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幼き女帝

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第一章

               幼き女帝
 僅か五歳であった、今上陛下の即位に日本市民達は誰もが思った。
「幼くして大変だな」
「全くだ、五歳で天皇になられるとは」
「大学を卒業されるまではご学業優先とのことだが」
「ご両親が急に崩御され即位されるとは」
「陛下も大変だな」
「全くだ」
 年号は澄世とあらためられた、俗に澄世と言われる今上陛下は日本という国が成立皇紀にして三千七百年日本もその中にある連合という巨大な国が成立して七百年を超えた時に即位された。
 連合は相変わらず平和であったが各国政府同士も中央政府と各国政府も常に衝突し宇宙海賊は出ていてテロリストも時折行動を起こしていた、経済発展は続き人口も増え続けていたが問題も多い状況だった。
 それは日本も同じだった、日本はこの時アメリカ及び中国そしてロシアと貿易のことで衝突していた。また失業率が高まり環境破壊が進んでいる惑星も存在していて大変な状況だった。
 帝はその時に即位された、あどけない少女であられたが連合の情勢を聞いてもわからなかった。それでだった。
 摂政となられている先帝陛下の弟君桐生宮殿下が実際の職務を遂行された、殿下は常に帝のお傍にありご公務も助けられた。
 その状況を見て連合各国の者達も話した。
「今日本の皇室は大変だな」
「天皇が僅か五歳だからな」
「公務どころか小学校にもまだ入学していない」
「職務は摂政宮が代行している」
「日本の長い歴史ではあったことだが」
 幼帝が即位されて皇族の方が摂政になられることはだ、もっと言えば皇族の方が摂政でなかったことも歴史ではある。藤原氏等がそれである。
「しかし大変な状況なのは事実だ」
「日本はこの状況をどう乗り切る」
「このまま幼帝が成長するのを待つか」
「これまで通りそうするか」
「人は成長する」
 永遠に五歳であることはないというのだ、このことは自明の理である。
「だからそれまで待つか」
「日本にしても」
「そうするか」
「前例があることであるし」
「それに倣うか」 
 まだ玉座に座られても足が先まで届かない帝を見て言うのだった。
「幼帝はまずはご学業だな」
「学ばれることだ」
「そして卒業してからだな」
「その時にどうか」
 連合各国の幼帝を見る目はまさに他国のものであり特に思い入れはなかった、だが日本人達は違っていた。
 彼等は口々に言った。
「陛下を立派な天皇陛下に育てよう」
「立派な方になって頂こう」
「それは俺達の義務だ」
「日本はずっと皇室を戴いているんだ」
「それなら皇室に立派になって頂く様にするのは俺達だ」
「宮内省もいるしな」
「政治家や官僚達にも働きかけるぞ」
 実際に政治を行う彼等にもというのだ。
「そうしていくぞ」
「日本の皇室は明治帝と昭和帝の伝統があるんだ」
「その伝統に添っていくぞ」
「陛下を立派な天皇陛下に」
「そうなって頂くぞ」
 こう言ってだった、彼等は帝を何かある度に盛り立てた、摂政であられる殿下も彼等の声を聞かれて周りに話した。
「市民の皆様がそう言われるなら」
「はい、陛下のご教育はですね」
「明治、昭和両帝以来の伝統に則り」
「厳格かつ国際的に」
「そして民主的にですね」
「していきましょう、私もです」
 殿下は気品のある顔で言われた、穏やかな顔立ちであられ背は日本人の平均身長程だ。スーツを端正に着られていて黒髪は整えられ面長の顔には髭はない。 
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