は何も言わずに立ち去る…それがヒーローの条理ってもんだ。そうだろう…野郎共!?」


 ゼファーは未だにソワソワしながらパーフェクトゴールドの姿を探している訓練生達にも聞こえるように大声で『人助けをした後は何も言わずに立ち去る』というヒーローの条理を説くと、訓練生達はハッとなる。


「「「はっ……!?うおおぉぉぉーーっ!」」」


 ヒーローの条理を即座に理解した訓練生達はゼファーの言葉に雷で撃たれたような衝撃を受けて空を割らんばかりの歓声をあげた。

 自分達の知っているヒーローは昔からそういうものだったと、ならばせめてこの感謝の声が自分達を助けてくれたヒーローに届いてくれることを願って声の限り叫んだ。


「うっせぇな。そんなに叫ばなくても聞こえてるっての。」


 ヒーローの条理を見事に果たしたパーフェクトゴールドに感動して泣きながら雄叫びを上げている訓練生達の声に気付いたアインとゴジは耳を押さえながら船室から甲板に顔を覗かせた。
 

「私は皆と違ってゼファー先生の理屈はよく分からないけど、なんか誤魔化せたようでよかったね。ゴジ君!」

「あぁ……爺さんに感謝だな。」
 

 女性のアインにはヒーローの条理は分からなかったが、仲間達の反応からゴジのことが誤魔化せたことが分かり、ゴジと手を取り合って笑いあっていた。
 

「ゼファー!意味が分かんないよ!あの金ピカはそれでどこ行ったんたい!?早くここに連れて…」


 アイン同様に女性であるミス・バッキンにもヒーローの条理は分からずに口喧しく騒ぎ立てる。


「だからうっせぇよ。ヒーローってのはそういうもんなんだ!いい加減黙れババア!」
 

 ゼファーは左拳でミス・バッキンの頭にゲンコツを落として意識を奪った。
 

「ふんっ!これで静かになったぜ。さあ、このままじゃ海軍本部には帰れん。さぁ野郎共海底大監獄(インペルダウン)へ向けて出港だ!」


 ゼファーの号令で訓練船は眩しい朝日に向けて走り出した。


「「「はっ!」」」
 

 こうして黒腕のゼファーを狙って名を挙げようとしたウィーブル海賊団は突如現れた黄金のヒーローによって完膚なきまでに壊滅したのだった。 
 

 
後書き
5月22日加筆修正 
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