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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第一章 少年期
  第十八話 ヒーローとは

 『海の戦士ソラ』とは世界政府が子供達に勧善懲悪を教える教材として制作した世界経済新聞に掲載された絵物語つまり連載漫画である。
 

「先生…パーフェクトゴールドって何ですか?」
 

 変身したゴジの正体を知っている様子であるゼファーに傍まで走り寄ってきたアインが問いかけた。
 

「ん?アインか?俺がガキのころから世界経済の一コマで連載していた『海の戦士ソラ』って物語に登場する敵役、悪の軍団ジェルマ66(ダブルシックス)の一人だ。」
 

 ゼファーは後ろから声を掛けてきたアインに気付いて、彼女を振り返ってから説明し始めた。


「じぇるま……だぶるしっくす?」


 アインは聞き慣れない名前に首を傾げるが、ゼファーは説明を続けていく。


「そうだ。各々が悪魔の実を模した特殊な能力を持つんだ。爆発する閃光の能力を持つスパーキングレッド、電気の能力を持つデンゲキブルー、透明化の能力を持つステルスブラック、人外な怪力と伸び縮みする能力を持つウインチグリーン、あらゆる毒を操るポイズンピンク、そしてこの五人全ての能力を併せ持ち、天才的な頭脳を有するパーフェクトゴールドの6人で、彼らをこの世に生み出して指揮し、世界征服を目論む男こそ総帥ガルーダ。」


 饒舌に語るゼファーは、総帥ガルーダと友ジャッジの姿を重ねてほくそ笑む。


「あっ!?先生、そうだ!右腕…コートを脱いで下さい!」


 アインは自分が大怪我していることを忘れたように楽しそうに語るゼファーの怪我を思い出したように彼の海軍コートで傷口を止血し始めた。


「あ…あぁ。すまねぇ…」


 人は好きな事を語る時は饒舌になるとよく言われるが、ゼファーとて例外ではなく痛みを忘れて話していた。


「先生詳しいですね?」


 アインは海軍コートを破って即席の包帯として使い、ゼファーの右腕の止血をしながら、話の続きを促す。


「元々『海の戦士ソラ』は世界政府が子供達への勧善懲悪を教える目的で正義の味方ソラが悪逆非道のジェルマ66(ダブルシックス)を懲らしめる物語で、政府の役人や海兵が活躍した話を創作している。俺が解決した事件を元にした話もあるくらい...いでで...もう少し優しくしてくれ。」


 ゼファーはアインに誇らしげに語り聞かせていくと、アインが傷口を包帯でキツく縛ったことで痛みを訴える。


「我慢してください!!でも、私はそんな物語聞いた事ないですよ。」


 右腕の止血を終えて一安心したアインが首を捻る。


「アインの出身は偉大なる航路(グランドライン)だったな。物語の舞台が何故か北の海(ノースブルー)だから連載されていたのも北の海(ノースブルー)だけだからな。北の海(ノースブルー)出身者じゃねぇと知らないのも無理はない。」


 アインはゼファーがゴジの姿に興奮している事に違和感を感じる。


「ちょっと待ってください。先生の話を整理すると海の戦士ソラがジェルマ66(ダブルシックス)を倒すお話なら、ゴジ君の格好は悪役なんですよね?」


 ゼファーはウィーブルと対峙するパーフェクトゴールドのレイドスーツを纏うゴジを見ながら、興奮が抑えきれずに目を輝かせている。


「ジェルマ66(ダブルシックス)ってのは個々の能力だけじゃなく、身に纏うレイドスーツってのが耐刃・防弾性に優れる上、彼等の履く靴は空を自在に飛び回ることが出来る。しかし、その作り込み過ぎた設定の悪役に人気が出過ぎてしまい、逆に海賊や悪党を増やす要因にもなってしまった。そこで世界政府はある作戦に出た。」

「作戦ですか…?」
 
「簡単な話さ。悪役だからいけねぇんだ。ジェルマ66(ダブルシックス)の中でも特に人気の高いパーフェクトゴールドを改心させて味方にしてやろうって作戦だ。」
 
「えっ?そんな都合よく改心なんてさせていいんですか?」
 

 アインの言うことは、世間一般的に見たら最もであるので、ゼファーは苦笑する。


「あくまで子供向けの物語だからな。パーフェクトゴールドは悪の軍団ジェルマ66(ダブルシックス)として海の戦士ソラと戦う中で人を想う優しさに目覚めていく。そして、物語の最終話で世界を滅ぼそうとするジェルマ66(ダブルシックス)の作戦に反対したパーフェクトゴールドは、世界を守る為に仲間を裏切ってソラに協力し、二人でジェルマ66(ダブルシックス)を滅ぼすんだ。」

「へぇー...それで世界が平和になったんですか?」


 ゼファーは『海の戦士ソラ』のラストを鮮明に覚えている。


「いや、この話にはまだ続きがある。」


 何故ならそのラストはかつて世界中の誰もが目撃したある男の最期を模した話であり、ゼファーは処刑台に登るパーフェクトゴールドがソラに向けて言った最期の言葉を思い返していた。


『俺はこの世の全ての悪を背負っていく。ソラ、お前は平和の象徴になってくれ。』


 アインは何かを思い出すように遠い目をし始めたゼファーに声をかける。


「先生…?」


 ゼファーはアインの言葉でハッとなって『海の戦士ソラ』の最終話を話し始める。


「パーフェクトゴールドは事件後に自首して一人でこれまでのジェルマ全ての罪を背負って自ら処刑台に登り、彼が公開処刑されることで悪は去ったと世界中が歓喜し、平和が訪れることでこの物語は幕を閉じるんだ。」
 

 この”海の戦士ソラ”の最終話のモデルとなった話の元ネタは今から29年前に悪の限りを尽くしたロックス海賊団を滅ぼす為に海賊王ゴール・D・ロジャーと海軍本部中将モンキー・D・ガープが協力してロックス海賊団船長ロックス・D・ジーベックを捕らえることに成功した通称ゴットバレー事件である。

 この話におけるソラのモデルはもちろん“海軍の英雄”モンキー・D・ガープであり、全ての能力を手に入れた男 パーフェクトゴールドのモデルこそ、この世の全てを手に入れた男“海賊王”ゴール・D・ロジャーその人であるが、この事件に”海賊王”ゴール・D・ロジャーが関わっていることは当時の海軍上層部と世界政府の一部の者しか知らない秘密となっている。

 この事件の後、“海賊王”ゴール・D・ロジャーが出頭した際、海軍が捕らえたと大々的に発表して彼を公開処刑する事で世界に平和が訪れた事を知らしめようとしたが、彼の死に際の一言で逆に大海賊時代の幕開けとなってしまい、世界政府の思惑とは全く逆の結果になってしまった。


『おれの財宝か?欲しけりゃくれてやる。探せ!この世のすべてをそこに置いてきた!』


 ゴール・D・ロジャーの処刑に期待した結末を『海の戦士ソラ』の結末にして、海軍、世界政府を模した海の戦士ソラが世界平和の象徴となることで世界は平和になってこの物語は終わる。


「ウィーブルという巨悪を前にした(ソラ)に手を貸すパーフェクトゴールドってのは『海の戦士ソラ』の最後の話みたいだろ?」


 アインはゼファーがワクワクしている理由を知って吹き出したことで、ゴジがパーフェクトゴールドになってからウィーブルの脅威を感じない事に気付いて目を丸くした。


「あははっ!そんな理由だったんですね…そういう話は女である私にはいまいちピンときませんが...でも、不思議な感じです。ウィーブルは健在で状況は何も変わってないのにゴジ君の勝ちを信じて安堵している私がいます。」


 ゼファーは絶対の安心感を抱かせる存在感を持つパーフェクトゴールドの姿にかつて自分が夢見た正義のヒーロー像を重ねてニヤリと笑う。


「あぁ...助ける者に絶対の安心感を与えるあの背中こそが俺がお前達やゴジに期待するヒーローの姿だ。」

「ヒーローですか?」


 ゼファーは妻子の死でその夢を志半ばで諦めたが、そんな正義のヒーローこそが、この大海賊時代を終焉に導く平和の象徴に違いないとその夢を多くの新兵達に託してきた。


「そう。アイン!お前もその正義のヒーローの一人だぞ。正義を背負うヒーローが集う海軍こそ、この世界の平和の象徴。そしてゴジはその中でも最強のヒーローになれると信じてる。」


 そんな中でゼファーは今まで育ててきたどんな海兵よりも才覚と正義感に溢れるゴジに出会ったのだ。


「うふふ!はい。それは私も思います。」


 ゼファーとアインはウィーブルの巨体を前に立つパーフェクトゴールド姿のゴジの勝利を疑うことなく、彼の背中を見つめていた。 
 

 
後書き
5月14日加筆修正 
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