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おっちょこちょいのかよちゃん

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138 唯一の友達

 
前書き
《前回》
 異世界に到着したかよ子は二人の少女と相対する。その二人に手紙を見せようとして先を進むのだが、その場に招集されてもいないのに孫が心配のあまりにいつの間にかついて来ていたまる子の祖父・さくら友蔵もいた。自分も行きたいと駄々をこねる友蔵だったが付き合いきれぬと見てかよ子は二人の少女に手紙を見せて先に進む。そしてその先には隣の家のおばさんの娘や杯の所有者の安藤りえなど多くの選ばれし者達がいた。三河口も小学時代の友人・湘木克也と、まる子は幼稚園児時代に会ったという鳥橋のり子と再会する。しかし、のり子はまる子が他の友達と共にいた様子を見て・・・!? 

 
 友蔵は二人の少女に泣きながら土下座を続ける。
「頼む!行かせてくれ!まる子が、心配なんじゃ!!」
「お気持ちは解りますがこれは決まりですので」
「ならその決まりを作った人に合わせてくれ!頼む!」
「生憎ですがその人達も他の御用が色々とありましてそちらに構っている暇はないのです」
「そんな!儂にまる子達を見殺しにしろと言うのか!?嫌じゃ~」
 友蔵はただひたすらに泣き続ける。その時、横から誰かに蹴飛ばされた。
「どけ、じじい!邪魔じゃ」
「え!?う、うおっ!!?」
 友蔵は呼ばれた相手に怖気づいた。制服のスカートを長くし、髪型もパーマをかけている、いわばスケバンの女子高生だった。
「ふ、不良じゃ~!い、命だけは・・・!!命だけは勘弁してくれ~!!」
 友蔵はそのスケバンを見ると喚き、怯えた。
(ったく、なんじゃ、このせせろーしいいじじいは・・・)
 スケバンは老人を無視して二人の少女に手紙を通す。
「ようこそ、おいでいただきました。鯉沢輝愛様ですね。どうぞお通り下さい」
(あ、あの不良も手紙を!?)
 友蔵は驚いた。次に来る人もまた手紙を二人の少女に渡して先に進む。友蔵は一人の男性を捕まえて頼んだ。
「アンタ、頼む。その手紙を儂に譲ってくれ!向こうに儂の孫がおるんじゃ!行かせとくれ!」
「は、はあ!?」
 男性は訳の分からない要求をする友蔵に困惑した。
「す、すぐに返すから!」
「あ!」
 友蔵は男性から手紙をひったくって走り出す。
「これで通しておくれ!」
「あの、先ほども言いましたように別の人の手紙で通る事もできません」
「そんな!」
 友蔵は再び先へ行こうとするもまた弾かれてしまった。
「あの、返してください」
 男性は友蔵から手紙を取り返し、二人の少女に見せてその場を去った。
「ま、まる子・・・。まる子お~!!」
 友蔵は泣き喚き続けた。

 かよ子はのり子に睨みつけれ、震えてしまった。
「ももこちゃん、どうして・・・!?私がももこちゃんのただ一人の友達だったのに!!」
「の、のりちゃん!?」
「ももこちゃんのバカ、バカ、バカ!私よりも他の友達がいいの!?」
 のり子は急にまる子を触る事なく念力の如く地面に叩きつけた。おそらく彼女は武装の能力(ちから)を持ち、それが発動されたのだろう。
「の、のりちゃん、ごめん・・・」
「嫌だ!許さない!」
「のり子ちゃん、止めて!!」
 のり子が持っている人形が叫んだ。その時、のり子がダメージを与えていたまる子への能力(ちから)が解け、まる子は再び起き上がれるようになった。
「・・・キャロライン?」
「折角ももこちゃんと会えたのに、そんな傷つけるの駄目だよ。学校の他の人達と違って仲良くならなきゃダメよ!」
「キャロライン・・・。ごめんね。そうだったね」
「のりちゃん・・・。横浜に帰っても辛かったんだね・・・。あの小鳥屋のおばちゃんはどうしたの?」
「お店を止めて横浜(こっち)で一緒に住むことになったんだけど、去年死んじゃったんだ」
「そうなんだ・・・。離れてもずっと友達でいるよ」
「うん・・・!!」
「のりちゃん、これは遊びじゃなくて命を懸けた戦いだよ。遊ぶなら二人でもできるけど、今は他の人達と一緒に協力しなきゃダメなの。でも、のりちゃんならきっとももこちゃんだけじゃなく、きっといろんな人たちと打ち解けられるって信じてる。だから、喧嘩しないで・・・」
「うん、ごめんね。ももこちゃん、皆」
「大丈夫だ、俺達とも仲良くなろうぜ!」
 大野の言葉でのり子はここにいる皆が戦いの仲間になる事に留意しなければならないと感じた。
「オイラもブー!」
「私も協力するわよっ!」
「私も・・・」
 皆が自分を受け入れてくれる事に感謝するのり子だった。
「あれ・・・。貴女のその杖に杯・・・」
 キャロラインはかよ子の杖やりえの杯を見た。
「凄い強さを発してるわ・・・。それに・・・」
 キャロラインはさりの持つ護符も見た。
「あの護符も・・・」
「ああ、これね、ここの世界で一番強い力がある道具なんだよ。私のこの杖も、りえちゃんの杯も、あのお姉さんの護符もね。元々はお母さんの物だったんだ。りえちゃんやこのお姉さんの護符もそれぞれのお母さんから引き継いだんだよ。お母さん達はこれで戦後の食糧難を乗り越えてきたんだ」
「そうなの。私よりも随分前に作られたのね」
「キャロラインちゃんもこの世界で作られたのかしら?」
 さりが聞いた。
「そうよ。私はここで作られて生まれたの。それでのりちゃんの友達として『敵』と戦って来たのよ」
「そうなんだ・・・」
 その一方、三河口は湘木や光江などとも交えてのんびりと会話していた。
「俺達と同年代の奴も何人かいるね。中学生とかも大人もいるし、警官の人もいるのか」
 北勢田は周りを見回す。
「よう、久しぶりじゃの、われら」
 スカートを極端に長くし、パーマをかけた典型的なスケバンの女子高生が現れた。
(す、スケバン・・・!?)
 光江は現れたスケバンに少し怖気づいた。
「鯉沢輝愛か。久しぶりだな」
 三河口は落ち着いた表情だった。
「三河口、知り合いなのか?」
 湘木が質問する。
「ああ、修学旅行で広島に行った時、現地の高校と交流する機会があってね、その時に会ったんだ」
「われ、ウチを覚えとってくれたんか。嬉しいのう。んで、こいつらは?」
 鯉沢は光江や湘木を見た。
「ああ、違う学校に通う俺の友達だよ」
「へえ、ウチは鯉沢輝愛。広島から来たんよ」
「俺は湘木克也だ」
「私は鷺森光江」
「ウチはこの銃で奴をボコボコにできるんよ」
 鯉沢は持っている銃を見せびらかした。
「銃?俺達と会った時は道具持ってないって言ってたが、その後に貰ったのか?」
「ああ、異世界の敵が『護符はどこだ』とかぬかしとるけん、その時、元就とかゆう奴からもろうたんや。こいつでボコボコにした。そういや、随分と澄んだ感触がするけんのう。この二人のガキとこの姉ちゃんから・・・」
 鯉沢はかよ子とりえ、そしてさりを見た。
「わ、私・・・!?」
 かよ子は鯉沢に睨まれて怖くなった。相手がスケバンだからだというのもあるが。
「よくわかるな。実はその二人の子はそれぞれ異世界の杖と杯を持っている。そしてその敵が探していた護符の持ち主が、この俺の従姉なんだよ」
「へえ、われの従姉か?」
 鯉沢はさりを睨んだ。
「よ、宜しくね」
 さりは年下相手とはいえ、やはりスケバンだからか少し震えて挨拶した。
「お兄ちゃん、この人は一体?」
 かよ子は三河口に聞いた。
「ああ、広島の高校に通う女子高生だよ。修学旅行の時に会ったんだ」
「このガキ、知り合いけん?」
「ああ、隣の家に住んでいるんだ。かよちゃん、この人はかよちゃんの杖にりえちゃんの杯、さりちゃんの護符で強い感触を持っているから俺よりも強い見聞の能力(ちから)があるようだ。それに初めて会った時も俺が普通の凡人(ひと)と違う事にすぐ気づいたしな」
「そうなんだ」
「それに、彼女は夏に非常に不気味な感触を覚えたと言っていた。杖と同等の能力(ちから)があると言われる異世界の剣が奪われたのを感知したんだろうな」
「異世界の剣・・・!?あの赤軍の女の人が使ってた・・・!?」
 かよ子達はクリスマス・イブの日にさりの護符を守る為に名古屋で戦った際に重信房子という赤軍の長と遭遇した事がある。その人物が使っていた剣が広島で奪われていた事をこの見聞の能力(ちから)を持つこのスケバン女子高生が感じるのもおかしくないとかよ子は思った。

 友蔵は土下座しながら通行を二人の少女に乞い続ける。
「頼む、通しておくれ~。この老いぼれジジイの我儘をどうか聞いとくれ~」
「幾ら頼まれても規則は変えられません。申し訳ございませんがお引き取り下さい」
「そ、そんな事できん!孫が、孫が心配なんじゃ!!」
 その時、その場に一人の男性が現れた。
「アンネ、ハンナ、もう手紙を渡した人は皆来ただろう。君達ももう行っていいよ」
「はい、イマヌエル様。でも、この人がどうしても帰ってくれないのです」
「この人?」
 イマヌエルはそこで土下座している老人がいるのを確認する。
「手紙を持っていないのにお孫さんが心配だと言ってこの先に行きたいというのです」
「私達が帰るよう頼んでも聞かないのです」
「そうか」
 友蔵からしてイマヌエルは神のように見えた。
「か、神様ですか!?どうかさくら友蔵七十六才、孫の命が心配なのです。貴方様の為なら何でも致します。どうかこの先へ行かせてください!!」
「はあ・・・」
 イマヌエルも困惑した。

 かよ子は多くの人々がいる中で激しい戦いが始まる事に緊張が高まる。
「大丈夫かな・・・?おっちょこちょいしないかな・・・?」
「大丈夫よ。かよ子。その杖があるんだから」
 母が心を落ち着かせた。
「うん・・・」
 その時、声が聞こえる。
『選ばれし皆様、お待ちしておりました。私達の戦いに参加してくださります事を感謝致します。この先に開かれます階段をお通り下さい』
「フ、フローレンスさんの声だ・・・」
 かよ子は嘗て出会った異世界の女性を思い出した。そして多くの人が進み、かよ子達も続く。そこには開かれた扉があり、下り階段があった。 
 

 
後書き
次回は・・・
「選ばれし者達への説明会」
 多くの人々と共にある大広間へと通されたかよ子。そこでフローレンスとの再会に喜び、おっちょこちょいをやってしまう。そして大広間でフローレンスはこの地に皆を呼び寄せた経緯と共に今の日本の危機的状況の説明を始める・・・!! 
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