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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第一章 少年期
  第十九話 パーフェクトゴールド

 ゼファーの話が終わるとアインはゴジの背中を見つながら寂しそうに呟く。


「悲しい話ですね…」

「だが、世界政府の思惑通りに悪党が自分の罪を悔いて償おうというこの物語の効果は絶大だった。その年、北の海(ノースブルー)の自首者が大幅に増えた。」
 

 アインは頭を上げて空に浮く白銀の鎧と金色の服を着て黒いマントをたなびかせるゴジを見つめた。
 

「そうですか…ゴジの姿がそのパーフェクトゴールド?に似てるんですか?」


 ゼファーはパーフェクトゴールドのレイドスーツを身に付けたゴジを見て爆発と電気の能力が使える理由を知って大口を開けて笑う。


「あぁ…似てるなんてもんじゃなく、瓜二つだ。それに爆発と電気ね...ってことはあの力があればウィーブルの怪力にも対応出来るのか...ガハハハハ!!」


 アインは突然笑い始めたゼファーの姿に首を捻る。


「先生?」


 そんな2人のやり取りを他所にようやく感電が解けて体の自由が効き始めたウィーブルは小さく唸りながら、ゴジを睨みながら大きく息を吸い込む。


「ぐぞぉぉぉぉ…!チビ…殺す。ビリビリ…嫌だあああぁぁぁー!!」
 

 ウィーブルは人獣形態のまま、空が割れんばかりの雄叫びを上げて自分が痺れから復活した事をアピールする。


「うるせぇ...この周囲の音を調整する耳当てが無けりゃ、鼓膜が破れてたかもな。」


 ゴジの両耳を覆うヘットギアのような耳当てには大きな音や小さな音を調整して鼓膜に届ける機能が備わっている。


「ゴジ、一つだけ聞かせろ……そのレイドスーツは本物か?」


 だから、ウィーブルの雄叫びの最中にゼファーが問い掛ける質問もしっかりと耳に届いており、ゴジは笑みを浮かべて口角を上げ、ゼファーに振り返ながら、靴に仕込んである浮遊装置を使ってその場からゆっくりと浮き上がり始めた。


「「なっ……浮いた!?」」


 目の前で宙に浮き上がり始めたゴジを見たアインとゼファーは空いた口が塞がらないという顔をする。


「くくくっ……。爺さん、これで分かったろ?アイン姉ちゃんは爺さんを頼む。2人とも詳しい事は後で話すから今は俺を信じて任せてくれ。今の俺ならアイツに勝てる。」


 ゴジは予想通りのアイン達の反応にニヤケながら、アイン達を背にしてウィーブルと対峙する。


「あぁ!!」


 ゼファーはあくまでも物語の話であった浮遊装置付きの靴を見て童心に返ったようにワクワクしている。


「分かったわ…」

 
 アインは原作のパーフェクトゴールドの強さすらも知らないが、ゴジの声音には妙な安心感がある上にゼファーの期待に満ちた顔を見てしぶしぶ頷く。


「小さなパーフェクトゴールドのお手並み拝見といこうか…くくくっ!!」


 ゼファーはジェルマ66(ダブルシックス)の一人のファンとしてパーフェクトゴールドの活躍に期待している自分に気付いて苦笑するが、その期待は現実のものになる。
 

「わがったど!チビ…おべぇーも悪魔の実の…能力者…だな?」


 ゴジはウィーブルの顔の前まで浮遊装置を使って移動し、右手を突き出して掌を上に向けながら手招きして原作に出てくるパーフェクトゴールドの決めゼリフをキッチリと口にする。


「残念…不正解。俺はジェルマ66(ダブルシックス)のパーフェクトゴールド。荒れるぜ…止めてみな!」


 ゴジはウィーブルを挑発しながら、観察眼で彼の動きしていると、挑発に乗って激昂したウィーブルが左拳で自分を殴り飛ばそうとしていることに気付く。
 

「生意気…死ねぇーっ…チビィィーッ!」


 ウィーブルはゴジ程度相手には自慢の薙刀ではなく、拳で十分だと判断して、左拳を真っ直ぐに突き出してきた。


「怪力対決か…受けて立つぜ!怪力解放...“巻力砲瑠(ウインチポール) ”!」
 

 ゴジは浮遊装置で宙に浮いた状態から深く腰を落とすと武装色の覇気を纏って黒く硬化した左拳をウィーブルの左拳目掛けて真っ直ぐに突き出すと、ウィーブルの左拳とゴジの左拳が激しい轟音と共にぶつかり合う。
 

「ぐがっ!?…おっ…とっとと…!?」


 ゴジは宙に浮いたまま微動だにせずに左拳を突き出したままのニヤリと笑う。


「どうした?怪力自慢。その程度か?」


 ウィーブルの放った左拳は弾き飛ばされてドンドンと足音を立てながら、たたらを踏んで後ろに後退した。


「あで?おでのパンチ?」


 ウィーブルは不思議そうな顔で自分のジリジリと痛む左拳とゴジの手袋に傷一つない左拳を見比べて首を傾げていた。
 

「やはり!ウインチグリーンの怪力も持っているのか!?普段使う爆発の力はスパーキングレッド。そして最初にウィーブルを蹴り飛ばしたのはデンゲキブルーの電撃技!?これは間違いないぞ!!」


 ゼファーが元々ゴジから聞いていたのは爆発の能力だけだった、今の目の前で新たに電撃の力と怪力を見せられて憧れのヒーローに逢った少年のように胸が熱くなるのを感じている。


「ゴジ君…強い…」
 

 ウィーブルの攻撃を真正面から弾き返したゴジにゼファーとアインは絶句するが、ゴジは自分の力に満足したおり、何よりもヨンジの怪力であればウィーブルの力にも負けないことが分かって嬉しかった。
 

「ふはははっ!やっぱりヨンジ兄さんの力の方が上だろう♪それにしてもレイドスーツは武装色の覇気も強化してくれるとは...これはいい!!」


 レイドスーツは全身の血統因子を含む細胞を活性化させることで通常よりも強い力を引き出せるので、パーフェクトゴールドとなったゴジは能力を十全に引き出せるだけでなく、自身に漲る武装色の覇気から先程までの武装色の覇気も強化されていることはいい誤算であった。


「日々の鍛錬で元々の基礎体力が上がったからか……体が以前にこれを着た以上に動く。これも全部爺さんのおかげだな。」
 

 さらに運動能力を補助する役割も持つレイドスーツは着用者自身の運動能力が上がれば上がるほどその効果は絶大なものとなり、日々のゼファーとの訓練がパーフェクトゴールドとなったゴジを確実に強くしていた。


「おでは…強い!!」


 ウィーブルは全身に覇気を漲らせながら、薙刀を振り上げて自分に向けて突進しながら攻撃に転じようとするのが、ゴジの目には彼の動きが手に取るように分かる。
 

「バカな割にはいい判断だよ。後ろには爺さん達も居るし、それが船に当たったら船が真っ二つになるからな……。だから俺はそれを受け止めるしかねぇって事だろ?」
 

 ウィーブルは勿論そこまで考えてわけではなく、頭に血が上り全力でゴジの命を刈り取らんとしているだけであり、体重を載せた薙刀を上段から真っ直ぐに振り下ろした。


牛刀両断(ぎゅうとうりょうだん)!」


 ゴジは両手にバチバチと電気の力を纏い始めた。


「だが、俺には無意味だ。来い!!“電撃(プラズマ)ダブルフィスト”!」


 ゴジはウィーブルの薙刀が自分に届く直前に自分の眼前で両拳をぶつけるようにして白刃取りの要領でその凶刃を受け止めた。


「なっ……!?ぐごっ…ぎゃああばばばばぁぁぁー…」
 

 ウィーブルはゴジに薙刀を受け止められた事に驚いたのもつかの間、ゴジの両拳から流れ出る高電圧が薙刀を伝って彼の体に届くと、全身が焼け焦げるほどの高電圧の電流によって感電した。
 

「これがニジ兄さんの電撃だよ。俺の電撃とは一味違うだろう?ん?」
 

 ゴジはニジの電撃の威力に満足していると黒焦げになったウィーブルが白目を向いて前のめりに倒れようとしているのに気付く。


「が...があ...がはっ...!?」


 ウィーブルは高電圧の電流を浴びて意識を失っているが、ゴジはゼファーを瀕死に追い込んだウィーブルをこの程度で許すわけなかった。
 

「起きろよ、デカブツ!“火花(スパーキング)フィガー”!」
 

 ゴジの火花の能力を宿した右拳が倒れようとするウィーブルの左頬に突き刺さるとゴジの右拳を中心として大爆発が起こる。
 

「くべっ!?」


 ゴジはウィーブルの顔を黒焦げにしながら、彼の巨体を甲板の手すりまで殴り飛ばした。


「そして、これがイチジ兄さんの拳だ。」
 

 ゴジは拳を振り切ったまま悦に浸る。


「ぐ…いでぇ…あがが…ぐぅ…」


 強制的に意識を戻されたウィーブルは未だに自由の効かず、痛みに喘ぐことすら出来ない苦しみの声を漏らしていた。


「どうした?もう終わりか。勝ったのにスッキリしないのは……そうか。借り物の力で勝ったところで嬉しさは半減だよな。」

 
 浮遊装置で空に浮き上がっているゴジはそんなウィーブルを見下ろしながら、兄達の強さに酔いしれながらもレイドスーツに頼らざるを得なかった自分の弱さに何処か寂しさを感じていた。


「おで...おでは...じろじげのむずごだあああぁぁぁぁー!!!」


 ウィーブルは驚異的な強さを手に入れたゴジの気持ち等分かるはずもなく、己を鼓舞しながら雄叫びと共に立ち上がった。


「エドワード・ウィーブル、俺はいつか必ず俺自身の力でお前を超える。今は借り物の力でも、俺の誇りに賭けてお前を捕らえる!!」


 ゴジは己の矜恃よりも海兵として誇りを胸に海賊エドワード・ウィーブルを捕らえる為に油断なく覇気を体中に漲らせていく。


 ◇
 

 戦いを見守っていたアインとゼファーは対照的な反応を示していた。
 

「凄い…」


 アインは終始ウィーブルを圧倒したゴジの力を見て絶句し、呆然と戦いを見守っていた。


「がははは!怪力、爆発、電撃…やっぱり、パーフェクトゴールドはこうでないとな!いてて…」


 ゼファーは最初の一合以降はゴジの勝利を確信して、ジェルマ66(ダブルシックス)のファンとしてパーフェクトゴールドの活躍に自分の負傷を忘れ興奮して立ち上がろうとして全身の痛みに気付いて呻き声を上げた。

 
「先生は怪我人なんですから…じっとしてて下さい。」
 

 ゼファーの呻き声が聞こえたアインが彼を窘めるとゼファーは大人しくその場に座るが、パーフェクトゴールドの活躍に興奮しているのはゼファーだけでなく、ゼファーの指示に従って避難船に乗ってアイン達を待って訓練船に係留したまま海洋を漂っている訓練生も同様だった。
 

「すげーぞ!あの金ピカ、化け物を殴り飛ばしたぞ!?」

「馬鹿!あれはジェルマ66(ダブルシックス)のパーフェクトゴールドだぞ。お前、知らねぇのか?いいかパーフェクトゴールドってのは…」


 訓練生の中にも北の海(ノースブルー)出身者がいた様子で、パーフェクトゴールドについて語り始めようとしていた。


「どうでもいい。いけぇー金ピカァー頑張れ!!」

「「「頑張れええええぇ!!」」」

「聞けよ!だがら、パーフェクトゴールドってのは…」
 

 訓練生達はゴジがパーフェクトゴールドに変身した場面も見ておらず、ただ訓練船を襲った巨大な化け物を退治しようと現れた正体不明の“ヒーロー”を全力で応援していた。 
 

 
後書き
5月19日加筆修正 
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