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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第一章 少年期
  第十一話

 ゼファーが何を吹き込んだかは知らないが、ゴジがやる気満々になった以上、クザンにはもはや断る手段が残されていない。

 
「はぁ…なんでこんなことになっちゃうかな〜。」


  急にやる気になったゴジを見てクザンは肩を落としながらもゴジの待つ訓練所の真ん中に足取り重く向かう。


「クザン、ヒエヒエの実の能力は禁止だ。いいな?」

「はぁ…先生、流石にこんなガキ相手に元々使うつもりないよ。」

 

 クザンは自然系(ロギア)悪魔の実ヒエヒエの実の能力者で、触れるだけで海をも凍結させてしまう程の氷結人間であるが、訓練…しかも子供相手に能力を使う気はサラサラない。

 海軍中将以上は能力者の如何に関わらず、見聞色の覇気と武装色の覇気を習得しているから能力を使わずとも十分強い。

 
「ゴジ、クザンは自然系(ロギア)だ…俺の言いたい事は分かるな?」


 ゴジはゼファーの言葉に首を縦に振って頷いた。

 自然系(ロギア)悪魔の実の能力者ほとんどは物理攻撃が一切通じない者が多く、彼らに攻撃を与える方法は弱点となる属性の攻撃か、武装色の覇気を纏った攻撃だけであることをゴジはちゃんと理解していた。
 

「爺さん!了解だ!」


  自然系(ロギア)悪魔の実の能力者には覇気使いで対応するというのは海軍将校以上であれば常識である。


「へぇー…ってことはこのガキ、まさか覇気が使えるのか?」

 
 だから、ゼファーとゴジのやり取りで海軍将校達が血のにじむような訓練の末ようやく取得してきた武装色の覇気を子供であるゴジが扱えることを知って笑みを浮かべる。

 
「よし、はじめ!!」
 

 ゼファーの掛け声とともにこうしてゴジとクザンの戦いが始まった。

 ゴジはゼファーの開始の合図で両手に武装色の覇気を纏いながら、クザンを観察するも、クザンはあくまで待ちの構えで全身の力を抜いてゴジのどんな攻撃にも対応するつもりであることが伺える。
 
 武装色の覇気の中でも硬化というのは応用技の一つで海軍においても使える者の方が少ないのが、それを僅か10歳で使えることゴジは異常すぎる。

 ゼファーと同じ徒手空拳の構えとゼファーに刈りそろえられた彼とお揃いの刈り上げられた短髪と相まってその様はまるで小さな"黒腕"のゼファーのようで、彼の生徒であったクザンはゴジにゼファーの姿を重ねて嬉しくなる。

 
「流石は先生の秘蔵っ子…先手は譲るよ、どこからでも打ってきな!」
 

 クザンもゴジの覇気に感嘆しながら武装色の覇気を両手に纏って黒腕となり、見聞色の覇気を使いながらゴジの攻撃対応するつもりである。
 

「後悔するなよ…」


 ゴジはクザンの大人の歩幅三歩程の間合いを地面を蹴って一瞬で詰め、クザンの筋肉の動きや足運び重心等を観察して行動を”予測”を見ながら、的確にゼファー譲りの無拍子の手拳、蹴り等を繰り出していくと、クザンは見聞色の覇気でゴジの攻撃を予測しているにも関わらず、毎回予測と反した動きを繰り出すゴジに対して武装色の覇気ではなく、見聞色の覇気の使い手ではないかと思い始める。
 

「なっ…マジ…?」
 

 ゴジは見聞色の覇気には目覚めていない。

 クザンの見聞色の覇気による先の先による攻撃予測と、ゴジの相手の体の動きを総合的に見ながらの後の先による攻撃予測ではゴジの動きを予測してクザンが体を動かしても、そのクザンの筋肉の動き等から攻撃を完璧に見切ることが出来るゴジに軍配が上がったのだ。

 それでもクザンは鍛え抜かれた反射神経や運動能力、腕や足の長さというリーチに差があるため、ゴジの攻撃をなんとか捌ききってからゴジの腹を蹴り飛ばす。

 

「このガキ、なんて硬い覇気なのさ…鉄蹴ってるみたいよぉ…それに構えだけじゃなくてほんとに先生とそっくりな動きじゃないの…こりゃ参ったね…」


  ゴジはクザンの蹴りをギリギリで予測して左腕で受けて衝撃を受け流す為、蹴られた瞬間に後ろに飛んだので大したダメージもなく立ち上がる。


「ふぅ……あぶねぇ。体がデカいってのはそれだけでやっぱり有利なんだな…」

 
 ゴジは日々のゼファーとの訓練でゼファーの筋肉の動きを観察していく過程でゼファーの技や動きを身に付けつつあった。


「ガードされたのは見えたけどさ。まさかノーダメージとはね。ちょっと冗談でしょうよ。その歳で俺と同等以上の覇気なんてさ……。勘弁してよ。」


 一連の戦いでクザンはゴジの武装色の覇気について自分と同等か自分よりも上かもしれないと勘違いしているが、実際は武装色の覇気はクザンの方が圧倒的に上である。

  ゴジが生まれ持つの外骨格による硬さを知らないクザンは武装色の覇気によるものと勘違いしているのだ。

 
 

 ◇

 
 

 二人の戦いを見守っていたセンゴクは戦闘から目を離せずに、横にいるゼファーに話し掛ける。
 

「ゼファー、なんだあの子は?」

「だからゴジは強いと言ったろ?。俺はアイツがこの大海賊時代を終わらせる男になるとそう信じて俺の全てを教えるつもりだ。戦い方も様になってきただろう?」

「バカか…様になってきたなんてもんじゃない。あの子は異常すぎるぞゼファー。本当に貴様の生き写しのようだ。」

 

 ゴジの徒手空拳は拙い部分はあれど、ゼファーをそのまま小さくしたような完璧な動きであった。

  彼と同期として切磋琢磨してきたセンゴクには誰よりもよく分かる。

 ここ数日ゼファーの孫自慢に付き合ってきたセンゴクは孫の贔屓目と思っていたのだが、10歳の子供が悪魔の実の力を封じているにしても2種類の覇気を極める海軍大将相手に互角の戦いを演じている姿に恐怖すら感じている。

 

「あぁ。ゴジは目が恐ろしく良くてな。この一月で俺の動きを盗みつつある。ゴジはまだ見聞色の覇気は使えねぇが、あの目のおかげでクザンの見聞色に食らいついてやがる。数年後には俺もそしてお前もあの子に抜かれるだろうが、それでいいんだ。数年後海軍将校になったゴジを想像してみろ…ワクワクするだろう。」
 

 生徒が自分を越えていくことが、教官であるゼファーにとっての幸せであり、それが孫のように思っているゴジならばこれ以上の幸せはない。

 そして数年後海兵となったこの子が海軍にどんな風を運んでくれるのかと思うとセンゴクの顔に冷や汗と同時に笑みが零れた。
 

「そうだな…。それは楽しみかもしれん。」
 

 センゴクは自分もゴジの成長のために何か出来ることはないかと思案し始めた。

 
 

 ◇


 

 ゴジは海軍本部に来てから一度も血統因子の操作で得た能力を使っていなかった。

 それは理由は前述の通りゼファーの姿に憧れて己自身の覇気や体を鍛えるためである。


「ゴジ、そのバカに遠慮はいらん。本気でやれ!ヒナに逢いたいんだろ?」


  血統因子の研究は世界政府の名の元で禁止されているので、ゴジはこっそり使ってもバレそうにない毒、怪力、電気は別として派手な光や爆発の目立つスパーキングレッドの力について悪魔の実の能力者であると事前にゼファーには説明していた。

  しかし訓練においてゴジはこれまで一度も能力は使っていなかった為、ゴジが能力を使える事を知るのはゼファーだけであった。


「っ!?りょかい。へへっ。これを実践で使うのは初めてだな。」


 そしてこのままでは体格差、筋力、経験、覇気で劣る今の自分ではクザンに勝てないことを理解している。

  ゴジが先程まで押していたのはクザンがゴジの出方を伺っていたからであり、クザンにまだ余裕があることは先程蹴り飛ばされたことが何よりの証拠である。

  ゼファーの見立ても同様であり、彼はゴジがクザンに勝つ為に自分の持つ”能力”の全てを出し切れと言ったのだ。
 

「ん?おいおい……まさか今まで本気じゃなかったってのかい?」


 それを聞かされたクザンはようやくゴジの動きに目が慣れてきたのに、今までは本気では無いと言われてはたまったものではない。


「本気だったさ。でもさ……”疾駆”!」

 

 ゴジは電気の力を解放して強制的に足の筋肉を動かして地面を蹴ると同時に、足裏で火花を爆発させて自身の体を銃弾のように前に弾き飛ばしたことでクザンとの距離を詰めた。


「なっ……まさか能力者!?」


 クザンは覇気を使えるゴジが自分と同じ悪魔の実の能力者ではないと思い込んでいたので、ゴジが使った爆発する光の能力で舞った砂煙で目の前にいたはずのゴジの姿を見失った。


火花(スパーキング)フィガー!」
 

 クザンがゴジに気づいた時には一瞬で自分との距離を詰めて突進の力をそのまま乗せて突き出した彼の右手拳を自分の腹部を穿つ瞬間だった。


 ───爆発の能力者!?

 
 ゴジは能力者ではないが、この海で戦ってきた者達にとってゴジの力を悪魔の実の能力と説明したほうが納得出来る。


「ぐはっ!?」


 クザンはゴジの拳が当たる直前に腹部を武装色の覇気で黒く硬化させてガードするも爆発と共に2メートルはあるクザンが吹き飛ばされる。

 

 ───なんてガキだ。俺相手に能力を隠してやがったとは……。

 

 殴り飛ばされたクザンはそのまま訓練所の壁にぶつかり、痛む腹を押さえながらもゴジの攻撃に備えて、顔をあげると目の前に突き出された小さな拳とそれを突き出しているゴジの顔を見る。


「俺さ……能力を使えないと話した覚えはないよ?にしししっ。」


  クザンはゴジの拳を腹に受けたものの、武装色の覇気でガードしたため痛みはあれど内臓の損傷もなく、実の所大したダメージはないが、子どもがいたずらに成功したと言わんばかりの歯をむき出しにしたその笑顔に立ち上がろうとした体の力が抜ける。


「はははっ……。全くだな。俺の負けだよ。ほんと……なんてガキだ。」

「あれ?でもさ……クザンさんは覇気でガードしたからあまり効いてないでしょ?」

「いいのよ。誰がどうみてもこの戦いは俺の負けさ。」


  新兵やセンゴク、ゼファーの見てる前で海軍大将が海軍の見習いですらない子供に殴り飛ばされた時点で「全然効いてない。次はこっちの番だ。」とはかっこいい大人でありたいと思う彼としては潔く負けを認めた。


「勝負あり。勝者ゴジ!」
 

 ゴジはゼファーの勝ち名乗りを受けて笑顔になり、クザンの顔の前で構えていた拳を開くと、クザンはその小さくも逞しい手をしっかりと握った。

  そんな2人にゼファーがゆっくりと近づいていく。


「ゴジ、よくやったな。能力を生かしたいい戦い方だった。今日は少し用事が出来たからな。今日はもうオフでいい。アイン達にもそう伝えてくるといい。」

「ラッキー!爺さん、あの約束絶対忘れんなよ!」

「あぁ。楽しみにしておけ。」


  そう言ってゴジが嬉しそうにアイン達の元へ駆けて行くのを見送った後で、厳しい顔に戻ってクザンに向き直る。


「クザン、貴様ら能力者は能力に頼り過ぎる。これがその結果だが、何か言い訳があるなら聞こう?」

「あ……ありません。」


  ゼファーの的確な指摘に悔しそうに俯くクザン、10歳の子供にワンパンでやられて言い訳なんて出来るはずもない。


「今日1日みっちり鍛えて直してやるから覚悟しとけよ!」

「はい……。」

 

 クザンはこれから訪れる絶望を想像して深く膝を付いた。

 

「アインお姉ちゃん、遊びに行こう〜」

「ゴジ君、いいわよぉ。それにしてもクザン大将に勝っちゃうなんてホントに凄いのね。ゴジ君のおかけで休み貰えちゃった…皆感謝してたよ。」

 

 ゴジがビンズ達を見ると、親指を立ててサムズアップしてくるので、ゴジも彼らにサムズアップを返してからアインと二人でマリンフォードの街へ出して楽しい時を過ごした。

 その夜、げっそりした顔で風呂に浸かっているクザンがいたそうだが、ちゃっかりアインと女風呂に入ったゴジには知る由もなかった。 
 

 
後書き
戦いらしい戦いは今回が初ですかね?

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