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異生神妖魔学園

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バステト様からの依頼!神罰代行!

トレーニングジムと武道館での騒動から翌日、紺子は数人の生徒たちと神守の車に乗せられていた。


神守「集まったのは出雲、藤井、赤川、螺子巻……ふむ、いい人材だな」

龍哉「先生、俺たちを乗せてどこに連れてくつもりなんですか?」

綾野「見ればわかりますが神守先生は私たちを変な場所へ連れていくつもりはありません。ある用事があって自分の家で私たちと話をするつもりでしょう」

紺子「どうせあれじゃね?進捗どうとか成績がこうとかだろ?」

神守「勘違いするな。我は別にあっちの方にお前たちを紹介する気はさらさらない。それに成績のことでもないが、来れば今にわかる」


神守はアクセルをふかし、紺子たちと共に自宅へ向かっていった。










さて、ここは神守の家。彼女には猫耳と尻尾が生え、古代エジプトの神の服装をしているため、種族は文字通りバステト。古代エジプトに関する像やミイラの棺を模したレプリカが飾られ、さらには道具や武器が置かれていた。
紺子たちはテーブルの前で神守が淹れてくれた紅茶とケーキを口にする。頬が落ちそうなほどの美味しさだ。


一海「それで、僕たちを呼び出した理由って?」

神守「ああ。お前たちを呼んだのは他でもない。我は見ての通りバステト…猫の神。猫を愛し、猫に愛され、猫を救う存在でもある。エジプトにいた頃から全ての猫及び人間から信仰を受けていたんだが………………」


見ると、神守の眉間にはシワが寄っていた。どうやら激しい怒りを感じているようだ。


神守「最近、うちの近所で猫をいじめる人間がいる!これは動物愛護法違反だ!今すぐ警察に言いつけてやりたい気分だ!」

龍哉「気持ちはよくわかりますが、注意はしたんですか?」

神守「注意だと?そんなもの、あいつはただ『あーはいはいわかりましたよ』ぐらいにヘラヘラと聞き流すだけだ。まるで右耳から入って左耳から抜けていくような感じで無性に腹が立つ」

紺子「じゃあ私たちを呼んだのって、その猫をいじめてる奴に罰を与えてくれっていう頼…ビボッ!?」


紺子が紅茶を飲みながらしゃべった途端、むせる。鼻に紅茶が入ってしまったのだ。
鼻に紅茶の香りが充満し、鼻の穴から紅茶が滴る。


神守「飲みながらしゃべるんじゃない」

一海「出雲姐ちゃん面白っ!『ビボッ!?』だって!お願い、もっかいやって!」

紺子「う、うるせぇ!マジで死ぬかと…!」

一海「やらないの?つまんないなぁ…」

綾野「一海、あなたは自分の姐を笑うなどサドですね。マスター、大丈夫ですか?」


綾野はハンカチを紺子に差し出した。
だが一海は気になった。出雲姐ちゃんがマスター?この先輩の?


紺子「わ、悪いな……」

綾野「気にしないでください。私はマスターが大好きなんです。あなたもそうでしょう?『綾野先輩マジ大好き!』と言っていたではありませんか」

一海「ていうか先輩。何で先輩って出雲姐ちゃんをマスターって呼ぶんですか?」

綾野「私の動力源は基本ガソリンですが、1週間に1度補給する必要があります。歯車を回せば必要ありませんが、去年1度だけ怠ってしまいました」

龍哉「ロボットでもミスすることってあるんですね…」


綾野は話を続ける。


綾野「命が尽きそうな中、このマスター……出雲紺子様が歯車を回してくれました。実は私には最初に私にガソリンを補給させるか歯車を回してくれた人をマスターと認識するシステムが導入されているんです。そのシステムが働いたのをきっかけに、私は紺子様をマスターと認識するようになりました」

龍哉「そんなことが……紺子、ちょっと羨ましいぞ…………」

紺子「いや、あれはたまたま私が助けただけで…」

一海「とか言っちゃって、ホントは先輩のこと好きなんでしょ~?」

紺子「違げぇよ!!よってたかって好き勝手言いやがって!!もうその話はおしまい!!//////」


顔を真っ赤にしながら怒鳴った。それを見ていた神守は。


神守「話を戻すぞ。お前たちを呼んだのは猫をいじめる奴の件を聞いてほしかっただけではない。あいつに罰を与えてほしいことも含まれている」

綾野「罰?」

神守「我が口で言っても全く通じないからな。そこでだ、奴にトラウマを植えつけてほしいのだ。意味はわかるな?殺す必要はないが、まずは奴を動けないように縛り、空き缶や小石をぶつけろ。特に螺子巻。お前が罰を与えると絶対お前に恐怖し、二度と表へ出れなくなるだろう」

紺子「あ~、綾野先輩ならやりかねないだろうなぁ……」

綾野「無論そのつもりです。神守先生は殺す必要はないと言いましたが、システムを起動させればいつでも殺せます」

龍哉「やめてくださいよ綾野先輩!!マジで冗談に聞こえませんから!!」





うろつくより家の前で待てばすぐに犯人が見つかると言われたのだろう。神守の家を出た紺子たちは彼女の家の門の前で待機することになった。
龍哉がふと紺子の方を見ると、なぜかたそがれていた。


龍哉「おい紺子、何たそがれてんだ?」

紺子「いや…………猫って聞いて昔うちで飼ってたモーちゃんを思い出してたんだ」

龍哉「モーちゃん?」


首をかしげる龍哉。こいつ猫なんて飼ってたか?という不思議そうな表情を浮かべた。


紺子「私が名づけたんだ。冬だったかな……だいたいその時期に私が拾ってきたんだよな。生後5ヶ月ぐらいでさ、しかも死にかけてたから…」

一海「死にかけてるどころか、あれアルビノだったよね」

紺子「うん。拾われてからずっとうちで暮らしてたけど、私とカズミン妖狐だろ?私たちの妖力のせいで妖怪になっちゃったんだ。しかも化け猫の段階を飛ばして猫又にな」

綾野「猫は10年経つと化け猫、さらに5年経つと猫又になると聞きますが、その猫又はどこに?」

紺子「アルビノ患者は寿命が短いっていうじゃん。猫は死期が近くなると姿を消す。あいつにはどっちも当てはまるもんでな………私たちに黙って勝手にいなくなりやがって………あいつの最期見守りたかったのに………何で?どうして?」


気づけば紺子は涙を流していた。


一海(あの猫、僕みたいに1人ぼっちだったって出雲姐ちゃん言ってたっけ。僕も1人なんて嫌だった。いずれあの人たちの後を追って死ぬつもりでいたし………もし出雲姐ちゃんと出会ってなかったら今の僕はここにいなかった。僕はこんなところで出雲姐ちゃんと別れるわけにはいかないんだ)

龍哉「カズミンまでどうしたんだ?」

一海「いや…別に」


そんな中、綾野があることに気づく。


綾野「神守先生が言っていた猫をいじめる人間のデータを確認」

紺・一・龍「「「!?」」」

綾野「性別は男。さらに推測すれば、目の前に猫。このまま放っておけばあの猫の命が危ないでしょう」


この時、紺子はすでに泣くのをやめていた。


紺子「そ、それで場所は?」

綾野「神守先生の家の後ろ……路地裏です。私についてきてください」

龍哉「わかりました!よし、お前ら!すぐ急ぐぞ!二度と猫をいじめないようにさせるためにも!猫を助けるためにも!」

一海「はい!」

紺子「天国で見ててくれ、モーちゃん!私たちの勇姿、お前にも教えてやるからな!」


猫を助け、猫をいじめる男に罰を与えるためにも全力で走る。特に紺子は帰ったら自分が飼っていた猫が写っている写真に自分はよくやったと伝えるつもりでいた。










ところ変わって路地裏。神守が言っていたあの『猫をいじめる男』がいた。
目の前には傷ついた猫。その猫は体を丸めて怯えているが、男を引っ掻こうと今にも飛びつきそうな姿勢にも見える。
ちょうどその時、紺子たちが駆けつけてきたことに気づき、その方向へ顔を向ける。


男「誰だお前ら?興冷めな……」

紺子「興冷めもチョウザメもあるか!神守先生が言ってた猫をいじめる奴ってのはお前か!?」

男「………お?てことはお前ら、あの自称神の猫女の仲間か。あいつに代わって注意しに来るなんて、あいつすっかり気が抜けちまったみてぇだな。生意気なガキ共だが、その勇気は褒めてやるよ」


龍哉は怒りに震え、男の前に出ると、胸ぐらをつかむ。


龍哉「テメェ!動物の命はそんなに軽いもんじゃねぇんだぞ!その猫みたいな小さい命も、猫より大きい人間みたいな命もたったひとつしかない!俺たち人外だってそうだ!お前は命の大切さを考えたことがあるか!食べる前に言う『いただきます』は『《《命》》を《《いただきます》》』の意味!お前は何の意味もなく食べてきたのか!?感謝もせず食べれればそれでいいと考えてきたのか!?」

男「命はいずれ尽きるんだよ。お前ら人外だってそうさ。寿命を迎えたり殺されたりすればおしまいなんだよ。そんな世の中で生きて何が悪い?」


男は悪びれることなく答えた。
彼の言葉を聞いた龍哉は怒りが爆発しそうになり、血液が沸騰しそうなほど全身が熱くなるのを感じた。


男「もういいだろ?そろそろあの猫いじめたいんだが」

紺子「よくねぇよ!私たちは神守先生に頼まれて来たから引き返すわけにはいかねぇんだよ!」

男「ったく、なーにが猫をいじめるなだよ。俺に罰する奴なんていないくせに。いっそ殺そうかなぁ?たかが1匹殺しても、ニュースやったとしたって誰も興味持たねぇし……な…………!?」


一海の顔を見た男は突然驚愕の表情を浮かべた。
男の言葉を聞いた一海の顔中に刻印のようなものが刻まれており、目が白く染まっているではないか。
他の3人も動きが止まった一海に不思議と彼女に目を向けると、男同様驚いた。


龍哉「お、おいカズミン!?一体どうした!?」

綾野「一海の妖力が数十倍に膨れ………いえ、数百………………数千!?まだ上がっています!」

紺子「カズミン!何があって…」

一海?「黙れ。今『妾』は機嫌が悪い………………!」


声は一海そのものだったが、まるで別人と話しているような雰囲気で全員鳥肌が立った。
この時、紺子は一海が数日前に言っていた言葉を思い出した。なぜ一海は怒る自分を嫌うのか。










紺子『なあカズミン。何でそんなに怒る自分が嫌なんだ?』

一海『僕たち藤井一族は代々『玉藻前』の血筋を持っているんだ。僕もその血を強く引いてるけど、はっきり言って、その力を使うのが怖いんだ……………自分が自分じゃなくなるんじゃないかって。だから制御するために1本の尻尾は白く染まってるんだ。でも、僕がキレたらその1本が8本と同じ色に戻ってしまい、最悪自分を見失っちゃう………だから、もしそうなったら………………もしも相手を殺そうとしていたら、僕を………………『玉藻前』を止めて。出雲姐ちゃん』










紺子「まずい………!」

綾野「マスター、何がまずいのですか?」


紺子は急いで一海の状態を説明しようとするが、一海はすでに行動していた。
男を見る一海の目は凍りつくように冷ややかだった。


一海(玉藻前)「いざや呪え、常世咲き裂く怨天の花。数多の怨霊となりし生き物よ、愚かにも命ありける者を辱め陥れる者に憑依し、心を荒らせ」

男「て、テメェ…変な呪文唱え…《b》ダグァ!?《/b》」


男は猫を見るや否や、腰を抜かした。先ほどまで猫を怯えさせていたのに、今度は逆に男が猫に怯えていた。
一海は下等生物を見下すような目で見つめ、猫を見る男は壁まで後ずさる。さらには徐々に過呼吸になってくる。


紺子「おいカズミン!!もうやめろ!!殺しになるぞ!!」

一海(玉藻前)「………『妾』はただ、かの愚かしい人間にトラウマを魂にまで植えつけているだけだが?」

紺子「目を覚ませカズミン!!元のカズミンに戻ってこい!!おい、聞いてるのかカズミン!!」

綾野「一海、私たちの声が聞こえますか!?神守先生も『トラウマは植えつけてもいいが殺すな』と言っていました!」

龍哉「そうだ!そいつを殺しても何の得もないぞ!お前はそんな奴じゃないだろ!頼む!正気に戻ってくれ!!カズミン!!」

男「■■■■■■■■■■■■■■■!!」


いくら説得しても止まる気配はなく、男も容態が次第に悪化していく。このままでは本当に死んでしまう。
本当にまずいと思った紺子は、こう言い出した。


紺子「もしやめてくれたら、明日の夜私のお腹を好きにしてもいいから!!戻ってこいよカズミン!!!!!」


紺子が叫んだその時、一海に異変が起きた。顔中の刻印が徐々に消えていき、目の色も元通りになり、そのまま気を失った。
一方で男もぐったりと横たわった。それをよそに紺子は倒れた一海を抱き抱える形となった。


綾野「……………確認しました。あの男に命の別状はありません」

龍哉「危なかった………一時はどうなることやら………」

紺子「………とにかく、先生の家に行って報告しよっか」


傷ついた猫は去っていく紺子たちの背中を黙って見ていた。










翌日、紺子たちは職員室にいた。登校するなり神守に呼び出されたのだ。
神守は新聞を取り出し、その一面を紺子たちに見せる。


神守「この記事を見てくれ」


その一面の写真に写っていたのは昨日猫をいじめていたあの男。その男が精神病院に入院したとのことだった。
さらに読むと、たまたま通りかかった人間が男に声をかけ、目が覚めるや否や、男は急に「ねこがいるそこにねこがいますねこがあらゆるばしょにいますだれでもねこはいます―――――」と意味不明の言葉を言い出したらしい。
何があったのか聞けず、ただただ『ねこですよろしくおねがいします』などうわ言ばかりしゃべり続けているという。


神守「確かにトラウマを与えろとは言ったが、ここまでやるか………?それはいいとして、藤井」

一海「はい?」

神守「出雲たちが言うに、キレて男にトラウマを呼び起こしたようだが、覚えているか?」

一海「……………キレて?」

紺子「キレてたよ!?スッゲェ怖かったからな!?まるで別人みたいだったからな!?」

一海「……別人、か。でも死んでないってことは、出雲姐ちゃんたちが止めてくれたってことかな?」

紺子「全力で止めようとしたわ!私の一言で元に戻れたけど!」

神守「その様子だとわけありのようだな。キレた瞬間玉藻前になるなんて聞いたことがないが、今回は不問とさせていただく」


そう言って、朝のHRが始まる前に4人を教室へ戻らせた。地下の秘術室から辰蛇の悲鳴が聞こえたような気がしたが、いつものことだろうと思い、あまり気に留めなかった。
だが神守だけは全て知っていた。


神守「あの学園長………挨拶代わりに耳と尻尾をいじってきおって」


眉間にシワを寄せ、今日配る予定の小テストをまとめながら呟いた。










秘術室から聞こえてきた悲鳴は本当に辰蛇のものだった。
なぜなら神守の猫耳と尻尾をいじった報復としてライオンの檻に入れられたのだから。


辰蛇「イィィィィィィィヤァァァァァァァァァァァァァァァ!!!⊆¥○♂☆Ω×*■※~~~~~!!!」


血まみれになりながら噛みつかれたり振り回されたりしていた。
抵抗しても全く無意味。再びライオンの牙の餌食となり、角をかじられてそのまま振り回された。


辰蛇「お願いだから出してよぉぉぉぉぉぉぉ!!!助けてぇぇぇぇえぇえぇえええぇええぇええええぇぇぇぇええぇぇぇええぇぇぇえぇえ!!!!」 
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