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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第一章 少年期
  第十三話 “黒檻”のヒナ

 
前書き
ゴジ10歳=サンジ10歳。

原作開始9年前なのでヒナの階級が低いのは当然として御理解ください。 

 
 翌日ゼファーはゴジとの約束を守って一人の女将校を訓練場に連れてきた。


「「「うおおぉぉぉ!来たああぁぁぁ!?」」」


 訓練生達はピンクブロンドの長髪を揺らしながら赤い上下のパンツスーツの上から海兵将校の証である白いコートを着こなす切れ長の瞳に分厚い唇が特徴の美女の登場にテンションが爆上がり状態である。
 

「中尉のヒナよ。ゼファー先生、なんでヒナがわざわざ新兵の訓練場に来なきゃいけないのよ。ヒナ不満!」


 ヒナは新兵達を前にして気だるさを隠す様子もなく髪をかきあげる。


「「「うおおぉぉぉ!」」」


 ヒナの姿を見たゴジやアインを含めた訓練生達は全員が興奮して雄叫びをあげ、ヒナはそんな訓練生達を見て両手を広げて首を左右に振る。


「はぁ…だから嫌なのよ。ヒナ不快。」


 彼女こそ月刊"海軍"の人気コーナー『女海兵特集』で一番多く特集され、21歳という若さで海軍本部中尉となった若手有望株の一人で超人(パラミシア)系オリオリの実の能力者で、“黒檻”の二つ名を持つ女傑である。

 ヒナ本人は実力ではなく容姿が評価されるのは不本意であるも、若くて美人な上に実力もあるヒナは若手海兵獲得の為の機関紙にはうってつけの人材であり、彼女が特集されたことで海軍への入隊者は男女問わず大幅に増えたという噂すらあるのだ。
 

「ガハハハハ!すまんすまん。ヒナ。こいつが面倒みているゴジだ。こいつがどうしてもお前に会いたいというもんでな!」


 ゼファーに背中を押されながら紹介されたゴジは目をキラキラさせながらヒナの前まで歩いて行ってお辞儀する。


「はじめまして!ゴジです。ヒナ嬢……いや、ヒナ中尉のファンです!」


 ヒナは機関紙に載っている手前こういう手合いをよく相手にするが、むさ苦しいおっさんと可愛い子供に言われるのはやはり雲泥の差があるとは感じて素直に嬉しくなる。


「そう。ありがと!へ〜この子が噂のクザン大将を倒したって子ね。でも、ゴジ君とは一度会ってるのよ。ねぇアイン?」

「えっ?」


 ヒナはその場で屈み、首を捻るゴジの頭を撫でながらアインを見てウインクする。


「うふふっ……前にゴジ君がお風呂場で逆上せちゃった時にヒナ中尉とゴジ君は顔を会わせてるのよ。まぁ、ゴジ君は気を失ってたけどね。」
 

 ゴジはアインの言葉に両手と両膝を付いて崩れ落ちる。


「な……何だと……ヒナ嬢との風呂を逃すとは……」


 ヒナは膝を付いてゴジと目線を合わせて、ゴジの体を無遠慮にベタベタと触っていく。


「まぁまぁ、お風呂くらい一緒に入ってあげるわよ……それよりも……ゴジ君、凄く固いわねぇ〜。それに逞しいわ。ヒナ感動!」


 たった10歳でクザン大将を倒したという噂のあるゼファーの秘蔵っ子のゴジにヒナは興味津々である。


「「「うっ……⸝⸝⸝」」」


 ヒナの魅力も相まって言葉尻だけ聞くと凄くエロっぽいので数人の訓練生が顔を赤くして前屈みになるが、ヒナはゴジの腕、肩、体等を触ったり、持ち上げたりしているだけである。


「ヒナ嬢……流石に恥ずかしいんですが……」


 ゴジは憧れのヒナに身体中を触られながら抱っこされて嬉しさ半分、恥ずかしさ半分といった心持ちで固まっていたが何とか言葉を絞り出すが、ヒナの興味はまだ尽きない。


「ん〜鍛えているのは体はカッチカチだけど、体重は20キロってとこよね……」


 ジェルマ王国にいる間からしっかりと身体を鍛えており、さらに銃弾をも弾く外骨格で覆われたゴジの体は皮膚が鋼と同等以上の強度があるので当然全身が固いのだが、体重は普通の10歳児と変わらない。
 

「ヒナ、興味があるなら、ゴジと手合わせしてみるか?」


 ゼファーが未だにゴジを抱き上げている姿にニヤリと笑いながら提案を出す。


「そうね…面白そう。ゴジ君、私に勝てたらご褒美あげるわ。ヒナ提案。」
 

 憧れの女性のヒナからのご褒美と聞いてゴジが飛びつかないわけがない。


「やります!」
 

 ゼファーがゴジとヒナとの手合わせを提案した狙いは女好きであるゴジが女を相手に戦えるのかである。


「さて、ヒナには悪いが…試させてもらうぞ……」


 海賊にも当然女性は大勢いるが、女だから戦えないと甘ったれたことを言う海兵は資質に欠けるとしかいいようがない。


「ヒナじょ……いや、中尉……やるからには本気で行かせてもらいます。」
 

 罪人に男女の区別なく、公平に罰するのが海兵としてのあり方であるとゼファーは考えているので、ヒナに惚れているゴジが模擬戦とはいえ、ヒナとしっかりと戦えるのかどうかで見極めようと思って模擬戦を提案した。


「なるほど……覇気は十分か……さて、あとはちゃんと戦えるのかどうか……」


 ゼファーはゴジの内側から溢れ出す覇気を見て第一段階はクリアだと微笑む。


「このプレッシャー!?クザン大将に一撃入れたって話はホントもあながち嘘まぐれじゃないのね。ヒナ感心。」


 ヒナは徒手空拳とオリオリの実を合わせた特殊体術を使うので、ゼファー仕込みの徒手空拳でクザンを圧倒したゴジの実力を肌で感じたかった。


「またゴジかよ…」

「ってもさ……ゴジが強いのは間違いねぇからな。」

「とりあえず巻き込まれねぇように下がってようぜ…」


 ゴジとヒナは訓練場で対峙し、他の訓練生はゴジばかり特別扱いされる事に不満を抱きながらもクザン大将を倒したゴジなら仕方ないかと思い、邪魔にならないように壁際に避けていく。


「“観察眼”!!」


 訓練場の中央に残るのは対峙する二人を除けば審判のゼファーだけであり、ゴジはいつものようにヒナの体の動きを観察する。


「でも、気のせいかしら……エロ親父にでも視姦されてるような寒気がするわ……。ヒナ不快!」


 ヒナはゴジのねっとりとした視線を感じて思わず顔を赤らめる。

 
「ごくっ……それにしてもほんとにいい体だな。B90、W6……いでっ!?」


 ゼファーはヒナと対峙するゴジの顔がだんだんとだらしなくなり、鼻の下が伸びていくのを見逃さずに彼の頭に拳骨を落とす。


「ひっ!?」


 ヒナはそんな10歳の子供とは思えない表情と不躾な視線に思わず自身の体を守るように抱きしめてしまった。


「いでぇぇぇ!何すんだよ!爺さん!!?」


 ゴジは拳骨を落とされて大きなタンコブの出来た頭を両手で押えて蹲りながら、ゼファーに涙目で抗議の視線を送る。


「このエロガキが!真面目にやるんじゃなかったのか!」


 ゼファーの喝で目が覚めたゴジは両手で自分の頬を挟むようにパシンッと叩いて気合いを入れ直して頭を下げる。


「はっ!?これで大丈夫だ。爺さん悪かったな…」


 ゼファーはヒナを指差す。

 
「ふんっ……謝る相手が違うだろう?」


 ゼファーに諭されたゴジはヒナに向き直って頭を下げた。


「ヒナ中尉、すみませんでした。」 

「い……いいのよ……。そういうことに興味を持つ年頃だものね。でも、私もまだまだね…ヒナ反省。」

 
 ヒナは海兵である以上男にも負けないという自負のもとで男の同じスーツを着て戦うと誓ったのにも関わらず、ゴジの不躾な視線を受けて咄嗟にか弱い女性のように体を抱き締めるような真似をした自分を少し恥じながら頭を下げたままのゴジを見る。
  

「先生、この子は…」


 ヒナは明らかな強者の風格と女性に興味を抱き始める年相応の子供らしさを併せ持つゴジについてゼファーに視線に移して尋ねる。


「すまんな。見ての通りのエロガキだが悪い奴じゃねぇんだ。それにクザンに勝ったのはまぐれじゃねぇぞ。ゴジは間違いなく強い。気を抜くなよヒナ。」

「ふふふっ。分かったわ。ヒナ了解。」


 ゼファーは軽くヒナに頭を下げつつ、彼女に本気でゴジと戦うように頼んだ。


 ───それにしても先生が私に頭を下げるなんてね。


 ゴジのことで申し訳なさそうに頭を下げるゼファーを見て、本当の父親のようだと厳しかった教官がこうも変わるものかと微笑ましくなる。


 ───親代わりって噂も本当なのね。


 だからこそヒナはゴジとの戦いで最初は様子見でゴジの動きを見るつもりであったが、ゼファーにここまで評価されるゴジの認識を改め、初めから全力で戦おうと決意した。


「真面目にやります。」

「ゴジ君、私も本気で行くわよ!」


 ヒナは頭を下げるゴジに声を掛けた後で黒い皮の手袋を取り出して自分の手に嵌めて最後にしっかりと指を通す為に手袋の入れ口を口で咥えてキュッと引っ張った。

 その絵になる戦う大人の女性の姿に魅せられたゴジだけでなく訓練生がヒナに見蕩れている。
 

「ゴクリ…はい。」


 ヒナに見蕩れて上の空で返事するゴジを見ながらゼファーは深いため息を吐く。
 

「はぁ…ったくこのエロガキはもうどうなっても知らん。はじめ!」

「やべっ!?」
 

 ゼファーの開始の合図で正気に戻ったゴジはヒナの筋肉の動きや重心等からの動きを予測していくと、ヒナは自分の内面を見透かしているかのような先程とは違うゴジの視線に若干の恐怖を感じながらも一足で距離を詰めようと飛び掛る。


「はっ!?」


 しかし、ヒナはゴジが油断している間に一撃入れるつもりでいたが、ゴジの構えを見て立ち止まる。


「先生……!?違うわ。目の前にいるのはゴジ君よね。本当にそっくりなのね…」


 先程までは纏う空気の変わったゴジの構え方や風格を見てやはりゼファーの生徒であったヒナに笑みがこぼれる。


「俺が会った中で一番強いのが爺さんでした。爺さんから学んだこの技で貴女を倒します。」


 何のことはないヒナもクザンもそれ以外の海兵達全員が海軍本部に入隊して新兵訓練を通して、全員がかつて最年少で海軍本部大将となった“黒腕”のゼファーに憧れを抱いていたのだ。


「うふふっ……楽しみね……やってみなさい!!」


 ヒナは今、その憧れを体現しようとする子供と対峙出来ること喜びを感じていた。 
 

 
後書き
5月9日加筆修正 
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