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捨てられた狼犬

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第三章

「穏やかで大人しくて」
「慣れた相手には凄く優しいですから」
「外見で判断して欲しくないですね」
「狼犬で狼にそっくりですが」 
 恐ろしいと言われるこの生きものと、というのだ。
「ですが」
「それでもですね」
「性格はいいんで」
「凄くいい娘ですから」
「誰か家族に迎えて欲しいですね」
「そうですね」
 そうした話をしていた、しかし。
 ユキの家族は中々名乗り出なかった、だが。
 以前ジュリアを発見したチャクリーが施設に来て言ってきた。
「あの、ユキのことを聞いて」
「貴女は確か」
「以前ジュリアを通報した」
「その方でしたね」
「後であの娘のことを聞きました」
 ジュリアのことをというのだ。
「狼犬でそして優しい人の家族になったと」
「はい、そうです」
「その通りです」
「あの娘は幸せになりました」
「それで私もと。家族と話して」
 そしてというのだ。
「こちらに狼犬の娘がもう一匹いると聞きまして」
「それで、ですか」
「これからですか」
「ユキを迎えてくれますか」
「家族に」
「そうしたくて来ました、それで」
 チャクリーはさらに話した。
「その娘と会わせて下さい」
「わかりました」
「それではお願いします」
「そしてどういった娘か知って下さい」
「そのうえで決めて下さい」
「それでは」
 スタッフ達に応えてだった。
 チャクリーは家族と共にユキと会った、そして彼女をよく見てそのうえで家族に迎えた。
「ではこれから家に連れて帰ります」
「いえ、大きな娘ですが」
「宜しくお願いします」
「大きいですが大人しくていい娘です」
「幸せにしてあげて下さい」
「そうさせてもらいます」
 スタッフ達に笑顔で応えてだった。
 彼女はユキを家族に迎えて施設を後にした、そして後日ユキと一緒にいる動画を施設に送ったがそこでは。
 ユキは大きな身体を動かして家族と幸せに過ごしていた、捨てられた悲しさはもう消えていた。そこには新たな幸せがあった。


捨てられた狼犬   完


                  2021・7・24 
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