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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第一章 少年期
  第九話

ゴジはゼファーに連れられて彼の夢舞台となるマリンフォードにある海軍本部基地に到着した。


「爺さん、ここが海軍本部か…。凄いな!」

「ガハハハハ。そうだろう、ここが世界中の正義の戦力の最高峰だ。ゴジが海軍へ入隊が許されるのは12歳から。見習いでも11歳からだからな…それまでにここで俺がみっちりと鍛えてやろう。」

「おう!」

 
 ゴジはここへ来る間だけでも、武術や覇気だけでなく船の扱いや航海術等ゼファーから学ぶことが多く本当に感謝している。

祖父を知らない彼にとってゼファーは本当の祖父のように慕い始めていた。

 対するゼファーもジャッジから預かったゴジが爺さんと呼んで本当の祖父のように慕ってくれる事が嬉しくて張り切って色々教えて行くうち、それを乾いたスポンジが水をのように次々と身に付けるゴジの成長を肌で感じるのが楽しくて今

 二人の様子を見る者がいれば、仲の良い祖父と孫にしか見えないほどここに来る道中で二人の仲は親密になっていた。


「孫ってのも悪くねぇな。」


 ゼファーは同期生の海軍本部中将モンキー・D・ガープから孫自慢されてうんざりしていたが、今ならガープの気持ちもよく分かると感じているほどである。

 そのガープの孫も海賊を目指し始めてからというもの自慢よりも愚痴が多くなったので、ゼファーはガープにゴジを自慢してやろうと考えていると、ゼファーの帰りを入口まで出迎えにきた彼の訓練生の一人がゴジに気付く。


「あら?可愛い子ですね。どうしたんですか…先生?」

「アインか…こいつはゴジという。戦争孤児でな拾ってきた。俺が面倒見るつもりだ。」
 

 青いロングの髪を持ち、短パンから伸びる健康的な足が美しい美少女であるアインはしゃがみ込んでゴジと顔を合わせる。

 
「なっ……すっごい可愛い子だ。!」


 そんな美少女であるアインとの出会いはゴジ衝撃を与えた。

 月刊海軍の愛読者であるゴジはこんな美少女がなんで今まで特集されていなかったのか疑問に思いながらもまだ自分の知らない美女が海軍には居ることに期待に胸を膨らませている。

 海軍本部に入隊した新人はゼファーの元で1年間教育を受けてから各部署に配属される決まりになっているので、アインは今年海軍に入隊した新人であるから特集されていないのは当然であった。
 

「あら、ありがと。こんにちは…私はアインよ。ゴジ君よろしくね。」

「俺、こんなに可愛い女の子を初めて見たよ!アイン姉ちゃん、よろしく。」

 ギュッ!


 そう言って笑顔を浮かべたゴジはアインに抱きついた。

 ゴジは10歳という幼い自分の容姿をよく理解しており、ジェルマ王国でも子供らしく素直に行動すると城で働くメイド達にも好評であったので、体全体でアインは俺のモノだというアピールをする。
 

「あぁーん!先生、この子可愛いですよ♪」


 ゴジの思惑は的中し、アインは嬉しそうにゴジを抱き締めて返してくれるので、ゴジは彼女の胸に顔を埋めてアインには見えないように鼻の下を伸ばしている。

 
「ガハハハハ!エロガキが。ほら、お前達訓練にいくぞ!」


 ゴジは頭を上げて心外だという顔をゼファーに向けるが、鼻の下を伸ばしていたゴジの顔を見たゼファーは若いジャッジがいつも綺麗な女性を見て鼻の下を伸ばしていた顔とそっくりだったので、思わず笑ってしまった。


「はい先生!ゴジ君一緒に行こう。」

「うん!」
 

 ゴジがアインに手を引かれて訓練場に向かうとそこには数十人の訓練生が整列しており、アインは手を振りながらゴジと別れてその列に混ざっていった。

 今ゴジ達がいる新兵の訓練場は海軍本部基地と併設された場所にあり、寮も看病されている。


「よし、全員に揃っているな…お前達に紹介したい子がいる。ゴジ、来い。」

「ゴジです。10歳です。皆さんよろしくお願いします。」

 
 ゴジはゼファーに促されてゼファーの横に並んで挨拶すると、アインはよく出来ましたと言わんばかりにゴジに手を振る。

 ゴジもアインに手を振り返しているが、そんな光景を見せられている訓練生はアインと馴れ馴れしくしているゴジを睨む。

 美人で気立てがいい上に腕が立つアインは訓練生にとってアイドルのような存在であり、アイン以外は男しかいないこの期の訓練生の間では抜け駆けしないという密約があるのに、思わぬ伏兵(子供)の存在慌てているのだ。


「アイツは俺達のアインの何なんだよ?」

「なんでガキが海軍にいるんだ!」


 訓練生は次々にゴジを指差して非難の声を浴びせるので、ゴジは最初は訓練生を睨み返していたが、ふと何か思い付いたようにアインの元へ駆けて行く。


「アイン姉ちゃん、皆が睨んでくる。怖いよぉ〜」

 ギュッ!

「あらあら、皆、子供には優しくしないとダメでしょ!」

「「「うっ…!」」」

 
 至極当然なアインからの指摘に訓練生達は10歳の子供を泣かせたことを流石に自分達が大人気(おとなげ)なかったと頭を下げようとした。


「うえぇぇん……(ニヤッ)」
 

 しかし、ゴジがアインに抱き着いて顔を胸に埋めながら訓練生達を見ながら勝ち誇ったかのようにニヤリと笑っているのを見てしまった。


「「「絶対殺す!」」」

 
訓練生はゴジがただの子供ではなく、エロガキである事に気づき、嫉妬の炎が熱く燃え上がるが、何処吹く風とゴジはアインの胸に顔を埋めたままほくそ笑んでいる。


「てめぇらいい加減にしろ!ゴジお前もだ!」

「先生!?すみませんでした!」

「げっ!爺さん…」


 ゼファーの一言で訓練生達は皆姿勢を正すも、彼らの嫉妬の炎は尚も燻っている状態である。

 ゼファーはゴジの首根っこを掴んでアインから引き離して持ち上げて、訓練生達に見せる。


「さっきも言ったが、こいつは俺が拾ったガキで名前をゴジという。今日からお前達の仲間になるが、そうだな…文句があるならコイツと模擬戦してみるか?」

 
 ゼファーの提案に訓練生達の炎は再度大きく燃え上がり、我先に立候補していく。

 
「俺にやらせて下さい。」

「いや、俺がやります!」

「俺がそのエロガキを教育します!」


 一連のやり取りでこの場の訓練生全てを敵に回したゴジの味方はゴジを純朴な子供と信じているアインしかいない。


「ちょっと皆!ゴジ君は子供なんだからそんないきなり…」


 アインはゴジの元へ行き、自分の体を盾にして訓練生達の視界から隠す。

 その姿は雛鳥を守る親鳥のようであるが、とうの雛鳥はアインに見えないように訓練生に対して挑発的で余裕そうな顔で緊張感がない。


「アイン姉ちゃん、ありがとう。でも俺頑張るよ。」

「ゴジ君…怪我しちゃうかもしれないわよ?」


 アインは背中から掛けられてゴジの力強い言葉に振り返ってゴジの手を握る。

 
「大丈夫だよ。でも、僕が勝てたらご褒美が欲しいなぁ…」

「ゴジ君…分かったわ。頑張って…でも怪我しちゃダメよ。危なくなったらすぐに私が止めるからね。」

 
 こう見えてアインは訓練生の中でも抜きん出た実力の持ち主で小刀を使った二刀流剣術の使い手で、今期の訓練生の中で一番の実力を持っているのだ。

 アインはゴジが危なくなったら本気で試合を止めるつもりでいた。


「うん!」


 アインと楽しそうに手を握っているゴジを訓練生達は血の涙を流しながら見て、アインに見えないように顔を逸らして言質は取ったという悪い顔をするゴジをゼファーは呆れた様子で見る。

 アインの心配とは裏腹にゼファーはこの戦いで訓練生達に万に一つの勝ち目がないことは身に染みてよく分かっていた。

 ゼファーはゴジとの勝負に負けた自分のことは棚にあげて、相手を見た目で判断すれば痛い目を見ることを訓練生達に身をもって分からせようとしているため、面白そうに成り行きを見守っているのだ。

ゴジと訓練生達との模擬戦は決まったが、立候補者多数で誰がゴジと闘うか決めかねている状況である。

 
「このエロガキが…俺達のアインに…」

「俺が傷が残らない程度にボッコボッコにしてやる…」

「爺さん、俺は全員纏めてでいいぜ。」

 
 訓練生のほぼ全員が立候補して相手が決まりそうにないので、ゴジは両手を振り回したり、屈伸したりと子供らしく掛け声を出しながら準備運動をしつつ、楽しそうに妥協案を出す。

 
「そうだな。そうしよう。」

「先生!それはいくらなんでも…」


 訓練生達とて悪しき海賊を捕らえるために海兵となった男達であるので、流石に子供一人をリンチするような真似は気が引けるようで戦いを渋っている。

 ゼファーは一対一でゴジが強いことは実際に拳を交えた自分が分かっているが、一対多数の戦闘におけるゴジの実力を測る為と訓練生達に人を見た目で判断したら痛み目に合うことを分からせる為にに元々全員を相手にさせるつもりでいたのだ。

 対するゴジは自分がめちゃくちゃにしたこの空気をゼファーが面白がって見ているので、ゼファーの狙いに検討が付いていた。


「はっ…怖いのかおっさん達?纏めてかかって来いって言ってんだよ。」

 
 ゴジの分かりやすい挑発を受けておっさん呼ばわりされた10代後半から20代前半の若い訓練生達全員の目の色が変わり、全員でゴジに向けて拳を構えている。

 
「大人に対する口の聞き方ってやつを叩き込んでやる。クソガキが…」

「子供だからって何言っても許されるわけじゃないぞ!」

「「「そうだ…そうだ!」」」

 
 ゴジと訓練生達(アインを除く)との訓練が決まると、ゴジはゼファーをチラリと見てこれでいいかと目線を送ると、ゼファーはニヤリと笑って頷く。

 
「ゴ…ゴジ君?」

「アイン、お前は下がってろ!」

「でも……先生!」
 
「安心しろ……あの子は強いぞ。よく見てろ。」


 アインはゼファーの言葉に目を丸くして驚きながらも渋々壁際まで下がる。

 
「よし、これよりゴジ対訓練生全員との模擬戦を始める。武器の使用は自由。致命傷になるような怪我をさせた場合はアインだけでなく、俺も止めるからな…それでは始め!!」

 
 ゼファーの訓練生に怪我をさせるなよという意味をしっかりと理解したゴジはいかに訓練生達を無力化してアインにいい所見せようと考えている。


「「「うおおおおぉぉ…」」」

 
 ゼファー合図で一斉に動き出した訓練生達をゴジは訓練生達の動きを観察して行動を予測し、拳を構えて突っ込んでくる5人をすれ違いざまに首筋に手刀を与えて気絶させる。

 訓練生程度の動きであればゴジにとっては赤子の手をひねるようなものだ。


 バタバタ…

「「「はっ…?」」」


 ゴジに向かっていった仲間が一瞬でやられた訓練生達が呆けてしまう…


「お兄さん達…呆けてる時間あるの?」


 訓練生達は倒れた訓練生に気を取られてゴジを見失う。

 仲間を気遣う心は美徳ではあるが、戦闘においては悪手でしかなく、ゴジは最初の手刀で倒れゆく訓練生の影に隠れながら彼らの後ろに回り込んで、訓練生達に声を掛けたのだ。


「え…うっ…」バタッ…


 ゴジは振り向こうとする訓練生達の首筋に一人ずつ手刀を与えていくと、20人近くいた訓練生は全て地に沈んだ。

 アインに良い所を見せるためにゴジが出した結論が一撃でカッコ良く決めることだったが、逆にアインに恐怖心を与える結果になってしまう。


「やはりこうなるか…勝者ゴジ!」

「え…皆が一瞬で全滅?」

 
 一分とかからずに訓練生を全員気絶させたゴジの実力をゼファーは予想通りと納得し、一対多数でも上手く立ち回ったと評価しているが、ゴジの実力を今目の当たりにしたアインは驚いて目を見開いている。

 海軍に入隊することは12歳以上であれば誰でも出来るが、海軍本部に配属されてゼファーの訓練を受けることが出来るのは将来を期待された海兵の中でもエリートの証である。


「アインお姉ちゃん?俺勝ったし、誰も怪我させてないよ。褒めて!」

「え…あぁ…ゴジ君、強いのね?どうやってこんな強さを?」


 アインは切磋琢磨してきた同期生達の強さを誰より分かっているため、ゴジが訓練生達に余計な怪我をさせないように手加減しながら戦った上で完封したもよく分かっていた。

 だからそんな強さを持ちながらも自分に甘えるように近づいてくるゴジの異常さに恐怖していたが…


「俺、強くなる為にいっぱい頑張ったんだ!」

 
 アインは照れ臭そうに笑うゴジの顔を見ながら、ゼファーに聞いた彼の出生を思い出してある事に気づいた。

 ゼファーからゴジのことを戦争孤児と聞いていたため、彼は強さを得なければ生きていけない環境にいたからこその強さ。そして、孤児だから自分に甘えて親の愛に飢えてるのだと勘違いをしてしまう。

 アインはしゃがんでゴジを抱き締めて母が子を褒めるように優しく頭を撫でる。


「そう…こんな小さいのに沢山頑張ったのね。本当に凄いわ…」

「アイン姉ちゃん、ご褒美のことだけど…」


 アインはゴジを抱きしめるのを止めて、ゴジの願いを聞く為に目線を合わせる。


「そうね。何が欲しいのかな?」

「えっとね…アイン姉ちゃん、僕とお風呂一緒に入って欲しいんだ。」

 
 ゴジは自分が子供である事を最大限に生かしたお願いは、アインの想像通りゴジはやはり愛に飢えているのだと誤解を深める結果になり、あっさりと受理された。


「お風呂?勿論いいわよ…訓練が終わった後に一緒に入りましょ?」

「わぁーい!」

 
 ゴジは飛び跳ねて喜んでいるが、すぐに地獄が待っていた。


「話が纏ったな…では、ゴジ。アインとの風呂の前に俺自らがお前を鍛えてやろう!」


 ゼファーはゴジの戦いを見て、集団戦においても合格点を与えたが、ゴジと遊びたくてたまらなくなっていた。

 老いていくだけと思っていた自分の全てをゴジに伝える気で張り切っている。


「へっ…?」

「疲れた後の風呂は格別だぞ…ほらやるぞ!」

「俺はアイン姉ちゃんと訓練を…」

「バカを言うな。訓練生ではお前の相手にならんと今自分で証明しただろう……。遠慮するな。お前は今日から俺がマンツーマンでみっちり鍛えてやるよ。」


 ゴジの実力を知っていたゼファーは初めから自分がゴジを鍛えて、実力に見合った海兵を呼び出して手合わせして、実力と経験を積ませるつもりだった。

予想通り訓練生では相手にならないと分かった今、自分が相手になるのが一番だと判断した。

 
「まさか…爺さん…」

「ニッ…!」

 
 ニヤリと笑うゼファーを見て、ゴジはゼファーに嵌められたことに気付いた。

 訓練生ではゴジの相手にならないことをたった今自分で証明してしまったのだから…


「え…?い…嫌だぁーっ!」

「ゴジ君、先生に認められるなんて凄いわね。頑張って!!」

 

 その場から逃げようとしたゴジはアインの応援を受けてピタッと立ち止まって、やけくそ気味に叫ぶ。


「くそがぁ!かかって来いや…クソジジイ!!」


 アインはゼファーがゴジの父代わりとなるならば自分はゴジの姉代わりになろうと決意し、海兵となる為に頑張るゴジの応援しようと決意を固めていた。


「その意気だ!クソガキ!さぁ……稽古をつけてやろう。」


夜遅くゴジが疲労困憊で動けなくなるまでゼファーとの稽古は続いたという……。 
 

 
後書き
アインちゃん登場。

今更ですが、時系列的にあの事件が起こるのはもう数年先なので、ゼファーの両腕は健在です。 
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