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イベリス

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第十七話 裏側のことその四

「いいわね」
「ヤクザ屋さんか同じレベルの人達だから」
「そう、関わったら駄目よ」
「最初からなのね」
「碌でもない人とはお付き合いしないことよ」
 やはり絶対にと言うのだった。
「最初からね」
「それがいいのね」
「命を平気で粗末にする人は更正もまずないわ」
「どうしようもないってことね」
「そう、人間でなくなって」
 そうしてというのだ。
「餓鬼にまでなったらね」
「どうしようもないから」
「餓鬼とは付き合わない」
 最初からというのだ。
「いいわね」
「餓鬼になるとどうしようもない」
「そうそうなことでは救われないから」
「母さんの言う通りだからな」
 父は残念そうに述べた。
「人間堕ちてな」
「餓鬼にまでなるとなのね」
「鬼畜って言うわね」
 母はこの言葉も出した。
「鬼はそのままで畜は畜生つまり生きものよ」
「鬼や生きものみたいっていうの」
「その下にあるのが餓鬼なのよ」
「餓鬼も鬼よね」
 咲は漢字から言った。餓鬼の中にある『鬼』という文字に反応したのだ。それで餓鬼も鬼ではというのだ。
「違うの?」
「もっと下よ、ここで言う鬼は咲が知ってる鬼よ」
「童話とかに出て来る」
「そう、あの怖いね」
「鬼って怖い、残酷、非道って言うわね」
「悪いイコール鬼ね」
 まさにそれだというのだ。
「それで生きものと言っても獣だとね」
「怖いイメージあるわね」
「そうした意味なの。温もりとかを知らない非道な人がね」
「鬼畜ね」
「そこにさらに浅ましさとか卑しさが加わったのが」
 そうした輩がというのだ。
「餓鬼なのよ。鬼や生きものだって心をあらためたら仏様にもなれるわ」
「鬼でもなのね」
「実は元ヤクザ屋さんのお坊さんもいるわよ」
「心をあらためてなのね」
「更正した人よ。けれどこうした人達はね」
「まだいいのね」
「鬼畜までなら何とかなるのよ」
 更正が可能だというのだ。
「けれど餓鬼までになるとね」
「更正しないのね」
「誰が何を言っても更正しないし反省も成長もしないの」
「だからどうしようもないのね」
「もうこうした人とは付き合ったら駄目よ」
「それでそんな人が生きものに酷いことするのね」
「そうなの」
 その通りだというのだ。
「下手をすれば引き込まれるわよ」
「だから絶対に近寄らない」
「ペットショップで働いても」
 例えそうしてもというのだ。
「絶対にそうしたお店では働かないことよ」
「生きものを大事にするお店でなのね」
「働くのよ」
「そこは絶対になのね」
「そうしなさい、いいわね」
「わかったわ、モコを見ても」
 ここで咲はまたモコを見た、そうして言った。 
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