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星河の覇皇

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第七十八部第一章 二度目の会戦を観てその四十二

「しかしそれもです」
「同じ人間ですから」
「所詮は」
「それで、ですね」
「個人の努力次第で、ですね」
「個人の能力の差異はなくなりますね」
「そうなりますね」
「やはりです」
 さらに言う八条だった。
「人種の違いはないのです」
「能力の優劣は努力で補える」
「それこそ幾らでも」
「だからですね」
「人類はこの偏見は乗り越えられた」
「それがはっきりしているので」
「もう人種主義は過去の遺物です、しかし」
 それでもとだ、八条はここで言うのだった。
「宗教や哲学、つまり思想にある考えはそうはいきません」
「そこにある考えはですね」
「科学で実証されていても」
「それでもですね」
「人の中にあるものは科学だけではありません」
 それが全てではないというのだ。
「宗教もありその中に穢れの思想もあれば」
「穢れ、ですね」
 ここで反応を示したのは池田晋太郎大将だった、宇宙艦隊司令部の要人の一人で軍司令官を務めたこともある。八条と同じ日本人であるせいか彼と親しいとも言われているが実はそうした話は根拠無根だ。
「それですね」
「神道にもある考えですが」
「ヒンズー教にもありますね」
「はい、彼等はです」
 アウトカースト層はというのだ。
「その穢れとされていて」
「穢れだからですね」
「触れてはいけないとされていて」
「それで、ですね」
「はい、マウリアではです」
「その穢れ信仰の為にです」
「アウトカースト層は疎外された」
 八条は池田に応え他の将官達にも話した。
「そうなりましたね」
「そうかと」
「やはりそうなりますね」
「我が国にもありましたし」
「はい、穢れの思想は」
 ここで八条は整った眉を曇らせて述べた。
「我が国にもあります」
「今もですね」
「禊といいまうし相撲でも土俵に塩を撒きます」
「清めの塩ですね」
「神事には欠かせないものです」
 相撲は本来神事だ、だからそうしたことも行うのだ。そうした意味で力士は神主と違い存在と言えるのだ。
「穢れを払う」
「まさにそれですね」
「今はなくなりましたが」
 八条はその眉をさらに曇らせて話した。
「被差別部落もありましたし」
「被差別部落?」
「そんなものもあったのですか」
「かつては」
「日本には」
「そうです、我が国にも被差別階級というものがあり」
 それでとだ、八条は話した。
「中世の河原者、江戸時代の穢多や非人という階級がありまして」
「奴隷ですか?」
「日本に奴隷制度があったのですか?」
「日本の奴隷制度は早いうちになくなったと聞いていますが」
「豊臣秀吉は奴隷制反対論者でしたね」
「ですが」 
 それでもというのだ、豊臣秀吉はキリスト教の宣教師達に日本人が奴隷として海外に売り飛ばされていると聞いて即座に彼等を買い戻して救っている。このことが切支丹禁制につながったと言われている。 
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