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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第一章 少年期
  第十七話 黄金の戦士

 ウィーブルは親愛なる母親ミス・バッキンから船にいる者は全員殺せと言われているので、母親との命令を果たす為に彼の纏っていた武装色の覇気が更に膨れ上がり、彼は角を黒く硬化させてゼファー目掛けて真っ直ぐに突っ込んでくる。


「ゼファー…邪魔…おで、皆殺す…母ーたんに、言われた…邪魔するなぁ!」


 対するゼファーも全身に覇気を漲らせて左腕を黒く硬化させながら腰を低くして、ウィーブルの突進を待ち受けた。
 

「行かせるかあぁぁーっ!来い!!」
 

 10メートルを超える巨体を持つウィーブルが真っ直ぐにゼファーに激突した瞬間、彼は目を見開いて驚愕した。


「な……に……うごかな……!?」


 ゼファーはウィーブルの角を自身の腹に刺さる直前に左腕1本で掴んでみせただけでなく、体全体を武装色の覇気で硬化させて突進そのものを受け止めてみせた。


「だから……ここから先には行かせねぇと言った……だろうがああぁぁぁぁ!!」


 ゼファーが全身の力を込める度に彼の傷口から血が吹き出るが、ゼファーは力を緩める所か自分の三倍以上の体格差のあるウィーブルの角を片腕で持ち上げてウィーブルを投げ飛ばした。


「うおっ……あでっ!?」


 その姿はまさに海軍本部大将“黒腕”のゼファーと呼ばれた全盛期の姿だったが、ゼファーは血を流し過ぎたため、体の力が抜けて膝を付く。

 
「ゼファー邪魔…まず…殺す。」


 ウィーブルは甲板の上にひっくり返ったまま、ギョロりとゼファーを睨み付けた。


「はぁ、はぁ…そうだ。それでいい。来い!」


 ゼファーはウィーブルの敵意が自分に向いたことで、ゴジ達が逃げる時間が作れた事にほくそ笑む。


 ───ウィーブル…俺の首はくれてやるが、アイツらには手を出させねえぞ!


 しかし、ゼファーは膝を付いたままで立ち上がることが出来ず、出血多量により顔の血の気も引いて満身創痍であるが、その瞳に宿る闘志だけはさらに燃え上がっていた。
 

「すげぇ…あの巨体を投げ飛ばしやがった!でも、アイン姉ちゃん…爺さんはもう…」
 

 ゴジはゼファーに背を向けて船の後方に向けて走っていくアインの肩口からその光景を見てゼファーの善戦に驚嘆するも、ゼファーにはもう戦う力どころか立ち上がる力すら残されていないのは誰の目にも明らかだった。
 

「逃げなきゃダメよ…私達がいたら邪魔になるわ…ぜんぜいならぎっど勝っでぐれるもの…うぅぅ…」


 アインはゼファーを振り返らずに自分の役目を果たそうとする。


「アイン姉ちゃん……」


 ゴジはさらに自分を抱き締める力を強めたアインから伝わってくる震えとそれに相反する強い意志を帯びた瞳を見て彼女の覚悟を悟る。


 ───ゴジ君と皆は私が守る!!


 アインとて万全の状態ならまだしも片腕を失ったゼファーが、ゼファーの黒腕を切り飛ばすほどの化け物相手に戦ってどうなるか等考えなくても分かる。

 もしゼファーが志し半ばで力尽きたら、ゴジや仲間を守るために次に死ぬのは自分だという決意を持って避難船に向けて走っていく。

 
「きゃっ!?ゴジ君…ダメよ!?」


 ゴジはそのゼファーの姿とアインの覚悟を察して我慢ならず、アインを少し強引に振りほどいて甲板の上に立つ。


「アイン姉ちゃん…ごめん。俺はやっぱり爺さんを助けたいし、アイン姉ちゃんに死んで欲しくないんだ。“疾駆”!!」
 

 ゴジは甲板に降り立った瞬間に足裏を火花の能力で爆発させると同時に怪力の力を解放して爆発的な推進力を生み出してウィーブルの顔面に目掛けて飛び掛かった。
 

「ゴジ君!?」


 アインの叫び声を背に受けて、ゴジは雄叫びを上げながら、武装色の覇気を纏って黒く硬化した右足に電気の能力を纏わせた飛び膝蹴りをウィーブルの額に叩き込む。


「うおおおおぉぉぉ!!“起電(ヘンリー)ニードル”!」
 

 バキバキと骨が砕ける音と共に額に渾身の膝蹴りを受けたウィーブルは少しふらついた後、電気で感電してビクビクしながら片膝を付いた。


「ぐはっ…うばばば…」


 感電するウィーブルの前に降り立ったゴジは痛そうに顔を歪めて右膝を押さえていた。


「ぐっ!?いってえええぇぇ!!」

「ビリビリ……?電気...?」

 
 先程の骨が砕ける音はウィーブルの額ではなく、ゴジの膝の骨が砕ける音であり、ゴジの電気の能力ではウィーブルの意識を奪うまでは至らなかった。
 

「ゴジ…お前...何故電気を?いや、それよりも何故戻ってきた!?」


 ゼファーはゴジが爆発の能力者だと思っているので、電気の能力を使ったことに驚愕した後で慌ててゴジに詰め寄る。


「すまねぇ。爺さん、アイン姉ちゃん。俺はやっぱり爺さんを見殺しには出来ない!」
 

 ゴジは立ち上がって自分の盾になろうと前に出ようとするゼファーの肩を掴む。


「ゴジ...しかし、その足じゃ……」


 ゼファーはゴジの気持ちは嬉しいが、右足の膝頭が砕けたゴジを心配するも、彼は砕けたはずの右足を軸にして立ち上がってみせた。


「大丈夫……もう治った。俺の“超回復”は骨折くらいなら10秒もあればすぐに治る。ほら?」


 ゴジの右足の膝からモヤのように上がっていた白い煙が晴れるとゴジはゼファーの前で屈伸したり膝を伸ばしたりして完治をアピールした。


「なっ!?超...回復だと!?」


 ゼファーは常識ハズレな事を言うゴジの顔と彼の右足を交互に見ながら目を丸くする。


「さっきの電気の能力や“超回復”もあとで全部話すから、今は黙って見届けてほしい。俺にはウィーブルを倒す手段がある。」


 ゴジは全力で戦う事を誓い、ウィーブルから目を離さずにポケットに忍ばせていた”5”と書かれた金色の缶を強く握った。


「嘘じゃねぇみたいだな。分かった...」


 ゼファーはそんなゴジを見て静かに頷いて後ろに下がった。


 ◇


 ここで少しゴジの能力について説明する。

 ゴジの能力は一見万能に見えるが、唯一元々受け継ぐはずだった能力であるステルスブラックの透明化能力以外の能力は兄や姉の足元にも及ばない程度の出力しか出せない。
 
 例えばさっきの膝蹴りでも自分の兄達と比べるとこれだけの差がある。


 1.ヨンジならぱウィーブルを蹴り飛ばす程の怪力を発揮していた。

 2.ニジならばウィーブルは感電して意識を奪う程の強力な電気を生み出していた。

 3.イチジならば甲板を蹴った際に生み出される爆発の推進力と蹴りの爆風でウィーブルを蹴り飛ばしていた。


 ゴジはジェルマにいた際は観察眼で相手を見極めながら、ただ能力を上手く組み合わせて使うことで兄達をも圧倒していたに過ぎず、実は兄達に劣る中途半端な能力に劣等感に近い感情さえ抱いていた。

 だからこそ能力を使えないその身で能力者をも圧倒する力を持つゼファーに強く憧れたのかもしれない。

 しかし、ゴジはその頭脳で自分の持つ能力を兄達のレベルまで強化する方法としてレイドスーツを着用すると普段は姉兄達の足元にも及ばない能力を姉兄達と同精度まで高められるように設定した。

 ちなみに両親や兄姉達の持つレイドスーツは普段は体に負荷を掛けないように20パーセント程しか使えないはずの身体能力をレイドスーツ着用時は常時100パーセントを引き出した上で体に負荷を一切の掛けないように補助するように設計している為、身に付けると超人的な運動能力を得ることが出来るようにしてある。


 ◇


 ゴジはジェルマ王国を経つ前に自分のレイドスーツを父に差し出した。


『父さん、ジェルマ66(ダブルシックス)には世界中にコアなファンが多い。レイドスーツ姿では俺とジェルマとの関係性が疑われる可能性がある。』


 ゴジは廃嫡した自分がジェルマ王国との関連を疑うような真似は出来ないと判断したのだが、ジャッジはレイドスーツを頑として受け取らなかったのだ。
 

『ゴジ、自分の命が危ない時や大切な人を守りたい時は遠慮なくレイドスーツを使え。』
 

 ゴジは父の言葉を思い出しながら万感な想いと共にその缶を取り出して、自分の下腹部に押し当てるとゴジの体は闇夜を明るく照らす金色の眩しい光に包まれた。
  

 ───父さん、ありがとう。俺はこの力で爺さんと仲間達を助けるよ。


 金色の光が晴れるとそこに現れたのは黄金のサングラスと耳当て、黄金の上下のレイドスーツに白銀の鎧と靴そして黒いマントを纏った伝説の戦士が現れた。


「ゴジ君…」

「なんだ?お…べ…は…?」


 アインとウィーブルが眩い光と共に衣装の変わったゴジに驚愕している中、同じく驚愕しているゼファーだけはその出で立ちに見覚えがあった。


「ゴジ……お前……それはまさかパーフェクト……ゴールドなのか?」


 北の海(ノースブルー)を舞台に生み出された創作漫画『海の戦士ソラ』。

 その物語に出てくる仇役ジェルマ66(ダブルシックス)の一人、パーフェクトゴールドが今、表舞台に躍り出た!! 
 

 
後書き
5月14日加筆修正 
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