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異生神妖魔学園

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鍛えましょうトレーニングジム

一海たちが異生神妖魔学園に入学して数日。彼女たちは学園生活に慣れてきていた。
そんなある日の休日の朝、紺子と一海は自転車でそれぞれ別の場所へ向かっていた。


紺子「ちょっとしたダイエットのついでに強くなりたいけど、辰美が通ってるジムってどんなんだろ?」

一海「また師匠に特訓しろって言われちゃったよ。ゆっくりさせてほしいなぁ……」


紺子が向かっているのは近所から少し離れたトレーニングジム、一海は学園の武道館である。
紺子は少し期待に胸をときめかせていたが、一海は少々嫌そうな顔をしていた。





紺子「これが辰美が通うトレーニングジム…」


平安時代から始まった長い人生の中で初めてトレーニングジムで鍛えるのだからやや緊張気味であった。
意を決した紺子は早速トレーニングジムに入ってみた。


紺子「あの~…」

辰美「あっ!紺子様じゃないですか!」

紺子「辰美!」


予想通り辰美がいた。
そう、辰美はこのトレーニングジムの常連客。自分を救ってくれた紺子に尽くすためにいつもここで鍛えているのだ。


辰美「紺子様も私に負けないくらいの力が欲しくてここに来たんですか?」

紺子「お前ほど力持ちになれるかどうかはわかんないけど………ついでにちょっとしたダイエット感覚かな」

辰美「ダイエットですって!?太ってないじゃないですか!ダメですよ紺子様、健康損ねちゃいますよ!」

紺子「女同士だからって腹つまんでんじゃねぇよ!!」

辰美「ボゲラッ!?」





顔面を殴られた辰美をよそにめくられた服を直しながら中を見回すと、様々な器具が置かれている。ところがその途中、紺子にとって見覚えのある人物が目に入った。


紺子「ん?あの人まさか……」

辰美「ひどいですよぉ…私、紺子様のために全力で尽くしてるのにぃ…」

紺子「また先生見つけちゃったよ!あの人真島先生じゃん!」


視線の先には数台のエアロバイクがある。そのうち1台に乗ってペダルをこいでいる女性は紺子も辰美も知っている保健担当の鬼の教師、真島だった。


真島「ん?そこにいるのは紺子じゃねぇか」


真島はエアロバイクから降りると、自分を見つめる紺子へ近づく。


真島「どうしたんだ?お前がトレーニングジムに来るなんて……雨でも降るんじゃねぇのか?」

紺子「失礼だろ!てか『どうしたんだ?』じゃねぇよ!辰美がここの常連だってのはわかったけど、真島先生もここにいたの!?」

真島「あー…そういや言ってなかったな」

紺子(フォックにいた野人先生と大狼先生、EVOLUTION SPACEに来たヴォイエヴォーテ先生とトリノ先生といい、今度はここで真島先生に会うなんて、私何かの病気なんじゃねぇのか!?)

辰美「病気ではないです。偶然だと信じてください」

紺子(さりげなく心読むなー!!)

真島「?」


辰美の言っていることがさっぱりわからない真島は首をかしげたのだった。





紺子「いたのが真島先生でよかった……もし宇佐間先生だったら悲鳴の嵐だったかもしれねぇ」

真島「いつもズボン破るからな。俺も女だからあいつのあれ見たら間違いなく悲鳴あげてるだろうな」

辰美「龍哉さん、宇佐間先生のあそこ蹴って停学処分にされそうになりましたよ。学園に侵入した人間を追い払ったおかげで厳重注意に留められましたが」


紺子と真島はエアロバイク、辰美はバーベルを持ち上げながら話していた。


辰美「ところで紺子様、エアロバイクって自転車みたく走るって思ってましたよね?」

紺子「そりゃ思ったさ。走らないって知った時はちょっとショックだったけど」

真島「エアロバイクが道路走ってたらマジで走ってたら怖いだろうなぁ」

紺子「都市伝説にありそうだな……あっ、バーベルも持ち上げてみようかな?」

辰美「どうぞ」


エアロバイクから降りた紺子は辰美が持つバーベルを手にしてみた。
辰美は紺子がバーベルを持ったことを確認すると、すぐさま手を離す。


紺子「ぬわっちょ!!」


当然耐えられるはずもなく、紺子はバーベルを持ったまま四つん這いのようになってしまった。


紺子「重すぎんだろ!これ何キロあんだよ!」

辰美「30キロありますよ」

紺子「最初に言え~!!」

辰美「私なら簡単に持ち上げられるのに………」

紺子「いやいやいや、今ので顔打ってたらマジでお前の責任だったからな!?この場で真島先生の治療も受けてたからな!?」

真島「応急処置はここのスタッフがやるから。それに俺、飲み物ぐらいしか持ってきてねぇし」





約1時間後、紺子はベンチに座って休憩しており、行く途中自動販売機で買ったコーラを飲んでいた。


真島「お前、そればっか飲んでると歯溶けるぞ」

紺子「たくさん動いた後の炭酸ってスッキリするじゃん」

真島「紺子はそう思ってるかもしれねぇが、逆に体に悪いぞ。ちゃんとした水分補給しろよな」

紺子「わかってるって」

真島(全然わかってないセリフだ………)


しばらくして、先ほどまでラットマシンで背筋を鍛えていた辰美がある機械を目につける。


辰美「紺子様、通学する以外に歩いたことありますか?」

紺子「んあ?冬以外いつも自転車だよ」

辰美「たまには歩かないと足腰に悪いですよ。あっちにランニングマシンありますからそれで足腰鍛えてください」

紺子「めんどくさっ…だったら辰美は?」

辰美「私はいつも魔法で浮いてるからいいんです。調子が悪い時はスケボーで通学しますが」

紺子「何でそんなよけいめんどくさいやり方で行くの?」

辰美「気にしないでください。そういう日だってあるんです」


面倒くさそうな表情の紺子は仕方なくランニングマシンに乗ることに。
速さを調節し、スイッチを入れるとベルトコンベアが動き出した。


辰美「スピードは最大にしてもいいですけど転ばないでくださいね」

紺子「だからこうして最初は歩いてんじゃねぇか。横から口出すなよ」

真島「俺もお前にはケガしてほしくねぇんだけどな」





やがてランニングマシンの速度を上げていくうちに、紺子の息づかいがだんだん荒くなってきた。


紺子「コーラ………コーラ………」


一旦停止させ、ペットボトルのコーラを口にする。
先ほど真島に歯が溶けると言われたが、紺子にとって疲れた体を癒すためのものに過ぎなかった。


紺子「お前魔法使えるから歩かなくていいよな」

辰美「ええ。魔法使えない日はやっぱりしんどいです」


辰美はそう言いながらペットボトルの水を紺子にかけた。


真島「辰美、紺子に水かけて何してんだ?」

辰美「すごい暑そうでしたので」

紺子「あのさ……そんなよけいなことしなくてもあっちにシャワールームあるから」


頭から服までずぶ濡れになっているだけでなく、ランニングマシンにもかかっていた。


真島「おい……ランニングマシン動いてないか?」

紺子「え?」


よく見ると、ベルトコンベアがなぜか勝手に動き出していた。


紺子「え?え……?え?」


しかもベルトコンベアの速度はどんどん上がっていき、持ち手をつかみながらでないと体勢を整えることができなくなった。
やがてランニングマシン以外にも、紺子にも異変が起こるとは誰もが予想していなかった。


紺子「ちょちょちょちょ!?誰か、誰か止めてぇぇぇぇぇぇぇ!!」

真島「おい、なんか電気出てるぞ!?」

辰美「紺子様!早く降りてください!!」

紺子「それができたら苦労しねぇよ!!誰か止め―――――」


誰か止めてと言おうとした瞬間、紺子とランニングマシンがまばゆい閃光に包まれる。
辰美と真島はたまらず目をつむった。恐る恐る目を開けると、先ほどまで走っていた紺子の姿と暴走するランニングマシンがなかった。


真島「き、消えた……!?」

辰美「紺子様!?紺子様ぁ!!」


辺りを見回したが、壁を突き破ったわけでもない。
では紺子は本当にどこへ消えたのだろうか。










紺子「な、何じゃあああああああ!!?」


さて、トレーニングジムからランニングマシンごと姿を消した紺子だが、彼女はあり得ない場所にいた。
暴走したランニングマシンに乗りながら宙に浮かび、街中を走っていた。だがその街は紺子が知っているものではない。あらゆる建物が全て近未来的な作りだったのだ。


紺子「確か私はトレーニングジムで走ってて……辰美に水かけられて……何でいつの間にこんなトコにいるんだ!?」


街中を見回していたが、あることに気づいた。
周りで車が走っていることを。自分は今道路の上を走っていることを。
車はなぜかタイヤがなく、宙に浮かんでいる。


紺子「なんとか道路から抜け出さな…きゃ…!?」


そう呟いて前を向いた瞬間、紺子の顔は恐怖に歪んだ。
1台の車が紺子に向かってきていたのだ。


紺子「い、いやああああああああ!!」


紺子は悲鳴をあげながら目をつむり、顔を背けた。





ところが、いつまで経っても痛みが走ってこず、紺子はつむっていた目を少し開けてみる。
さっきまで紺子に向かってきていた車が見当たらない。それどころか、紺子の体には傷ひとつなかった。


紺子「私、死んでない………?いや、それより一体何が………?」


また別の車が紺子に向かってくる。紺子はまた悲鳴をあげ、車と接触してしまった。そして同時に奇妙なことが起こった。
車が紺子の体をすり抜けたのだ。遠ざかっていく車を唖然とした表情で見つめる。


紺子「おいおいおいおい!?ど、どうなってんだよ!?」


頭の中が混乱し、本当に何が起きているのかわからない。
その時、目の前がまた真っ白になる。


紺子「ううっ!?」


この時、紺子はまたまばゆい閃光に包まれていた。
たまらず目をつむり、恐る恐る目を開ける。今度は住宅地だろうか、何者かの家の屋根の上にいた。


紺子「ん?あそこにいるのは…………」


庭を見ると、3人の子供が遊んでおり、もう1人は母親だろうか、洗濯物を干していた。母親らしき女性の種族は紺子と同じ妖狐。狐の耳と尻尾が生えている。
子供にもそれぞれ種族にばらつきがあった。1人は狼の耳と尻尾を持つ男の子、もう1人は狐の耳と尻尾を持つ女の子、そしてもう1人は狼の耳と狐の尻尾を持つ女の子のような顔つきの男の子だった。


紺子「あの妖狐、いつかどっかで見たことがあるような…………いや、あの子供の中に狼男と妖狐のハーフがいたよな?じゃああの妖狐は狼男と結婚してるってことじゃん……一体誰と………」


誰と結婚しているのか考えていると、ガレージに1台の車が入った。女性はそれを察したのか、尻尾を振りながらガレージへ走り出す。
車から降りてきたのは夫であろう、銀髪のショートヘアの青年。しかし、紺子にとってあの青年の顔に見覚えがあった。驚愕の表情が紺子の顔に浮かぶ。


紺子「もしかして……あれ牙狼!?じゃあ、あそこにいんの私!?」


思わず叫んでしまった。そう、紺子の目の前にいたのは未来の自分と牙狼。あの3人の子供も紺子と牙狼の間に生まれた息子と娘だったのだ。
だが未来の紺子と牙狼には聞こえていないのか、誰も反応しない。もちろん子供もだ。未来の紺子と牙狼は抱きしめ合い、今の紺子はあることを察した。


紺子「もしかして……ここって未来なのか?私、牙狼と結婚して3人の子供を産むのか!?」


気づけば紺子は牙狼との結婚生活、子供との触れ合いなどいろいろなことを想像していた。
その途端、目の前がまた真っ白になった。まばゆい閃光に包まれたのだった。










辰美「紺子様!紺子様!」

真島「大丈夫か!?目開けてくれ!」

紺子「ん………」


辰美と真島の声が聞こえる。目を覚ますと、辰美と真島の顔があった。
壁に激突したのだろうか、そばには無残に壊れたランニングマシンがあった。


辰美「紺子様!おケガはありませんか!?」

真島「念のためにケガがないか確認するか!?」

紺子「ケガなんてしてないよ………なあ辰美、真島先生………」

辰・真「「?」」

紺子「………このランニングマシン、暴走したら未来とか行けたりするのかな?」

真島「いや、お前は何を言っているんだ?」

辰美「頭打っておかしくなっちゃったんですか?」


心配していた辰美と真島だったが、紺子の一言によってさらに心配する羽目になった。
その後紺子は体重計に乗ったが、2キロ痩せていた。 
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