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障害に勝つ猫達

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第二章

「それで尻尾も先もね」
「それだけだよ」
「私達も手や足が悪いけれど」
「それでもだからね」
「私達も普通に暮らしているわ」
「手足が悪かったりなかったり内臓が悪くても」
 それでもというのだ。
「それだけだよ」
「生きていれば何処か悪かったりするわ」
「完全な存在なんて神様だけだからね」
「ええ、だからね」
「バビーもそれだけだ」 
 左の前足と尻尾の先は確かにない、だがそれでも活発に遊ぶ彼を見ながら言うのだった。
「本当にな」
「そうよね」
「ああ、だからな」
「そのことを受け入れて」
「そうして一緒に」
「これからも暮らしていきましょう」
 二人で話した、施設の人達はそんな二人と彼等に幸せに暮らしているバビーを見てほっとした。だが。
 彼等は今施設にいる黒が多く茶色と白が少しあるふさふさのペルシャ猫の様な毛の雌猫を見て言った。
「あの子よりもな」
「この娘が心配ですね」
「目が見えないんですから」
「それも全く」
 その猫を見て言うのだった。
「目が見えないと」
「かなり深刻ですから」
「この娘を里親にという人は出ないかも知れないですね」
「あの子でもラッキーだったのに」
「この娘については」
 流石に無理だと思った、大きな黒い目だが見えないその目を持つ彼女を見て。
「そのせいで捨てられたし」
「目が見えないから」
「そんな娘を家族に迎えてくれる人がいて欲しいけれど」
「果たしてどうか」
 誰もが心配した、バビーの時よりも悲観的だった。だが。
 その彼女にも里親にという人が出て来た、サンドラ=ルースという明るい顔立ちの黒髪と黒い目の三十代の女性だった。夫のフランシスコというやはり明るい顔立ちで黒髪と黒い目の小柄な夫も一緒だ。
 サンドラはその猫を見つつスタッフ達に話した。
「目が見えなくても猫でしょ」
「そんな猫なんて幾らでもいるよ」
 夫のフランシスコも言ってきた。
「それこそね」
「人間だって目が見えない人いるわよ」
「耳が聞こえない人もいるね」
「ヘレン=ケラーを見ればいいわ」
 サンドラはアメリカのこの女性の名前を出した。
「目が見えなかったわね」
「あの人は耳もだったね」
「しかも喋れなかったわ」
「けれど生きていったんだ」
「その娘は何でもないわ」
「ヘレン=ケラーだって立派な人になったんだからね」
「だから」 
 ヘレン=ケラーもそうだったからだというのだ。
「この娘を家族に迎えたいわ」
「是非ね、いいかな」
「あの、それなら」
 署長はこの夫婦にもまさかという顔で応えた。 
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