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温もりを知った犬達

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第二章

「クゥン」
「大丈夫よ」  
 マルセラはリードを付けられると落ち着いた犬、マックスという彼に微笑んで言った。
「私達は貴方の味方よ」
「安心していいよ」
 同僚も言った。
「僕達は君を助けたいんだ」
「だからね」
「落ち着くんだ」
「心配しなくていいわ」
「僕達に任せて」
「貴方は助かるのよ」
「クゥン」
 犬もそこまで言われてようやくだった。
 大人しくなりそうしてだった。
 保護された、そして。
「マックスという名前らしいけれど」
「手紙にはそう書いていましたね」
「ええ、けれど本当かどうかわからないし」
 マルセラはセンターの中で犬を見つつ彼を一緒に保護したスタッフに話した。
「だから新しい名前をね」
「付けますか」
「オストンにするわ、それでね」
「その名前で、ですね」
「里親を探すわ、教育もして」
 こう言ってだった。  
 実際にオストンと名付けた彼に優しく穏やかな性格になる様な教育をしつつ里親を探すことにしたのだが。
「あれっ、どうも」
「そうですね」
 マルセラも他のスタッフ達も気付いた。
「大人しい子ですね」
「そうね」
 オストンは全く攻撃的でなくだ。
 大人しく穏やかで明るい、そうした子だった。
「元々ね」
「こうした子だったんですね」
「ええ、それでね」
「虐待から解放されて」
「本来の性格に戻ったのね」
「そうみたいですね」
「これなら」
 マルセラは自分達に尻尾を振って人懐っこそうにしているオストンを見て言った、彼女も笑顔になっている。
「すぐにでも」
「里親が見付かりますね」
「そうなるわ」
 こう言ったのだった、そして。
 実際にオストンはすぐに里親に迎えられた、それからは心優しい家族に囲まれて幸せに過ごしたのだった。
 マルセラはこの時仕事でブラジルのサンパウロにいた、言語のスペイン語とポルトガル語の違いは方言程なのでやり取りに問題はなかった。
 仕事は地下鉄のものでそれを終えた時に駅員に感謝の言葉を受けたが。
 駅に一匹の犬、黒い毛で足首や口、喉が白いやや小型の犬がいた。マルセラはその犬を見て駅員に言った。
「その犬は」
「ワン」
「はい、レナートといいまして雄で」
 駅員がマルセラに答えた。
「私の犬です」
「そうですか」
「とはいってもそうなったのは数日前で」
 マルセラにこうも話した。
「今家が引越しの最中で」
「引っ越した時にですか」
「家に来てもらうつもりで」
 それでというのだ。
「今はまだです」
「駅にいてもらっていますか」
「はい」
 そうしているというのだ。
「これからです」
「そうですか」
「あっ、丁度いい時に」 
 駅員はここでだった。 
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