| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

おっちょこちょいのかよちゃん

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

141 監視下に置かれた首相

 
前書き
《前回》
 大戦に参加する為の説明会が始まった後、フローレンスは皆に「領土の攻撃」「本部の守備」「剣の奪還」そして「藤木茂の救出」、どれを担って貰うか、手紙を変色させる事で班分けを行う。かよ子は班分けの結果、大野やまる子などと共に藤木の救出を、三河口やゆり、光江などは剣の奪還を、冬田やりえ、杉山は領土の攻撃を、そしてさりやかよ子の母親などは本部の守備を担う事になった!!
  

 
 宴は続く。
「ももこちゃん!ももこちゃんは手紙、何色になったの?」
 のり子がまる子に質問した。
「ああ、青だから藤木を捜しに行くよ」
「あ、私もだよ。その藤木って人知ってるの?」
「え~、そりゃ、卑怯な男子だよ。なんかあると逃げるし、なんだかんだでウソつくんだよね~。完全に悪い奴って訳じゃないんだけどさあ」
「そうなの?なら、どうしてそんな子がさらわれたの?」
「言われてみればそうだね~」
「確かにそうだよな」
 大野が話に入って来た。
「あいつだったらすぐ逃げるはずだ。つまり、藤木を攫った奴は善人面して藤木に近づいて連れてったって可能性が高いな」
「うん、そうだよね。それに私、藤木君が笹山さんに出した手紙を見せて貰ったんだ・・・」
「笹山さん?」
「ああ、ウチの学校にいる女子だよ。藤木が好きになってるんだ」
「『笹山さん、僕は君の事を忘れるようにするよ』って手紙に書いてあったから異世界の人に騙されて連れて行かれたんじゃないかな?」
 かよ子はそう考察した。長山も話に関わる。
「ありえるね。兎に角藤木君の安否はどうなっているかだね。でもフローレンスが藤木君を取り返す係を決めているって事は藤木君は生きている可能性はあるって事だよ。僕は本部の守備に就くから一緒には行けないけど確かめるべきだね」
「うん!」
 そして友蔵が孫を呼ぶ。
「まる子や、料理がこんなに残っとるぞ!」
「ああ、行く行く!」
 食欲で思考が支配されている二人にまる子の姉はあの二人大丈夫か不安になるのだった(そもそも友蔵はこの戦いに招集された身ではない)。

 フローレンスは先代の杖、護符、杯の所有者が集まっている所に向かった。
「ご無沙汰しております。皆様」
「フローレンス・・・」
「道具をそれぞれの娘さん方にお渡ししました今の貴女方の役目は『本部の守備』ですが、この本部内で皆様の状況を確認します業務を担っていただきます。詳細は明日、説明致します」
「ありがとう」
「フローレンス。私は首相官邸の所へ行って来るよ」
 イマヌエルは告げた。
「はい、向こうも心配ですからね。お気を付けまして行ってらっしゃいませ」
 イマヌエルは部屋から出ていった。

 杉山は誰一人とも喋っていなかった。
「杉山」
 隣町に住む男子・山口が呼んだ。
「何だよ?」
「お前、大野と喧嘩したままだけどそのままでいいのかよ?」
「お前に関係ねえだろ」
「お前も攻め込みに入る役割だろ。川村やヤス太郎、すみ子も一緒だ。俺達と行動しようぜ」
「悪いが一人にさせてくれ」
「・・・分かったよ」
 山口は杉山から離れた。いつからあんなに愛想が悪くなったのかと山口は思うのだった。

 三木首相は赤軍の政治委員、足立正生と吉村和江の監視の中、官僚達によってテレビおよび新聞や雑誌の記者達を集めていた。
(赤軍め・・・。敢えて二人の構成員を付けるとは、嘘をつかせない為か・・・)
「首相、嘘ついたら承知しませんよ」
 足立がそう一言告げただけで戦慄と共に急に怖気づいた。
「わ、分かった・・・」
 三木はオドオドしながら発言台の前に立つ。
(放棄した戦争を再び行うなど国民に絶対に反感を買うだろう・・・。全国の大学の学生はきっとデモを起こすに決まっとる・・・!!)
「ええ、本日赤軍との交渉を行いました・・・」
 カメラのフラッシュがたかる中、首相の心臓は激しく鼓動する。
(できれば全国民の為にもこんな要求に応じたくない・・・。しかし、ノーと答えたならばこの国は赤軍に支配される・・・!!)
「結果・・・」
 首相は思い切って言おうとした所、バキッという音がした。
(な、なんだ、なんかの抑圧から開放されたような感触だ・・・!!)
「憲法9条の改正は拒否しました!!」
「な、何だと!?」
 足立と吉村は約束を破られた事に激昂した。
「総理!どういうおつもりか!?え!!?」
 足立が詰め寄る。たが、その時、足立と吉村は金縛りのように動かなくなった。
(誰か助けが来たのか・・・!?)
 そう思いながら首相はコメントを続ける。
「赤軍の為より全国民の為に絶対に戦争はしません!!」
 記者達は首相の決断になんと屈強な総理だというような反応をした。一方で吉村と足立はなぜ自分達が動けないのか不審に思った。侵入者でもいるのか。ポケットの中に隠し持っていた機械も壊されていた。そして、失神した。
「やれ、やっぱり赤軍も策を立てていると思ったよ」
 人目のつかぬ所にイマヌエルはいた。

 記者会見が終了し、三木首相は会見の現場を去り、裏の地に議会の時に会った人物を見た。
「三木総理、お疲れ様です」
「お前は確かイマヌエルと言ったな。奴らの失神はお前の仕業か?」
「はい、赤軍も我々の作戦に対し何か策を立てていると思い、参りました。兎に角、その政治委員と名乗る足立正生と吉村和江は私が回収致します」
「ああ、私もお前が来てくれなかったら赤軍の思うがままにされ、全国民から非難を買っていたに違いない。ありがとう」
「どう致しまして。偽物の護符、杖、杯もお渡しを済まされたようですし、本物の道具の持ち主達も私達の世界に呼び寄せております。彼らが偽物だと確信するのはかなり後になるでしょう」
「そうか」
「では、私は失礼致します」
 イマヌエルは念力のように気絶した足立と吉村を近くに寄せて姿を消した。

「それでは皆様、色々な人と交流しましてお楽しみいただけましたでしょうか?宴はこれでお開きにしたいと思います。後で皆様には宿泊用の部屋を用意いたしますのでそのままお待ちください」
 フローレンスは宴の終了を告げた。
「まる子、明日からじゃな!儂はいつもまる子と一心同体。どこまでも着いてくぞ!」
「ありがとう、おじいちゃん!」
 その時、フローレンスは友蔵の所へ向かった。
「さくら友蔵様ですね。今、何と仰いましたか?」
「ああ、儂はまる子と一緒に行動させていただきますぞ!どんな時でも孫の傍にいてやりたいのです!」
「お気持ちは解りますが、私達は貴方を正式に認めておらず、お情けで通されましただけです。貴方には能力は一切ございません。厳しい事を言いますが、私は貴方は無駄な犠牲者を巻き込みたくありませんし、貴方も命は大事にしていただきたいです。お孫さんが気になりますのも解りますが元の世界にお戻りします事をお薦めします」
 友蔵は青ざめた表情となった。
「何と!い、嫌じゃ、嫌じゃ、まる子と別れたくな〜い!!」
 友蔵は泣きながら我儘を言った。
「しかし、これは危険な戦いなのです。私も色々と別の用が沢山ありますし、手を差し伸べきれません事もあります。お孫さん達は異世界に対抗できますだけの力がありますから呼びましたのです。貴方には残念ながらありません」
「しかし、もしまる子に何かがあったらどうするんじゃ〜!?」
「藤木茂君の奪還班には警察の方、大人の方もおります。ご安心下さい」
「それでも儂はまる子が・・・」
「貴方はご自分の命が惜しくありませんのですか!?」
 フローレンスが怒りを露わにした。
「まる子の為なら命など惜しくない!」
 友蔵は断言した。
(何て融通の聞きませんおじいさんです事・・・)
 フローレンスは折れるしかないと思った。
「・・・解りました。足を引っ張りませんようにしてください。但し、私は貴方の命は保障しかねますので自己責任でお願いします」
 フローレンスは呆れてその場を離れた。
「あ、ありがとうございます!」
 友蔵は涙して礼をした。
(まるちゃんのおじいさんがいて、大丈夫なのかな?)
 かよ子は非常に不安だった。彼が足手まといな事をするのではと。
「まるちゃんのおじいさん」
 かよ子は友蔵に言う。
「あまり、無茶しないで下さい・・・」
 かよ子はそう言うしかなかった。
「大丈夫じゃ!儂はまる子の為なら何でもするからの!」
 友蔵は何処かズレた返答をした。
「おじいちゃん、あんまりまる子を甘やかさないでね」
 まる子の姉が友蔵に釘を刺した。
「分かっとるよ、お姉ちゃん!」
(本当に分かってるのかな?)
 かよ子やさきこは不安になった。

 フローレンスは客人達の部屋の用意をし終えると、その場に徳林奏子が現れた。
「あの、フローレンスさん・・・」
「貴女は徳林奏子さんでしたわね?三河口健さんのご友人の」
 フローレンスは彼女がエレーヌという女性から羽衣を授かっている事も覚えていた。
「はい、それで、藤木君が行方不明になった原因なんですが・・・」
「心当たりがありますのですか?」
「はい、藤木君には好きな女の子がいて、その子に振られた事で傷ついたんだと思います。クリスマス・イブの日に私は藤木君が走り去っていくのを見ました。それで、好きだった女の子の家に藤木君からの手紙があって、『もう君の事は忘れるようにする』って書いてあったんです」
「それなら、そのクリスマス・イブの日に敵の世界が清水に現れ、藤木茂君を連れて行きましたという可能性もゼロではありませんね。徳林奏子さん、情報をありがとうございます。ところで、私からも質問します。藤木茂君の事をよくご存じのようですが、お知り合いなのですか?」
「あ、はい。ていうか、その藤木君の好きな子が私の家の近所に住む子なんです。その子も『冷たく当たるんじゃなかった。もう許してあげたい』と言っていました」
「そうですか・・・。その女の子の名前は何とおっしゃいますか?」
「笹山かず子ちゃんです」
「笹山かず子ちゃん・・・。ありがとうございます。貴女は剣の奪還の班なので藤木茂君の救出には立ち会えません事に残念と思いますかもしれませんが、その報告は藤木茂君を呼び戻します為のいい情報になりますでしょう」
「はい、ありがとうございます」
 フローレンスは笹山かず子という女の子の名を記憶に留めるのであった。 
 

 
後書き
次回は・・・
「偽物は不具合を起こす」
 フローレンスによって用意された部屋でかよ子達は就寝する。その一方、杖、杯、護符を手にした赤軍達は戦争主義の世界の本部にてレーニンと共にその道具を使用して理想の世界を創り出す計画に入るが・・・!? 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧