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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第一章 少年期
  第十九話

 ゼファーの話が終わるとアインはゴジの背中を見つながら寂しそうに呟く。


「悲しい話ですね…」

「だが、世界政府の思惑通りに悪党が自分の罪を悔いて償おうというこの物語の効果は絶大だった。その年、北の海(ノースブルー)の自首者が大幅に増えた。」
 

 アインは頭を上げて空に浮く金色の服を着て黒いマントをたなびかせるゴジを見つめた。
 

「そうですか…ゴジの姿がそのパーフェクトゴールド?に似てるんですか?」

「あぁ…そっくりだ!」


 ゴジの出生を知るゼファーは彼の姿からある事を思い始めた。


 ───ジャッジが息子に持たせたこのレイドスーツが見掛け倒しなはずねぇ。


「ぐぞぉぉぉぉ…!チビ…殺す。ビリビリ…嫌…」
 

 ウィーブルは人獣形態のまま雄叫びを上げて自分が痺れから復活した事をアピールする。


「ゴジ、一つだけ聞かせろ……それは本物か?」


 ゼファーが知りたいのはただ1つだけだった。

 ただゼファーが『海の戦士ソラ』のファンだからといえばそれ以上の言葉を持たないが、今のゴジには言葉では表せない安心感があり、自分が惨敗したウィーブルにも勝てるのではと思い始める。


「あぁ。これは本物のレイドスーツだよ。ニッ!」


 ゴジは笑みを浮かべて口角を上げ、ゼファーに振り返ながら、靴に仕込んである浮遊装置を使ってその場からゆっくりと浮き上がり始めた。


「「なっ……浮いた!?」」


 目の前で宙に浮き上がり始めたゴジを見たアインとゼファーは空いた口が塞がらないという顔をするので、その顔を見たゴジはおかしくなる。


「くくくっ……。これで分かったろ?アイン姉ちゃんは爺さんを頼む。2人とも詳しい事は後で話すから今は俺を信じて任せてくれ。今の俺ならアイツに勝てる。」

「あぁ。」

「分かったわ…」

 
 アインはパーフェクトゴールドの強さも知らない、ゴジが宙に浮き上がる靴を履いて、服を着替えただけでウィーブルに勝てるとも思わないけど、ゴジの声音には妙な安心感があり、ゼファーも納得しているようなので彼に従う事にした。

 ゼファーはあくまでも物語の話であるが、ジェルマ王国は浮遊装置が付いた靴だけでなく、身体機能を強化する機能等が付いた本物のレイドスーツを作ったのではないかと思い始めて童心に返った子供のようにワクワクし始めた。


「ふっ…なら、小さなパーフェクトゴールドのお手並み拝見といこうか…」


 自分の予感が当たっていることをジェルマ66(ダブルシックス)の一人のファンとしてパーフェクトゴールドの活躍に期待している自分に気付いてゼファーは苦笑した。

 そして…ゼファーのその期待は現実のものになる。
 

「わがったど!チビ…おべぇーも悪魔の実の…能力者…だな?」

「残念…不正解だ。俺はジェルマ66(ダブルシックス)が一人パーフェクトゴールドだよ。荒れるぜ…止めてみな!」
 

 ゴジはウィーブルの顔の前まで浮遊装置を使って移動し、右手を突き出して掌を上に向けながら手招きして原作に出てくるパーフェクトゴールドの決めゼリフをキッチリと口にする。

 ゴジはウィーブルを挑発しながら、観察眼で彼の動きしていると、挑発に乗って激昂したウィーブルが左拳で自分を殴り飛ばそうとしていることに気付く。
 

「生意気…死ねぇーっ…チビィィーッ!」

「怪力対決か…受けて立つぜ!“巻力砲瑠(ウィンチポール)”!」
 

 ゴジは浮遊装置で宙に浮いた状態からその場で怪力の能力を解放しながら武装色の覇気を纏って黒く硬化した左拳をウィーブルの左拳目掛けて真っ直ぐに突き出すと、ウィーブルの左拳とゴジの左拳が激しい轟音と共にぶつかり合う。
 

「ぐがっ!?…おっ…とっとと…」


 ゴジの力がウィーブルを上回り、宙に浮いたまま微動だにせずに左拳を突き出したままの体勢で不敵に笑うゴジとは対照的にウィーブルはドンドンと足音を立てながら、たたらを踏んで後ろに弾き飛ばされた。


「おでのパンチ?」


 ウィーブルは不思議そうな顔で自分の左手とゴジを見比べている。
 

「ウインチグリーンの怪力の力か…?なら、爆発の力はスパーキングレッド……それにさっきのはデンゲキブルーの電撃技!?」


 さっきまでウィーブルを感電させていたのは紛れもなくゴジの膝蹴りだった。

 ゼファーが元々ゴジから聞いていたのは爆発の能力だけだった、今の目の前で電撃の力と怪力を見せられたゼファーは憧れのヒーローに逢った少年のように胸が熱くなるのを感じた。


「ゴジ君…強い…」
 

 ウィーブルの攻撃を真正面から弾き返したゴジにゼファーとアインは絶句するが、ゴジは自分の力に満足している。
 

「ふはははっ!やっぱりヨンジ兄さんの力の方が上だろう♪それにしてもレイドスーツは武装色の覇気も強化してくれるとは、いい誤算だ。」


 自分の予想通りヨンジの怪力であればウィーブルの力にも負けないことが分かって嬉しかった。

 レイドスーツは全身の血統因子を含む細胞を活性化させることで通常よりも強い力を引き出せるので、パーフェクトゴールドとなったゴジは能力を十全に引き出せるだけでなく、自身に漲る武装色の覇気から先程までの武装色の覇気も強化されていることに気づいた。


「それにやっぱ基礎体力が上がったからか……体が前以上に動く。これも全部爺さんのおかげだな。」
 

 さらに運動能力を補助する役割も持つレイドスーツは着用者自身の運動能力が上がれば上がるほどその効果は絶大である。

 日々のゼファーとの訓練がゴジをでパーフェクトゴールドを確実に強くしていたのだ。


「おで…強い…“牛刀両断(ぎゅうとうりょうだん)”!」


 ウィーブルは再び薙刀を振り上げて自分に向けて突進しながら攻撃に転じようとするのが、ゴジの目には彼の動きが手に取るように分かる。
 

「バカな割にはいい判断だよ。後ろには爺さん達も居るし、それが船に当たったら船が真っ二つになるからな……。だから俺はそれを受け止めるしかねぇって事だろ?」
 

 ウィーブルは勿論そこまで考えてわけではない。

 頭に血が上り全力でゴジの命を刈り取らんとしているだけだが、ゴジはウィーブルが振り下ろす薙刀を受け止めるために両手にバチバチと電気の力を纏い始めた。


「“雷撃(プラズマ)ダブルフィスト”!」


 ゴジはその刃が自分に届く直前に自分の眼前で両拳をぶつけるようにしてその刃を受け止めた。


「なっ……!?ぐごっ…ぎゃああばばばばぁぁぁー…」
 

 ウィーブルはゴジに薙刀を受け止められた事に驚いたのもつかの間、ゴジの両拳から流れ出る高電圧が薙刀を伝って彼の体に届くと、全身が焼け焦げるほどの高電圧の電流によって感電した。
 

「これがニジ兄さんの電撃だよ。俺のとは一味違うだろう?ん?」
 

 ゴジはニジの電撃の威力に満足していると黒焦げになったウィーブルが白目を向いて前のめりに倒れようとしているのに気付く。

 ウィーブルは高電圧の電流を浴びて意識を失っているが、ゴジはゼファーを瀕死に追い込んだウィーブルをこの程度で許すわけなかった。
 

「起きろよ、デカブツ!"火花(スパーキング)フィガー"!」
 

 ゴジの火花の能力を宿した右拳が倒れようとするウィーブルの左頬に突き刺さると、大爆発が起こりウィーブルの顔をさらに黒焦げにしながら、彼の巨体を甲板の手すりまで殴り飛ばした。
 

「くべっ!?」

「そして、これがイチジ兄さんの爆発する拳だ。加減しなきゃ海へ落としそうになるな!」
 

 ウィーブルは意識は戻ったものの…ダメージを受けすぎて人獣形態から人形態に戻り、呻き声を上げながら甲板に倒れ伏している。


「ぐ…いでぇ…あがが…ぐぅ…」

「どうした?もう終わりか。勝ったのにスッキリしないのは……そうか。借り物の力で勝ったところで嬉しさは半減だよな。」

 
 浮遊装置で空に浮き上がっているゴジはそんなウィーブルを見下ろしながら、自分の……そして自分を送り出してくれた兄達の強さに酔いしれながらもレイドスーツに頼らざるを得なかった自分の弱さに何処か寂しさを感じていた。


 ───もっと強くなる。

 ───俺の夢はパーフェクトゴールドになる事じゃねぇ。俺の夢は━━━になる事だ!!


 そして必ずレイドスーツに頼らなくても立派に戦える海兵になる事をここに誓った。
 

 ◇
 

 戦いを見守っていたアインとゼファーは対照的な反応を示していた。
 

「凄い…」

「がははは!怪力、火花、電撃…やっぱり、パーフェクトゴールドはこうでないとな!いてて…」
 

 アインは終始ウィーブルを圧倒したゴジの力を見て絶句し、呆然と戦いを見守っていた。

 ゼファーは最初の一合以降はゴジの勝利を確信して、ジェルマ66(ダブルシックス)のファンとしてパーフェクトゴールドの活躍に自分の負傷を忘れ興奮して立ち上がろうとして全身の痛みに気付いて呻き声を上げた。

 
「はぁ…先生は怪我人なんですから…じっとしてて下さい。」
 

 ゼファーの呻き声が聞こえたアインが彼を窘めて、ゼファーは大人しくその場に座るが、パーフェクトゴールドの活躍に興奮しているのはゼファーだけでなく、ゼファーの指示に従って避難船に乗ってアイン達を待って訓練船に係留したまま海洋を漂っているビンズ達訓練生も同様だった。
 

「すげーぞ!あの金ピカ、化け物を殴り飛ばしたぞ!?」

「馬鹿!あれはジェルマ66(ダブルシックス)のパーフェクトゴールドだぞ。お前、知らねぇのか?いいかパーフェクトゴールドってのは…」


 訓練生の中にも北の海(ノースブルー)出身者がいた様子で、パーフェクトゴールドについて語り始めようとしていた。


「どうでもいい。いけぇー金ピカァー頑張れ!!」

「「「頑張れええええぇ!!」」」

「聞けよ!だがら、あれは…」
 

 訓練生達には訓練船にいるゼファー達の声は聞こえておらず、ゴジがパーフェクトゴールドに変身した場面も当然ながら見ておらずパーフェクトゴールドの正体も不明なままであるも、訓練船を襲う巨大な化け物を退治してくれている空飛ぶ“正義のヒーロー”を全力で応援していた。 
 

 
後書き
前半の山場です。

見返す度にちょくちょく修正を入れてしまいます……。 
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