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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第一章 少年期
  第四話 姉弟の絆

 王妃が原因不明の病で病床に伏せっていることでジェルマ王国国民が悲しみに伏せっていたが、完治のニュースはジェルマ王国中に知れ渡り国民達は歓喜に沸く。


「ソラ様、ほんとに良かった。」

「おい、聞いたか?ソラ様を助けたのはゴジ様だそうだぞ?」


 血統因子の研究は公に出来ない為、ジェルマ王国の国民達には王妃ソラは原因不明の病に伏せっていると知らされていた。


「僅か8歳で科学大国って呼ばれるうちの国の研究員全てを束ねている神童ゴジ様……ほんとにすげーんだな。」

「それだけじゃねぇぞ?ゴジ様は腕っ節の方も兄弟の中でも一番で、ジェルマ王国一の戦士だって話だぞ。」


 国民達は口々にゴジを讃えている。


「ゴジ様がいればこの国は安泰だな。」


 愛する母を救う為に僅か8歳にして研究所の所長に就任して見事母の病を癒したゴジの話は美談としてジェルマ王国の歴史に残ることとなるが、もう一人の功労者であるサンジの名前は意図的に伏せられた。

 血統因子の操作に失敗したジェルマ王国の汚点として名前を出すことを国王ジャッジが良しとしなかった為である。


 ◇


 それを良しとしないのはジェルマ国の“ヒーロー”となったゴジ本人である。


「おい!クソ親父!!なんでサンジ兄さんの名前が伏せられてんだよ!」


 ゴジは国民達にサンジの名前が伏せられている事を知るや、ジャッジの部屋に単身抗議に来ていたが、ゴジが抗議に来る事を予想していたジャッジはどこ吹く風という具合に相手にせずに次の命令を告げる。


「無能なサンジがたまたま役に立ったが、それをなぜ国民に告げねばならん?そんな事よりソラは医師団に任せておけばもう大丈夫なのだろう?ならばゴジ、次は我々ジェルマ66(ダブルシックス)の象徴たるレイドスーツを作成をしろ。」


 ソラは長い入院生活で衰えた筋肉を取り戻す為のリハビリだけであり、サクラ率いる医師団がいればゴジがリハビリを手伝う必要はない。


「レイドスーツってジェルマ66(ダブルシックス)の戦闘服だよな?あっ!?」


 ゴジは少し思う所はあるも不快な表情を変えることなく少し考え込んだ後、ハッとなって目を見開く。


「そうだ。どうかしたか?」


 ジャッジはゴジの様子に首を捻っていると、ゴジは真顔になってレイドスーツ作成の為に必要な情報の開示を求める。


「あ〜わかりました。ならば姉さん達の特性に合わせた専用のレイドスーツを作成するので、姉さんに施した血統因子の設計図を見させてください。」


 ゴジは制作に必要な今まで閲覧を禁止されていたレイジュの血統因子に改造手術を施した際の研究データの開示をジャッジに要求する事を思い付いた。


「許可する。すぐにお前の研究所に届けよう。」


 ジャッジはゴジの要望についてある程度予想していたのか対して驚くことなく鷹揚に首を縦に振る。 


「ありがとうございます。それと父さん……母さんを癒す最高の環境を与えてくれた事は感謝しているけど母さんがあんな体になったのは元々はあんたの責任だ。話逸らしたみたいだけど、サンジ兄さんに対する仕打ちも許さねぇからな。」


 ゴジは母や姉や兄達の為に父に従順な子を演じていたが、我慢出来ずに捨て台詞を吐くようにジャッジの部屋を出た。


「ふん……いずれ今にお前も分かる日がくる。」


 去りゆくゴジの背中を見送りながら、呟いたジャッジの言葉は彼には届く事はなく、ゴジを讃えて止まない国民達の喧騒に掻き消された。


 ◇


 ジャッジの部屋を後にしたゴジは城にある訓練所の一角で暴れていた。


「クソ親父があああ!!火花(スパーキング)フィガー!、電撃(プラズマ)パンチ!、巻力砲瑠(ウインチポール)!」


 いつもの冷静さはどこへやら……怒りのまま血走った目を力任せに爆発する光を纏った拳、電撃を纏った拳を力任せにに地面や壁に打ち付けて至る所を破壊した後、トドメと言わんばかりに怪力の力を込めた拳を地面に叩き付けて大穴を空けた。


「はぁ……はぁ……なんでサンジ兄さんの名前が伏せらてんだよ。サンジ兄さんのおかけで母さんは助かったのに……。あのクソ親父め……今度はレイドスーツを作れだと?姉さんの血統因子情報を入手する為には仕方ないか……。血統因子を解析すれば姉さんをクソ親父から解放出来る手がかりを得られるかもしれない。」


 ゴジがレイドスーツの作成の依頼を二つ返事で受けたのは理由の一つは父に逆らえないように血統因子を操作されている姉レイジュの為であった。

 イライラを発散したゴジはジャッジとのやり取りでレイジュ達の血統因子の設計図がようやく閲覧出来る事にほくそ笑みながら、彼女の治療法とレイドスーツの構想を練る。


「それにレイドスーツの身体機能の補助機能を使えば母さんが日常生活に復帰できる日も早くなる。」


 レイドスーツとはジェルマ66(ダブルシックス)が着用する戦闘服のことで、昼でも夜でもハッキリと見えるサングラスに薄いにも関わらず銃弾を通さない程の強度と伸縮性を併せ持ち、足元には浮遊装置と加速装置を併せ持った靴を履いている。

 そして何より着用した者の身体機能を補助することで普段の何倍もの力を発揮出来るので、筋力の弱っているソラに着せてあげたいと考えた。


「ゴジ……荒れているな?」


 ゴジが誰もいなかったはずの訓練所を後にしようと立ち上がったところでいつ来たのか分からないがイチジが入口からゴジに声を掛けてきた。


「イチジ……どうした?俺の憂さ晴らしに付き合ってくれるなら、少し遅かったな…」


 ゴジはそう言いながらも、イチジが不意打ちを放ってくるのを警戒する。


「いや、それはまた今度にしよう。今日は少し聞きたい事があっただけだ。その……母上が完治したというのは本当か?」


 イチジ達は生まれながらに血統因子を操作されており、優しさが欠如している。


「ん?その通りだが、まさか気になるのか?」


 自分の生き死に対してすら弱ければ死んでも仕方ない。それが自然の摂理であると考えているように生み出された生まれながらの生物兵器である。


「そうか………それはよかっ……いや、なんでもない。」


 イチジは少し目を伏せながら、ゴジに背を向けて去っていくが、ゴジは信じられないモノを見て目を見開く。


「なっ……!?イチジのやつ…“泣いて”なかったか?」


 優しさという感情が欠如したイチジがソラの完治の報せを聞いて泣くはずはないが、ゴジは立ち去っていくイチジの目元に光る物が見えた。


「なるほど……イチジ達の感情は欠如しているのではなく、抑制されてるだけだとしたら……なるほど……イチジ“兄さん”達も取り戻せるかもしれない。」


 血統因子から優しさに関する遺伝情報を削除されていたら助けるのは困難かもしれないが、優しさを押さえつけられているのだとしたらイチジ達も助けることが可能かもしれない事にゴジが気付いた瞬間だった。


 ◇


 ゴジは研究所に戻ると、サンジと母が入院している病室の前に来ると扉が少し開いている事に気付いて立ち止まると、中からレイジュの声が聞こえてきた。


「お母さん、本当に元気になっでよがっだよ…ゔゔぅぅ……」


 ゴジは気づかれないようにステルスブラックの透明化能力で姿を消して邪魔にならないように見守る。


「レイジュにも心配かけたわね。もう大丈夫。あなた達のおかげよ。」


 病室ではソラとレイジュは笑顔で抱き合っており、横に設置された自分のベットに腰掛けているサンジがレイジュの泣きの顔を見て驚き目を見開いている。


「あっ…レイジュが泣いてる…」


 サンジは純粋な子供だからこそゴジのように気が利かず、口に出してしまったので、レイジュにキツく睨まれる。


「うっさいわね!サンジのアホ!見んな!でも、お母さんを助けてくれてありがとう!」


 レイジュは泣き顔のまま怒鳴りながらサンジの頭を殴った後、サンジを抱き止めるとお礼を言って撫でていていた。


「あはははっ…もう、レイジュったら怒るのか、泣くのか、お礼を言うのか…どれか一つにしなさいよ。」


 そう言いつつソラはサンジの頭を撫でるレイジュの頭を嬉しそうに撫でていた。


「俺は姉さん達の血統因子情報の解析でも進めようかな……」


 ゴジは透明になったまま3人のやり取りを見た後、彼等の邪魔にならないように音もなく姿を消して自分の研究室に戻った。


「ゴジ…戻ってたなら声くらい掛けなさいよ。折角お母さんの所にいたのに…」


 ゴジはレイジュの顔を見て涙は拭いてきたようだが、未だに目が真っ赤な様子を見て少し意地悪したくなる。


「ふっ…弟としては姉さんの泣き顔を見るのは悪いと思ったんでね。」

「え…!?あんたも見てたの!?」


 レイジュは慌てた様子でゴジ詰め寄る。


「信じらんない!」

「サンジ兄さんのようになりたくないから声を掛けるのを遠慮しただろう♪わっはっはっは!!」


 ゴジは楽しそうに笑いながら、むちゃくちゃに腕を振り回すレイジュの拳を躱していく。


「うっさい!黙れアホ、笑うな!!避けるな!!」

「よっと……嫌だよ……馬鹿力の姉さんのパンチは当たったら痛ぇんだもん。それに俺はクソ親父にレイドスーツの開発を頼まれたから忙しいんだ。」


 レイドスーツという言葉を聞いてレイジュの拳が止まってキョトンとする。


「レイドスーツ?ジェルマ66(ダブルシックス)の衣装のこと?」

「そうだよ。姉さん専用のポイズンピンクも作るからね。それでなんか俺に用だったの?」


 ゴジはレイジュに笑いかけると、レイジュは俯きながら両手で自分のスカートの裾をギュッと掴んだ後、意を決してゴジの部屋に来た理由を告げる。


「そうだ…ゴジ。1回しか言わないからよく聞きなさい…」

「ん?」

「ゴジ…お母さんを助けてくれてありがとう…」


 レイジュは俯いたまま顔を赤くしたままゴジに頭を下げた。


「姉さん…。」

「何よ…?」

「お礼を言う時はちゃんと目を見て……っと!?あぶね!!」


 ゴジはレイジュが自分より先にサンジに礼を言っていることを知っているので、ついつい可愛げのある姉をからかった。


「うっさい!ゴジのアホ!!あんた、また避けたわね!!ちゃんと喰らいなさいよ!!」


 顔を真っ赤にして怒りの形相でゴジを追い掛けるレイジュは感情をこそ豊かであるが、ジャッジには逆らえないように血統因子を操作されているのだ。


「姉さん!」

「何よ……」


 ゴジはレイジュの拳を躱した後、そのまま彼女を正面からギュッと抱き締める。


「必ず俺が助けてみせるからな!」


 母を助けたゴジの優先順位はレイドスーツよりもレイジュ、そしてイチジ達を救うことを誓った。


「うふふっ……なんの事か分かんないけど…ゴジ、とうとう捕まえたわよ……」


 しかし、そんな事を露とも知らないレイジュはいつも逃げ回るゴジを捕まえられた事にほくそ笑み力の限りにゴジを抱き締めるとメキメキとゴジの体が悲鳴をあげる。


「いででで……ちょ……いでぇぇぇ!!!」


 11歳になるレイジュと8歳のゴジでは体格差も力もレイジュの方が上であり、ゴジは満足したレイジュに解放されるまで痛みに悶えていた。 
 

 
後書き
5月2日加筆修正 
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