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異生神妖魔学園

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邪龍歩ミシ武之道

武道館には牙狼たち3年の生徒が武道の授業のため集まっていた。
担当はヴォイエヴォーテの友にして新任、邪龍のラインハルト・ファブニールだった。黙想と準備運動を終え、竹刀を手にする。
だがラインハルト以外にも剛力もいる。そう、彼の担当は辰蛇が言っていたように武闘全般。格闘も得意なら剣術も得意なのだ。


ラインハルト「……………では、武道を始める。全員竹刀を持て」

剛力「ちょっと待ってくださいよ。草薙と御神だけ着せるのおかしくないですか!?」

ラインハルト「剣道具が足りなかったものでね。ありあわせを用意しておいて正解だった」


見れば確かに遠呂智と竜奈以外剣道着と防具を身につけている。
だが2人が着ているのは明らかに別物。戦国武将の鎧である。


遠呂智「いくらなんでも無理あんだろこれ!?俺たち戦場に来てんじゃねぇんだぞ!?」

竜奈「龍神族の私からすればそのうち慣れるだろうと思うが………周りから『独眼竜伊達政宗』と言われるのではないのか?」

ラインハルト「誰も言わん。その上汝は眼帯をつけていないだろう?」

剛力「気にするトコそこ!?もういいから早く始めてくださいよ!ほら、お前らも早く並んでくれ!」





ラインハルト「さて、全員竹刀は持ったな?では基本動作から始める。まず握り方についてだ。竹刀の中心線上で両手の親指と人差し指でV字を作り、それから柄頭を力いっぱい握れ」


言われた通り握ってみるも、初心者が多い。本当にこれで合ってるの?自信がない。
だが竜奈は授業中だろうと休み時間だろうと休日どこかに出かける時もいつも刀や剣を持ち歩き、手離さない。つまり彼女にとって竹刀を扱うことも容易いのだ。
剛力はこれを見て素晴らしいと褒める。


剛力「御神を見習え!これが竹刀の正しい持ち方だぞー!誰か困ってる奴はいるかー?」

舌寺「レロレロ………こ、これは!自然の中で育ってきたのに人間によって武器に作られた竹の苦しみの味がしますなぁ!」



バヂゴォンッ!!



武道館に人を竹刀で殴るすさまじい音が響き渡り、竜奈の足元には後ろ首にアザができた舌寺が倒れていた。


竜奈「貴様!!人の話を聞かずに竹刀を舐めるとは!!」

牙狼「す、すごい……ただの竹刀なのに舌寺を一撃で意識喪失させちゃったよ…………」

綾野「ええ、竜奈は龍神族の中では最強クラスの力を持っています。それは宇宙や次元を破壊してしまうほどです」

遠呂智「だったら学園長も簡単に殺せるんじゃねぇのか?」

牙狼「不吉なこと言うなよ!鳥肌立つだろ!」

綾野「一度怒らせると取り返しがつかなくなるので私や龍華しか止められません」

王臥「舌寺君、絶対死んでますよね?さすがにないでしょうけど」

綾野「先ほどパワーのデータを確認してみましたが、手加減していた模様。舌寺が意識を取り戻す頃には授業が終わっているでしょう」

王臥「つまりさっき言ってた『宇宙や次元を破壊するほどの力』というのは抑えているとのことですね?」

綾野「ええ」

牙狼「…ん?誰か入ってきた」


牙狼が指す方向を見ると、入ってきたのはジーンズが破れた宇佐間だった。
先ほど紺子たちのクラスの体育の授業で体操をする際破っていたのだった。もちろん女子全員は悲鳴をあげ、男子の一部はドン引きする。


剛力「ちょ、宇佐間先生ぇぇぇぇぇええぇえええぇぇ!!?なぜまた下半身丸出しにィィイイイイイィィィィィイイイイ!!?」

竜奈「女子の目の前で、な、なんとハレンチな!?あばばばばばば……」ブクブクブクブク


無論剛力もドン引きのあまり絶叫し、竜奈は下半身丸出しの宇佐間を見るなり泡を吹きながら倒れた。
それに比べてラインハルトは。


ラインハルト「宇佐間殿、またですか?」


落ち着いたように問いかける。


宇佐間「やあ、ラインハルト君。そうなんだよ、いつもの癖でね~。体操前に筋肉を膨れ上がらせようとしたら必ずこうなっちゃうんだよね~」

ラインハルト「貴殿が体育の時間いつもそれをやるのは知っています。なぜここに来たのですか?」

宇佐間「うちのタンスと押し入れに入りきらなかったズボンを取りに来たんだ。見られちゃまずいから校舎の至る所に隠してるんだよ。暇な時探してみたら?」

ラインハルト「頑として遠慮します」

剛力「ラインハルト先生まで!宇佐間先生、校舎の至る所に隠してるんならさっさと見つけて履いてくださいよ!俺が見つけても絶対内緒にしますから!」

ラインハルト「ならば私も内密にしておきましょう」

宇佐間「すまないねぇ。んじゃ、俺は履いたらさっさと紺子ちゃんたちのクラスに戻るとしますか」


その後宇佐間は新しいジーンズを履き、何事もなかったかのように武道館から出た。
気絶していた竜奈も意識を取り戻し、立ち上がる。


遠呂智「あ、やっと起きた」

竜奈「………宇佐間先生の下半身露出はもううんざりだ。紺子か一海のクラスでやっているのかわからんが、武道が体育と同じ時間に行われると全く嫌になる」

???「仕方ないよ。そういう日もあるんだから」


性別不確定の神龍が声をかける。名は『轟』なのだが、この者には名前が2つある。
ひとつは『竜香』。自身がいつも名乗る女の名前で、普段表に出している女の人格。もうひとつは『龍信』。本気で怒った際に出てくる男の人格。龍信は危険だが、それでも怒らない限り彼の人格が出ることはないので、轟自身は女になりたいと望んでいるのだろう。


ワコ「あーもう!宇佐間先生より竹刀の方が扱いづらい!ワコより大きいから小学生がおもちゃで遊んでるように見えちゃうよ!」

ラインハルト「言われてみればそう見えなくもない」

ワコ「これよりもっと小さいのないんですか?」

ラインハルト「すまないがそれしかない。慣れるまで我慢することだな」

ワコ「え~、そんなぁ!」

綾野「………危険を察知。どうやら私のデータにミスがあったようです」

牙狼「え?」

綾野「舌寺が意識を取り戻しました。あの様子からすればラインハルト先生の首筋を舐めるつもりです」


綾野の言う通り、舌寺は本当に意識を取り戻して立ち上がっており、ラインハルトを興味深そうに見つめている。だが彼を舐めたら間違いなく罰は逃れられないだろう。そんな不安も漂ってくる。
やがて舌寺は覚悟を決めた。舌を伸ばし、ラインハルトに気づかれないよう首筋を舐めてみた。


牙狼「あ」

遠呂智(終わったなこれ)

舌寺「こ、この味は………!『殺るといったら殺る』という味がする!!」





やがて全員は何が起きたかわからなかったというような目をした。


舌寺「あ゛びぇ!!?」

全員『!!?』

剛力「あ…あれ!?ラインハルト先生!?」


変な声をあげて倒れる舌寺。さっきまで隣にいたラインハルトがおらず、見回す剛力。
倒れた舌寺の背後にはいつの間にか竹刀をついたラインハルトが少し彼から離れた場所に立っていた。


ラインハルト「………………斬り捨て御免」


舌寺が変な声をあげて倒れた理由がよくわかった。
ラインハルトが目にも止まらぬ速さで竹刀で舌寺を叩いたのだ。


綾野、竜奈以外全員『舌寺ィィィィイイイイイィィィイイイィイイイイイイイィ!!!!』

ラインハルト「汝、我が刃に取るに足らず」





かなりダメージが大きかったのだろう、牙狼たちがいくら声をかけても舌寺は目を覚ますことはなかった。だがラインハルトによれば「力を加減しておいた」とのこと。力は竜奈には劣るだろうが。
その後の授業は何事もなく平常進行。やがてチャイムが鳴り、授業終了の合図を知らせる。


王臥「やっと終わりましたか…」

剛力「お前ら、次も授業なんだろ?早く着替えて準備するんだぞ」

轟(竜香)「剛力先生、そのことなんですが……」

剛力「どうした?」

轟(竜香)「ラインハルト先生がいつの間にか着替え終わってて……」

剛力「?」


確かに剣道着からいつもの軍服に着替えていた。ラインハルトは無言で近づいてくる。


ラインハルト「………………………」


他の者も唖然としている。そしてラインハルトは上着のボタンを外し、その下に着ていたのは―――――





【今着替えた】



ズドドドドドドドォォーッ



言葉より服で表した方がいいと考えていたようだ。彼のTシャツを見た3年の生徒全員、及び剛力は盛大にずっこける。
上着のボタンを留めたラインハルトはそのまま無言で武道館を出ていった。


ワコ「何だったのあのTシャツ!?あれダサすぎない!?」

牙狼「想像の斜め上を行く破壊力だ…!」

竜奈「もはやどこから突っ込んでいいかわからない!」


全員唖然、呆然。だが1人だけ気になっている者がここにいる。
遠呂智だった。


遠呂智(あんな服を着てた理由がわかんねぇ……よし、空いてる時間に聞いてみるか)

牙狼「遠呂智だけ落ち着いてるって…遠呂智だけ落ち着いてるってぇ!!」


遠呂智の言う通り、ラインハルトのあのTシャツには本当に何か理由があるかもしれない。そこで全員帰りのHRに聞いてみようと決意した。 
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