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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第一章 少年期
  第六話 ゴジの夢

 ゴジは初めてみる優しい瞳をしながらサンジを抱き締める父の顔を見て目を丸くして驚いている。


「次はゴジか……」


 ゴジは正直なところ目まぐるしく変わる展開についていけてない。


「父さん……。俺は父さんを……」


 ゴジが計画していたのはイチジ達の性格に関わる血統因子を元に戻したことを告げてジャッジを改心出来れば幸いというところまで、最悪力づくでジャッジを王座から引きづり下ろそうとすら考えていた。


「皆まで言わなくとも、レイジュ達全員がここにいる事で検討は付いている。お前の夢もな……」


 父ジャッジが元々優しい男で、しかも兄姉達が自分の夢を知っている上でこれを叶えてくれようとしていることに驚きを隠せない。


「俺の夢……!?」


 料理人になる事を常日頃公言していたサンジとは違い、ゴジは夢について誰にも話したことはなかった。


「うふふっ♪ゴジ、私だって知ってるわよ。」

「へ…?母さんにまでバレてたのか!?」


 ゴジは兄姉だけでなく、父と母にもバレていた事に驚いていた。


「ゴジ、お前の夢は海軍に入ることだろう?」


 ジャッジがゴジの夢を告げると、ソラやイチジ達が頷いていた。


「なっ…ほんとに皆知っていたのか!?」


 ゴジが父の言葉に驚きながら周りを見渡すと、家族が微笑ましい顔で自分を見ている事に誰にもバレていないと思っていた自分が気恥しくなって顔を赤らめた。


「うん……俺は海軍に入って…」

「優しいお前の事だ。人々を苦しめる海賊を捕まえたいのだろう?この俺の追い込んだ手腕も見事だった。お前ならばいい海兵になれるだろう!」


 ジャッジはこの場にレイドスーツを纏って現れたイチジ達がゴジの指示で集められたことには気付いており、優しい目でゴジを見つめる。


「ん?あ〜……うんうん。そ……そうだよっ!!」


 確かにゴジは体を張り、屈強な海賊達に怯むことなく、立ち向かって治安維持に務める強く美しいある(・・)海兵達に憧れを抱いており、一緒に海へ出たいという夢を持っている。


「貴方が暇な時に海軍の機関誌を眺めていること皆知ってるのよ。」



 確かにゴジは暇な時に海軍本部が発行している機関誌月刊『海軍』を読んでいるが、実はあるコーナーだけ熟読している。


「ゴジ、俺はお前を誇りに思っている。」

「俺達の治療やレイドスーツ作りで大変だったもんな。本当にありがとう。」

「ごめん。ゴジの部屋の本棚に月刊『海軍』があることを皆に話しちゃった。」

「水くせぇな。お前には感謝してるんだ!国のことは俺らに任せてお前は自分の夢叶えてこい!」


 ゴジは家族の思いに心打たれながらも、本当に入りたい理由はバレてないのが分かり、動揺しているのを悟られまいと必死にポーカーフェイスを保って必死で首を縦に振りながら、握り拳を作る。


「う……うん!俺、頑張っていい海兵になる……」


 そんな中でゴジが海軍に入りたい理由に検討がついているレイジュだけは首を傾げながら、爆弾を投下しようとする。


「あれ?でも、ゴジが見てるのって確か…」

「姉さぁ〜ん!」


 ゴジは感極まってレイジュに抱き着く振りをして、彼女の口を押さえながら耳元で囁くようにお願いする。


「しぃ〜。姉さん、お願いだから、少し黙ってて!ね?」


 レイジュは仕方ないという顔をしつつゴジの言葉を了承したと分かるように首を縦に振る。


「もご……もご……」


 ゴジはホッとしてレイジュを解放してから家族の方を向いて再び力強く宣言する。


「うん。俺は海軍に入って、悪いヤツを捕まえる立派な海軍将校になるよ!」


 ゴジは背中に刺さるレイジュの白い目を背中に受けながらもハッキリ告げると、祝福してくれる家族の中でジャッジだけは少し思案した後でゴジの目を見ながら右拳を構えた。


「ならばゴジ、この海で戦う事を決意したお前に覇気を教える。それを覚えるまではこの国に残れ。」

「覇気?」


 父から発せられた聞き慣れない言葉にゴジは首を傾げる。


「ゴジ、俺の腕をよく見てろ…。むんっ!!」


 ジャッジが気合いを込めると、右腕の肘から拳に掛けてが真っ黒に変色した。


「腕が黒くなった?それは父さんがさっきイチジ兄さんの拳を受け止めた時と同じ技か?兄さんの拳を受け止めた父さんの腕が火傷一つないのはその技で受け止めたから?」


 ゴジは先程父がイチジの拳を受け止めた時に彼の右腕が黒くなったように見えたが、どうやら錯覚じゃなかったようだ。


「流石によく見てるな?そうだ。これは武装色の覇気という。口で言うよりも体に覚え込ませた方が早いだろう……ゴジ、レイドスーツは着たままで腕をクロスさせて全力で防御しろ!」


 さっきの槍の件で分かると思うが、生身の体であるジャッジと外骨格を持つゴジでは体の強度がまるで違い、その上でレイドスーツを纏っている。

 しかし、ゴジは凄く嫌な予感がして腕をクロスして全身の力を込めてしっかり防御姿勢をとった。


「いくぞ…」


 ジャッジはゴジが防御体制を取ったのを確認してから黒く変色した右拳を真っ直ぐにゴジのクロスした両腕を目掛けて打ち付けた。


「ぐっ!?」


 ジャッジの拳を受け止めたゴジはガンっという衝撃を受けて数メートルに渡り弾き飛ばされ、壁に背中を打ち付けた。


「「「なっ!?」」」


 ジェルマ王国一の実力を持つゴジが殴り飛ばされて壁に背中を打ち付けたゴジを中心として壁に蜘蛛の巣状に亀裂が入ってるのを見て、家族達はジャッジの技の威力に驚愕する。


「い……いっでえええぇぇーっ!」


 ゴジが苦痛に顔を歪ませて両手をブラブラを揺らしている姿を見て、同じ外骨格を持つイチジ達は唖然とする。


「痛いだと……?」

「そんな……どうなってるの?」


 イチジ達は防御性能に優れるこのレイドスーツを着て、さらに銃弾をも通さぬ外骨格を持つゴジが痛む一撃をレイドスーツを着ているとはいえ生身であるジャッジが衝撃を与えた事に驚きを隠せない。


「つぅ〜…なるほど……よく分かった。これが覇気か?」


 ジャッジの拳をその身で受け止めたゴジは逆に冷静になり、武装色の覇気に興味が出始める。


「そうだ。武装色の覇気とは体内の覇気を引き出して身に纏うことができる力だ。武装色の覇気での攻撃はあの悪魔の実の能力者にも有効なダメージを与えられる。覇気は多かれ少なかれ誰でも持ちうる力だ。海兵として海へ出て海賊を相手に戦うならこれを体得してからにしろ!」


 海でその名を轟かせる海賊や悪党の多くは悪魔の実の能力者であり、ジャッジは愛する息子への最大の贈り物と身の安全を考えてこの武装色の覇気を習得させようとしていた。


「父さん、もう一度覇気を纏ってくれない?もっとよく”見たい”んだ…」


 ジャッジは飛び抜けた武の才能を有するゴジならば数ヶ月いやもしかすれば数週間以内に覇気を身に付けられると思っているが、ゴジにはジャッジの知らないある力がある。


「ん?見ただけで体得出来るモノではないが、好きにしろ。」


 ゴジは再び覇気を右腕に纏い、再び右腕を黒くするジャッジを注意深く観察する。


「“観察眼”!!なるほど……体の内側から溢れるモヤのような物を右手に集中させている。それが武装色の覇気か?」


 医師として、研究者として人体構造に精通しているゴジは筋肉の動きなどから相手の行動を予測する事が出来る。

 ゴジが自分と同じ兄姉を差し置いてジェルマ王国一の戦士と呼ばれるのはこの“観察眼”の力も大きな要因である。


「お前が目がいいのは分かっているが、ゴジ、お前は私の覇気が見えるのか?まさか……それは見聞色の……いや、そうであっても私には武装色の覇気しか使えん。」


 ジャッジはゴジが覇気を認識している事に目を見開き、ゴジは武装色の覇気と並ぶもう一つ覇気を知らず知らずに使っている事に気付いて目を見開く。


「ちっ……巫山戯るなよ……皆のお陰でようやく夢が叶えられそうなのにこんな所で足踏みしてたまるかぁぁ!」


 ゴジは父の技を模倣しようとするも自分の中の覇気を認識できずに怒りのあまりに声を荒らげると突如微量であるが、怒りと共に体の内部から沸き出る力を感じる。


「なっ!?」


 覇気使いであるジャッジはゴジの内から溢れる覇気を感じて目を見開く。


「身体から力が溢れる……これが覇気か!?」


 ゴジはジャッジがしていたことを模倣して体から湧き上がる覇気の全てを右腕に集中させる。


「「「「…っ!?」」」」


 家族が騒然となる中で、ゴジの右腕の拳だけが黒く変色した。


「はぁ、はぁ、ど…どう?父さ……ん……」


 しかし、長くは続かずにゴジの覇気は尽きたようで右拳が元に戻ると当時に全身の力が抜けてその場に倒れそうになる。

 地面に当たる衝撃を予想していたのに予想は外れてすんでのところでジャッジがゴジを受け止めたことで、ゴジは父の大きな胸板に顔を打ち付けて気を失う。


「”硬化”を一度見ただけで体得するとは…!?この子の才能は一体どれほどなのだ……。」


 武装色の覇気を目に見えるように1箇所に集中させて黒く変色させる技は爆発的な防御力と攻撃力を生み出す”硬化”という応用技であり、ジャッジはゴジが体内の武装色の覇気を認識出来れば合格にするつもりだった。


「ゴジ!?」


 ソラが気を失ったゴジを心配して近寄ってくるが、ジャッジはゴジを抱き上げる。


「心配はない。覇気とは生命エネルギーそのもの……未熟なゴジは使い過ぎて眠っているだけだ。直に目を覚ます。重くなったな……。」


 ジャッジは赤ん坊以来抱き上げたことの無かったゴジを抱き上げながら、もはや自分ごときではゴジの力の一端すら測ることは出来ないと息子の才能を誇らしく思う反面、寂しさすら感じていた。


 ───この子の力の使い方を引き出せる”師”が必要だな。


 ゴジの才能の一端を垣間見たジャッジはかつて海軍本部において最強と呼ばれた古い友人にゴジを預けようと心に決めた。


「むにゃむにゃ…待ってろよ……」

「ふっ……眠ったまま海賊達に宣戦布告とは……頼もしい子だ。」

「私達の子供だもの……」


 ジャッジとソラはゴジの寝言を聞いて微笑み合っている中、全てを知るレイジュはまた白い目でだらしない顔で眠るゴジを見る。


「父さんも母さんも分かってないわね……あの締りのない顔はろくでもない夢を見てるに決まってるじゃない。はぁ……」


 ソラの治療する研究に明け暮れるゴジの唯一の癒しとなったのは新規海兵募集の為に毎月発行されている海軍の一般向け機関誌 月刊『海軍』の大人気コーナー


 ”女海兵特集”


 であり、雑誌に写る戦う美女達を眺めながらいつかこんな女海兵達と一緒に海へ出たいという“夢”を抱くようになった。


「でへへっ♪皆、待ってろよ……♪もうすぐ……」


 力を使い果たして父に抱かれて眠ってしまったゴジはレイジュの予想通り、立派な海軍将校となって美人な女性海兵達に囲まれて航海している幸せな夢を見ていた。 
 

 
後書き
5月3日加筆修正 
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