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Fate/WizarDragonknight

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偽りのサーヴァント

「ここが、見滝原公園です」

 ハルトは、そう言って、噴水広場が大きな公園を案内した。
 モカは「あらあら」と喜びながら、公園内を散策する。

「素敵な公園だね。ハルト君は、いつもここで大道芸をやっているの?」
「ええ。色々とやりますよ。今度やるときは教えますね」
「すごいなあ。どんなのだろう?」

 モカが笑顔を浮かべる。
 冬休みが終わりを告げ、ココアとチノがそれぞれの始業式へ行くこの日。店番を買って出た可奈美に変わり、バイクを持つハルトが、モカを見滝原へ案内することになったのだ。
 もっとも、ラビットハウスの新事業として始まった、食材運搬の仕事の末である。あちらこちらの店舗へマシンウィンガーを駆り、食材を届けた後の状態である。
 おおよそのラビットハウスにとっての必要な箇所を巡り終え、彼女の「のんびりできる公園」というリクエストにより、この公園に連れてきたところだった。

「今でも噴水広場があるなんて、珍しいね。私のところだと、もうあんまり見かけないから」
「そうなんですね。よく、こういう公園には行ったりするんですか?」
「たまにね。よくココアと一緒に遊んでいたなあ」

 モカは懐かしそうに手を頬にあてた。

「あの時も、ココアったらすぐに私のあとに付いてきて、本当に可愛いんだから。ねえ、いまのココアはどう?」
「どうって聞かれると……」

 ハルトは頭の中で、ココアの姿を思い浮かべる。

「うん。皆のお姉ちゃんになろうとしていますよ」





「あ、そうだ。そろそろお昼だよね? 今朝キッチンをお借りしてパン作ってきたよ」

 モカがそう言いながら、ハルトにコッペパンを手渡す。驚きながら、ハルトはそれを受け取った。

「あ……頂きます」
「うんうん。ハルト君、そういえばいくつなんだっけ?」
「十九です」
「へえ。それじゃあ、私の方が年上なんだね。うんうん。お姉さんだと思って、一杯頼ってくれていいからね」
「頼りにさせていただきます。お姉様」
「お姉……様」

 響きがいいのか、モカはお姉様という単語をしばらく反芻していた。
 ハルトはパンを口にして、やはり姉妹だなと口にした。

「うん。いいかも。それじゃあ、ハルト君は、お姉様って呼んでね」
「ハイお姉様」
「よろしい。ところで、どう? パン美味しい?」
「……はい」

 ハルトはぎこちない笑顔を浮かべながら、全く同一のペースでパンを頬張る。
 全て食べ終えてから、ハルトは公園の噴水広場へ目を留める。

「あの人は……」

 ハルトが目を凝らしたのは、ピエロ。
 左右を白と黒で分けた、曲芸を行っているピエロだった。
 つい先日、ハルトの前で派手なパフォーマンスを行い、観客の拍手喝采を奪っていった男が、噴水広場でジャグリングをしていた。
 彼はやがてハルトの存在に気付くと、ジャグリングの手を止めた。

「ありがとうございますみなさま。本日は誠に残念ながら、これにてお開きとさせていただきます」

 すると、観客たちからは拍手が流れる。
 平日昼なだけあって、年齢層はそれほど低くはない。少なくない娯楽を経験していきた人々さえも夢中にさせたピエロは、あっという間に私物をポーチに放り込み、ハルトのところへ歩いてきた。

「やあ。昨日ぶり。元気だったかい?」
「ああ。どうも」
「ハルト君のお友達? 初めまして、私保登モカです」

 モカはピエロにあいさつした。
 すると、ピエロは顔をぐいっとモカに近づける。
 今にも耳元に触れようかという接近具合で、彼は語った。

「初めましてお嬢さん。貴女のような美しい女性と知り合えて至極光栄です」

 ピエロは大仰な動きをしてお辞儀をして、右手をモカの前に突き出す。
 すると、あっという間にその手には花が握られていた。

「お」

 よくあるマジック。ハルトもやった経験は多いが、ハルトが舌を巻いたのは、彼のタネがどこにも見当たらなかったことだった。

「すごいな。やっぱり」

 ハルトの称賛に、ピエロはにやりとほほ笑んだ。

「どうぞ。美しい花は美しい女性にこそふさわしい」
「ありがとう!」

 モカはそう言いながら、花を胸のポケットに入れた。

「うんうん。あ、君の名前はなんていうの?」

 名前。ハルトも聞いていなかったなと思いながら、ハルトは彼の返答に注目する。
 すると、ピエロは口を大きく歪める。

「名乗るほどのものではありません」

 彼はそれだけ言い残して、彼は後ずさりするように離れていく。やがて、日傘をさしながらどこかへ歩き去っていった。

「すごい独特なお友達だね」
「友達っていうか……昨日、モカさんを迎えに行ったとき、駅で会っただけの間柄なんですけど」
「でも、これからきっと仲良くなれるよね。……お?」

 すると、モカが足元に目線を落とした。彼女の目線を追えば、その足元にウサギが眠り込んでいた。

「わあ! ウサギ!?」
「ああ。この公園、結構野生のウサギ多いんですよ」
「そうなんだ!」

 モカがウサギを抱きかかえる。頭を撫でながら、目を輝かせていた。

「よく見れば、確かにあっちこっちにもウサギが一杯いるね」

 モカの言う通り、草原に伸びる遊歩道は、ウサギで満たされていた。
 それぞれはしばらくモカを見つめた後、それぞれ走り去っていった。

「あ! 追いかけっこ? 負けないぞ」
「え?」

 ハルトが止める間もなく、モカが蜘蛛の巣を散らすウサギたちを追いかけていく。
 あっという間に見えなくなってしまったモカに、ハルトは呆れ声を上げた。

「全くあの人は……ウサギを見て追いかけるとか、ココアちゃんそっくりだな」

 ハルトはそう言いながら、木陰の合間を縫って探す。だが、どこにもモカの姿はなく、どうしようかと頭をかいた。
 その時。

「お? クラーケン?」

 ハルトの目の前に、黄色のプラスチックが現れた。四本の足を持ったタコのような姿のそれは、上半身と下半身を別々に回転させながら、ハルトの周りを浮遊している。
 プラモンスター。魔法使いとしてのハルトが持つ、使い魔の一つで、その名はイエロークラーケンといった。


「丁度よかった。あのさ、ココアちゃんのお姉さんを探しているんだけど。お前も探してくれないか?」

 すると、クラーケンは肯定するように鳴く。四本の足を回転させながら、ハルトの頭上を旋回。そのまま公園の森の中へ消えていった。

「まあ、平日の昼間なんだからすぐに見つかるとは思うけど……」

 ハルトは欠伸しながら、公園の中を歩く。
 モカを探す一方、新春の空を見上げる。

「ムー大陸のない空か……」

 平和を象徴するように、空には小鳥が飛んでいた。
 モカを探索する足を止め、ハルトは小道のベンチに腰を落とす。涼しい空気を肺にため込み、吐き出す。

「この平和が……いつまで続くのかな」
「平和?」

 突如かけられた、他者の声。思わず立ち上がり、背後を向く。

「やあ。初めまして。ウィザード」
「お前は?」

 ハルトが警戒の色を示す。
 静かな光に満ちた緑の世界に、一か所塗り潰す薄暗い蒼。
 右手にウサギを摘まみ上げながら、ゆっくりと歩いてくるそれは、人間の形をしている。だが、人肌など一切見られなかった。
 蒼い仮面によって人の姿に見えないのかとさえ思ったが、見える素肌は銀色、さらに仮面の下の目は赤い。それが人間だとはとても思えなかった。
蒼い仮面は、静かに両手を広げながら、ハルトに近づいてくる。

「サーヴァント。フェイカー。君にはそれで十分だろう?」
「サーヴァント……お前、参加者か!」

 ハルトの言葉に、フェイカーと名乗ったサーヴァントは笑い声で返した。

「ムー大陸での戦い、見せてもらったよ。ランサーほどではないにしろ、なかなかの活躍だったね」
「それで? 俺に接触したってのは、目的があるんでしょ? まさか、サインくださいなわけがないよね」
「ふふふ」

 フェイカーの蒼い仮面、その赤い瞳の部分が輝く。ウサギを放り捨て、両手を大きく広げた。

「ちょっと、君と遊んでみたくなってね。平和なところ悪いけど、付き合ってくれ」

 フェイカーの両手より、バチバチと漆黒の雷が発生する。両手で円を描きながら、それは放たれた。

「変身!」

 それが迫る直前で、ウィザードは左手にルビーの指輪を入れる。赤い魔法により、ハルトの姿はウィザードへ変わる。

「なるべく聖杯戦争を止めたいって考えているんだけど。アンタは、そういうのとは真逆の考え方?」
「ああ。そうだな。聖杯戦争はどうでもいいと、私は考えているよ」
「だったら……」
「この聖杯戦争の参加者。その願いをメチャメチャにしたいと考えているんだよ」
「前言撤回」

 ウィザードは、ソードガンをフェイカーへ向けた。

「アンタは、俺が倒す!」
「ハハハ……おいで」

 フェイカーは、ウィザードへ手招きする。

『ビック プリーズ』

 ウィザードが指輪をベルトへ入れる。すると、ウィザードの目の前に魔法陣が現れた。
 手を突っ込むと、何倍にも巨大化した手がフェイカーを襲う。
 しかし、フェイカーは飛び退いてそれを避ける。
 羽根のように軽々とした動きで飛び退き、ウィザードの手は空気を押しつぶす。

「どうした? 当たらないぞ?」

 フェイカーは挑発するように、両手を広げた。
 ウィザードはむっとしながら、ウィザーソードガンを銃の形態に変形させる。即座に手のオブジェを開き、ルビーの指輪をその手のひらにかざした。

『フレイム シューティングストライク ヒーヒーヒー ヒーヒーヒー』

 魔力が込められた炎が、銃弾となり発射される。
 これまで多くの決定打となってきた銃弾。だがそれは、フェイカーの腕に阻まれる。弾かれた炎の弾丸が、近くの木に命中、木端微塵に破壊する。

『ウォーター プリーズ』

 左手の指輪をサファイアに切り替え、ソードガンをソードモードにしながら魔法陣を潜る。

『スイ~スイ~スイ~』

 ソードガンを振り回しながら、フェイカーへ攻撃する。だが、フェイカーは簡単に攻撃を避けながら、ウィザードをせせら笑う。

「どうした? 全くの空振りだぞ?」
「そうかな」
『キャモナスラッシュシェイクハンド キャモナスラッシュシェイクハンド』

 水のウィザードは、ソードガンの手を開く。大気音声が流れながらも、ウィザードはそのまま斬撃を続ける。

「なかなかに耳障りな武器だ。静かに出来ないかな?」
「五月蠅い作戦成功ってことだな」

 ウィザードは体を回転させ、腰のベルトを動かす。

『ルパッチマジックタッチ ゴー ルパッチマジックタッチ ゴー』
『キャモナスラッシュシェイクハンド キャモナスラッシュシェイクハンド』
「ますますうるさいなあ」
「生憎。黙ったら死んじゃうアイテム使ってるもんで」

 ウィザードは、さらに攻撃を重ねる。
 全てフェイカーが紙一重で躱していくが、やがて、ようやく刃がフェイカーの体をかする。

「へえ……」

 胸元に付いた切り傷を撫でながら、フェイカーは肩をすぼめる。

「少しはやるね」
「どうも」

 ウィザードは左右の指輪を入れ替える。だが、まだ魔法を発動させずに、そのまま攻撃を続ける。
 ウィザーソードガンの攻撃はフェイカーの足蹴りによって阻まれるが、そこでウィザードは二つの指輪をそれぞれに使った。

『リキッド プリーズ』
『ブリザード プリーズ』

 体を液状化し、さらにウィザーソードガンには氷の刃を宿す。
 これにより、フェイカーの物理攻撃は通用せず、ウィザードの氷の斬撃がフェイカーに命中していく。

「へえ……」

 フェイカーは胸に付けられた凍傷跡を振り払う。

「少しはやるな」
「……っ!」

 ウィザードは再び身構える。
 だが、フェイカーは全身から力を抜き、少しずつ後ろへ下がっていく。

「おい、待て!」
「まあまあ。君とはまたいずれ、会うことになるだろう」

 フェイカーは両手を広げる。
 ウィザードは、追いかけるようにフェイカーに迫る。

「待て! 喧嘩を売っておいて、逃げるのか!」
「残業はしない主義なんだ。少し、君と遊んでみたかっただけだからね。これ以上は失礼するよ」

 そう言い捨てたフェイカーは、体を浮遊させていく。逃げられる前に、ウィザードはサファイアの指輪をエメラルドに変更する。

「逃がすか!」
『ハリケーン プリーズ フー フー フーフー フーフー』

 水から風となったウィザードは、風に乗ってフェイカーを追いかける。
 だが、空中で今にも触れようかという瞬間。
 フェイカーの姿は、蒼い闇の霧となって霧散していった。

「……逃げられた……」

 空中で浮遊しながら、ウィザードは呟く。
 その時、地上でウサギたちと戯れているモカを発見したのだった。 
 

 
後書き
さやか「あー……始業式終わった~! まどか! 帰ろう!」
まどか「うん。あれ? ほむらちゃんは?」
さやか「あれ? いないね。あの転校生、もう転校してから三か月にもなるのに、誰ともあまり話さないのどうなんだろうね?」
まどか「あはは……ほむらちゃん、やっぱりずっと戦いっぱなしなのかな?」
さやか「……まどか? どうかした?」
まどか「ううん。何でもないよ」
さやか「そっか。よし、今回のアニメ、ちゃちゃっとやっちゃおう!」
まどか「今回はこちら!」




___抱きしめた心臓の音は 止められないよ 空へBrightness Belief___



まどか「聖戦ケルベロス 竜刻のファタリテ!」
さやか「2016年の4月から6月まで放送していたアニメだよ!」
まどか「主人公のヒイロ君、すごい美人さんだね。きっとものすごく強いんだろうね」
さやか「ところがどっこい、剣士なのに剣は超弱いという欠点付きだよ!」
まどか「ええええええ!?」
さやか「一部ではメインヒロインと呼ばれる養父が、頑張っているよ! でも、ヒイロもヒイロで、ずっと頑張っている魅力もあるからね! まどかも、頑張ってメインヒロインになろう!」
まどか「私はいいよ~! それより……」
ほむら「メインヒロイン……私こそが……っ!」ほむら専用
まどか「あっちに振った方が……」 
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