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盲導犬の二つの話

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第一章

               盲導犬の二つの話
 日本のある街でのことだ、バスの運転手をしている秋山公平痩せた長身で黒髪がやや薄くなっている彼は毎朝九時十分のバスに盲導犬を連れた明るい感じの女性が乗るのを見ていた。
 それだけで女性が盲目であることがわかった、盲導犬は白のラブラドールレッドリバーであった。その犬は。
 盲導犬らしくじっとしている、そして飼い主が席を立つとしっかりと案内する。彼も乗客達もその光景を見て普通にしていた。
 だがここでだ、ある日。
 小柄で濁った目の光に鋭い目の光で柄の悪いそうなパーマと服装でやけに態度の悪そうな仕草の男がだ。
 盲導犬を見て秋山に言ってきた。
「このバスペットいいのかよ」
「その子は盲導犬ですが」
「何だよそれ」
「目の見えない人の目になってくれる犬です」
 ありのまま説明した。
「そうした犬です」
「俺は犬が嫌いなんだよ」
 男は盲導犬と聞いてもこう言った。
「匂いがな」
「そうなんですか」
「そうだよ」
 他の客はバスの中で喚く彼を嫌そうに見ている、盲導犬の飼い主は言葉を聞いて項垂れている、そして犬も。
「キュ~~~ン・・・・・・」
「何だよその顔」
 男は犬の顔も見て言った。
「お前がそこにいるのが悪いんだろ」
「お客さん、ですからその子は」
 秋山はまた男二言った。
「その人のです」
「目だってのか」
「ですから」
「そんなの知るか、降りろ」
 男は怒鳴った。
「次の停留所でな、いいな」
「あんたが降りてくれないか」
 秋山は男が怒鳴るとこう返した。
「言ってるだろ、その子は飼い主さんの目なんだ」
「おい、俺は客だぞ」
「お客さんでもだ、言っていいことと悪いことがあるんだ」
 それでというのだ。
「もうだ」
「俺がっていうのか」
「次の停留所で降りてくれ」
「おい、後で覚えてろよ」 
 こう言うが秋山は退かず他の客達もだった。
「あんたが降りてくれ」
「最低な人ね」
「全く、どんな生き方したらこうなるのか」
 こう言って誰も味方しなかった、それでだ。
 客は降りていった、秋山はバスを終点までやってそうしてターミナルまで戻ると社長にことの経緯を話した、すると。
 社長もだ、こう言った。
「君は正しいことをした」
「そうですか」
「クレームが来たら任せてくれ」
「わかりました」
 社長の言葉に頷いた、そして。 
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