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おっちょこちょいのかよちゃん

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147 姿を消した杉山

 
前書き
《前回》
 本部を襲撃しに来た異世界の敵・ネロと交戦する事になった本部守備班。かよ子達を先に行かせ、さり達がネロの迎撃を行うことになる。水の攻撃でも消火できないネロの炎の攻撃に対してさり達は苦戦するも、彼が赤軍から支給されたという異能の能力(ちから)の機械を長山が破壊し、さりが護符を利用して出現させた金剛石の槍でネロに留めを刺す事に成功する。だが、別の敵が本部に侵攻していた!! 

 
 かよ子達は東北東の方角に向かっていた。
「この先に藤木君がいるんだね・・・」
「でも藤木のいる温泉ってどれだけ離れてんだ?」
 大野が気になった。
「距離はかなり遠いわね」
 のり子の持つ人形・キャロラインが説明した。
「この人形・探知もできるの?」
 かよ子は驚いた。
「うん」
 のり子は素っ気なく答えた。ブー太郎は本部で会った時から彼女を非常に無愛想な女子だと思っていた。
「探知できるなら間違った方向に進む事もないだろうな」
 警官の椎名はそう言った。
「・・・なあ、さっきネロが倒されたと聞いただが、まだ俺の胸騒ぎが収まんねえ、寧ろひどくなってんだ」
 大野が言う。
「・・・て事はまだ『敵』がいるの!?」
 かよ子は近くに襲撃者がいるとなると不安になった。

 本部のとある一室。平和主義の世界の主と先代の杖、護符、杯の持ち主は地図を確認する。
「本部守備班が一人の侵入者を倒しましたね」
「ええ、でも、もう一人残ってるわね」
 まき子は確認した。その方向には自分の娘も含まれる藤木救出班が近づいている。
「藤木君の救出班が近づいているわ!」
「分かりました。本部守備班に援軍に行かせます。こちらの陣地を出ます前に交戦しますから時間が惜しくなります。山田まき子さん、お願いできますか?」
「分かったわ」
 まき子は通信道具を使用する。そして藤木救出班と本部守備班を対象に連絡する。
「もしもし、本部守備班。藤木君救出班の進む方向に別の敵が来ているわ。彼らの援護をお願いします」
 まき子は連絡を終えた。そして娘の無事を祈る。
(かよ子・・・。無事でいて・・・!!おっちょこちょいしても頑張るのよ・・・!!)

 りえはみゆき、鈴音、そして冬田と共に杉山を追いかける。
「待ちなさいよっ、杉山君っ!!どこ行くのっ!?」
 りえは叫ぶ。
「うるせえ!ついてくんな!!」
「何言ってんのよっ!一人じゃ危ないわよっ!」
「俺は一人で平気だ!」
 みゆきは仕方ないと思い、持っているブーメランを投げて杉山の背中に当てて杉山を転ばせた。四人は杉山に追いついた。
「一人で勝手に動いて、いい加減にしなさいよっ!」
 杉山はすぐに立ち上がった。
「うるせえ、お前はピアノでも弾いてやがれ!」
「何ですってっ!?アンタって本当に最低ねっ!そうやって私達から逃げてっ!やっぱりアンタは『臆病者』ねっ!」
 杉山は「臆病者」という言葉に過剰に反応した。
「てめえ・・・!!」
 杉山はさらに怒りを募らせた。りえ達は羽根ごと急に吹き飛ばされた。
「キャアーーー!!」
 りえ達を悲鳴を挙げて遠ざけた。杉山はあの事を思い出した。夏休みに会ったりえと喧嘩ばかりしていた事、その際、教会でピアノを弾いていた彼女を幽霊と思って腰を抜かした事から「臆病者」呼ばわりされた事、運動会の時に大野と喧嘩した事、そして大野が転校すると聞いて大野と喧嘩した時、石松から自分が持っていた「雷の石」を没収すると通告され、自らの意志で捨てた事、そしてりえと再会し、再び「臆病者」と非難された事、そして自分を好きになっている杖の所有者の知り合いの高校生と決闘して、今の自分を「大将」ではなく「臆病者」とりえと同じ言葉で罵られた事、そしてその決闘の時にその高校生から「自分にしかできない事があるはずだ」と言われた事・・・。
(俺にしかできねえ事、今はこれしかねえんだ!!)
 杉山はりえ達の事は気にせずさっさと行ってしまった。
(見せてやるよ、道具なんかなくても、俺だけしかできねえ、この戦いを終わらせる事・・・!!)
 杉山は杖の所有者、そして杯の所有者に心の中で伝える。
(俺が大野がいなくなっても大将になれるよう、いつまでも最強コンビでいられるようにするにはこうするしかねえんだ・・・。悪いな・・・!!)
 そしてあの高校生に問いかける。
(俺にしかできねえ事ってあるよな・・・?そうだよな・・・!?)
 そして杉山は支給された通信機器をその場で捨てた。

 りえ達は吹き飛ばされた事で杉山を見失ってしまった。
「・・・、どこ行ったのよっ、もうっ!」
「りえちゃん、あの杉山君って自分勝手ね」
 鈴音がりえに言った。
「ええっ、ホント最低な事しかできないのよっ!夏休みに静岡で会った時もあんな感じだったしっ・・・」
「兎に角、連絡しよ!」
 みゆきは通信機を取り出した。
「こちら溝口みゆき。杉山君が一人で勝手に行動し始めました。さっきまで私達が追っていましたが、見失って行方不明です!」
 りえは杉山が何処に行ったか気がかりになるのだった。
(一体、何処行ったのよっ・・・!?)

 本部の一室。溝口みゆきからの報告を受けた先代の杖、護符、杯の所有者は驚いた。
「杉山君が行方不明!?」
「また別の問題が出てしまいましたわね・・・」
 フローレンスは通信機器を出す。
「こちらフローレンス。杉山さとし君、何していますのですか?応答お願い致します」
 しかし、返事はない。
「杉山さとし君!?」
 フローレンスは地図を確認する。杉山の位置は本部から真北の方角を少し進んだ位置のはずにあった。しかし、連絡が来ないという事は・・・。
「どうやら通信機器を捨てましたらしいですわね」
 フローレンスは杯の所有者とその同行者、そして他の領土攻撃班に連絡を取る。
「こちらフローレンス。杉山さとし君が行方不明になりました。同行していました安藤りえちゃん、溝口みゆきちゃん、藤沢鈴音ちゃん、そして冬田美鈴ちゃんと合流できます領土攻撃班の方、いますか?いましたら彼女らの元へ行って下さい」
 そして、返答が来た。
『こちら煮雪あり。夫の悠一と共に彼女らの元へ向かいます』
 護符の所有者の姉だった。
「畏まりました。宜しくお願い致します」

 とある屋敷。そこに一人の女性がいた。彼女の名はテレーズ。嘗て少女時代にフランスでの幽閉生活に苦しみ、更には王女となってからもオーストリアやイギリスへ亡命をしたりと苦労の多い女性であった。
(おばあさまが帰ってこないわ・・・。一体何しているのかしら・・・?)
 その時、テレーズの元に一つの剣が現れた。
「これは、おばあさまが持っていた宝剣・・・!!」
 テレーズはその宝剣を持つと、声が聞こえた。
[テレーズ、私だ。祖母のテレジアだ。今、お主の母上・アントワネットがまた攻めている。私は今やられた。こう宝剣はお主に引き継ごう。そしてあの忌まわしい我が娘、そしてお主の母上をどうか倒しておくれ・・・]
 自身の祖母・テレジアの声だった。
「おばあさま・・・」
 テレーズは泣いた。しかし、今の自分に祖母の宝剣で母を倒すなどできるのだろうか。いや、やるしかない。テレーズは動き出す。そして、誰かが入って来た。
「テレーズ」
「貴方はイマヌエル?」
「今、君の母君がこの付近に来ているのが分かると思うが、君のおばあさまであるテレジアが倒されたとの情報が入った。それが故に君がその宝剣をテレジアから引き継がれたのだろう」
「はい。ですが、私が前線に立てるのでしょうか?」
「大丈夫だよ。嘗ての世界の人間達を呼び寄せて君と共に戦ってくれる。彼らが君達を守ってくれるはずだし、君もまた手助けにやって来た人達を援護するんだ」
「分かりました。来て頂いた皆様の為にも頑張ります!」
「ありがとう」
 テレジア出発した。嘗て国民から贅沢な生活ばかりをして反感を買った事で自分を幽閉生活に追い込み、かつこの世界で自分を脅かし、更には祖母を殺したあの恐ろしきかつ憎き母を必ず制圧する為に。イマヌエルの言葉で勇気を持った嘗ての王女は前線に立っていく。

 かよ子は敵のいる方向へと進む。そして見つけた。
「あいつだ!」
 一人の女性が向かっていた。
「おい、お前!」
 大野が叫ぶ。
「何かしら?貴方達」
 女性はかよ子達の方を向いた。
(この人が敵・・・!?) 
 

 
後書き
次回は・・・
「贅沢な王妃、アントワネット 」
 藤木救出班が敵とぶつかったという情報を受けてさりはまる子の姉や長山、そして尾藤海斗という中学生の男子を護符を利用してかよ子達の元へ送り届ける。そしてかよ子の杖を狙おうとしたアントワネットはかよ子達を追い詰める・・・!! 
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